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『キングダム』

 
       

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作品データ
制作年・国 2019年 日本
上映時間 2時間14分
原作 原 泰久『キングダム』(集英社「週刊ヤングジャンプ」連載)
監督 監督:佐藤信介 脚本:黒岩勉 佐藤信介 原泰久
出演 山﨑賢人/吉沢 亮 長澤まさみ 橋本環奈 本郷奏多/満島真之介 阿部進之介 深水元基 六平直政/髙嶋政宏 要 潤/橋本じゅん 坂口 拓 宇梶剛士 加藤雅也 石橋蓮司/大沢たかお
公開日、上映劇場 2019年4月19日(金)~全国東宝系にてロードショー

 

はるか昔、紀元前の中国「春秋戦国」時代を舞台にした壮大な歴史絵巻。

 

「週間ヤングジャンプ」に連載され、累計3800万部を突破した同名ベストセラー。漫画原作が壮大な歴史エンターテイメント映画になるなんて、漫画パワー恐るべし。一見、荒唐無稽なお話も、ど迫力アクションを見れば納得出来る痛快編だ。


kingdam-500-1.jpg紀元前245年、春秋戦国時代、中華・西方の国「秦」、戦災孤児の少年・信(山﨑賢人)と漂(吉沢亮)は「奴隷はいつまでたっても奴隷だ。抜け出すには剣しかない」と二人して「天下の大将軍になること」を夢見て剣の鍛錬に励む。


kingdam-500-2.jpgそんなある日、漂は王都の大臣・昌文君(髙嶋政宏)の目に止まり、ひとりだけ王宮へと召し上げられる。別々の道を歩むことになった二人だが、それは始まりに過ぎなかった。王宮に召し上げられた筈の漂がある日突然、傷を負いながら信の小屋にたどり着き「最後の頼みを聞いてくれ」と言い残して息絶える。実は王宮で「王の弟」(本郷奏多)によるクーデターが勃発し、戦いの最中、致命傷を負いながらも地図を信に託すためにやって来たのだ。漂が王宮に召されたのは王とそっくりなことが理由で、事が起これば王の身代わりとして殺される運命にあったのだ。


kingdam-500-3.jpgいきなり中国らしい複雑怪奇な権力構造が見る者を惑乱する。中国の歴史は深く底知れない。冒頭だけでも波乱含みだが、信が地図の通り、小屋にたどり着くと、なんとそこには死んだはずの漂がいた。一体何? 映画は混迷の度合いを深めながら事態は王宮を巻き込んでさらに広がりを見せていく。物語に追いつかないほど展開が早く複雑なのが中国王朝ものの特徴か。


kingdam-500-4.jpg「大将軍になることを夢見る」信と“中華統一”を目指す若き王(後の秦の始皇帝)。山の民の女王(長澤まさみ)、信と行動を共にする仮面の山の民(橋本環奈)のほか、信が憧れる貫録十分の大将軍(大沢たかお)ら豪華キャストは見応えたっぷり。ラスト、王宮での様々な対決模様は驚きの連続だ。スピーディーな画面とともに見事なアクションに目を見張らせられる…。


kingdam-500-6.jpg大スケールの歴史アクションは「ベン・ハー」(59年)や「スパルタカス」(60年)、「エル・シド」(61年)など本来、米ハリウッド映画のおはこだった。近年、成長著しい中国映画も歴史の本場として、人海戦術で力量を発揮してきた。ハリウッドでも本場中国でもない日本で中身の濃い歴史大作は人気漫画原作とはいえ珍しく、驚きでもある。


kingdam-500-5.jpg兄弟による骨肉の権力争い。剣の腕前による上昇志向。中国を統一し“中華で唯一の王”になる野望、そのために一度は裏切った“山の民”と手を組む、群雄割拠の巨大な国で覇権を握ることの難しさと、統一した達成感が2時間を超える歴史アクションを貫く。


原作者で脚本にも参加した原泰久氏は「原作とは異なる場面を追加した。セリフを一から生み出したシーンもある。僕自身(映画を見て)5回泣きました。公開が本当に待ちどおしい」と自作なのに目いっぱい惚れこんでいる様子だ。


kingdam-500-7_r1_c1.jpg一方「中国五千年の歴史は大嘘だった」という日中近現代史の新書(憲政史研究者・倉山満)が昨年、話題を呼んだ。それによると「中国は夏王朝成立から3000~4000年の歴史」を誇っているというが、様々な民族がその都度、王国を築き、それぞれ成立から滅亡まで、同じパターンを繰り返す歴史だった、と看破している。中にはチンギスハンのような北方民族が中華を統一した歴史もあり「中国5000年」とはとても言えない、らしいのだ。興味ひかれる書ではあるが、この映画は、そんな激動の覇権争いを繰り返してきた中国史の一端をスペクタクル劇映画で堪能出来る、稀有な歴史映画と言える。


(安永 五郎)

公式サイト⇒ https://kingdom-the-movie.jp/

 (C)原泰久/集英社 (C)2019映画「キングダム」製作委員会