「中国」と一致するもの

FG-550.jpg『フライング・ギロチン』

 

(血滴子 The Guillotines 2012年 中国・香港 1時間53分)

監督:アンドリュー・ラウ

 

出演:ホアン・シャオミン、イーサン・ルァン、ショーン・ユー 

2013年12月28日(土)~シネマート心斎橋にて公開

公式サイト⇒ http://www.cinemart.co.jp/theater/special/hongkong-winter2013/lineup_03.html

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★武侠映画だから出来る、素朴な体制批判


 

  うなりをあげて飛来する輪状の武器フライング・ギロチンは、かつて武侠映画のカルトスター、ジミー・ウォングが主演した映画『片腕カンフーと空とぶギロチン』(75年)で敵役が使ってファンを驚かせた伝説のアイテム。他の映画でも登場したかは覚えがないが、いかにも武侠映画らしいアブない武器だった。そのタイトルを使った映画、しかもジミー・ウォング御大まで顔見せ出演しているからこたえられない。

FG-3.jpg  フライング・ギロチンは冒頭に登場するだけと控えめで、映画の主役は原題の『血滴子』。皇帝直属の暗殺部隊の名でその部隊長役がジミー・ウォング。血滴子は本来、皇太子の幼少時の遊び相手という無邪気な存在なのだが、長じて皇帝のボディガードになり、政敵を暗殺する役目を担う「朝廷の暗部」の象徴でもある。

  清朝、第5代皇帝・雍正帝(アンドリュー・ラウ)の暗殺集団・血滴子の総領官(ジミー)は「反清復明」を掲げる反乱軍リーダー天狼(ホァン・シャオミン)暗殺を部下の冷(イーサン・ルァン)らに伝える。一度は捕らえたものの仲間に奪い返され、血滴子仲間の女・ムーセンを連れ去られる。仲間の奪還を狙いつつ天狼を追う血滴子。熾烈な戦いが幕を切って落とす。

FG-2.jpg   だが、非情なはずの血滴子・冷は、民衆とともに生きる天狼の姿と生きざまを見て、暗殺者である自分に疑問を感じ、暗殺を断念する。それを知った雍正帝の子、第6代乾隆帝(ウェン・ジャン)は、冷の義兄弟・海都(ショーン・ユー)を差し向ける…。

  満州族の清朝打倒、漢民族の明朝復権を目指す“反清復明”は、民族紛争であり権力闘争。だから、中国映画の秀作『孫文の義士団』と違ってどちらが正義か悪か、判断は難しい。だが、主役のはずの血滴子が天狼に共感し、逆に皇帝と義兄弟に追い詰められる。この複雑な逆転が現代中国ではないか。

  皇帝の交代による情勢の変化、近代兵器「鉄砲隊」の完成で無用の存在として追われることになる血滴子の悲惨な運命。殺傷力抜群だったギロチンは、過去の遺物の象徴になってしまっていた。

 

FG-4.jpg   子供たちや民衆に囲まれて生活する平和な天狼の姿に、中国の理想社会があるはず。そんなユートピアが皇帝軍の鉄砲隊の前に脆くも崩れ去る…武侠映画なのに歴史を越えて普遍的な真理さえ垣間見えた。

  ラストにはびっくり“皇帝への進言”が登場する。帰国した血滴子の生き残り、冷が皇帝に伝える。「民は食が足りて住むところがあれば満足する」「行き場を失えば反乱する」「不公平は不満を呼び、格差は不平等を生む」…。もはや武侠映画のセリフの域を越え、今現在の“中国民衆の声”そのものではないか。

 


  先頃開かれた京都ヒストリカ国際映画祭で『ソード・アイデンティティー』と『ジャッジ・アーチャー』の武侠映画2本を出品した北京出身のシュ・ハオフォン監督は初日『フライング・ギロチン』上映後のトークショーに参加し「武侠映画の本質」について語った。

  香港、台湾の独壇場のように思われていた武侠映画だが、自ら武侠小説も書くシュ監督は「元は中国本土から来た」という。「血滴子は実際にいた。王子が蝉を取る時に棒の先に赤い米の糊をつけたのが血のように見えたために血滴子と呼ばれた」と由来を話し「実際に暗殺を任務にする特務機関として恐れられ、自分たちもまた恐れていた。特務機関は増えて互いに監視し合い、潰しあっていくもの、今のアメリカも、古くはヒトラーのナチスもそうだった」と言う。

  「武侠映画、小説は体制へのメッセージ。中央政府への反対というよりも、中国の社会そのものを表現している」と明言する。反体制映画ではないのに、ダイレクトな現代中国への批判。こんなタブーがサラッと出来るのが武侠映画の強みであり、人気の秘密だろう。 

 

(安永 五郎)

 

 

FG-550.jpg『フライング・ギロチン』

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★オープニングは東映京都作品『利休にたずねよ』(2013年11月30日(土))


historika13-11.30-5.jpgゲスト:田中光敏監督、原作者の山本兼一氏


   “世界でただひとつ”の歴史映画祭、第5回京都ヒストリカ国際映画祭が11月30日、京都駅前のT・ジョイ京都と京都文化博物館で始まり、T・ジョイ京都ではオープニング作品の東映京都『利休にたずねよ』(田中光敏監督)が上映された。上映に先立ち、原作者の山本兼一氏と田中光敏監督が「利休の生き方、その時代」と題したトークショーを行い、イベント・ナビゲーター・飯干景子さんと京都の映画らしい撮影裏話などを披露、満員の観客にアピールした。

 

 

 


―――映画化が難しい内容ですが、原作者として不安は?
山本兼一氏: 田中光敏監督は僕の『火天の城』の時、よく読み込んで作って下さっていたので心配してなかった。原作は時代を遡っていくのでそのままでは出来ないだろうなと思っていたので、自分でも楽しみにしていました。

rikyu-1.jpg―――映画化した監督はいかがでしたか?
田中光敏監督:09年の直木賞だし、お宝預かって越えられないぐらい大きな山でした。どうしたらいいのか、考えました。
山本氏:脚本をなかなか見せてもらえなくて、撮影直前でやっと見せてもらえた。
田中監督:自分で納得出来るまで見せられなかった。(原作は)これまでの利休像を覆して頂いた。若い時代の利休が魅力的でした。 
山本氏:普通、原作者が脚本読んで「いい」というのはあり得ない。映画と小説書くときには違いがある。

―――登場人物は相当削ぎおとしていますね。
田中監督:山本さんの文章は素晴らしいんですが(映画で)役者が全部言うと陳腐になる。余白と間(ま)をつないで頂きたい。この映画では、茶碗はじめ本物がたくさんでてきます。ヨーロッパからの献上品のベネチアン・グラスも本物をお借り出来た。東映京都撮影所では6年ぶりの作品。時代劇へのスタッフの思いがひとつにまとまった映画です。場所、道具、時代劇の本場・東映京都撮影所、中でも大部屋の力が大きかった。大部屋の人たちはマイかつら、マイ着物ですからね。そういう人たちがしっかりと周りを固めてくれた。  

rikyu-6.jpg―――注目は市川海老蔵さんですが? 
田中監督:あの人はやっぱり天才ですね。群衆シーンで大部屋俳優さんだけでは足りなくて、エキストラに2~30人来てもらったら海老蔵さんは「あの人たちはどこから来たの?」と聞いていた。着物の着方、所作、時代感を見て一瞬で感じるらしい。そういう人たちには「海老蔵さんの後ろに入って」と指示しました。

―――山本さんは書いてる時から海老蔵さんを意識しました?
山本氏:映画化するならぜひ海老蔵さんで、と思ってました。小説では利休はパッションの人ですからね。たぎるような情熱を内に秘めた人でないとダメだ、と。利休の19歳から70歳までと幅がありますから、ベテランの方だと若い時代を別の人にやってもらわないといけないが、海老蔵さんなら若い頃も無理なく出来る。最後は特殊メイクにしましたが。

―――情熱的な利休像には驚きます。
山本氏:利休というと、これまでのは、枯れた老人が一人静かにお茶を点てている、という地味なイメージだった。そんなはずはない、と思った。あんなに隆盛を極めた利休の茶にはもっと艶があったに違いない。
田中監督:原作からひしひし伝わってきますね。

rikyu-3.jpg―――市川)團十郎さんも出演されていて、貴重な親子共演になりました。
田中監督:最初で最後ですね。團十郎さんは体調の問題で南座を降板する1週間前に映画に出ていただいた。海老蔵さんには親子でも師匠だから、立ち位置で問題があった。團十郎さんが座って「さあどうぞ」という場面で、海老蔵さんが真ん中に立っている。これでは「迎え入れることにならないのではないか」と。(歌舞伎)役者はセリフを具体的、肉体的に考えている。親子でも師匠には「言えない」と言ってました。海老蔵さんは年老いた利休を團十郎さんにやってもらいたかったようでした。 
山本氏:セットで海老蔵さんは私をにらんでました。あの人ぐらいになると片一方の目だけでにらむことが出来るんですね。一瞬でしたが「フツーの人じゃないな」と思いました。
田中監督:海老蔵さんとは初めてでしたが、私は鈍感なのでにらまれても分からなかったかも。ただ、いつも舞台の真ん中にいる方なので照明の当たり方が違う。私たちはカメラとレンズの位置を頭に入れて「フレームの中どうお芝居をしてもらえるか」。ステージとの違いをどう説明するか、でしたね。

historika13-11.30-4.jpg―――完成してみたらいかがでしたか?
田中監督:スクリーンの中で(海老蔵さんは)素晴らしいエネルギーを放っていた。「一体何なんだ、あの人は」という感じですね。 
山本氏:所作、着物のさばき方ですね。海老蔵さんは「客によって“点て方”を変えたい」と言っていた。緊張した時、和やかな時によって違うのは当然だし、その微妙な茶筅(せん)の音をマイクが拾っていて音が違っている。
田中監督:海老蔵さんだけじゃなく、中谷美紀さんも1年2か月前からお茶のけいこを始めていて、撮影に入ると「(海老蔵さんの)お点前を貸してほしい」と頼まれた。中谷さんは「利休に点て方が似ていないと愛が伝わらないでしょう」と。 海老蔵さんは1年前からお茶を師匠について習い、本物の黒楽茶碗でおけいこしています。あり得ないことですよ。映画でも本物の黒楽茶碗を貸してもらってます。
山本氏:今は貴重なもので高いけど、当時は普通に使われていた。だから(映画の中で)恐る恐るやってはいけない、と準備してたんですね。俳優さんたちの努力で生まれた映画ですね。
田中監督:「京都で撮れた」のが大きなファクターですね。ほかでは出来ない。京都の歴史ある場所で、その中に千利休とその文化を守ろうという気持ちがあった。映画をやっていて利休の凄さが分かった。利休が削った茶杓もあったし、黒楽茶碗は今なら「プール付きの家が買える」ぐらいの値打ちもの。本物の持つ力が映画を支えています。ロケもそうです。南禅寺の山門をはじめ、大茶会も三井寺、上賀茂神社、神護寺、大徳寺の山門…東映京都撮影所が70年ぶりに使った場所もありました。

―――オープニングの嵐のシーンをはじめ原作に忠実でした。
田中監督:最初のシーンが好きで、そこで“利休ブルー”というか全体のトーンを決めました。人の肌、光が白く見える照明で、“おもてなし”の心を表す言葉から入った。 ぜひともワンカットでやりたかったんですが、現場が実現してくれた。

historika13-11.30-2.jpg―――映像が美しく、人物もセリフも削ぎおとされていました。
田中監督:撮影、美術、照明、音楽、演技も当然ですが、全部が足し算になりました。映像ですべて作り上げました。
山本氏:実にいい言葉を選んでくれましたね。私は5回見ました。5回目はモントリオールで、見ている人の息遣いが伝わってきました。最初に監督にクレームつけたセリフも「これでいいな」と。利休の美しさは、スタジオ見学した時に穏やかな照明になっていて「これはいい映画になる」と確信した。利休の美意識、美はすべて見せるわけじゃなく、利休の周りの人たちがどう受け止めたか、それを積み重ねることで、言葉なしで「こういう世界がある」と分かる。美はそれ自身が持つ力よりも見る人の心の中にある。見る側の気持ちに関係してくる。利休以外の人の表情にも現れている。

―――映画の中で重要な位置を占める「字」を書いて下さった「漢字作家」の木下真理子さんに来て頂きました。
木下真理子さん:日本の書のスタイルは中国からのものと、この時代は混在していましたけど、日本独自のスタイルを作っていった。
田中監督:映画ではずいぶんたくさん書いて頂きました。
木下さん:“ちらし書き”という、行頭を不揃いにする配置法にしました。美の追求は時間がかかること。気持ちの持ち方、魂、精神力が到達するもの。この映画で美しさに触れてもらいたいですね。
田中監督:茶の湯は静かな世界だけど、利休は情熱の人だった。利休の美は「恋から始まった」ということをゆっくり味わってください。
(安永 五郎)

 

ippuman-550.jpg『イップ・マン 最終章』

 

 godi-550.jpg『名探偵ゴッド・アイ』《冬の香港・中国エンターテイメント映画まつり①》

 

 

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~世界でただひとつ「歴史」をテーマにした映画の祭典~

京都ヒストリカ国際映画祭の概要が29日、大阪・北区の東映関西支社で発表された。5回目の今年は、11月30日から12月8日まで9日間、京都文化博物館を拠点にTジョイ京都、MOVIX京都の両シネコンで開かれる。

オープニングは東映の正月作品『利休にたずねよ』、クロージングは松竹『武士の献立』でいずれも京都撮影所で作られた時代劇。5回目で最初と最後を日本映画が飾るのは初めて。“映画の都”にふさわしい映画祭になりそうだ。

historika13-4.jpg  世界各国からの名作のほか、今年は修復された歴史的名作を上映する「ヒストリカ・クラシックス」も決まり、ファンの期待を集めている。クラシックス上映予定作品は、日本から小津安二郎監督の初カラー作品『彼岸花』(58年)、ドイツからエルンスト・ルビッチ監督『ファラオの恋』(22年=05年修復版、11年修復版)、ヒッチコック監督は『リング』(27年)、『恐喝(ゆすり)』(29年)はサイレントとトーキーの2種類。もう1本、事実上のデビュー作と言える『快楽の園』(25年)もある。来年、映画デビュー100年を迎える世界の喜劇王チャップリンはじめ、彼の先輩世代の作品を収めた『ヨーロッパの初期喜劇映画からチャップリンへ』(09~14年)も貴重な日本初上映。

 またアジア映画ファンが喜ぶラインナップも盛りだくさん。『ソード・アイデンティティ』(OAFF上映名は『刀のアイデンティティ』)のシュ・ハオフォン ュ監督最新作『ジャッジ・アーチャー』日本初上映や、OAFF2011ABC賞を受賞した『アンニョン!君の名は』パンジョン・ピサンタナクーン監督の最新大ヒット作『ピー・マーク』も上映。いずれも監督によるティーチインが予定されている。ショーン・ユー、イーサン・ルァン、ホァン・シャオミンと中華圏のスターが集結したアンドリュー・ラウ監督『フライング・ギロチン』の日本初上映も見逃せない。

historika13-3.jpg 期間中、上映作品と連動したトークショー、ティーチインもある。ゲスト予定者はオープニング上映『利休にたずねよ』の田中光敏監督、原作の山本兼一。クロージング作品『武士の献立』の朝原雄三監督、主演の上戸彩、高良健吾のほか是枝裕和監督、原田眞人監督、滝田洋二郎監督、井筒和幸監督、海外から『ジャッジ・アーチャー』のシュ・ハオフォン監督、『ピー・マーク』のバンジョン・ピサンタナクーン監督(タイ)、さらに映画史家デイヴィッド・ロビンソンも登場する。また、作家でタレントの飯干景子さんが映画祭キャラクターとして参加する。

※入場料は1回券が前売り券1000円(当日1200円)。3回券前が売り券2700円(3回券3300円)。オープニングとクロージングは前売り当日ともに2000円(クロージングは舞台挨拶あり、当日券は残席ある場合のみ)。

  映画祭スタッフが世界各国約140本の候補から厳選した今年の歴史映画、クラシックスの上映日程は以下の通り。


【11月30日】
中国『ソード・アイデンティティー』、伊仏スペイン『ダリオ・アルジェントのドラキュラ』、日本アニメ『伏  鉄砲娘の捕物帳』(京都文化博物館)。
オープニング~トークショー、東映『利休にたずねよ』、中国・香港『フライング・ギロチン』、中国『ジャッジ・アーチャー』 (T・ジョイ京都)。

【12月1日】
独『ハックルベリー・フィンの冒険』、韓国『風と共に去りぬ!?』、タイ『ピー・マーク』(京都文化博物館)

【12月2日】
クラシックス=英独『快楽の園』(MOVIX京都)

【12月3日】
米『スウィート・エンジェル』、クラシックス=『ヨーロッパの初期喜劇映画からチャップリンへ』(京都文化博物館)
クラシックス=英『リング』(MOVIX京都)

【12月4日】
ノルウェー『エスケープ  暗黒の狩人と逃亡者』、クラシックス=英『恐喝(ゆすり)』トーキー版(京都文化博物館)
ヒストリカ、英『恐喝(ゆすり)』(MOVIX京都)

【12月5日】
独『ハックルベリー・フィンの冒険』、クラシックス=『ヨーロッパの初期喜劇映画からチャップリンへ』。クラシックス=松竹『彼岸花』(MOVIX京都)

【12月6日】
米『スウィート・エンジェル』、クラシックス=独『ファラオの恋』(05年修復版)(京都文化博物館)
独クラシックス=『ファラオの恋』(11年修復)(MOVIX京都)

【12月7日】
ノルウェー『エスケープ  暗黒の狩人と逃亡者』、中国・香港『フライング・ギロチン』、タイ『ピー・マーク』(京都文化博物館)

【12月8日】
韓国『風と共に去りぬ!?』、伊仏スペイン『ダリオ・アルジェントのドラキュラ』(京都文化博物館)
クロージング、松竹『武士の献立』(MOVIX京都)


第5回京都ヒストリカ国際映画祭公式サイトはコチラ


(安永 五郎)


 

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(写真:第2回記者会見ゲスト 左より『ほとりの朔子』深田晃司監督、主演二階堂ふみ、フェスティバル・ミューズ栗山千明、『捨てがたき人々』榊英雄監督)

 

今やアジア最大級の国際映画祭へと成長した東京国際映画祭(TIFF)。昨年25回を迎え、今年は次の25年に向けて、部門構成を刷新し、さらに若く新しい才能を世界に送り出す機能を備えた映画祭として、新しい一歩を踏み出す。フェスティバル・ミューズに女優栗山千明さんを迎え、コンペティション部門の審査委員長にチェン・カイコー監督、国際審査委員に寺島しのぶさんが就任と、映画祭開催前から話題を集めている。

 

■コンペティション部門

The Double_main.jpgTIFFの看板ともいえるコンペティション部門では、「東京 サクラ グランプリ」受賞作品である一昨年の『最強のふたり』、昨年の『もうひとりの息子』が劇場公開で観客から大きな支持を得ているように、注目作のワールドプレミア、アジアプレミア上映を目撃できる貴重な機会だ。今年も魅力的なラインナップが出揃った。日本からは『歓待』でTIFF2010「日本映画・ある視点」部門作品賞に輝いた深田晃司監督と杉野希妃プロデューサーコンビが、二階堂ふみ、鶴田真由、太賀、古舘寛治等を迎えて贈る社会派青春夏物語『ほとりの朔子』、ジョージ秋山の原作を主演に大森南朋を迎えて榊英雄監督が撮りあげた人間の本質と欲望を描く『捨てがたき人々』の2本が選出されている。

We_Are_the_Best!_main.jpgイギリスからは、『ソーシャル・ネットワーク』のジェシー・アイゼンバーグ主演、文豪ドストエフスキーの原作を近未来的設定に置き換えた、シュールで哲学的な新感覚スリラー『ザ・ダブル/分身』が登場。スウェーデンからは青春映画に定評のあるルーカス・ムーディソン監督が、80年代初頭を舞台に、思春期の衝動に駆られてパンクバンドを始める女子中学生の弾けるような日々を活写した『ウィ・アー・ザ・ベスト!』。

Barber's Tales_main.jpgそして、フィリピンから選出されたのは、フィリピン版『マンマ・ミーア』の『アイ・ドゥ・ビドゥビドゥ』(OAFF2013上映)で下町の母をパワフルに演じたユージン・ドミンゴ主演のワールドプレミア作品『ある理髪師の物語』。昨年「アジアの風」部門で上映された『ブワカウ』のジュン・ロブレス・ラナ監督がユージン・ドミンゴと組んで時代の荒波と闘う女性たちの姿を描く注目作だ。

 

■ワールドシネマ部門

Tom at the Farm_main.jpg昨年までの「ワールドシネマ」部門をリニューアルした「ワールドフォーカス」部門では、世界各国の映画祭受賞作や話題作、あるいは有名監督の日本で紹介されていない新作にフォーカスを当て、従来の欧米作品だけではなくアジアの有力作品もこの部門にてラインナップされている。
現在劇場公開中の『わたしはロランス』で高い評価を得ているグザヴィエ・ドラン監督が、自身主演で初のスリラーにチャレンジ。本年のヴェネチア映画祭国際批評家連盟賞を受賞したカナダ、フランス合作の最新作『トム・アット・ザ・ファーム』がいち早く上映される。

Unbeatable_main.jpgまた、香港からは、『密告・者』のダンデ・ラム監督が放つ総合格闘技アクション・ドラマ『激戦』が登場。ニック・チョン、エディ・ポンの若手人気俳優による熱い男たちの闘いを堪能したい。

 

 

 


Soul_main.jpg更に、【台湾電影ルネッサンス2013 】と題して近年活況が著しい台湾映画より、久々の新作で復活を果たしたベテラン監督から注目すべきニューウェーブまで、台湾映画の今が垣間見える作品を特集上映する。今年の台北映画祭でグランプリを獲得した、『四枚目の似顔絵』チョン・モンハン監督の最新作『失魂』をはじめ、『27℃ ― 世界一のパン』、『高雄ダンサー』、『Together』がラインナップ。さらに台湾ニューウェーブの記念碑的オムニバス『坊やの人形』(ホウ・シャオセン監督、ワン・レン監督、ツォン・チュアンシアン監督)のデジタルリストア版も上映される。

 

■アジアの未来部門

Today_and_Tomorrow_main.jpg昨年まで数々の秀作を特集上映と共に紹介してきた「アジアの風部門」を発展させ、今年から新部門「アジアの未来」部門が誕生。長編映画2本目までのアジア新鋭監督の作品を一挙紹介するコンペティション部門となった。ワールド・プレミアとなるヤン・フィロン監督(中国)の『今日から明日へ』をはじめ、アジア映画の新潮流をいち早く発見できる機会となるだろう。

 

■特別招待部門

The_Dust_of_Time_main.jpg「日本映画・ある視点」部門がリニューアルした「日本映画・スプラッシュ」部門では海外進出を狙う日本のインディペンデント作品を、監督のキャリアを問わずに紹介。そしておなじみの「特別招待作品」では、オープニングにトム・ハンクス最新作『キャプテン・フィリップス』、クロージングに三谷幸喜の最新作『清州会議』と話題性十分の作品が勢揃いし、映画祭を大いに盛り上げる。中でも、テオ・アンゲロプロス監督の遺作となった『エレニの帰郷』をいち早くスクリーンで観ることができるのは、映画祭ならではの楽しみだろう。東京が映画色に染まる9日間。日頃劇場でなかなか触れる機会のない、国際色豊かな世界の最新映画をぜひ楽しんで!

第26回東京国際映画祭公式サイト http://tiff.yahoo.co.jp/2013/jp/

 

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~人気絶頂アジアン若手スター競演!この夏オススメの最新中華アクションエンターテイメント登場~

今年も、中国・ニューウェーブ・エンターテインメント映画を一挙に上映する『2013夏の中華大傑作映画まつり』がシネマート新宿に引き続き、8月10日(土)からシネマート心斎橋で開催される。

エディ・ポン、レオン・カーファイといった中華圏ファンにお馴染みのスターをはじめ、主演作が大阪アジアン映画祭で上映された(『メモリー –First Time-』)アンジェラベイビーが、華麗なカンフーも披露し新境地を開拓。そして第二のジェット・リーとの呼び声も高い新人ユエン・シャオチャオのフレッシュな演技も魅力的な新感覚カンフーアクション『TAICHI/太極 ゼロ』、続編の『TAICHI/太極ヒーロー』がいよいよ登場する。

そして昨年夏日本でも大ヒットしたファンタジー・ラブストーリー『画皮 まやかしの恋』の続編、中国全土で大ヒットを記録した『妖魔伝 –レザレクション-』も公開される。また『TAICHI/太極 ヒーロー』、『画皮 まやかしの恋』に出演し、大阪アジアン映画祭クロージング作品『二重露光〜Double Xposure〜』でファン・ビンビンと共演した中国人気ナンバーワン俳優フォン・シャオフォンの魅力にも触れることのできる絶好の機会だ。

華麗な新感覚アクション、さらに幻想的で美しさを極めたラブストーリーと中華圏映画ならではの最新エンターテイメント3本をぜひ楽しんで!

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『TAICHI/太極ゼロ』 "太極1従零開始"(2012年 98分)
 製作総指揮・原作:チェン・クォフー「王朝の陰謀 判事ディーと人体発火怪奇事件」
 製作・監督:スティーブン・フォン「ジェネックス・コップ」
 出演:ユエン・シャオチャオ、 アンジェラベイビー、 レオン・カーファイ、 エディ・ポン

 

実在の武術家、揚式太極拳の創始者、揚露禅(ようろぜん)の若き日の闘いを描く新感覚カンフー・アクション。2008年北京オリンピック武術トーナメント・金メダリストの新人ユエン・シャオチャオが、天賦の才能に恵まれ、額にある肉芽を押すと無敵の戦士になる一方、肉芽が黒く変色すると死に至る主人公揚を初々しく表現。揚は生き延びるため陳家拳を学ぼうと秘境の果てにある陳家溝へやってくるものの、よそ者には教えられないと村中から白い目で見られ、陳の娘、玉娘(アンジェラベイビー)や村民にもやりこめられてしまう。アンジェラベイビーが披露する可憐なカンフーアクションや、素性がバレないよう変装しながら揚を見守る陳を演じるレオン・カーファイ、珍しく悪役にチャレンジの大阪アジアン映画祭でもお馴染み(『聴説』、『LOVE』)のエディ・ポンなど、見どころいっぱい!村人たちとの闘いではアニメーションも交え、ロックテイストのある展開が楽しい。サモ・ハン・キンポーがアクション監督を務めたのも話題になった大ヒットアクション映画だ。
   
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『TAICHI/太極ヒーロー』”太極 2 英雄崛起”(2012年 100分)
 製作総指揮・原作:チェン・クォフー「王朝の陰謀 判事ディーと人体発火怪奇事件」
製作・監督:スティーブン・フォン「ジェネックス・コップ」
出演:ユエン・シャオチャオ、 アンジェラベイビー、 レオン・カーファイ、 エディ・ポン、フォン・シャオフォン

『TAICHI/太極 ゼロ』で見事線路建設を企む方(エディ・ポン)らの陰謀から陳家溝を守った楊(ユエン・シャオチャオ)。しかし村人と対戦するうちに陳家拳の技を身に付けた楊は、技を盗んだと罪に問われ処刑を言い渡される。玉娘(アンジェラベイビー)は自分と結婚することで楊はよそ者でなくなると主張。玉娘と結婚した楊は晴れて陳家拳を教えてもらえる立場となったのだが・・・。父親と対立していた玉娘の兄役に中国のライジングスター、フォン・シャオフォンが登場。父子の葛藤を表現し、前編にはない物語の奥行を出している。虎視眈々と反撃の準備を重ねていた方(エディ・ポン)との再対決や、夫婦となった楊と玉娘の関係など、格闘家としても人間としても成長を遂げていく楊はユエン・シャオチャオ自身の成長とも重なる。精悍な風貌といい、キレのいいアクションといい、まさに「第二のジェット・リー」ユエン・シャオチャオをお見逃しなく!


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『妖魔伝-レザレクション-』 ”画皮2”(2012年 131分)
 製作:チェン・クォフー「王朝の陰謀 判事ディーと人体発火怪奇事件」
 監督:ウー・アールシャン
 出演:ジョウ・シュン、 ヴィッキー・チャオ、 チェン・クン、ヤン・ミー、フォン・シャオフォン

前作『画皮 まやかしの恋』で人間に恋をし、救ってしまった罪で500年間氷地獄に封印されていたキツネの妖魔、小唯(ジョウ・シュン)。彩雀の妖魔、雀児(ヤン・ミー)に助けられ、人間の心臓を食べながらその美を保ち続けていた。小唯は本当に人間になるためには、心臓を自ら差し出す人間に出会わなければならないが、小唯は顔に傷を負って仮面をまとった美しい靖公主(ヴィッキー・チャオ)に助けられ、靖公主の弱点を掴んで目的を達成しようとする。

前作以上に妖艶さと幻想的な美しさで魅了する本作。キャスティングも前作同様ジョウ・シュン(『クラウドアトラス』)、 ヴィッキー・チャオ(『レッドクリフ』シリーズ)、 チェン・クン(『ドラゴンゲート 空飛ぶ剣と幻の秘宝』 )の3人が競演する他、人気上昇中の若手女優ヤン・ミーやフォン・シャオフォンがミステリアスなストーリーの中で、少し気が休まる微笑ましくコミカルなやりとりを見せ、物語のアクセントになっている。見た目の美か、心か、愛する人の心を得るための女心を利用した策略や悲劇が、感動的な愛の物語に昇華する大人のファンタジーロマンス。ジョウ・シュンとヴィッキー・チャオの火花散る美の競演は本当に見もの!


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