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『ニーナ ローマの夏休み』

 
       

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作品データ
原題 “NINA”
制作年・国 2012年 イタリア 
上映時間 1時間20分
監督 エリザ・フクサス
出演 ディアーヌ・フレリ、ルカ・マリネッリ、エルネスト・マイエ、ルイジ・カターニ、マリーナ・ロッコ、アンドレア・ボスカ、クラウディア・デッラ・セタ他
公開日、上映劇場 2013年8月10日(土)~新宿シネマカリテ、今夏~梅田ガーデンシネマ

~キュートでアート、等身大で綴る“誰もいないローマ”の夏~

 台詞がイタリア語でなければフランス映画かと思うぐらい、イタリア映画らしい光景や情熱的な恋愛とは無縁なのが新鮮に映る。有名建築家マッシリアーノ・フクサスを父に持つ女性監督、エリザ・フクサスが自分の得意とすることを突き詰め、撮り上げた初の長編作品。舞台はヴァカンスシーズンで誰もいない「ローマ」だ。一見オシャレムービーに見えるが、ローマでも20代女性は人生に悩める存在という現実が透けてみえる。

nina-2.jpg 9月に中国留学するため、バカンスの時期を残って勉強することに決めたニーナ。友人に頼まれ、留守宅の世話やペットの世話をしながら、人けのないローマ郊外エウルでの静かな夏休みが始まった。書を習ったり、友人に頼まれ歌のレッスンをしたり、ペットたちと穏やかな日常を過ごす中、風変わりな子どもの管理人エットレやチェロ奏者のファブリツィオに出会い、将来に漠然と不安を抱えていたニーナの心境に少しずつ変化が訪れる。

nina-3.jpg 『ミラノ、愛に生きる』のディアーヌ・フレリが、『アメリ』のオドレイ・トゥトゥを思わせるキュートさで主人公ニーナの日常を爽やかに表現。夏休みの間彼女が着るワンピースは、ボーダー、水玉、チェック、ラメとシンプルな形ながら色や柄が映えてオシャレ度満点、思わずファッションチェックしたくなる。ランニングで汗を流したのに、6人分のホールケーキを買ってパクパク食べるお茶目な一面や、疲れた時は鍼治療でリラックスするライフスタイルなど、20代女性のなにげない日常の描写が妙に心地よい。

 

 何よりも目を奪われるのは、ローマ郊外近代建築の美しさだ。建築物を取り入れたズレのない完璧な構図に、登場人物が時には垂直に、時には水平に動きを加えていく。静と動のコントラストをスクリーンという大きなキャンバスで表現しているかのようだ。そしてラストで折紙モチーフがオブジェのように真っ白の建築物と重なったとき、その美しさに言葉を失くした。エリザ・フクサス監督のアート的表現力の高さを如実に示す名シーンだ。

nina-4.jpg 「ごく普通の生き方は無理」と語っていたニーナが、清々しい顔をして食べる夏休み最後の朝食を食べるとき、小さなことが積み重なっている日常に愛おしさを感じつつあるように思えた。毛筆で書を習ったり、大人びた子ども管理人エットレが「中国は未来だ」と叫ぶなど、現代のイタリアと中国の関係を暗示するかのような表現も印象に残る。また、台所や家でときどき映り込むちょっと風変わりなオブジェもシュールさを添えた。様々な要素を散りばめながら、徹底的に美しいものにこだわったエリザ・フクサス監督は、イタリア映画や、ローマのステレオタイプではない一面をさらりと提示した。
 (江口由美)


公式サイト⇒http://uplink.co.jp/nina/
(C)2012 Magda Film, Paco Cinematografica

 

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