「講談社」と一致するもの

『藁の楯 わらのたて』試写会プレゼント(4/3〆切)

wara-1.jpg・日時:2013年4月11日(木) 
    18:00開場/18:30開映
・会場:御堂会館
〒541-0056 大阪市中央区久太郎町4-1-11
    TEL(06)6251-5820(代表)
    FAX(06)6251-1868
    地下鉄御堂筋線本町駅8号出口南へ200m
    地下鉄中央線本町駅13号出口南へ50m  
・募集人数: 5組 10名様
・締切:2013年4月3日(水)

 ★大沢たかお、三池崇史監督完成披露試写舞台挨拶⇒ こちら
公式サイト⇒ http://wwws.warnerbros.co.jp/waranotate/index.html

 
2013年4月26日(金)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹 他全国ロードショー


 

【STORY】

前代未聞の新聞全面広告に、日本中が揺れた! 広告主は巨額の資産を持つ財界の大物・蜷川。
幼い孫娘を惨殺した男、清丸の首に懸賞金を懸けたのだった。命の危険を感じた清丸は、潜伏先の福岡で出頭する。全国民の殺意が向けられる中、48時間以内に清丸の身柄を警視庁に移送するため、5人のSPと刑事が選ばれた。護衛対象は“人間のクズ”。命懸けの移送が始まる…。一般市民、警察官、機動隊員までもが執拗に命を狙ってくる。見えない暗殺者から逃げる為、護送車、救急車、新幹線と次々と移動手段を変えても、なぜか、ネット上のキヨマルサイトには移送チームの居場所が更新されてしまう。
いつ?誰が?何処から襲い掛かってくるか分からない、誰が裏切り者がわからない極限の緊張状態が続く・・・。
はたして、人間のクズを命懸けで守る事に価値はあるのか?それが“正義”なのか?SPチームは無事に清丸を警視庁に移送することが出来るのか?物語は誰も予測出来ない衝撃のクライマックスを迎える!

【キャスト】 大沢たかお ・ 松嶋菜々子 ・ 岸谷五朗 ・ 伊武雅刀 ・ 永山絢斗 ・ 余貴美子 ・ 藤原竜也 ・ 山﨑努
【監 督】 三池崇史                      
【原作】 木内一裕「藁の楯」(講談社文庫刊) 
【主題歌】 「NORTH OF EDEN」 氷室京介       【配 給】 ワーナー・ブラザース映画
【公式サイト】 www.waranotate.jp                       【キヨマルサイト】 www.kiyomaru-site.jp

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『藁の楯 わらのたて』完成披露試写会舞台挨拶レポート

(2013年3月15日(金)梅田ブルク7にて)

登壇者:大沢たかお、三池崇史監督

 

WARA NO TATE (2013年 日本 2時間05分)
原作:木内一裕「藁の楯」(講談社文庫刊)
監督:三池崇史
出演:大沢たかお、松嶋菜々子、岸谷五朗、伊武雅刀、永山絢斗、余貴美子、 藤原竜也、 山﨑努

2013年04月26日(金)~新宿ピカデリー、大阪ステーションシティシネマ 他全国ロードショー

★作品紹介こちら
★大沢たかお・藤原竜也 舞台挨拶(4/16)⇒ こちら
★公式サイト⇒ www.waranotate.jp

 
©木内一裕/講談社 ©2013映画「藁の楯」製作委員会


 

~SP大沢たかおvsモンスター藤原竜也、正義を貫くサバイバル~

 

wara-s1.jpg 今日本で最も多忙を極める三池崇史監督。時代劇やハードアクションがあるかと思えばアニメの実写版があったり、果てまたミュージカルやスプラッターものがあったり、多種多様な世界を映画化して楽しませてくれる。スピーディで迫力ある映像に魅了される映画ファンも多いと思うが、業界内、とりわけ俳優陣の信頼が厚く、出演希望者も多いという。今回の大沢たかおとの初タッグは、ファンならずとも待望のコラボレーションとなった。
 

wara-1.jpg 昨年の『終の信託』での有無を言わさぬ検事役に続き、今年の『ストロベリーナイト』では竹内結子扮する刑事相手に情熱を秘めたクールさで魅了していた大沢たかお。本作でも、「いい人、優しい人」というソフトイメージを払拭した毅然とした男らしさで情感をぶつける演技に、スケールアップした新たな大沢たかおの魅力を堪能することができる。
 

 

wara-2.jpg 今回は、残忍な殺人鬼を護送するという使命を課せられたSPを、松嶋菜々子と共に演じている。松嶋奈々子は、射撃・格闘術・語学堪能、あらゆる面で男性より勝るというSPを、ぼさぼさ頭にすっぴんといういでたちで挑んでいる。TVドラマ『家政婦のミタ』同様、淡々と使命を遂行する姿は、彼女の長身が活かされ、実にカッコいい! 一方、残忍な犯罪者を演じた藤原竜也もまた不気味さを漂わせている。大沢たかおとは対称的な役柄を、ストイックなまでに自分を追い込んだ演技で、その存在感だけで恐怖を感じさせるほどだ。

 映画化は不可能とされてきた原作を、名古屋市の絶大な協力と、台湾まで行って撮った新幹線のシーンなど、不可能に挑戦し続けた結果完成した本作。大沢たかおという今最も注目を集める俳優をさらにグレードアップさせた三池組。その成果は、スクリーンをはみ出すほどの迫力と強烈な個性を発揮した俳優陣の熱演にも現れている。是非映画館でお楽しみ頂きたい。


 

 4月26日(金)の公開を前に、劇場関係者だけの業務試写が行われ、そこに2日間で日本全国を回る弾丸キャンペーンの一環で、大沢たかおと三池崇史監督が来阪し、舞台挨拶を行った。

 

wara-s2.jpg――― 最初のご挨拶を。
大沢:本日は映画を見て頂いてどうもありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。
三池:今日はありがとうございます。もう見てもらった後なので、ウソも言えないしどうすりゃいいんだ!?(笑) 去年の夏、自分たちの限界を超えて一所懸命作った映画なので、一人でも多くの人に見てもらいたいと思います。どうかお力添えをお願いいたします。

――― 昨年の夏1か月半に渡り、名古屋や台湾などで撮影されましたが、印象に残ったことは?
大沢:全て印象に残っているのですが、とにかく暑かった! ひとつひとつのシーンで、普段の汗をそのまま映像に乗せて、個人的な感情や状況がすべてリンクしているような感じでした。
 wara-s4.jpg三池:長く映画製作をしていると、この原作を読んでも映画化は無理だろうと考えるのが普通。「高速道路は止められないし、新幹線貸してくれないし、まあ無理でしょうね」と。そのために私鉄に変えたり、高速道路に入る前に事件が起き、一般道路に逃げる道など、“撮影の常識”に対する挑戦状でした。そこから逃げる訳にいかないので、原作に忠実にやろうと思って台湾まで行って撮影しました。行く先々で撮影が困難を極める中いろんな人の協力を得て、何とかここまで来れたこと自体が印象的です。

――― キャラクター作りの演出プランを立てるのに、原作から意識したことは?
三池:そもそも原作はハードボイル。SPがとんでもない怪物のような犯罪者を守るという。これを映画化するにあたって、生身の人間が演じるわけですから、SPだって家庭があったり、個人の事情や年齢やコンディションもあり、仕事としてそれを貫こうとしている。犯罪者の方も悪魔ではなく、誰しも自分の子供には自分の個性を大事に好きなように生きろと願うように、たまたまそういう趣向があっただけかもしれない。ルールとしての法律と人間としての欠陥があることをそれぞれに背負ってもらって、ハードボイルとしてではなく、人間ドラマになればと思ったのです。

wara-s6.jpg――― 主人公の銘苅(めかり)をどのように考えて演じたのですか?
大沢:基本的には、SPをただのスーパーヒーローではなく、実際のSPの所作で、マインドを持つ人間を演じようと思いました。現場にSPの方に入ってもらって、監修してもらいながら、細かく丁寧に演じることができました。

――― 松嶋さんとの共演は?
大沢:なりふり構わず、男の中で対等で居たというか、変に気を遣うこともなく、いい意味で男性的でとても仕事をしやすい素晴らしい女優さんでした。
三池:大体女優さんは大物になると、スタッフとしては気を遣うのですが・・・「暑い」、「まだかしら」、「こんな衣裳なの?」とかね(笑)。でも、そのような距離感が大女優として輝くためには必要なことなんです。それを松嶋さんは超越して、今回SPということでノーメークに近かったので、どんな風に映っているか気になるはずですが、撮影が終わってもモニターを覗くこともしなかったですね。

 

wara-s7.jpg――― 強烈にどぎつい清丸役の藤原竜也さんについては?
三池:彼はそもそもそういう感じの人(笑)。TVや映画などでいい人を演じているけど、清丸を演じるために生まれてきたような人なんです(笑)。それは冗談ですが、彼の中にも人との違いを強烈にアピールすると社会から排除されるという感覚を持っている。役者はいろんな役を演じる訳だから、毎日自分に正直に問いかけているので、彼なりにきちんと清丸像を創り上げていました。それは原作とは少し違うのですが、犯罪のシーンがないので清丸の異常な残忍性は藤原君の存在感だけで示す必要があったのです。普段とは違う現場を楽しんでいました。

――― 藤原さんとは初共演でしたが?
大沢:凄く役に集中していて、それでいて嫌味がなく、いつも綺麗な空気が流れているようでした。でも芝居になるとスッと清丸役に入れる。同じ作品を作る同志として信頼できるし、一緒に仕事ができてとても楽しかったです。

wara-s5.jpg――― 去年『終の信託』では検事役を、今回SP役ということで、法治国家日本の正義を象徴するような存在感のある演技でしたが、特に意識したことはありますか?今回は射撃シーンが多く、上腕部を鍛えられたとか?
大沢:射撃シーンがあるから上腕部を鍛えるということはなかったです(笑)。でもSPの所作とか、銃を構えたり撃ったりするのが浮き足立って変になってはいけないと考えていました。それは松嶋さんも同じですが、拳銃を抜いてから構えて戻すまでというのを、家でも練習していました。何回繰り返しても難しいんですよ。ハードボイルだからといって特に意識することはなかったですね。後は監督に任せていました。現場に入っただけで異常な緊迫感があり、それだけで自然と役に入っていけましたね。
 

wara-s3.jpg――― 三池監督、大沢さん、お互いの印象は?
大沢:僕たち俳優の中で三池監督はとても有名で、殆どの人が一緒に仕事をしたいと思い、さらに再度仕事したいと思えるような方です。僕はそういう経験を味わえずに俳優人生を送ってきて、今回この作品が初めてなので、どういう人かよく分からず、写真で見る限り目つきが怖いなと。でもお会いして、監督としてと言うより、人として魅力的な方だなと思いました。現場はこんなにも楽しいものかと、映画を作っていることをこんなにも楽しませてくれるのかと感心しました。撮影は大変だったのですが、誰も嫌な顔をせず、愚痴もこぼさず、全員が同じ方向を向いているのが素晴らしかった。そういう空気を作っている監督って、ホント凄い人なんだなと思いました。言葉でも説明できるし、自ら演じて表現されるし、とても助かりました。迷った時には、表情の雰囲気も作って示して下さり、それを参考にして演じることができました。毎日新しい発見があり、ドキドキしました。

wara-s8.jpg三池:大沢さんは、このように言ってくれる優しい人です(笑)。自分の内面に厳しい人ですが、周りに余計なプレッシャーを与えてしまうのでそれを全く見せない。ずっと自分を押し殺して、ある一瞬で爆発させることがあっても、一歩引いて、役者としての自分を冷静に見ている目がある。普通はのめり込むと客観的に見られなくなって自己完結してしまうが、いろんな現場でいろんな監督と経験を積んだ人しか持てない視点を持っている人だなと思った。僕自身びっくりすることが何度かありました。

――― 最後のご挨拶を。
大沢:これからキャンペーンで全国を回りますが、すでに作品は皆さんのものになっています。皆さんのお力をお借りして、ひとりでも多くの方に見て頂きたいと思っています。どうかよろしくお願いいたします。
三池:同じです(笑)。スタッフ・キャストがひとつになって作り上げました。普段やれないことや諦めていたことを何とか作り上げた作品ですので、これが興行的に成功すれば、これからの日本映画を変えていける力になると思います。どうかよろしくお願いいたします。



wara-s9.jpg いつもだったら、三池節炸裂トークに爆笑して終了するところだが、今回は少し違う雰囲気だった。今回の舞台挨拶ではプレス記者からの質問も可能で、大沢たかおさんにひとつ質問をしてみたら、目を見て丁寧に答えてくれた。その目力(めぢから)に耐え切れず、途中何度か下を向いてはメモするフリをしてしまった。質問した本人は勿論だが、その様子があまりにも美しくて、その場にいた女性陣の心を捉えたことは言うまでもない。『ストロベリーナイト』で竹内結子と初めて出会うシーンを彷彿とさせる息をのむほどの魅力に、皆が酔いしれた。

(河田 真喜子)



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『カラスの親指』阿部寛合同インタビュー

 

(2012年 日本 2時間40分)
原作者:道尾秀介
監督:伊藤匡史
出演:阿部寛、村上ショージ、石原さとみ、能年玲奈、小柳友

2012年11月23日(金・祝)~大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズなんば、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、TOHOシネマズ西宮OS、ほか全国ロードショー

公式サイト⇒ http://crow-movie.com
(C)道尾秀介・講談社/2012「カラスの親指」フィルムパートーナーズ


 

 

~今度はサギ師に挑戦! 阿部寛の智略家ぶりに注目~

 

 今年だけでも主演作『麒麟の翼』や『テルマエロマエ』と大ヒットを連発している阿部寛。映画にTVドラマと超多忙の人気ぶりだ。男女の情愛には疎いが、冷静沈着で知的なクールさとコミカルさを併せ持つキャラクターで魅了する中、今回はサギ師に挑戦。しかも相棒は“いじられキャラ”の村上ショージという凸凹コンビ。そこに、不思議キャラ全開の石原さとみと期待の新人能年玲奈と小柳友が絡む。
 

 不幸な過去を持つ者同士が引寄せられる様に出会い、そして、真っ当な人生を歩むために最後の勝負に出るという。素人相手のサギからヤクザ相手の超ヤバいサギまで、そのダマシのテクニックの巧妙さと、各々が演じるキャラの変化が面白い。さらに、最後に映画全体に仕掛けられた大きなワナに気付くとき、きっと大きな愛に包まれていた幸福感で胸を熱くすることだろう。
 

【STORY】
karasu-1.jpg ベテランサギ師タケ(阿部寛)の元に、しがないおっさんテツ(村上ショージ)が弟子入りする。いろんな所でサギを働いては生計を立てるふたり。ある日、可愛い女の子がスリに失敗し捕まりそうになるところを助ける。それ以来、女の子とその姉と姉の恋人の3人がタケを頼ってやってくる。こうして始まった5人での共同生活は、忘れていた家族団らんのひと時を思い出させる。だが、タケが過去にしでかしたヤバい連中との因縁が、次第に彼らの平穏な生活を脅かしていく。そこで、5人のサギ(カラス)師は、過去を断ち切り未来へ進むために、一世一代の大勝負を仕掛ける!

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――― 本作の脚本を読んだ最初の印象は?
テツさんの方をやりたいと思いました(笑)。すごく魅力的な人物像で面白そうだなと思いました。

karasu-s1.jpg――― 原作については?
脚本を先に読んだのですが、映像化不可能と言われていたものをやれる喜びはありました。それに、原作者の道尾秀介さんがこの映画をとても気に入って下さって、現場にも2~3回お見えになりました。自分が書いたものを客観的に見られたのが良かったと言って下さったのが嬉しかったですね。原作と脚本と、ここまで映像化してくれた監督に感謝しています。

――― サギ師について、何か役作りは?
監督が詐欺の手口本を何冊か持っておられて、それを読んだのですが専門的すぎて、今回はそこまでは必要ないかなと感じてあまり参考にはしませんでした。普通の人間とサギ師と二重に演じることは面白かったです。しかも違う手口で数回詐欺を働いたのですが、其々に気持ちを変えて演じることが楽しかったです。

――― 村上ショージとの共演は?
それなりにプレッシャーを感じておられたようです。「これにかける!」なんて仰って(笑)。関西弁を封印した役柄でしたので、いい意味での緊張感があったように思います。今までの村上さんの生き方がテツという人物に表れていたので、安心して共演できました。

――― 村上ショージとの共演で、他の人と違うなと思ったことは?
ショージさんが持っているエネルギーが違うなと。そこにいるだけでキャラクターが成立していました。意外にも少し引けを感じるような哀感のある人物像で、しかも、人の心に伝えることについてはプロなので、空気を埋める役割を担っておられたように感じます。

――― 共演者に対して気を遣う方ですか?
よくマイペースと言われます。本人は気を遣っているつもりなんですが、なぜかそう言われます(笑)。舞台だと毎日同じ時間帯で行動していますので、べったり一緒にいることが多いです。それが映像だと、個別の撮影が多くバラバラの時間帯になるので、時間を合わせるのが難しい。でも、基本的には共演者やスタッフの方に気を遣っている方だと思います。

――― 家族ドラマとしても楽しめたが、タケの立場は?
まわりが濃いキャラクターの人ばかりなので、共同生活に入ってからは受けの立場で演じました。テツさんも同じで、周りの人の気持ちを吸収する役柄にしたいと思いました。

――― 「阿部さんからいい意見をもらった」と監督がコメントしていたが…?
大抵の監督は役柄の気持ちなどを聴くと嫌がられますので、「こんな風にするのと別なやり方とはどっちがいいですか?」という聴き方をしていたので、おそらくそのことを言われたのではないかと思います。
 

karasu-s3.jpg――― 現場でのエピソードは?
後半はスタジオで一緒にいましたが、各々好きなことをして過ごし気を遣わずに済みました。ショージさんは「やばい、やばい!」と言いながら助監督相手にセリフの練習をしていたし、若い人達とは会話についていけなかったし(笑)、とてもナチュラルな現場でした。

――― まひろ役の能年玲奈について?
おっとりしてましたね…最初はわざとかな?と思うくらい。可愛いだけでなく、役に入る段階からその意味を理解していたし、頑張りやさんだなと思いました。女優として将来成功していくのではないかと思います。

――― ラストの清々しいシーンへの思い入れは?
ほぼ受け身でした。ここが見所だと思うから、それ以前のシーンとは全く別物として演じていました。各々傷付いた過去を持つ者が集まっている物語ですので、根底には優しさが流れていて、それで清々しく感じて頂けたのでしょう。

――― 他の見所は?
全体的に人物が浮き出てくるような奥行きのある映像で、自分のやった演技以上のものがありました。共同生活しているシーンとかに監督の仕組んだワナがいくつもあるので、その辺りのことを踏まえて、最後まで楽しんで頂ければいいなと思います。


【あとがき】
 10年ほど前、阿部寛主演『熱海殺人事件~モンテカルロイリュージョン~』という舞台をかぶりつきで観たことがある。今は亡きつかこうへい演出、バイセクシャルな部長刑事役を阿部寛が熱演し、それまでの単なる二枚目役から完全に脱却したと言われる記念すべき演劇の再演だった。阿部寛のツバや汗が飛んで来るような席だったが、一心不乱に演じた彼の残り香がとてもいい匂いだったことを覚えている。終演後、場内一斉にスタンディングオベーションとなり、熱狂的歓声と拍手に包まれて、彼が感極まって泣き出してしまった。既に映画やTVなどで人気を博していたが、観客の絶賛の波に洗われた阿部寛の素顔を見たような気がして、忘れられない舞台となった。(河田 真喜子)


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 (左から、樹木希林、役所広司、原田眞人監督)
 

wagahaha-4.jpgゲスト:役所広司、樹木希林、原田眞人監督
(2012年3月17日(土) セントレジスホテル大阪にて)

 (2012年 日本 1時間58分)
監督・脚本:原田眞人
原作:井上靖「わが母の記~花の下・月の光・雪の面~」 (講談社文芸文庫所蔵)
出演:役所広司、樹木希林、宮﨑あおい、三國連太郎、南 果歩、キムラ緑子
2012年4月28日(土)~全国ロードショー
・作品紹介⇒こちら
・公式サイト⇒http://www.wagahaha.jp/


 文豪井上靖の母親への複雑な思いを綴った『わが母の記』が映画化された。昨年のモントリオール世界映画祭では審査員特別グランプリを受賞。長年「母親に捨てられた」という思いを抱いて生きてきた作家が、認知症で記憶を失いつつある母親の面倒をみるうちに母親の真意を知ることになる。
  年老いた親と共の暮らすことが少なった現代、特に認知症になった親の看護は苦難が多い。さらに、昨年の未曽有の大震災や大洪水などで多くの方が家族を失い、家族の絆の大切さが叫ばれるようになった今だからこそ、本作のテーマでもある家族の深い愛と絆の尊さが心に沁みる。
  4月28日の公開を前に主演の役所広司と樹木希林、原田眞人監督の合同記者会見が行われた。 会見は終始樹木希林モードで、爆笑会見となった。 


wagahaha-s3.jpgQ:(樹木希林さんへ)今回の役は今までのようなコミカルなおばあさん役とは違うようだが?
樹木:特に今までとは違う役だとは思わず、今回はこんな役なんだなと思って演じただけです。ただ、土台が原田監督で、全体の雰囲気が役所広司さんなら、私がどのようにやってもそこにうまく馴染むんじゃないかなと思いました。


 Q:(役所広司さんへ)そんな樹木希林さんと共演して緊張したことは?
樹木:ありません!(笑)
役所:樹木希林さんとのシーンが多かったので、ひとつの芝居を一緒に作りあげていくのがとても豊かな時間のように感じました。  

wagahaha-s5.jpgQ:(原田眞人監督へ)昭和の風景が色濃く出た素晴らしい撮影だったが、昭和の雰囲気を出すために特にこだわった点は?
原田:光と影かな。ロケハンもいつどこから光がさすかとか調べてました。ただ撮影期間1か月では天候に左右されることは必然で、予定を立てるのも賭けのようでした。それがプラスになったこともあります。例えば軽井沢の別荘のシーンでは、夏のシーンなのに雪が解けないのでどうしようかと…2日間というタイトなスケジュールの中で季節を渡って撮るというのが所詮不可能なこと。逆に神の恵みと思って3か月後のエピソードにして撮ったこともあります。そういう意味では恵まれてましたかね。
樹木:恵まれてるんじゃなくて、監督はそんな悪条件でもねじ伏せて、自分の中に取り込んでいく凄さを持っている。いいい意味で職人の潔さを感じました。傍にいて気持ち良かったです。脚本も全部自分で書けるので、それがいい結果につながったと思います。
原田:ありがとうございます!


Q:(役所さんと樹木さんへ)撮影中のエピソードや印象的なことは?
役所:印象的なこと……(考えていると)
樹木:(代わりに)特にないです!実際の井上邸で撮影ができましたから、役所さんが演じるナイーブな井上靖とか、書斎に座っている感じだとか、その背後に見える庭だとか、役所さんの存在もとても自然に感じられました。豊かな時間が過ごせました。特にエピソードというのはなかったです。でも、他に若い女優がいっぱいいましたから、そちらとはエピソードがあったかも?(笑)
役所:僕は若い女優さんらといる時間はあまりなかったです。殆ど希林さんといましたからね。やはり、本物の井上邸や軽井沢の別荘で撮影できたのは、作品にとっても私にとっても大きな力となったことは確かです。

wagahaha-s7.jpg Q:震災の影響はありましたか?
原田:撮影は3月10日に終わったので、特に影響はありませんでした。ただ、使っていたテープが仙台工場でしか作られてないものでしたから、撮影が延びていたら影響を受けていたことでしょう。今こそ戦後日本の3世帯の物語で家族の絆を感じとってもらえるのでは、と復興のエネルギーを映画に込めて編集作業をしました。
役所:ご家族を亡くされたり、一人ぼっちになってしまった方々にこの映画を見てもらうことで、元気を取り戻して頂けたらいいなと思います。
樹木:モントリオール世界映画祭で審査員特別グランプリという賞を頂いていた時には、日本は原発などで大変なことになっていました。そんな日本からやってきた映画ということで、大震前の日本に思いを馳せた上での賞だったのではないかと思っております。


 Q:(樹木希林さんへ)家族の愛と絆がテーマとなっているが、自ら家族との絆を絶つ人が多い中、どのように生きていけばいいと思うか?
樹木:そんな難しいことはわかりません。偉そうなことを言う前に、自分の頭の上のハエを払えよ!と言われそうです。ただ、今まで当たり前に思っていた死ぬ時のことが、いつどんな死に方をするのか分からなくなってきています。いつの時代でも、今ある幸せを当たり前と思ってはいないか?と。
余談ですが、今回役所さんを拝見していて、随分謙虚な方だと感じました。謙虚に考えれば、ものの考え方、家族との関係なども、また違うふうに思えてくるのではないかと、そんな気がします。


 wagahaha-s9.jpgQ:原田監督の演出について?
役所:原田監督作品には5作品出させて頂きました。ドキュメンタリータッチを基本に、台本の余白の部分では俳優たちに自由に演技をさせていい部分を切り取っていくという、登場人物の描写センスがいい。時代と共にテーマも変化していきますが、今回は小津安二郎からベルイマン、原田とつながっていくのが楽しみでした。緩急をつけた演出も光ってました。特に、今回は監督の故郷である静岡の沼津が舞台となってますので、今までの作品とは違うしっとりとした日本映画を完成させたように思います。
樹木:私の見方は少し違いますが、男の監督が陥りやすいところは、女優を選択する時に見誤るということです。(笑)今回はそう大きく見誤ってはいませんが、時々「えっ?そういうのが好きなの?」と思うことがあります…
原田:黒澤明監督も女優を見る目がなかったと言われています!(爆笑)。小津監督の失敗作と言われているものも、全部女優さんを見誤っているとか!?
樹木:そういう轍を踏まないようにというのが私の希望です。


 Q:本作は母への憎しみが描けて初めて深みが出ているように思われるが・・・?

原田:『しろばんば』が面白いと思ったのは、井上靖は5~6歳の自分にとっておぬいばあちゃんは愛人であって、母親を敵対視していたというところです、この三角関係が凄いな!と。『わが母の記』では『しろばんば』のそんなところを意図して脚本を書いています。本作ではおぬいばあちゃんは登場しませんが、50回忌の法要では井上家の許可を頂いて本物の写真を使わせてもらいました。最後には、主人公とおぬいばあちゃんと母親の想いを私なりに通したつもりです。
役所:母親に対してスネてるんだなあと。それをバネに作家として大成していったように思います。母親の方もそんな子供の気持ちは百も承知で見守っている。誰しも母親の想いを聴かずに別れてしまうことが多い中、この主人公は、記憶が薄れていく母親から息子への真意を聴くことができて本当に良かったなと思いました。50歳過ぎても母親の肌が懐かしく感じられたのではないかと。
樹木:おぬいばあちゃんに可愛がられたので、「生みの親より育ての親」という気持ちもあったのでしょうねえ。
原田:私の構想では、いつか『しろばんば』を撮る時には、おぬいばあちゃんを樹木希林さんにやってもらいたいと思っています!
樹木:もうすっかり認知症になっていて、セリフも覚えられないと思います!(笑)
(河田 真喜子)

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