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『わが母の記』

 
       
作品データ
制作年・国 2012年 日本
上映時間 1時間58分
原作 井上靖「わが母の記~花の下・月の光・雪の面~」 (講談社文芸文庫所蔵)
監督 原田眞人
出演 役所広司、樹木希林、宮﨑あおい、三國連太郎、南 果歩、キムラ緑子
公開日、上映劇場 2012年4月28日(土)~全国ロードショー
       

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『わが母の記』合同記者会見レポートはコチラ

 

 

 

 

(C) 2012「わが母の記」製作委員会

~昭和の家族の愛と慈しみ~

wagahaha-1.jpg  小津安二郎監督が愛情を込めて描いた日本の家族は、その時すでに崩壊の予感をはらんでいた。それが現実になった今、1959年から69年までのある家族(井上靖)を描いた「わが母の記」は、懐かしい昭和の風景から現代を照射する。さらに、認知症の母に手を焼きながらも共に暮らす作家とその家族の苦悩の日々は、日本の家族の原風景を思い起こさせ、慈愛に満ちた“介護の映画”ともいえる。

  wagahaha-2.jpg作家は幼い頃、祖父の愛人だった“土蔵のばあちゃん”に預けられ、「母に捨てられた」という記憶しかなく、母を引き取ることにわだかまりをもっていた。だが、母はずっと息子に隠してきた秘密を記憶が薄れる中でも忘れることなく覚えていた……。「作家として母親を見る目は優しいが、息子としては冷たい」と娘に指摘された作家を役所広司が、周りを翻弄させながらも息子を第一に思う母親を樹木希林が、絶妙な間合いの演技で親子の深い愛情を浮き彫りにして見事だ。

 wagahaha-3.jpg 原田監督は、銀行マンの「金融腐食列島・呪縛」(99年)、警察の「突入せよ!あさま山荘事件」(02年)、新聞記者の「クライマーズ・ハイ」など男の集団劇を撮らせたらピカイチの人。一見畑違いの家族映画も、監督にはある種の集団劇だったのかも知れない。(安永 五郎)

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(C) 2012「わが母の記」製作委員会