「菅田将暉」と一致するもの

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~森川葵と菅田将暉が表現する青春のさすらいと映画愛~

 
『劇場版零~ゼロ~』や宮藤官九郎脚本ドラマ『ごめんね青春!』で見事な存在感をみせた新星森川葵と、『そこのみにて光輝く』、『共喰い』といったシリアスドラマから、ファンタスティックな女装を披露した『海月姫』まで作品ごとに様々な顔を見せて我々を魅了する菅田将暉。この2人だからこそできる独特の空気感を楽しみたいのが、青春ロードムービー『チョコリエッタ』だ。大島真寿美の青春小説『チョコリエッタ』を、風間志織監督が約10年の構想を経て映画化した。作品中には巨匠フェデリコ・フェリーニ監督の『道』が様々な角度から取り上げられ、名画ファンなら思わずニンマリしてしまうようなシーンも盛り込まれている。
 
東日本大震災を経験することで、空想と近未来のリアルが入り混じる物語へ昇華させた風間監督に、主役二人のことや、10年もかけたという制作の経緯、全編に渡ってさりげなく滲む放射能の描写や関西と関東反応の違い、風間監督ご自身の映画原体験についてお話を伺った。
 

■知世子役の森川葵と政宗役の菅田将暉について

―――今、最も旬な二人のキャスティングですが、森川さんが知世子役に選ばれた経緯を教えてください。
原作では知世子がムシャクシャして髪を切って坊主頭になるところから始まるので、坊主頭になってくれる人を探す必要がありました。事務所に「坊主頭にしてくれる女の子はいますか?」と声をかけてオーディションをしたのですが、なかなか人数が集まらず10人ぐらいの中から選考していきました。お会いした中で、森川さんは「この子が知世子だ」と思うような不思議な雰囲気を持っていましたね。他の子は知世子役をするために髪を切ろうとします。「髪の毛切るのは大丈夫です。頑張ります!」という人がほとんどである中、森川さんは「一回坊主にしてみたかったんですよね」という感じで、全く気負いがなかったです。
 

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―――なるほど、オーディションでもかなり独特の雰囲気を放っていたとのことでしたが、撮影中はいかがでしたか?
森川さん演じる知世子が面白いので、そこから映画が出来てきました。最初リハーサルをしたときに「森川さんはできるな」と思っていましたが、そんなにすぐに役作りができるとは思っていなかったのです。森川さんだけ先にリハーサルをしていると、ものの数十分で彼女の中からすっと知世子が出てきたのです。「それだ!」と私が言ってから、すぐに知世子が出来上がっていきました。こんなことがあるのかと思うぐらいの速さですね。森川さんは猫を飼っているのですが、本作では犬の鳴きまねをしなくてはならなくて、最初はうまくできなかったんです。初日は「犬ってどうやって鳴くんですか」と聞いてきましたが、二日目は自分で研究してきたようで、「鳴けますよ」と。
 
 
―――菅田さんのキャスティングはどのような形で実現したのですか?
男の子も同時にオーディションをしたのですが、なかなかいい子が見あたらなかったのですが、キャスティングに関する情報が事務所にも流れるようで、菅田くんの事務所の方から「この期間だったらスケジュールが空いてるけれど」と打診してくれました。
 
 
―――正宗演じる菅田君は知世子を輝かせる役どころですが、見事に受け身の役に徹していました。何か監督から演出されたのですか?
自由にやっていましたね。菅田君はしっかりしていて、自分が違うと思えば「僕は違うと思う」とはっきり言ってくれました。私はそういう役者の方が好きなので、やりとりをしているときは面白かったですね。菅田君が着用していたアロハシャツは、おじいさんの服という設定でビンテージものばかりを集め、その日の気分で菅田君に選んでもらって決めていました。役作りの一環ですね。正宗は結構文語的な言葉を話しますが、それもキャラクター作りに役立ちましたし、菅田君だから違和感なく自然に演じられる。それは非常に大きいと思います。
 
 
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■フェデリコ・フェリーニの名作『道』と『チョコリエッタ』の関係について

―――二人の空想めいた世界が見事にフェリーニの『道』とリンクしていました。
自分の子どもの頃を思い出してみると、辛いときには空想していました。空想の世界が一番居心地が良かった時代が自分にあったので、その感じを知世子と正宗の二人に対しても非常にスムーズに当てはめることができたのでしょう。20歳前の年代の人たちにとって、フェリーニや小人の世界に入っていくことは、ごく自然だと思います。
 
―――風間監督は、若い頃からフェリーニがお好きだったのですか?
フェリーニは好きでしたが、『道』という映画はよく分からなかったというのが正直なところです。ただ、『道』は『チョコリエッタ』には絶対的に必要なので、たくさん使用しています。「『道』にオマージュを捧げる」とよく言われますが、原作に登場するから使用しているのが本当のところで、個人的にはおこがましいと思っています。原作でも「私は、前は死にたいと思っていたわ」という『道』での台詞が出てきますし、(『道』でジェルソミーナを演じた)ジュリエッタ・マシーナから愛犬の名前を取っているので、この物語を語るのに『道』は絶対にはずせません。ただ、本物の映像も音楽も一切使用を許可してもらえなかったので、テレビで『道』を鑑賞しているシーンは合成ではなく、一から作り込んでいきました。きちんと作らないと、それこそフェリーニに申し訳ないですから。名作だからこそ遊んでいいのではないかと思って、まじめに遊びました。
 
―――森川さんと菅田さんは、『道』を観たことがあったのですか?
二人とも最初は『道』のことを全然知りませんでした。『道』製作60周年でブルーレイのニュープリントをイマジカさんが焼いたこともあり、主要な役者さんを集めて試写に行かせてもらいました。今回高校生役の子たちは全員観ています。森川さんは「私、全然分からなかったです。でも知世子って分からなくていいんじゃないですか?」といった感想でした。確かに、『道』を好きなのは知世子の両親ですから、知世子自身が理解する必要はありませんよね。 菅田くんは「すごく良かった。俺、昔女の子にザンパノみたいなことをしたことがある」と言っていました。
 

■『チョコリエッタ』映画化のきっかけと、大きな影響を与えた東日本大震災/原発事故について

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―――10年近くの構想を経て作られたそうですが、『チョコリエッタ』を映画化しようとしたきっかけや、それだけ時間がかかった理由についてお聞かせください。
原作に惚れ込んだ知り合いのプロデューサーから、この作品を映画化しようという話が出たのは2007年~2008年頃です。原作者の大島真寿美さんと私は偶然知り合いで、大島さんが『それでも彼女は歩き続ける』という映画監督が主人公の作品の取材で私に声をかけてくださり、取材がひと段落したときに「『チョコリエッタ』を映画化したいという話があるのだけど、監督が決まっていないのよね」「それって私じゃないの?」「この作品は風間さんよね」ということで映画化に向けてのプロジェクトが始まったのです。そこからすぐに脚本を書き始め、資金集めを始めたのですが、なかなか思うように集まらず、企画をしばらく寝かせておくことになりました。
 
―――企画を寝かせていた間に東日本大震災が起きた訳ですが、作品を見ているとその影響が色濃く感じられます。
震災が起こったときに最初は自分の子どもを守ることを考えはじめていました。ただ時間が経つにつれて、日本が変な方向に来ている気がして、「おかしいな、これは。全てを隠そうとしている」と思うようになりました。東京には確実に放射能が降っているのに、そんなことを微塵も感じさせないようなふりをしている。福島の人を政府の人たちが誰も守ろうとしないことがすごく気持ち悪かったのです。でも、これは昔からあることがはっきり見えてきただけで、ずっとこのような世界であることが震災後はっきり分かっただけなのだと悟りました。そこで映画を撮る人間として何を撮るのかと考えたときに、『チョコリエッタ』のことをふと思い出したのです。『チョコリエッタ』は若い少年少女が自分の中で感じていたぐちゃぐちゃした悩みや憤りを、映画を撮ることで解消していくというお話です。これからの子どもの未来は私たちが子どもの頃より見たくない、辛いものになる可能性がある中で、そういう辛いものや若者の憤りを3.11以降の時代に置き換えてもすんなりくるのではないか。それが自分の中でカチッと合わさった感じで、脚本を書き直し、絶対に撮ると決めて動いていきました。
 

■『チョコリエッタ』に対する関東と関西の反応の違いについて

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―――教室の後ろに置かれた生徒の遺影がある風景や、寂れた商店街など、福島をどこか感じさせるような表現がいたるところに見られますが、本作の時代設定は?
2010年夏の原爆事故が起こる前から物語は始まります。それから11年後、千代子が高校生になった2021年のお話で、少し近未来ですね。このままではどこで地震が起こっても原発が爆発する可能性があるわけです。前から指摘されていたし、さらに実際に事故が起こっても何も変えようとしないですよね。福島とは限定しないけれど、放射能のイメージをちりばめていますし、近未来の設定にしたのも「どこでもありうる」という意味が込められています。
 
―――政治的な方向で表現するのではなく、映像に凝るところから入っていますね。
政治的なことを匂わせはしようと思って、周りに配置していますが、それに関しては一言も言わずに感じさせるということをやりたかったのです。今の世の中って、そんな感じですよね。どれだけ不安はあっても、普段は何も言わないで暮らしている。そういう人多いから、匂わせる表現で分かってもらえるかと思ったのです。
 
―――東京のマスコミから、放射能の描写に関する質問は来ましたか?
全くこないです。大阪の記者の方は皆放射能に関する部分を聞いてくるので、とても健全だなと(笑)。東京国際映画祭のQ&Aでも、1日目に司会者との話でも、なぜ撮ろうとしたのかと聞かれ「3.11があったのでどうしても撮らなければならないという思いがありました」と答えると、「ああ、そうですか」でさらっと終わってしまいました。2日目にようやく客席から(放射能に関する)質問があったのですが、「こんな場所でこんなことを聞いていいか分からないのですが、この表現は放射能を表しているんですよね」と。質問してはいけないことだと皆が自己規制しているのかと思い、ビックリした覚えがあります。言わない方が逆にリアルだと思い、映画で雰囲気だけ映し出そうと思ったのですが、それすら言及しないぐらい東京はひどい状況だったのだと、大阪に来てようやく気づきました。分かりやすく表現したつもりなのに誰も質問しないので、「こんなに分かりにくい映画を撮ったのか」と実は悩んでいたのですが、大阪では普通に皆が質問してくれたのでホッとしました。
 

■風間監督が高校時代の映画にまつわる原体験について

―――風間監督ご自身は、知世子ぐらいの年頃の時にどんな映画を観ていたのですか?
フェデリコ・フェリーニ、鈴木清順、スタンリー・キューブリックに最初の衝撃を受けました。フェリーニは『サテリコン』というローマの貴族が酒池肉林するようなメチャクチャ狂った作品、鈴木清順さんは白黒の『殺しの烙印』、そしてキューブリックの『時計じかけのオレンジ』。映画ってなんだか分からないけれどすごい!という言葉では言い表せられない衝撃ですよね。
 
―――高校時代から映画を撮り始めたのですか?
クラスの文化祭の出し物用で、劇をするぐらいなら映画にしないかと提案したのが最初でした。ある女の子が白血病になったと同時に未来が見える能力を持ってしまうという設定で、今を楽しむしかないと学校をムチャクチャにして死ぬというストーリーでした(『お楽しみは悲劇から』)。ただ学校をムチャクチャにするくだりで、台本にたばこを吸ってお酒を飲むと書いていたら、先生にチェックを入れられてしまうし、家で編集作業を頑張ったために学校を休んだりしたため呼び出され、文化祭での上映は却下されてしまったのです。結局クローズドで上映を許可されたところ、最終的には文化祭での上映も許可されたことを今思い出しました。意識はしていなかったけれど、そういう自分の経験があったからこそ、『チョコリエッタ』を撮ったのだと思います。
 

■「だって映画は永遠だから」

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―――映画研究会のメンバーが作った短編アニメの中のセリフ「だって映画は永遠だから」。そして知世子が自宅で途中からフェリーニ作品を見ようとしたときに父親が言ったセリフ「初めてはもっと大事なものだ」。どちらも非常に印象的でした。
この2つのセリフは、原作にあったもので、一言も変えていません。原作の中に入っている言葉は、変える必要のないものはそのままやりたいし、そういう日本語で自然に演じたてもらいたいという意図で作っています。「だって映画は永遠だから」は小説『チョコリエッタ』で絶対に言わせなければいけないセリフです。そこが良かったと言ってもらえるのは、とてもうれしいですね。
 
―――風間監督ご自身も「映画は永遠だ」という気持ちで、撮っているのですか?
私はそうでもないですよ(笑)「永遠だったらいいな」ぐらいの気持ちですね。高校生の子が「映画は永遠だ」と信じていることがいいのだと思います。私自身はそこまで純粋でもないし、「フィルムもなくなるし、どうするんだ」という気持ちが強いです。フィルム時代は永遠に保存されるのかもしれませんが、これからデジタル化していくとデータを書き換え続けなければいけないので、永遠かどうかはこれから実証されていくでしょうね。
(江口由美)
 

<作品情報>
『チョコリエッタ』
(2014年 日本 2時間39分)
監督:風間志織
原作:大島真寿美『チョコリエッタ』角川文庫
出演:森川葵、菅田将暉、市川実和子、村上淳、須藤温子、渋川清彦、宮川一朗太、中村敦夫
2015年1月17日(土)~新宿武蔵野館、1月31日(土)~テアトル梅田、2月以降、元町映画館、京都シネマ他全国順次公開
©寿々福堂/アン・エンタテインメント
※第27回東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門出品作品
※第39回香港国際映画祭正式出品

『海月姫』 - 映画レビュー

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『海月姫』(くらげひめ)試写会プレゼント!

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■ 提供:アスミック・エース
■ 日時:2014年12月19日(金) 
    18:00開場/18:30開映
■ 会場:御堂会館
〒541-0056 大阪市中央区久太郎町4-1-11
    TEL(06)6251-5820(代表)
    FAX(06)6251-1868
    地下鉄御堂筋線本町駅8号出口南へ200m
    地下鉄中央線本町駅13号出口南へ50m  
■ 募集人数: 5組 10名様
■ 締切:2014年12月11日(木)
■ 公式サイト⇒ http://www.kuragehi.me/

2014年12月27日(土)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹 他全国ロードショー


『海月姫』(くらげひめ)

オタク女子集団に突如降りかかった、史上最大のピンチ!
彼女たちが仕掛けた大勝負とは!?

我がオタク人生をかけて、出陣であります!
笑いと涙と萌え!【オタクすぎるシンデレラ・エンタテインメント】

 

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【STORY】
月海は、イラストレーターを志すクラゲオタク女子。小さい頃、亡き母と一緒に見たクラゲのようにひらひらのドレスが似合うお姫様になれる・・・こともなく、今やすっかり腐った女の子に。男子禁制のアパート “天水館”で、「男を必要としない人生」をモットーとする “尼~ず”たちとオタク道を極めたそれなりに楽しい日々を送っていた。

ゆるい日常は、女装美男子と童貞エリートの兄弟の出現によって揺るがされる。さらに、彼女たちの住まいであり心のより所でもある「天水館」=「聖地」が奪われる危機がぼっ発!!彼女たちは聖地を守れるのか?尼~ずはバラバラになってしまうのか?そして、「男を必要としない人生」のゆくえは!?
 


出演:能年玲奈  菅田将暉/池脇千鶴 太田莉菜 馬場園梓(アジアン) 篠原ともえ/片瀬那奈 速水もこみち 平泉成/長谷川博己
監督:川村泰祐 脚本:大野敏哉/川村泰祐 
原作:東村アキコ「海月姫」(講談社『Kiss』連載)
ドレスデザイン/スタイリスト:飯嶋久美子 
音楽:前山田健一 
主題歌:SEKAI NO OWARI「マーメイドラプソディー」TOY'S FACTORY INC
製作:『海月姫』製作委員会 制作・配給:アスミック・エース 制作協力プロダクション:ギークサイト 
(C)2014『海月姫』製作委員会(C)東村アキコ/講談社

 2014年12月27日(土)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹 他全国ロードショー

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■ ツイン 提供

■ 募集人員:3名様

■ 締切:2014年6月8日(日)

★公式サイト⇒ http://ymkn-ushijima-movie.com/movie/

2014年5月16日(金)~TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんば、T・ジョイ京都、TOHOシネマズ二条、TOHOシネマズ西宮OSほか全国ロードショー! 

 

 


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クズどもに、終止符を打つ! 最強のヤミ金再始動!!

 
ギラギラした欲望に衝き動かされた、キャラ立ち過ぎの登場人物たちによる、駆け引きや裏切り、愛憎そして絆。
闇金 VS ヤンキー VS 暴走族 VS 女闇金 VS 極道 VS ホスト VS 風俗嬢 VS ストーカー VS 情報屋
問答無用!ウシジマをめぐる八つ(やつ)巴(どもえ)の生存競争、サバイバル・バトルが冒頭からラストまでノンストップ!! スピーディで重量感のあるアクションとバイオレンス、特濃の人間ドラマと悲喜劇、すべてがハンパなくスケールアップ。究極の“ウシジマ・ワールド”がここに開幕する――。
ヘタを打ったら、そこでゲームセット、人生おわり―。
生き残るのはいったい誰だ?!
 
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■出演者:山田孝之 綾野剛 菅田将暉 中尾明慶 窪田正孝 やべきょうすけ
■監督 山口雅俊 
■原作 真鍋昌平『闇金ウシジマくん』(小学館「週刊ビッグコミックスピリッツ」連載中)
■企画・プロデュース 山口雅俊  ■脚本 福間正浩  
■製作 「闇金ウシジマくん」製作委員会
■配給 東宝映像事業部=S・D・P 
(C)2014真鍋昌平・小学館/映画「闇金ウシジマくん2」製作委員会
 

ushijima2-di-1.jpg『闇金ウシジマくん Part2』山口雅俊監督インタビュー

『闇金ウシジマくん Part2』(2014年 日本 2時間13分)
監督・企画・脚本:山口雅俊 脚本:福間正浩
原作:真鍋昌平(小学館「週刊ビッグコミックスピリッツ」連載中) 
出演:山田孝之、綾野剛、菅田将暉、門脇麦、高橋メアリージュン、中尾明慶、窪田正孝、柳楽優弥、やべきょうすけ他 
配給:東宝映像事業部=S・D・P/ PG12
5月16日(金)全国ロードショー
公式サイト⇒http://ymkn-ushijima-movie.com/movie/

(C)2014真鍋昌平・小学館/映画「闇金ウシジマくん2」製作委員会 

山田孝之、菅田将暉、山口監督登壇!映画『闇金ウシジマくん Part2』舞台挨拶(大阪) はコチラ 

 

~もがく“クズ”たちの可笑しさと愛おしさが滲む、痛快闇金サバイバル~

Ushijima2-4.jpgよくもここまで個性的な“クズ”が揃ったものだ。10日で5割の違法金利で貸し付ける闇金「カウカウファイナンス」と、そこに流れ着くギリギリの状況の債務者たちのドラマがさらに重層的に、そして疾走感あふれるエンターテイメント群像劇に仕上がった『闇金ウシジマくん Part2』。前作のPart1同様、カウカウファイナンスの社長、ウシジマを演じる山田孝之が冷徹さの中に一本筋の通った男の生き様を漂わせ「静」の演技で抜群の存在感をみせる。また、ウシジマの相棒で情報屋戌亥(いぬい)役の綾野剛が登場。ギラギラした物語の中で、独特の存在感をみせているのにも注目したい。

一方、物語の柱となる「ヤンキーくん編」のマサルを演じる菅田将暉と「ホストくん編」の麗を演じる窪田正孝の二人が、周りを巻き込みながら堕ちていくキャラクターを熱演。門脇麦、高橋メアリージュン、中尾明慶らが演じるキャラクターと濃密に絡み合いながら、ウシジマという絶対的な存在の前で次々に違う表情を見せていく彼らは、なんとも人間臭くて、「アホやな」と思いながらも惹きつけられる。

フジテレビプロデューサー時代に『ナニワ金融道』シリーズをはじめとした数々の大ヒットドラマを手掛け、『闇金ウシジマくん』シリーズでは企画、プロデュース、脚本、演出(ドラマ)、そして前作『闇金ウシジマくん』に引き続き、本作でもメガホンをとった山口雅俊監督に、『闇金ウシジマくん Part2』ならではの見どころや、シリーズ全体の中の位置づけ、そしてシリーズを通した魅力について、お話を伺った。


■現代社会を真正面から深く、見たくないところまで描ききる作品に取り組むことが、やりがいに。


━━━監督が企画からプロデュースまで一貫して手がけ続けている『闇金ウシジマくん』の魅力とは?
山口雅俊監督(以下監督): 『闇金ウシジマくん』に関して一言で言い表せば「困難」でした。最初、地上波テレビ局の深夜枠でオンエアしたのですが、ドラマのSeason1がクランクインする時にも、オンエアが100%できるかどうか分からない状況でした。社会に対するメッセージ性をきちんと込めながら、犯罪者が主人公のドラマを立ち上げることは、とても難しかったです。でも、難しいと頑張りたくなるものでしょう。

私はテレビ局勤務時代に、SMAP中居正広さんが主人公の『ナニワ金融道』を作ったのですが、そのときからお金をモチーフにした作品や、社会性のあるものは得意でした。『闇金ウシジマくん』のように現代社会を真正面から深く、見たくないところまでも描ききる作品に取り組むことに、やりがいがあったのでしょうね。

 

■『闇金ウシジマくん』は怪獣映画のようなもの。ウシジマが演じているのは絶対的な状況で、債務者の側にドラマがある。


━━━冷徹な取り立てをする金融会社の社長が主人公ですが、山田孝之さん演じるウシジマは、ただの冷徹だけではなく、人としての魅力があります。シリーズ当初からウシジマ役に山田さんを起用した理由は?
Ushijima2-1.jpg監督:先ほどの『ナニワ金融道』は今からふり返ればまだ古き良き時代の話で、中居さんが演じた灰原は物語の最初は一般人でしたが、泥々したお金に踊らされる人々だらけの世界に入っていきます。灰原は視聴者と同じ視線で見聞きするという、ドラマとしてはスタンダードな作りになっています。新参者(ビギナー)がやってきて、裏世界をのぞき見る感じです。

一方、ウシジマは絶対的に完成された生き方をしています。彼自身は観客と同じ目線ではなく、状況であり、壁であって、絶対にブレません。山田さんには、「ウシジマは本当に悪なので、状況をきちんと演じてください」と話しましたが、彼が演じてくれることによって、ウシジマの奥に、彼の人間としての一貫性が垣間見え、逆に共感してしまうような部分もあります。今回は綾野剛さん演じる戌亥が登場したことにより、ウシジマという人間の成り立ちの片鱗が見え、単なる悪ではなく人間らしく見える部分があるのではないでしょうか。『闇金ウシジマくん』は現代金融モノの最前線のような話で、言ってみれば怪獣映画のようなものです。ウシジマが演じているのは絶対的な状況で、債務者の側にむしろドラマがある訳です。

━━━ドラマや映画など、シリーズとしてどんどん広がりを見せていますが、一貫して監督が手がけてこられている中でどんな手応えを感じていますか?
監督:最初から作る姿勢は変わっていません。ドラマもSeason1、Season2と特に変わっていませんし、映画もPart1とPart2でことさら意識して変えた部分はありません。山田さんがPart2を観て、「Part1(映画)でなければできない表現と、Season1(ドラマ)のコミカルなところや、債務者の群像が絡まり合うような疾走感が、今回のPart2(映画)ではほどよい感じで表現されており、すごく良かった」と言ってくれました。Part1は大島優子さんと林遣都さんが物語を終始担ってくれましたが、今回はそれに比べれば登場人物も多かったですね。ドラマの見やすさと、映画ならではの表現がいい具合にミックスされたのではないでしょうか。

━━━今回はお金に踊らされる側としてホストのナンバーワンを目指して野心に燃える麗や、借金のためウシジマの元で働くことになるヤンキーのマサルなど、若い登場人物のもがく姿がストーリーの中心ですね。
監督:麗役の窪田正孝さんと麗に貢ぐため堕ちていく彩香役の門脇麦さんのシーンは割と静かで、暴走族愛沢役の中尾明慶さんとマサル役の菅田将暉さんのシーンはすごくスピーディーで疾走感があるので、その対比でストーリーを考えました。若い役者二人がそれぞれの立場で、役者としても役としてもウシジマに挑戦する構造になっています。今若手でグイグイ伸びてきている二人を起用しました。

━━━ちょっとワルだけど、繊細な部分を持ち合わせ揺れている若者を演じると、今は菅田さんの右にでる者はいないのではと思うぐらい適役ですが、現場でのエピソードは?
Ushijima2-3.jpg監督:『闇金ウシジマくん Part2』で登場する人たちは皆悪い奴らだけれど、必死でもがいているので割とかわいらしいんですよ。Part1で純役の林遣都さんは本当によく頑張り、山田さんも芝居の相談に乗ったり、ご飯に連れていったりしていたのですが、今回は「菅田さんが一番大変だ」と山田さんも言っていました。いきなりガムテープで縛られ、愛沢に放り出されるところから始まりましたから。でも、さすがに若手の期待ナンバーワンの役者だけあり、本当にマサル役を演じるのが菅田将暉さんでよかったと思いましたね。

 

■自分がカッコよく見えたいという部分を一切かなぐり捨てて演じてくれた。


━━━窪田さんも作品ごとに様々な表情をみせる俳優ですね。
監督:窪田さんは今回悪役なのですが、本当に最初から最後まで悪さ、ズルさ、野心に絡め取られている感じをちゃんと演じてくれました。ベテランの役者さんでも自分の役をよく見せようとする方がいますが、菅田さん演じる「ヤンキーくん編」と窪田さん演じる「ホストくん編」、それぞれの担い手が自分がカッコよく見えたいという部分を一切かなぐり捨てて演じてくれました。麗も窪田君が演じてくれて本当によかったと感謝しています。

━━━柳楽さん演じるオリジナルキャラクター蝦沼(彩香のストーカー)はどういう意図で作られたのでしょうか?
Ushijima2-6.jpg監督:ウシジマにお金を借りることによって、ウシジマの意図しないところで結果的に命を救う人を描きたかったのです。柳楽さんも思いこみが激しい役を演じてもらいましたが、ウシジマと一瞬接触して、一瞬にして排除される感じを出したかったし、柳楽さんが見事にやってのけてくれました。蝦沼役は自分をより良くみせたいとか、ファンを失望させたくないと思ったら絶対にできません。後から聞いた話ですが、窪田君が「蝦沼役でも良かった」と言っていたそうです。若い役者さんでもそういう人が増えてきて、頼もしいですね。

━━━監督はテレビドラマも多数てがけておられますが、映画との違いは?
ushijima2-di-2.jpg監督:連続ドラマを作っていた頃は、ドラマは基本的に無料で観るし、ながら見の人もいました。一方、映画の場合は先にお金を払ってから暗いところで観るものという認識がありました。でも、最近ドラマは携帯をいじりながら観ているし、映画もそのうちそうなるかも(笑)。多分ドラマの視聴者と映画の観客の行動もおそらくほとんど区別がつかなくなっているのではないかと思います。映画とドラマで、そんなに作り手としての意識を変えなくてもいいのではないでしょうか。

映画といえば、私はわりと引いて撮る映像が好きなので、映画を撮るときはできるだけ引いて撮りたいと思っています。ドラマでは寄りのショットも撮るのですが、たまに引いて撮るとお皿を洗いながら観ているお母さんも手を止めて、画面を観るのではないかと。台詞とカットバックを多用した映像で説明してしまうと、テレビを注視することなくお皿を洗ったままでエンディングテーマに入ってしまいますよね。

━━━映画では、できるだけ引いて撮りたいとのことですが、具体的に今回取り入れた印象的なシーンは?
監督:キムラ緑子さん演じる太客の牧子が麗に「私を抱いて。私はお金で自分の失ったものを取り戻したい」と言うシーンで、牧子のセリフの寄りのショットと麗の「えっ」と驚く表情の寄りのショットで撮ることもできるのですが、今回は役者の全体的なたたずまいで表現しました。ぜんぜん年の違う男女のシーンを、できるだけ引いてワンカットで撮りたい。そういうのが面白いと思うんですね。

 

■お金と食べ物はいいモチーフ。食べている姿、お金の扱い方でその人がどういう人なのか分かる。


━━━お金に関するドラマを続いて撮っておられますが、お金をモチーフにすることで見えてくるものは?
Ushijima2-5.jpg監督:お金と食べ物はすごくいいモチーフで、食べている姿を見ると、その人がよりよく理解できます。私のドラマ制作時代の代表作で竹内結子さん主演の『ランチの女王』では、竹内さんが食べるものは絶対に美味しそうに、皆が食べたくなるような撮り方になるよう心がけました。『闇金ウシジマくん Part2』も、観終わったらオムライスが食べたくなるのではないでしょうか。門脇さん演じる彩香のお金の扱いに対する変化も、彩香の心境の変化に重なります。お金をどう扱っているのかを見ると、その人がどういう人なのか分かるのではないかと思っています。

 

■よりよく生きたいと思い格闘している人間の姿は、美しく、愛おしい。


━━━『闇金ウシジマくん Part2』をどんな風に観ていただきたいですか?
監督:人間はよりよく生きたいと思って格闘していると、その姿が美しかったり愛おしかったりします。ウシジマという大きな状況に立ち向かったり、そこで対立したり、立ち向かう債務者たちと高橋メアリージュンさん演じる茜や光石研さん演じる熊倉みたいにそこに対峙する人たちが格闘して生きている訳ですが、悪いとか怖いだけではなく、そこになんとも言えない可笑しみや人間らしい姿があります。それを観ていただきたいですね。
(江口由美)

 

sokonomi-s550.jpg『そこのみにて光輝く』呉美保監督、主演池脇千鶴さんインタビュー
(2014年 日本 2時間)
監督:呉美保
原作:佐藤泰志『そこのみにて光輝く』河出書房新社刊
出演:綾野剛、池脇千鶴、菅田将暉、高橋和也、火野正平、伊佐山ひろ子、田村泰二郎他
2014年4月19日(土)~テアトル新宿、テアトル梅田、なんばパークスシネマ、シネ・リーブル神戸、京都シネマ他全国ロードショー
公式サイト⇒
http://hikarikagayaku.jp/
(C) 2014 佐藤泰志 / 「そこのみにて光輝く」製作委員会

 

~ “そこのみにて光輝く”男と女に射した一筋の光~

久しぶりに何度も繰り返し観たくなる映画に出会えた。89年に発表された佐藤泰志(『海炭市叙景』)の長編小説『そこのみにて光輝く』を、呉美保監督(『オカンの嫁入り』)が映画化。夏の函館を舞台に、綾野剛、池脇千鶴、菅田将暉ら俳優陣が、どこか昭和の香りがする、底辺を生きる人間が真の愛を求める姿を、狂おしくも愛おしく演じ抜いている。まさに深淵なラブストーリーだ。

主人公達夫(綾野剛)は、仕事で仲間を事故死に追いやったことがトラウマとなり、引きこもり状態になっている。粗暴だが人なつっこい青年、拓児(菅田将暉)との出会いや、拓児の姉千夏(池脇千鶴)との出会いが、停滞していた達夫の人生を静かに動かしていく。達夫を演じる綾野剛の焦燥しきった男の色気、拓児演じる菅田将暉の無垢さと危なっかしさなど、一筋縄ではいかない男たちが絡み合う一方、様々なものを背負った千夏自身の葛藤が非常に細やかに描かれている。池脇千鶴が、どこかで幸せを渇望しながら、そこでしか生きられない千夏を体当たりで演じ、まさに目が離せない。

呉美保監督と主演の池脇千鶴さんに、原作を現代に置き換えた脚本のポイントや、底辺を生きる女性として生々しく描かれる千夏の役作り、主人公のキャスティング、そしてタイトルを象徴するラストシーンについてお話を伺った。


sokonomi-550.jpg■一人の人間として千夏を肯定したい。(呉監督)

――――原作以上に千夏の人物像が豊かに描かれ、物語を引っ張っていく大きな存在感を示しているが、脚本作業ではどのように原作を膨らませていったのか?
呉美保監督(以下監督):24年前に発表された原作の千夏は、映画の千夏よりも饒舌で、ぐいぐいと積極的に達夫に語りかけていく印象を受けました。バブル絶頂期の、皆が前に向かって進んでいる時代の中、千夏はある種、格差社会の底辺に生きる人です。この物語を現代に置き換えて描くにあたっては、職にありつけなかったり、介護の問題を抱えていたりと、生きにくいと思っている人はたくさんいるであろう「今」の格差社会を描くべきだと思いつつも、24年前よりは世の中はクールダウンしている気がするので、そのテンションをちゃんと作りたいと考えました。

特に千夏は自分の体を使って商売をし、パートタイマーもし、家族の面倒も見ています。父親の介護、酒浸りの母親、何をするかわからない弟を一手に引き受けて生きているのです。だからといって、あからさまに同情されるようなひとりよがりなヒロインにしたくはありませんでした。今回はラブストーリーということもあり、観客の男性には千夏という女に惚れてもらいたい、同時に一人の人間として、千夏を肯定したいと考えました。

 

■映画は視覚で惹かれるインパクトがとても大事。千夏が最初に登場するときの “スリップ”をどうするかから取り組んだ。(池脇)

――――千夏を演じるにあたり、精神面や外見面でどんな準備をしたのか?
池脇千鶴さん(以下池脇):精神的な面では、脚本が優れていたので、何の疑問もなく、その通りにやれればいいと思いました。実はそれが一番難しいことでもあるのですが。人物描写にブレがなかったので、書いていないト書きのことですら浮かんできました。脚本のとおり忠実に自分を出せれば、難しく掘り下げる必要はなく演じられると思いました。

外見面では、映画は視覚で惹かれるインパクトがとても大事だと思います。最初に監督と二人で話し合いの場を設けていただき、監督とも「(千夏の視覚面は)すごく大事だよね」と意見が一致しました。千夏が最初に登場するインパクトは結構強烈なものを持っているので、ト書きに書かれている“スリップ”をどうするかから取り組んでいきました。今は“スリップ”だけとは限らないので、今に置き換えてみたり、現代の千夏年代の人たちはどんな格好をして夜の仕事をし、家の普段着としても着用しているのかも考えました。監督がおっしゃった千夏のテーマカラー、黒を大事に衣裳合わせをしましたし、生地一つとっても、すごく時間をかけて合わせていきました。

――――千夏の台詞はどれも非常に印象的だが、台詞に対するこだわりは?
池脇:台詞という点でいえば、今回は方言が最大のネックでした。監督からは「方言がダメだったらカットする」というお話もありました。方言は本当に難しく、役者が変な方言を使うと、(観客が)そちらに気を取られてしまいます。なるべく(現地の人が話す方言に)忠実に、自然と耳に入って邪魔にならないアクセントになるように、訓練しました。音楽のように丸覚えをして撮影に臨んだので、アドリブという即座のことはあまりできないぐらいでしたね。 千夏は大事なことだけでなく、大事でないことも結構ブツブツ言っているので、それがみなさんにどう届くか、それだけだと思います。

 

■綾野剛さん、池脇千鶴さんがお互いを包み込むイメージができた。二人の立ち姿も想像しながらのキャスティング。(呉監督)

――――達夫役の綾野剛さんは、どういう部分に惹かれてキャスティングしたのか?
監督:綾野さんに関しては5年程前にオーディションでお会いし、最後の2人に残っていただいたものの、最終的には別の方を選びました。でも他の人にはないお芝居をやってくださったり、また綾野さんでしかない独特の空気を感じたので、すごく強烈に覚えていたんです。その後ドラマや映画で活躍されているのを拝見して、またお会いできればと思っていました。
実は、今回達夫役を考えたとき、山で働いていた男なので、最初はもっとゴツゴツした感じの人を想像していました。でも、これは男と女のラブストーリーなので、「色気や陰があり、女が放っておけない男を演じられるのは綾野剛さんしかいないよね」とプロデューサーさんと話し合い、綾野さんのキャスティングを決めました。それと同時に達夫と千夏が二人並んだ時の背のバランスや、体格のバランスを想像したときに、池脇さんとなら綾野さんはぴったりだと思いました。綾野さんが池脇さんを包み込む姿はもちろん、また池脇さんがもっている母性で綾野さんを包み込むという、お互いを包み込むイメージができたんですよね。どちらか単体でキャスティングというよりは、二人の立ち姿も想像しながらのキャスティングでした。

――――千夏役の池脇千鶴さんについて、キャスティングの経緯は?
監督:池脇さんとも2年程前に広告のお仕事でご一緒したことがありました。もともと池脇さんのことが大好きでしたのでとてもうれしかったですし、広告はその時だけの放送になってしまうので、次はちゃんと残るものでご一緒したいとも思いました。池脇さんにも「映画をやりましょう」と声をかけさせていただいた記憶があります。
池脇:言われましたね。
監督:勇気を出して言いました。池脇さんって現場では非常に無口で「はい」しか言わないんですよ。それだけにこちらは言葉を選ばなければいけないので大変なのですが、そのときも「はい」とだけ言われました。実は「いやだ」と思われていたらどうしようと思っていましたが(笑)、池脇さんに受けていただいたことで、またひとつ私の夢が叶いました。

――――監督からの本作のオファーを受けたときの感想は?
池脇:私にとって新しい監督やスタッフ、キャストの方と出会うことも意味のあることですが、再び(現場に)呼ばれる、再び出会うということはどれほど大事で深い意味があるかをいつも思っているので、すごくうれしいことです。もちろん最初は台本をいただいて、すごくおもしろかったので出演しようと思ったのですが、それが呉監督だったので「また会えるんだ」と思い、すごくうれしかったです。

 

■久しぶりにこんなにすばらしい台本に出会えた。私の境遇とも全然違う過酷さを持っているのに、千夏の悩みや苦しみ、そこに生まれるちょっとした歓びもわかってしまう。(池脇)

――――作品で惹かれたポイントは?
池脇:あまり私は映画やドラマに出演していないのですが、台本を読む機会はよくあります。その中でも、久しぶりにこんなにすばらしい台本に出会えたと思いました。すごくイキイキとしていて、何も疑問が浮かばなかったです。みんなの軸がしっかり決まっていて、物語がきちんと進んでいき、いろいろ膨らませてくれ、ビジョンが浮かんでくるような、掻き立てられるものでした。ですから、余計に心揺さぶられる内容になっていて、「間違いなくおもしろいものになる。だから出よう。」と思いました。

――――千夏は自分の体で家族の生計を立て、寝たきりの父親の面倒も見る難しい役どころだが、どのような気持ちで演じたのか?
池脇:台本を読みながら、「こういう家族もいるよね」と思っていました。実際に(千夏のような家族が)いると思います。私の日常の傍にいるわけでもなければ、私の境遇とも全然違う過酷さを持っているのに、千夏の悩みや苦しみ、そこに生まれるちょっとした歓びもわかってしまうのです。「うれしいんだ、今」とか、「苦しい家族を支えていて、すごいな」とか。惹きこまれる小説は、ト書きの説明でどんどん入り込んでいくのですが、今回の千夏はその感覚に似ているのかもしれません。

 

■池脇さんは衣裳合わせに、「千夏」になって現れてくれた。(呉監督)

――――この作品を通して、池脇さんのどういう面を引き出したいと思ったのか?
監督:儚く放っておけない女というのはもちろん、30代の女が放つ大人の艶っぽさ、また「その町」でしか生きられない女の土着感、池脇さんはその全てを出してくれる人だと思いました。綾野さんとの肉感的な愛や、高橋和也さん演じる中島を放っておけない情、女の全てを出してほしいとお願いしました。また、30代女性を演じるにあたり、声をワントーン下げようと提案しました。
池脇: 「声を低く」とおっしゃっていましたね。すぐに高くなってしまうので、意識して低くしていました。
監督:どうしたら(池脇さんの)新しい部分が観られるのかと思い、これまでの映画など、とにかく池脇さんを探求しました。お会いする前に、スタイリストさんと「どんな服が似合うか」と打ち合わせしてから池脇さんとの顔合わせに臨みました。今回はラブシーンもあったので、衣裳合わせの前に二人きりで話をさせてもらう機会があり、その時に千夏のある程度のイメージを伝えました。「千夏は黒が似合うはず」とか、「髪は自分で染めていて、しかも海の潮で汚く抜けている」とか、具体的な話をしました。その数日後、池脇さんが衣裳合わせで登場したとき、黒い服を着て、髪を染めてきてくれ、「千夏がきた」と思わず泣きそうになりました。この物語は達夫目線で千夏を見ていくので、彼女がひとりよがりになってしまうと物語に感情移入できないし、ラブシーンにもついていけないという不安がありました。でも池脇さんのおかげで、そんな不安はいつの間にか消え去りました。

 

■決してハッピーエンドではないけれど、最後に“救い”を。(呉監督)

――――感動的で美しいラストシーンだが、最初からこのようなエンディングを決めていたのか?
監督:ラストシーンについては、色々なパターンを話し合いました。この作品は決してハッピーエンドではないけれど、ただ、だからこそ“救い”が必要だと考えていました。決して大きな“救い”ではないけれど、その瞬間、千夏は罪を犯さなくて済んだという「安堵」という意味での“救い”。千夏は、達夫のおかげで暗い夜を乗り越え、朝を迎えることができた。だから今日を、生きられる。まさにそれが『そこのみにて光輝く』というタイトルに結びつくのではないかと思っています。

 

■『そこのみにて光輝く』というタイトルを象徴するラストは、恥も何もない魂のシーン。(池脇)

――――池脇さんはどのような気持ちでラストシーンを演じたのか?
池脇:このラストは、「これが『そこのみにて光輝く』というタイトルを象徴しているな」と解釈しています。救いですよね。でも「そこでしか輝けない自分」というのも正直あり、私自身は恥も何もない魂のシーンだと思っています。たまに千夏は自分を卑下する癖があり、そうやって周りに対してバリアを張るのですが、あそこもまたひとつ「ね、バカでしょ」という千夏がいます。そこに抱きしめることもできない達夫がいて、二人が表れていたのかなと思います。
監督:タイトルの『そこのみにて光輝く』は千夏のことを言っているのではないかと思っています。「光輝く千夏」を見つめる達夫がいて、“そこ”というのは“底辺”という意味もあるのではないのでしょうか。
(江口由美)

Ushijima2-b550.jpg山田孝之(30歳)・菅田将暉(21歳)・山口監督登壇
TOHOシネマズ くずはモール オープン記念!
西日本初のTCXで、一足先に『闇金ウシジマくん Part2』を体感しチャイナ!
(3月26日(水) @TOHOシネマズくずはモール)

Ushijima2-2.jpg『闇金ウシジマくん Part2』
監督・企画・脚本:山口雅俊 脚本:福間正浩
原作:真鍋昌平(小学館「週刊ビックコミックスピリッツ」連載中) 
出演:山田孝之 綾野剛 菅田将暉 中尾明慶 窪田正孝 やべきょうすけ
主題歌:Superfly『Live』(ワーナーミュージック・ジャパン)  
イメージソング:Superfly『万華鏡と蝶』(ワーナーミュージック・ジャパン)
配給:東宝映像事業部=S・D・P/ PG12
5月16日(金)全国ロードショー
公式サイト⇒
http://ymkn-ushijima-movie.com/
(C)2014真鍋昌平・小学館/映画「闇金ウシジマくん2」製作委員会   

5月16日(金)より全国ロードショーの「闇金ウシジマくん Part2」。公開に先駆けて、全国で最速の先行上映及び舞台挨拶が、3月12日(水)にOPENしたばかりの、TOHOシネマズくずはモールで開催された。テレビシリーズ、ドラマ・映画とシリーズを通して、本作の顔である闇金「カウカウファイナンス」の社長“ウシジマ”こと丑嶋馨を演じている山田孝之をはじめ、何度も窮地に追い込まれる無職のヤンキー、マサル役で大阪出身の菅田将暉、そして企画・脚本も手がけた山口雅俊監督が登壇した。


最初の挨拶では山田孝之が「キャラクターがたった人が大勢出てきて、エンドロールで色んな人の顔がフラッシュバックするおもしろい作品になってます」とまずはこのPart2をPR。菅田将暉は「大阪出身の人間として、ここに来られたことが嬉しいです」と挨拶し、同じく関西出身である山口監督は「神戸出身者としてここに来られたことを誇りに思います」と挨拶した。

 

Ushijima2-b1.jpgキャスティングの経緯について山口監督は、「山田くんと共演したがる、ウシジマにいじめられたい!という人ばかりに集まってもらった。オーディションは高橋メアリージュン以外していません」。本シリーズに初めて参加した菅田将暉は、「いじめられたい願望のあるドMがいっぱいいる中、前作でいえば林遣都くんの位置づけである、一番いじめられるマサルの役をいただいて光栄。ウシジマという世界観に溺れて行くといった感じだった。」と現場の様子を語った。また、それぞれと共演した印象は?との質問に山田は、「(菅田が)現場ではマサルの感じのままで、自分もウシジマの感じでいたので、本来の菅田くんがどんな方なのかは分からないですね」とストイックな面を垣間見せた。

 

Ushijima2-b2.jpg今作では、<闇金 VS ヤンキー VS 暴走族 VS 女闇金 VS 極道 VS ホスト VS 風俗嬢 VS ストーカー VS 情報屋>と、ウシジマをめぐる八つ巴のこれまでのシリーズでも過去最多のどうしようもなくて愛らしい“クズ”が登場する。そのなかでもいちばんのクズキャラクターこと“ベスト・オブ・クズニースト”を、舞台挨拶をした劇場“くずは”にちなんで決めることに。山田は、ポスターをしげしげ見ながら「バカリズムさんですね。みんな、何とかしよう!ともがいたり抗ったりするのに、バカリズムさんだけは無気力、何もしようとしないから」と答えた。菅田も同じくバカリズムと答えるなか、監督は「中尾明慶と菅田将暉。この2人はクズ!」と答え、「せめて役名で言ってもらっていいですか!」とツッこむ菅田のことばが場内の爆笑を誘った。

 

Ushijima2-b3.jpg劇中の『こいつはアカン』と思うシーンについて、山田は、「門脇麦ちゃんのシーンは、いやぁな苦しい気持ちになってしまう。自分の周りは絶対こんな風にはなってほしくない、と思いますね。逆に、中尾明慶と菅田将暉のシーンは笑いながら見られる。この作品は群像劇として、さまざまな人間の要素がみんな入っているので楽しんでもらいたい。入り込んで観てもらって、グサッと突き刺さる何かを感じてほしいですね。」。
菅田は「アカン!」かった撮影エピソードをあげ、「僕は何回か死にかけるのですが、本当に死ぬまでのシチュエーションにはなってなかった。ただ一度だけ、あるシーンで監督から、『本当に息のできない状態で3呼吸だけ撮らせてほしい』と言われ、息がまったくできない環境での撮影は本当にきつかったですね。」と言うと、監督は「後から医者に(そのシーンを)観てもらって『殺しかけましたね』と言われてしまいました。」と苦笑した。

劇中でおなじみの“かわいいものしりとり”を、登壇者と来場者のみんなとが実際にやってみるという企画も飛び出した舞台挨拶。最後のしめくくりとして、山田は、「大勢の人間の色々な状況を純粋に楽しんでもらいたい。何が響くかはご覧になった皆さんそれぞれが感じることなので。公開よりこんなに早い段階で観ていただき、この作品の強いメッセージを感じて、楽しんでもらいたい。」
菅田は、「マンガからドラマ、映画を観てきた自分ですが、本当におもしろい作品なっているので、広めてもらえると嬉しいです。」
監督は、「今後もDVDの発売など続きます。この大阪で先行上映できて幸せです。ウシジマと格闘する人々がいっぱい出てきます。これを観て、明日学校行くのがいやだなぁ、とか仕事ツライなぁとか、現実の辛さから、明日、もう一回(つらいことでも)取り組んでみようと、そんなポジティブな気持ちになってもらえると嬉しいです。」と、それぞれに、これから映画を観てくれる人へのメッセージを込めた。

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 3月7日(金)~3月16日(日)梅田ブルク7、ABCホール、シネ・ヌーヴォをはじめとした会場で開催される第9回大阪アジアン映画祭のクロージング作品に、綾野剛主演、呉美保監督作品『そこのみにて光輝く』が決定した。原作は、映画にもなった「海炭市叙景」で知られる佐藤泰志の最高傑作。4月からの全国公開に先立ち、3月16日(日)、大阪・ABCホールでワールドプレミア上映(世界初上映)される。
 「そこのみにて光輝く」は、何度も芥川賞候補に挙げられながらも賞に恵まれず、今の日本を予期したような作品群を遺し、41歳で自ら命を絶った不遇の作家・佐藤泰志が1989年に発表した唯一の長編小説。短い函館の夏を舞台に、生きる目的を見失った男と愛を諦めた女との出会い、そして底辺で生きる家族を慈しむような眼差しで描き、第2回三島由紀夫賞の候補となり、最高傑作との呼び声も高い。映画化のメガホンをとったのは、『オカンの嫁入り』で新藤兼人賞を受賞し高い評価を得てきた呉美保監督。主演を綾野剛、ヒロインを池脇千鶴、その弟を菅田将暉が演じている。

 尚、大阪アジアン映画祭では特典にオープニング&クロージング上映チケットもついてくる大阪アジアン映画祭サポーターを募集中だ(一般サポーター 10,000円/一口、応募締切1月末日)。他にも来日ゲストを迎えてのウェルカム・パーティご招待や、映画祭公式カタログ進呈、映画祭記念品進呈(1点)など特典がいっぱい。詳細、お申し込みはコチラ
 


『そこのみにて光輝く』
2014年/日本/120分/R15+ 

監督:呉美保 原作:佐藤泰志(河出書房新社刊)
出演:綾野剛、池脇千鶴、菅田将暉、高橋和也、火野正平、伊佐山ひろ子、田村泰二郎
配給:東京テアトル+函館シネマアイリス(北海道地区)
©2014佐藤泰志/「そこのみにて光輝く」製作委員会 
公式HP:http://hikarikagayaku.jp/
4月19日より、〈東京〉テアトル新宿、〈大阪〉テアトル梅田ほか全国ロードショー

<ストーリー>
ある出来事が原因で仕事を辞め、目的もなく毎日を過ごしていた佐藤達夫(綾野)は、ある日パチンコ屋で使い捨てライターをあげたことをきっかけに、粗暴だが人なつこい青年・大城拓児(菅田)と知り合う。拓児に誘われるままについていくと、そこは取り残されたように存在している一軒のバラックだった。そこで達夫は拓児の姉・千夏(池脇)と出会う。互いに心惹かれ、ふたりは距離を縮めていくが……。

 

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『王様とボク』舞台挨拶レポートはコチラ

  

ousama-s550.jpg『王様とボク』舞台挨拶レポート(12.9.22シネマート心斎橋にて)
 登壇者:前田哲監督、菅田将暉、松坂桃李、相葉裕樹

ousama-1.jpg(2012年 日本 1時間24分)
監督:前田哲
原作:やまだないと『王様とボク』イースト・プレス刊
出演:菅田将暉、松坂桃李、二階堂ふみ、相葉裕樹、松田美由紀
2012年9月22日(土)~シネマート新宿、シネマート心斎橋、10月20日(土)~京都みなみ会館他順次公開
公式サイト→http://www.o-boku.com/index.html

© 2012「王様とボク」製作委員会

6歳から12年間昏睡状態だった青年は、18歳で奇跡的に目覚めたが、心は6歳のままだった・・・。大人になることへの不安や揺れ動く心を描く青春ファンタジー『王様とボク』。シネマート心斎橋公開初日の舞台挨拶に、前田哲監督をはじめ本作が映画初主演となるミキオ役の菅田将暉、ミキオの幼なじみミキヒコ役の松坂桃李、同じく幼なじみトモナリ役の相葉裕樹が登壇した。立ち見も出たライブハウスのような熱気溢れる客席を前に、大阪出身の前田監督、菅田将暉の漫才のような絶妙のトークがさく裂した舞台挨拶の模様を紹介したい。


━━━初日のご挨拶をお願いします。
菅田: (立ち見満員の客席を見て)すごいですね。菅田将暉です。挨拶は短めに、今日はよろしくお願いします。
松坂:これぐらいの広さっていいですね。結構好きです。今日は来てくださってありがとうございます。よろしくお願いします。
相葉:こんばんは。相葉裕樹です。今日は楽しんでいってください。お願いします。
監督:こんばんは。今日はこんなに来ていただいて。今までずっと広い劇場だったので、これぐらいの距離で、近くてちょっと圧迫感がありますけど(笑)楽しんでいってください。よろしくお願いします。

ousama-s2.jpg━━━管田さんと前田監督の生まれ故郷、大阪での舞台挨拶はいかがですか?
菅田:それはうれしいですよね。
監督:僕は大阪で生まれて、ロンドンで育ちましたから。<会場爆笑>
菅田:(心斎橋アメリカ村は)普通に遊びに来てたところですから。
~観客より「おかえり」と声がかかって~ ただいま!
監督:彼は全然関西弁が抜けてないですからね。僕なんて全然関西弁がでないですから。<会場爆笑>
松坂:そんなにでないですか?
監督:「(標準語風に)でませんよ」

━━━ずばり大阪の印象はいかがですか?
相葉:熱気というか、笑顔で迎えてくれてありがとうございます。
松坂:何度か来させてもらっているんですけれど、「551」肉まんの・・・
菅田:だから、シュウマイを食べてほしいって何回も言っているんですけど!<会場爆笑>
松坂:(お客さまとの)距離が近いせいか、暖かいというか。菅田将暉が空港に着いたときに「よし、我慢、我慢しよう」と言ったんです。多分地元だから舞い上がってしまうので、ちょっと我慢しようと、自分の中でブレーキをかけていた感じはありました。
菅田:いま、関西弁禁止令が出ていまして。映画の撮影で今博多弁の役なんですが、監督に「おまえ普段から関西弁をしゃべっているから、方言が出ないんだ」と言われてずっと(関西弁を)抜いていたせいで、ここで舞い上がったら戻ってこれないだろうなという「よし」だったんです。

━━━監督はどのようなイメージでこの作品を作ったのですか?
監督:10年以上前にこの原作に出会って、「大人になるってどういうことだろう」という人が生きていく上でどうしてもぶつかる問題にトライしてみたかったんです。いろいろ失っていくことや、悲しみを知っていくことという負の要素も多分にあるので、そういうちょっと寂しい、悲しいものを描きたかったです。そのときにしか感じ得ない思いや感情を、台本を超えて三人の実際感じているものを出してもらいました。だから、映画がもし面白かったら3人の力ですし、つまらなかったら僕のせいです。

ousama-s3.jpg━━━監督の演出はいかがでしたか?
菅田:正解がなく、一つ一つの動きが試行錯誤です。計算してもダメだし、無意識でもダメというところで、毎回監督がシーンのイメージを伝えてくれました。監督がすごく良くて僕の中で超えられないぐらいです。
監督:僕も6歳で止まっていますので(笑)
松坂:役と僕本来のものをすり合わせて、引き出してくれるという感覚がすごく強かったです。頭ごなしに考えず、ニュートラルに自分が18歳だった頃をどこか隅に置きながら現場に参加した形ですね。
相葉:ぼくはこの現場は本当にフラットな状態で臨めました。シーン数が少ないですから、ワンカットワンカットを大事にしていきたいと思って相談しながらやっていきました。すごく居心地のいい現場で、楽しく過ごすことができました。

━━━(役者の演技を)引き出すコツはあるんですか?
監督:今の(舞台挨拶)も褒めるようにと、これも演出で。<会場爆笑> コツではなくて、同じ目線でどう立つことかだと思うんです。10代の役で、つい最近まで10代だった訳ですから。
菅田:僕まだ10代ですよ!
監督:まだ10代?一番年上かと思ってた。桃李くんはお兄ちゃんって感じなんですね。現場でも暖かい感じで、人を包み込むような感じがあって。相葉くんは、「こういう友達いるよね」といった感じでやってもらったんです。ちょっと近寄りがたいけど実はいい奴といった感じで、色々話しましたよね。そんなとこですかね。
菅田:ミキオは?
監督:一番大事なところを(笑)6歳を演じるのは非常に難しい。やりすぎたら、みんなが「さむー」といった感じになるし、今の現実的な6歳を演じても大人びていてシラッとしてしまう。前々から連ドラを見ていて、「この人はしっかり芝居を考えてできる人だな」と思っていたのですが、考えるということを一回捨ててもらって、いかに無心で演じてもらうか。現場に入ったときから6歳で、演じているとき以外も6歳だったんですね。だからみんな迷惑していました。桃李くんも本当に迷惑だったと思います。<会場大爆笑>
松坂:あー本当に現場に入ってからも6歳を相手にしている感じなので、ギャップを感じましたよ。
 

ousama-s1.jpg━━━(サポーターズイベントから選ばれたファンによる花束贈呈後)花束をいただいて、今の気持ちを一言お願いします。
菅田:花束をもらえると思っていなかったので。また地元でというのが!
監督:大阪で火を付けてもらわないと。
菅田:口コミでね。広げてください!
監督:(菅田に耳打ちして)家族に広めてください。
菅田:家族に広めてください!

━━━最後に一言お願いします。
菅田:自分たちがどうこう言うよりも、映画を観ていただけでうれしいですし、分かりやすいゴールのある映画ではないので、何回も観てほしいです。僕自身がこの映画にかかわってすごくいろんなことが変わったので、何かそういうきっかけになればうれしいです。今日は本当にありがとうございました。


大人になることは子どもの心を失うこと、大事なものを喪失するという恐怖感を主人公たちは抱えている。何がやりたいことなのか分からない、大人になることの責任や、自分で道を切り開かなければならないのに道が見えない不安に支配されている若者たちの姿は現代を象徴するかのようだ。一方、6歳の心を持つモリオは「大きくなったら王様になる」と目を輝かせている。ファンタジーの要素を交えて「大人になるとは」という永遠の命題を表現した前田監督の意欲作。期待の若手俳優たちが等身大で表現した希望と葛藤の青春物語は、どこかほろ苦く切ない後味を残した。(江口由美)

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