「熊本」と一致するもの

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yuzuriha-550.jpg『ゆずりは』滝川広志(コロッケ改め) 会見

(2018年6月5日(火)大阪・天王寺アポロシアターにて)


本名・滝川広志に名前を変えて臨んだ映画『ゆずりは』は、(元)コロッケの「芝居をしない芝居」の熱さが滲み出た“注目作”だ。先日、大阪・天王寺のアポロシネマで合同会見に臨んだ役者・滝川は「役の水島は動きの少ない、自分ではあり得ない人、だから役づくりのために(撮入の)1~2日前から3週間、現場近くのホテルに泊まり込んだ」という。


「(コロッケと)バレないように、帽子かぶったりした。読売テレビ系“お笑いスター誕生”から芸人やってきたけど、動きのない“葬儀屋”は自分の対極にある役。選ばれた時に“ボクじゃないんじゃないか”と。どっきりカメラだと思ったもの。ふざけないで、いつどこからカメラが出てくるの、だった。撮影前は怖い思いが先だった」。


yuzuriha-500-2.jpgこの葬儀屋に新入社員・高梨歩(柾木玲弥)入ってきて、滝川演じるベテラン水島から教育を受けるところが見どころに。若い役者との競演になったが、滝川は「新入社員が主役に見えたら、それでいいと思った」という。


――役者コロッケ」について?
「(自分は)よくよく人の前に出るタイプだなあと思う。38年間、それでやってきた。この映画では大きい声も出さない。エキストラが“コロッケさん、どこ?”って聞いたぐらい。これでいいんだ、と」。いつもは偉そうにしている役が多いけど、水島はどこにでもいるおっちゃん。もともと主役やりたい、と思っていないし、3~4番手で十分なんです」。


――役に抵抗はなかった?
  「プロデューサーさんから(この役を)頂いたようです。水島はコロッケさんで、と。最初はやれるかな? でした」。映画見たらハマっている。「舞台と映画は違いますね。舞台では“余計なこと”をするのが仕事。この映画では“部長”と呼ばれて、ただ振り返るだけ。この振り向き方ひとつで(人間が)分かる。ちょっとやってみましょうか。動き過ぎたら“コロッケ”が見えてしまうから。すごく大変でした。面白い水島部長はいくらでもやり方がある。人前で泣かない、笑わない。昔の日本人にはけっこうこんな人が多い」。


yuzuriha-500-1.jpg――役づくりは?
「何もしないこと」が何よりも大変だったという。「役を作り込む時はその役に入り込むから。こんなに“何もしない”のではストレスたまりまくりですよ。役者なら当たり前ですけどね。今回は笑ってない。笑ったら(新入り)高梨を認めたことになる。水島はドキュメンタリーの一種ですね。続編の話は今のところない、けど出来たらやりたい」。

「今回は、まず(テンション高くない)水島の声を決めた。揺れ動く自分がいた。演技ひとつで台無しになったりすることがよく分かった」。「最初に動かなくていい」と言われた。それがよく分からなかったが、芝居をしなくても、出てきただけで存在感十分。こんな映画は珍しい。「水戸黄門で言えば角さんと言ったところですかね。昔の映画ならこういう役者さんはたくさんいました」。


――新たな名前で「新境地」を開いた?
「これから頂く仕事で、“ゆずりは”見て“邪魔にならないんだ”と思ってもらえそう。やっぱり続編やりたいなあ」。


◆滝川広志(コロッケ)
1960年3月13日熊本県生まれ。1980年8月読売テレビ系「お笑いスター誕生」でデビュー。東京・明治座、大阪・新歌舞伎座など大劇場で座長公演を務め、モノマネレパートリーは300種以上に及ぶ。中国、韓国など海外公演でも成功している。2014年文化庁長官表彰、2016年日本芸能大賞など受賞。


『ゆずりは』

yuzuriha-pos.jpg“ゆずりは”1年を通じて緑の葉を絶やさない“常緑樹”、親から子へ、子から孫へと受け継がれていく「命のバトン」のことという。映画の舞台は葬儀社。そこに長年勤めるベテラン職員・水島(コロッケ=滝川広志)が主役という地味な映画だが“お笑いの人”コロッケが本名に変えて出演した映画は、本人の意気込み通り、滝川が一度も笑うことなく、見事な存在感を見せ、「死とは何か」「生きることの意義とは」を感じさせて説得力ある映画になった。役者コロッケを知らない人も、この一作で「映画」で名を残すと思わせる。


葬儀社が主な舞台(新谷亜貴子原作)だから、すべて「死」と葬儀にまつわる物語。だが、映画に登場する葬儀は多くない。いつも沈着冷静な水島が、社長からピアスの若者の採用を依頼される。無神経でがさつな青年・高梨(柾木玲弥)に職場のほとんどが反対したが、水島には感じるものがあり「私が教育する」あえて引き受ける。


彼の最初の仕事は盲目の夫を亡くした妻。なぜか、喪主から「ぜひ高梨さんに」と頼まれる。水島から「葬儀中は絶対泣くな」と言われていたことも忘れておいおい泣く。「亡き夫が好きだった薔薇」が赤だったに違いないと、モノクロ写真をすべて赤い薔薇にして喪主を感動させる。


yuzuriha-500-3.jpg次の仕事は「いじめから飛び降り自殺した」女子高生。実は水島も妻を自殺で亡くして以来、深く傷ついていた。だがプロの葬儀屋・水島は、高梨らの心配をよそに「私がやります」と告げる…。だが高梨は葬儀中、参列者の同級生たちが騒いでいるのにたまりかね、声を荒らげて「出ていけ」とたしなめてしまう。葬儀社人にあってはならない行為だった。だが、高梨の“一喝”は水島にも自分のことのように思ったに違いない。


映画はまるでミステリーのように、数々の“秘密”が散りばめられており、最後の章ですべてが明らかになるという見事な展開を見せる、推理小説風の隠し味も秀逸。そんなテクニックよりも、人間存在の本質に迫った“異色の作品”。久しぶりにじっくり見入ってしまう“感動作”であった。


■2018年 日本 1時間51分
■出演:滝川広志、柾木玲弥、勝部演之、原田佳奈、高林由紀子、島かおり
■監督:加門幾生
■原作:新谷亜貴子
■コピーライト:(C)「ゆずりは」製作委員会
公式サイト: http://eiga-yuzuriha.jp/

公開日:2018年6月16日(土)~第七藝術劇場、神戸国際松竹、他イオンシネマ系など全国順次公開


(安永 五郎)

 

 

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初主演、岸井ゆきのが監督に感謝したことは?『おじいちゃん、死んじゃったって。』舞台挨拶@テアトル梅田 
登壇者:森ガキ侑大監督、岸井ゆきの(主演)
司会:島拓生プロデューサー
 
有名CMを手掛けてきた森ガキ侑大監督のオリジナル脚本による長編デビュー作、『おじいちゃん、死んじゃったって。』が、11月4日(土)からテアトル新宿、テアトル梅田他で絶賛公開中だ。岩松了、光石研、美保純、水野美紀というベテラン勢の中で長編初主演を果たした岸井ゆきのと森ガキ監督が、11日(土)12:20の回、上映終了後舞台挨拶に登壇し、大阪の観客の前で、撮影の模様を振り返った。
 

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開口一番、「『ブレードランナー2049』より、こちらを選んでくれて感謝します!」と感動の面持ちの森ガキ監督の横で、「関西で撮影がある時はカレー屋をハシゴしていました。関西はスパイスカレーがいっぱい」と、岸井ゆきのは映画のインドロケにつながるカレー好きを披露。初監督の本作を携え、初の大阪舞台挨拶となる森ガキ監督は、「初めての長編映画を大阪の方に観ていただけるのがうれしいです。こうやって映画は多くの人に広がっていくのだなと思いました。大阪の取材では、東京よりもメディアの方の反応が良く、『この映画はいいので、自信を持って!』と言っていただきました」と感想を語ると、岸井も「最初は不安で落ち込み、小さくなっていました。現場で真ん中に立てるか、やるからにはしっかりしなければと色々考えていたのです。いざ現場に入ると森ガキ組のみなさんが、私たち(キャスト)の居心地のいい環境を丸ごと作っていてくれました」と監督に感謝しながら、初主演の感想を語った。

 

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岸井の言葉に森ガキ監督は、「撮影では2週間ぐらい一緒に寝泊まりする訳ですが、スタッフ間でケンカがあっても、(キャストには)絶対に見せない。そして、現場では絶対に感情を出して怒らないようにしました。疲れながらもそこは頑張りました」。さらに、ヒロイン吉子を演じる岸井について「ベテラン勢がいる中、中心に立ち、ストーリーを展開する役。つかみにくいキャラクターを演じきってもらい、東京でも岸井信者が増えました。後半『ゲロが出る』と言葉は荒いですが、その表情にキュンとするはず」と絶賛。そんな岸井の思い出に残るシーンとして挙げたのは、1カットで撮影された朝食のシーンだという。「舞台っぽく、皆アドレナリンが出ていて、いいグルーブ感」「最初は自由にアドリブを言い、誰かが脚本の台詞を言ってから、脚本の流れに戻っていく」と本当の家族のような空気が流れていた撮影の模様を振り返った。
 
 
初主演作でインドロケにも臨んだ岸井。予防接種を6本も打って、覚悟をもって旅立ったというインドは「大好き!楽しかったです。除菌スプレーさえあればどこへも行けると思いました」と撮影を心から楽しんだ様子。森ガキ監督も「人生で1度は行っておくべき場所」と価値観がひっくり返るようなエピソードを披露した。
 
 
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観客によるフォトセッションに笑顔で応えた後、オリジナル脚本による映画作りについて「今はオリジナル作品を撮るのが難しく、瀬々敬久監督(『64-ロクヨン-』)から、(オリジナル作品が)全国で上映されるというのは、本当にないことだと言われました。脚本の山﨑さんと3年間悩んで書き、イメージ通りに撮影できた。こういうことは今の映画界の状況では少ないこと」と振り返った森ガキ監督。「映画は残っていくもの。CMとはまた違う」とこれから口コミで広げてと訴えた。岸井も「観てもらえてうれしいです。熊本(人吉市)で2週間、インドでも撮影し、家族を一生懸命描きました。この映画は、もっと大きくなっていくと思います」と締めくくり、大阪舞台挨拶を終了した。

 
今人気上昇中のYogee New Waves(ヨギーニューウェーブズ)の書き下ろし曲が、作品の世界観と馴染む家族物語。これからの成長が楽しみな二人の初タッグ作をお見逃しなく!
(写真:河田真喜子、文:江口由美)
 

<作品情報>
『おじいちゃん、死んじゃったって。』(2017年 日本 1時間50分)
監督:森ガキ侑大
出演:岸井ゆきの、岩松両、美保純、光石研、水野美紀、岡山天音、小野花梨他
2017年11月4日(土)~テアトル新宿、テアトル梅田、神戸国際松竹、MOVIX京都他全国順次公開
(C) 2017 『おじいちゃん、死んじゃったって。』製作委員会
※第30回東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門公式出品
 
 
 
 

 

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デビュー作はオリジナル脚本で普遍的なものと決めていた。
『おじいちゃん、死んじゃったって。』森ガキ侑大監督インタビュー
 
お葬式を題材にした映画は数あれど、セックスシーンから始まる物語はなかなかないだろう。自宅で彼氏といそしんでいる時に飛び込んできた訃報。ベランダから、庭にいる父に向かってヒロイン、吉子が発する言葉、「おじいちゃん、死んじゃったって。」がそのままタイトルとなっているのも、意表を突かれて面白い。資生堂、ソフトバンク等、数々の有名CMを手掛けてきた森ガキ侑大監督の長編デビュー作、『おじいちゃん、死んじゃったって。』が、11月4日(土)からテアトル新宿、テアトル梅田、神戸国際松竹、MOVIX京都他全国順次公開される。
 

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20代半ばで上京してからは寝る間も惜しんで働き、CM業界でキャリアを積んできたという森ガキ監督。元来の夢であった映画監督、そのデビュー作はオリジナル脚本でという熱い思いが、脚本の山﨑佐保子さんとの出会いによって見事な化学反応を起こした。祖父、父の死を前にした家族の悲喜こもごもと、ヒロインの成長を描くヒューマンドラマは、普遍的でありながら、少しヒリヒリとした感情を覚え、思わぬ笑いがこみ上げる。本作が初主演となる岸井ゆきのをはじめ、脇を固める俳優たちも岩松了、光石研、美保純、水野美紀というベテランから、岡山天音、尾野花梨、池本啓太、松澤匠という若手まで個性豊かな面々が勢ぞろい。お葬式での衝突を経て、各々が抱えるうまくいかない日常が、少し前に進んでいく様子は、静かな感動を呼ぶ。
 
本作の森ガキ侑大監督に、初長編『おじいちゃん、死んじゃったって。』で描きたかったことについて、お話を伺った。

 


 

■とても好きな小津作品。普遍的な内容だが、学生の時に観るのと、結婚した今観るのと、見方が本当に変わる。

―――本作は森ガキ監督の初長編ですが、前作の短編『ゼンマイシキ夫婦』(14)でサイレント映画のような夫婦の物語を紡いでいますね。
登場する夫婦にはそれぞれ、背中にゼンマイがついているのですが、自分では自分のゼンマイを回せない。旦那さんは奥さんのゼンマイを回し、奥さんは旦那さんのゼンマイを回す。つまり、二人でいないと生きられない状況になっています。何のために相手のゼンマイを回しているのかを切り口に、夫婦の関係性を描きました。本当の愛をゼンマイで表現し、FOXの短編映画祭と小津安二郎記念・蓼科高原映画祭で賞をいただきました。
 
―――小津安二郎監督の作品がお好きなのですか?
小津監督はとても好きで、小津監督が晩年、数多くの名作を生み出した更科高原の映画祭に出品したかったのです。小津作品は、学生の頃よく観ていました。家族をテーマにしておられ、普遍的な内容なのですが、学生の時に観るのと、結婚し、家族がいる今観るのとでは、見方が本当に変わりましたね。今、ようやくその表現の深さが分かった気がします。
 
―――今回、脚本を担当したのは、映画の脚本が初となる山﨑佐保子さんですが、どのような経緯で長編デビュー作の脚本を書いていただくことになったのですか?
CMの編集をはじめ、本作の編集担当の平井健一さんから、僕と同い年でまだデビューしていない脚本家がいると紹介してもらったのが日本映画学校で荒井晴彦さんに師事していた山﨑さんでした。意気投合し、今の日本映画について色々意見を交わした後、山﨑さんがその時書いていた脚本をいくつか見せていただいたのです。その中で、撮りたいと思ったのがお葬式の話でした。山﨑さんは本作を観た出版社の方から、映画を本にしたいと連絡があり、脚本家デビューと同時に小説家デビューも果たしています。映画が先というのは稀なケースだそうで、「この映画で大きく人生が変わった」と話していました。
 
 
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■デビュー作はオリジナルで普遍的なものを。“家族と生/性と死”を描きたかった。

―――数ある脚本の中から、お葬式の話を選んだのは小津監督の作品にもつながります。
小津作品もそうですが、普遍的な、誰にもささる企画を必ずやりたかった。ただ、分かりやすく表現するのではなく、自分自身のちょっとした色や、芸術的要素を入れることができる、融合的なバランスのものを映画化したかったので、僕のやりたいことに合致していました。『ゼンマイシキ夫婦』で描いた夫婦も普遍的な要素ですが、次は“家族と生/性と死”を描きたいとずっと思っていたので、そこにもハマった感じですね。デビュー作はオリジナルで普遍的なものというのは、ずっと決めていましたから。

 

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■セックスでの成長を、主人公吉子の成長に反映させる。

―――物語は、主人公の吉子が実家で彼氏とセックスをしている時に、おじいちゃんの死を知るところから始まります。この映画の柱でもありますね。
映画のセリフにもありますが、「隣の村で戦争をしていて、僕らは楽しんで酒を飲んだりしている」と。どんなことがあっても、親族や子どもが万が一死ぬことがあって、しばらくは落ち込み続けても、人間は飯も食えば、トイレにも行く訳です。それは避けられない人間の本質的な部分です。途中でも吉子と彼氏とのセックスシーンが出てきますが、2回目は割り切ったところがあります。吉子自身、死に対して整理がつき、死を生活の一部と受け止める。そして、兄弟げんかをし、みっともないところを見せる吉子の父や叔父に対し、分からないなりに、理解しようとする。それが大人の階段を上ることになります。セックスでの成長を、彼女自身の成長に反映させました。
 
―――吉子を演じる岸井ゆきのは今勢いのある若手の一人ですが、彼女の魅力とは?
芝居が上手いし、目がきれいですね。もう一つは、田舎の恰好をさせると、いい意味でどんくさい女の子の雰囲気を表現できます。衣装次第で東京のシティーガールの雰囲気にもなれるし、どちらも演じられるのが強みです。主人公は皆の気持ちを代弁しているので、彼女の素朴さは共感してもらえると思います。
 

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■ロケ地の熊本県人吉市は、脚本で思い描いた場所の匂いがした。

―――日本の原風景が映し出されているのも印象的です。ロケーションのこだわりは?
主人公の吉子は、本当は東京に出ていきたいけれど、田舎で悶々としている。弟は東京に行ったのにという葛藤があります。吉子のいる田舎は、東京に新幹線で1~2時間で行ける場所だと説得力がないので、脚本を読んだ時、東京からすごく遠い村を思い浮かべました。空港に行くのにも時間がかかり、東京への憧れが強くなる場所と考えていくと、熊本の人吉市がとても自然豊かで、脚本で思い描いた場所の匂いがしたのです。ただ、クランクイン直前に熊本地震が起き、タイトルがタイトルなので不謹慎ととられるかもしれないと撮影を断念し、仕切り直しもやむを得ないと思っていました。でも、人吉市の皆さんが、「震災後の復興が大変なので、映画を撮って盛り上げてほしい」とおっしゃってくださり、その言葉で撮影をスタートすることができました。
 
―――初監督作品で、いきなりインドロケのシーンもありますね。撮影はどうでしたか?
インドに行って、本当に良かったです。インドでは、誰も死に対して恐怖感を抱いていない。ガンジス川は、死後に焼かれ、流される場所です。高齢の人たちは、そこで自分が死ぬのを待っている。インド人にとってはそれが名誉であり、死は希望があることなのです。その光景を見てから、僕の死に対する怖さが薄らいだ気がします。寿命を全うしての死は、怖くはないなと。岸井さんも、今まで体験したものとは全く違うと言っていましたし、価値観が少しは変わったのではないでしょうか。
 
 
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■「誰もが脇役にならない」ことが一つの挑戦

―――本作で、一番森ガキ監督がやりたかったことは?
大きなフォーマットで言えば、群像劇をやってみたかった。一人にフューチャーするのではなく、登場人物全員のイキイキとした人物像を、この短い時間でしっかりと描きたいと思っていました。誰もが脇役にならないというのが、1つの挑戦でしたね。それぞれの生き様をしっかり描いて、色々な世代に共感を呼ぶようにする。また、ストーリーを展開する上で吉子という主人公の成長を軸にしました。
 
―――次回作はどのような作品を考えていますか?
若い世代の青春群像劇もやりたいですね。脚本の山﨑さんと、今までの日本映画にないようなオリジナル作品をこれからも作りたいと思っています。もう一つは、韓国映画のレベルがとても高いので、韓国のプロデューサーや脚本家、スタッフと映画を作ってみたいという夢があります。
(江口由美)

<作品情報>
『おじいちゃん、死んじゃったって。』(2017年 日本 1時間50分)
監督:森ガキ侑大
出演:岸井ゆきの、岩松両、美保純、光石研、水野美紀、岡山天音、小野花梨他
2017年11月4日(土)~テアトル新宿、テアトル梅田、神戸国際松竹、MOVIX京都他全国順次公開
(C) 2017 『おじいちゃん、死んじゃったって。』製作委員会
※第30回東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門公式出品
 


torigirl-500-1-1.jpg映画『トリガール!』×ねごと×FM802「ROCK KIDS 802」、熱気ムンムンの公開収録

 
9月1日(金)公開の映画『トリガール!』とその主題歌を担当している ねごと 、そしてFM802『ROCK KIDS 802-OCHIKEN Goes ON!!-』(毎週月~木 21:00-23:48)とのコラボレーションイベントが開催された。スペシャルトークのゲストは、映画『トリガール!』主演の土屋太鳳と間宮祥太朗。トークの後には、主題歌『空も飛べるはず』を歌った4人組のガールズバンド ねごとのライブも行われた。

200人の若いファンの大歓声に迎えられたスペシャルゲストによるトークは、俳優になったキッカケや映画『トリガール!』撮影中の秘話、さらにリスナーからの想定外の質問に答えるなど、二人の一挙手一投足に歓声が上がる熱気ムンムンの公開収録となった。


torigirl-ivent-550.jpg【イベント概要】  
●日時=2017年8月18日(金) 18時40分~
●場所=放送芸術学院専門学校ドリームホール
●ゲスト=土屋太鳳(22)、間宮祥太朗(24) (TALKゲスト)
     ねごと(LIVEゲスト)
●MC=DJ落合健太郎(42)
●イベント詳細URL= https://funky802.com/i/s5017
●映画公式URL = http://torigirl-movie.com/


そして、今回の収録の模様は以下の番組でオンエアとなります。

【番組情報】 「ROCK KIDS 802-OCHIKEN Goes ON!!-」 
放送日時=8月31日(木) 21時~
●DJ=落合健太郎
●詳細URL= https://funky802.com/rockkids/
●オフィシャルSNS= @RK802STAFF
●写真提供:FM802


 torigirl-ivent-500-1.jpg【スペシャルトーク】
絶叫のような黄色い歓声響く中迎えられた土屋太鳳と間宮祥太朗。高めのスタンドチェアに戸惑う土屋太鳳を気遣う間宮祥太朗に、さらにお互いを「太鳳」「祥太朗」と名前で呼び合う度に会場からは歓声が沸き上がる。人力で飛行する「鳥人間コンテスト」に挑戦する大学生の奮闘を描いたラブコメで主演した二人。ライバル意識から始まり、切磋琢磨しながら目標達成へと協力していく。悪態つきながらもいつしかお互いを認め合う仲に……。そんなホッとな青春映画を全力で駆け抜けた二人が、撮影の様子や主題歌「空も飛べるはず」、挿入歌「ALL RIGHT」について語ってくれた。


torigirl-ivent-tao-1.jpgDJ:お二人はいつ頃から俳優になりたいと思われたのですか?
土屋:10歳位から俳優を目指してオーディションを受けました。それまでは、保育士さんや看護師さんになりたいと思っていました。ある日新聞で「ミス・フェニックス・オーディション」という文字が目に入り、私の名前の「鳳」と同じ「鳳凰=フェニックス」を見て、「私だ!」と思って応募したら、審査員特別賞を頂いたんです。

間宮:僕は15歳からです。元々映画が好きで、映画に関係する仕事をしたいなと漠然と思っていたら、ある日先輩から「食堂の裏に来い!」と言われ、「やばい!」と思いながら行くと、「今度の土日、空いてる?」って聞かれ、「はあ?」。その先輩が雑誌の編集者に紹介してくれて、中学生向けの雑誌を作っていたプロデューサーに見い出されたんです。


DJ:人生どこにキッカケがあるか分からないので、いろんな努力が必要ですね。映画『トリガール!』でも努力、努力で「鳥人間コンテスト」に挑む大学生を演じていましたね。撮影はかなり過酷だったのでは?
土屋:暑さと、台詞のタイミングが難しかったです。卓球のラリーのように本能で言葉を返していた感じでした。
DJ:凸凹コンビと言われながらも二人の掛け合いが最高に面白かったのですが、アドリブもあったのでは?
torigirl-ivent-mamiya-1.jpg間宮:監督からはアドリブの指示というより、ゆきなと坂場との関係性において、僕が強く言ったことに対し必死で食らい付いてくるゆきなの様子を撮りたいので、「できるだけ太鳳ちゃんを困らせてほしい」とか、「思い付いたことをどんどん掛けていけば、絶対面白いことになるから」と監督に言われました。


DJ:突然台本にないようなことが飛んで来たんですか?
土屋:はい、飛んできました。私はできるだけ台本を大事にしようと思っていたので、祥太朗にもセリフ合せを頼んだら、「あ、分かった」と低い声で答えて…(笑)。
間宮:オレ、そんな怖い言い方してないよ、「あ、いいよ♪」って軽く言ったと思うよ(笑)。
土屋:でも、祥太朗は本番ではその場面に合った心にマッチしたアドリブを出してくれました。
DJ:どこまでが台本で、どこからがアドリブか分からない程、二人の掛け合いが素晴らしかったので、是非ご覧になられる時には気を付けてお楽しみ頂きたいと思います。


DJ:これからはラジオで繋がったラジ友からの質問です。
Q1:お二人に似ている動物は?

土屋:カピバラに似てると言われます。この間も「温泉に行きたい!」と言ったら、そこに丁度カピバラが温泉に浸かってる写真があって、「似てる~!」って(笑)。
間宮:ご覧の通り、僕は濃い顔をしているので、猛禽類だと言われます。猛禽類でもどの鳥ということもなく、類でくくられて、しかも人間じゃないんだ~(笑)。よく古い友人にそう言われます。
DJ:確かに、自然界にいたら何か獲物を狙ってるような?
間宮:いつも獲物を狙ってる訳じゃないんですけどね(笑)。


Q2:撮影地の滋賀県にいる時、何かしました?
土屋:花火観ましたね。撮影が終わってから、彦根城の近くから琵琶湖の花火大会を観ました。とても綺麗でした。


torigirl-500-2.jpgQ3:限界を感じる時ってどんな時ですか?
間宮: 『トリガール!』に関しては、限界は越えていたように思います。特に、最後の方では暑さと体力の限界を超えて朦朧としてしまいました。
土屋:本当に暑さと体力の限界の中でセリフの応酬をするのですが、祥太朗は声がとても大きくて、最後のセリフの掛け合いでは、その声の大きさに引っ張ってもらいました。とても大きなお芝居をなさっておられました!
間宮:そう、「お芝居をなさっておられます!」(笑)。リアルな汗を感じられる『トリガール!』、4Dなら汗が飛んでくると思います。


【ねごと によるライブ】
ねごと:スピッツの曲「空も飛べるはず」をカバー。素晴らしい映画に惹き込まれて、是非やらせて頂きたいと。私たちなりの空が飛べたらという気持ちを込めて「空も飛べるはず」が完成しました。

土屋:この曲は、はじめて覚えたギターのコードだったので思い入れもあり、ねごとさんに歌って頂いてとても嬉しかったです。夢を追い駆けていると迷ったり挫折したりすることがあると思うけど、これから何かあったらこの歌を聴こうと思いました。
間宮:優しい曲ですね~。この曲が流れるエンドロールもとても可愛らしいので、是非最後まで楽しんで観て頂きたいです。


torigirl-ivent-500-2.jpgDJ:最後にラジオのリスナーへ向けて?
間宮:去年の夏に撮影しました。その前に「鳥人間コンテスト」を初めて観て、今まではただ楽しくお祭りのようだと思っていましたが、とてもシビアでストイック、そのためだけに努力を重ね、みんなの情熱が詰まっていることを初めて知りました。仲間と何かを創り上げることはとても大切で幸せなことだと感じ取って頂けたら嬉しいです。

土屋:観て頂いた方の心に翼を与えてくれるパワーあふれる作品となりました。キラキラした青春の中でも、挫折であったり、迷いであったりする部分も描いております。フィクションですがリアルな青春があり、とても感動できる作品です。『トリガール!』、どうかよろしくお願いいたします!



土屋太鳳(つちやたお)
1995年2月3日生まれ、東京都出身。主な出演作:『PとJK』、『兄に愛されすぎて困ってます』、『フェリシーと夢のトゥシューズ』、『8年越しの花嫁』(12月16日公開)、『となりの怪物くん』(2018年公開)など

間宮祥太朗(まみやしょうたろう)
1993年6月11日生まれ、神奈川県出身。主な出演作:『帝一の國』、『お前はまだグンマを知らない』、「僕たちがやりました」、『全員死刑』(11月18日公開)、『不能犯』(2018年公開)など

ねごと
様々なジャンルの音楽にインスパイアされ、自由な音楽を奏でる実力派エレクトロニックロックバンド・ねごとは、蒼山幸子(Vo.&Key)、沙田瑞紀(Gt.)、藤咲佑(Ba.)、澤村小夜子(Dr.)からなる4人組。唯一無二の独自の世界観で10代の頃から注目を集め、大型フェスにも多数出演。これまでに、11枚のシングル、2枚のミニアルバム、4枚のフルアルバムをリリース。映画『トリガール!』主題歌/挿入歌のダブルA面シングル「空も飛べるはず / ALL RIGHT」は8月30日発売。

落合健太郎(おちあいけんたろう)
1974年11月17日生まれ、茨城県出身。13年間海外で生活。大学生の時に演劇とラジオに出会い、役者を目指すもラジオDJオーディションに導かれ、見事合格。2000年より名古屋でレギュラースタート。FM802開局当時からの看板番組のひとつである「ROCK KIDS 802」は、2012年から担当。


『トリガール!』
torigirl-pos.jpg■出演:土屋太鳳、間宮祥太朗、高杉真宙、池田エライザ、矢本悠馬、前原 滉、佐生 雪 / ナダル(コロコロチキチキペッパーズ) 羽鳥慎一、轟 二郎、ひこにゃん
■原作:中村 航「トリガール!」(角川文庫)
■監督:英 勉 ■脚本:高橋 泉 ■音楽:遠藤浩二
■制作プロダクション:ダブ ■配給:ショウゲート
■製作:博報堂DYミュージック&ピクチャーズ 読売テレビ KADOKAWA 日本テレビ 中京テレビ 読売新聞社 ダブ 福岡放送 札幌テレビ ミヤギテレビ 静岡第一テレビ 広島テレビ テレビ新潟 テレビ信州 テレビ金沢 西日本放送 熊本県民テレビ 鹿児島読売テレビ
■(C)2017「トリガール!」製作委員会
公式サイト⇒ http://torigirl-movie.com/

 

2017年9月1日(金)~TOHOシネマズ 新宿他、全国ロードショー!


(河田 真喜子)

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橋本愛、だらしなさを求められる役に「なんて楽なんだろう!」
『PARKS パークス』大阪舞台挨拶(17.5.6 シネ・リーブル梅田)
登壇者:瀬田なつき監督、橋本愛 
 
今年で100周年を迎える吉祥寺・井の頭公園を舞台に、橋本愛を主演に迎えた瀬田なつき監督最新作『PARKS パークス』が、5月6日シネ・リーブル梅田で公開初日を迎えた。
『PARKS パークス』瀬田なつき監督インタビューはコチラ
 
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橋本愛が演じるのは、彼氏と別れ、大学も留年の危機を迎えた純。亡き父の学生時代の恋人、佐知子の消息を探す高校生のハルを永野芽郁が、佐知子の孫、トキオを染谷将太が演じ、純、ハル、トキオの3人が、佐知子の遺品から見つけたオープンリールのテープに録音された歌を完成させようと動き出す様子を、公園の過去や現在を浮かび上がらせながら描いていく。瀬田監督らしい軽やかさと風が吹いたような爽やかさ、そしてトクマルシューゴを音楽監修に迎え、地元のミュージシャンたちが出演して作り上げた様々な音楽の豊かさがを堪能できる作品だ。
 
 

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シネ・リーブル梅田で上映後に行われた舞台挨拶では、瀬田なつき監督と主演の橋本愛が登壇。脚本も担当した瀬田監督は、「ちょうど井の頭公園の池が100年を前にして水を全て抜く作業をしていたのを見て、ここから何か出てきたら面白いのではないかと発想。池に物を落とすのはやめてと公園の人に言われたので、池ではなく(佐和子の遺品から)テープを見つけることにしました」と、過去から現在、未来へと繋ぐ物語のアイデアにまつわる話を披露。一方、吉祥寺の印象を聞かれた熊本県出身の橋本は、「少し歩くとマニアックな音楽や映画がすごく充実している街。今と昔が共存していて、ここで生まれたらここで一生を終われるんだろうな」と、感慨深げに語った。また、本作の舞台となった井の頭公園については「普通の公園とは違う楽園感があって、フワフワした浮遊感や、100年も存在し続けることの神様感があります」としながら、「井の頭公園を見ているのと同じように体感できます。暮らしの中に公園があるように映ればいいな」と本作の見どころを語った。
 
 
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瀬田監督の演出について聞かれた橋本は、「大まかなリクエストとしては『軽く』で、それが一貫していれば、後は何をしても許される現場でした」。橋本が演じる純役については「だらしなさが求められる役ですが、私自身はちゃんとだらしない人なので、役でそれを求められ、『なんて楽なんだろう』と思いました」と素の自分が役に投影されていることを明かした。染谷将太や永野芽郁との共演については、「(映画ではワイワイしているが)、慣れ合っていた訳ではありません。染谷さんは大人だし、芽郁ちゃんもすごくしっかりしていて、普段の会話をしなくても現場に入ればできるんです」と橋本が語ると、瀬田監督は「撮りながら、(三人の掛け合いが)すげぇ!と思っていました」と笑顔でコメント。メリハリの効いた撮影現場であることが伺えた。
 
 

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橋本自身もギターの弾き語りを披露するなど、音楽映画としても要チェックの本作。一番後世に残したい音楽はとの問いに、橋本はズバリ「この映画のサントラを聞いてほしい!」。「映画の中に入っていないシーンの音楽もありますし、シーンの続きを連想できるものもあります。映画を観る前にサントラを聴いて、観てからもう一度聴くのをオススメしています」と、友達にも先にサントラを聴くように勧めていることを明かした。そんな橋本の歌っているシーンは瀬田監督のお気に入りのシーンでもあるそうで、「染谷さんや永野さんと一緒にセッションのようにふわっと部屋で演奏するシーンは、ちゃんとだらしない橋本さんの魅力が出ています。どれも見せたい!と思いながら編集をしていました」。
 
 

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最後に、
「大阪でも公園100周年があれば、是非撮りたい。色々な見方ができる映画ですし、橋本さんと一緒に初日を迎えられて、うれしいです」(瀬田監督)
 
「個人的にすごく好きな映画。皆さんもそういう気持ちになってもらえたらうれしいです。本当は映画を観た後、井の頭公園に行ってもらいたいのですが、それができなくても皆さんの思い出の公園や近所の公園、生活の染みついている場所で、この映画のことを反芻して、それぞれの感動として持ち帰っていただけたらと思います」(橋本)
 
と笑顔で挨拶し、映画のように爽やかな舞台挨拶を終了した。
 
ポップな音楽からヒップホップまで様々なジャンルの音楽に彩られた『PARKS パークス』。映像や編集にもこだわりがたっぷりの瀬田マジックを、一度だけではなく、是非何度も味わってほしい。
(江口由美)

<作品情報>
『PARKS パークス』(2017年 日本 1時間58分)
監督・脚本・編集:瀬田なつき
出演:橋本愛、永野芽郁、染谷将太/石橋静河、森岡龍/佐野史郎他
2017年4月22日(土)~テアトル新宿、5月6日(土)~シネ・リーブル梅田、5月13日(土)~神戸国際松竹、初夏~京都シネマ他全国順次公開
公式サイト⇒http://parks100.jp/  
(C) 2017本田プロモーションBAUS
 

utukusiihito-500.jpg【 熊本支援チャリティー上映会 】『うつくしいひと』

先日の熊本地震では、同地域の映画館にも多大な被害がありました。そこで、業界関係者や行定勲監督の発案を受け、全国の有志の劇場で、同監督の『うつくしいひと』のチャリティー上映会を開催することになりました。入場料金は映画業界関係機関への義援金に充てさせていただきます。上映期間中は募金箱の設置も行います。

■シネ・ヌーヴォX上映日程(2週間)

 5/28(土)〜6/3(金)11:00  6/4(土)〜6/10(金)17:30

■入場料金1,000円

■主催:シネ・ヌーヴォ、『うつくしいひと』熊本支援上映会(コミュニティシネマセンター内)



『うつくしいひと』
(2016年/日本/40分)
監督:行定勲 
出演:橋本愛、姜尚中、高良健吾

熊本に生きる人々の日常を背景にした、現在と過去が交差するラブストーリー。熊本市内、熊本城、菊池渓谷、阿蘇でオールロケーションを敢行!

公式サイト⇒ http://kumamotoeiga.com/

LF-b-550.jpg橋本愛、大阪初の舞台挨拶に緊張!? 『リトル・フォレスト 冬・春』舞台挨拶

ゲスト:橋本愛、森淳一監督
2015年2月21日(土) 大阪ステーションシティシネマにて


  
『リトル・フォレスト 冬・春』

LF-pos.jpg  (2014年 日本 2時間)
・原作:五十嵐大介「リトル・フォレスト」(講談社「アフタヌーン」所載)
・監督・脚本:森淳一 
・フードディレクション:eatrip、 
・音楽:宮内優里、主題歌:FLOWER FLOWER「冬」「春」(gr8!Records)
・出演:橋本愛、三浦貴大、松岡茉優、温水洋一、桐島かれん
・公式サイト⇒ http://littleforest-movie.jp/
・コピーライト: ©「リトル・フォレスト」製作委員会

2015年2月14日(土)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際会館、ほか全国ロードショー

 


  

~大阪初お目見え橋本愛の華麗なる転身!
素朴な農業ガールから美しさ際立つ大人の女性へ~

 

LF-s1.jpg東北の山奥で農業しながら女性としても成長していく「いち子」の姿を通して、日本の四季の美しさや大地の恵みの豊かさを再認識させてくれた『リトル・フォレスト』。昨年夏に公開された『リトル・フォレスト夏・秋』に続いて『リトル・フォレスト 冬・春』が先程公開された。最初、「あのツンデレ愛ちゃんが田んぼで草取りしてるよ~!?」と、地道な農作業や山奥での暮らしぶりに素朴な瑞々しさを見せた橋本愛の意外な表情に、驚きと感動を覚えた。汗水流して農作物を育て、収穫した農作物や山の恵みを様々な形で調理して、そして感謝の気持ちを持って美味しくいただく。岩手県奥州市の山奥で約1年かけて撮影された本作は、美しい日本の四季を捉えたしっとりとした映像もさることながら、意外な魅力を発揮した橋本愛の吸引力はかなり大きい。彼女の独白のようなナレーションがまたいい!
 

その橋本愛と森淳一監督が大阪の劇場での舞台挨拶に登壇した。大阪での舞台挨拶は初めてという橋本愛は、藍染め模様のワンピースに長い艶髪を垂らして、ハッとするほど美しく成長した姿を見せた。彼女のナイーブさは演技を見てもわかることだが、こうした舞台挨拶でも質問に対して真摯に答えている様子が伺えた。劇中登場した数々の料理のことや撮影秘話など、さらには2月10日ベルリン映画祭での上映イベントの秘話など、森淳一監督と共に楽しく語ってくれた。
 


  (敬称略)  

――― ようこそ大阪へ! 大阪での舞台挨拶は?
LF-b-di1.jpg森:僕は舞台挨拶には何度か来ています。
橋本:私は初めてです。大阪へはプライベートでも来たことがありません。

――― 大阪で何か味わられたものはありますか?
森:去年の年末にドラマの撮影で1か月半くらい滞在しまして、その時よく食べたおでんです。先ず昼間からよくおでんを食べているのに驚きました。お店もあちこちにあって、それぞれ味も違うしタネも違って、とても美味しかったです。今回愛ちゃんを連れて行こうと思ったのですが、予約がとれなくて残念。

――― 粉もん以外の食べ物を気に入って頂けて嬉しいですね。この映画は美味しそうなお料理が沢山出てきますが、特に印象に残っているものは?
橋本:どれも美味しかったのですが、特に「ひっつみ汁」が美味しかったです。私の出身地熊本にも似たような料理があって、なんだか懐かしくて美味しく頂きました。
:撮影が終わると出された料理をみんなで食べるのですが、いつも奪い合いになってしまって(笑)。監督だからって優先的に食べられる訳ではなく、ちゃんと順番に並んでいました。僕は2色のケーキが美味しかったですね。和と洋の混じり具合が良かったです。

LF-b-i-1.jpg――― キャベツのケーキは本当に美味しかったのですか?
橋本:私は基本的にお砂糖が入っていれば何でも美味しく思っちゃうのですが、三浦さんは「僕はちょっとムリだな」と仰ってました。
森:ソースを掛けて食べると美味しかったですよ。

――― 料理をする橋本さんの指先が、品があってとても綺麗だなと思ったのですが?
橋本:そう言って頂けて嬉しいです。ありがとうございます。

――― パンをこねるなんて難しそうですが、とても手慣れた感じだったのですが、普段から作っておられるのですか?
橋本:いえそんなことはないです。初めてだったのでこねるのはとても難しかったです。
森:フードコーディネーターの人に、「男っぽい」と言われていましたよ(笑)。繊細なんだけど思い切りがいいってね。

LF-b-i-3.jpg――― シーン毎に違う「いただきます」と言うのがとても印象的でしたが、何か監督からの指示があってそうされたのですか?
森:いえ僕は何も指示していません。
橋本:はい、監督からの指示は何もなかったです。あれは「こだわらない」という「こだわり」があって、それぞれのシーンでのいち子の心情や体調とかが色としてほのかに滲み出ればいいなと思ってしましたので、そう感じて下さって嬉しいです。

――― あれほど長いナレーションは初めてですか?
橋本:ホントきつかったです。何時間もスタジオにこもってひとりで喋るというのは大変でした。

――― 映画を導いていく大切な役割ですものね。
橋本:はい、原作はコミックなので、台本だけだとどの視点で喋っているのかよく分からなくて、とても難しかったです。
森:説明のためのセリフと心情面のセリフとは違うので、使い分けるのが難しかったと思いますが、一生懸命やっていましたね。

――― 特に言いにくかったものはありますか?
橋本:しょっちゅう嚙んだりイントネーションを間違えたりしていました。今でも言えないのが「かばねやみ」、「なまけもの」という意味なんですが難しいですね。
森:特に方言は難しいですよね。なかなか覚えられずに苦労していました。

LF-sp2.jpg――― 岩手の地元の方々が沢山出演されていましたが、オーディションとかされたのですか?
森:セリフのある人はオーディションしました。仙台などロケ地から近い所でやりました。特に方言の強い方は地元の方です。

――― 1年に渡るオールロケでしたが、一番辛かった季節は?
橋本:真冬とか真夏はそれなりに覚悟していたのでそんなに大変ではなかったのですが、冬になる前のまだ覚悟ができてない秋とかの寒さは堪えましたね。まだ薄着なのに急に寒くなってしまって。真冬になってしまえば、雪の中でも楽しめました。

――― ベルリン国際映画祭では?
森:去年の夏にはスペインへ行って、この間はベルリンへ行ったのですが、日本の食材や料理にとても興味を持って頂きました。それから、日本にこんなにもはっきりとした四季があることにも驚かれていました。親子関係など人間関係にも自分のことに置き換えて感想を言って下さり、とても好評をいただきました。

LF-sp1.jpg――― 日本の方とは違った見方をされるので、新しい発見もあったでしょうねえ?
森:直接感想を言いに来てくださるので、それが楽しかったですね。
橋本:ベルリンは真冬で曇りの日が多かったせいか、夏と冬の強いコントラストを面白がって見て頂いたようです。

――― 二つ星クラスの有名シェフに特別なお料理を作って頂いたとか?
森:ベルリンでは夏篇と冬編を上映したのですが、それにインスパイアされて作ったという料理をご馳走になりました。微妙な味でした。
橋本:繊細な日本料理に対しダイナミックなドイツのお料理でした。例えば、メインでは瑞々しいおナスにカレー粉に味噌が混ぜられた大胆なソースがかけてあったり、前菜ではウスターソースがベースにあったりと、口の中が面白い感じになっていました。これが食の国際交流か!? って思いました(笑)。

LF-b-i-2.jpg――― 最後にメッセージを。
森: 「リトル・フォレスト」の場を広げて頂いたら嬉しく思います。本日はお出で下さいまして誠にありがとうございました。
橋本:この作品は長い間お付き合いさせて頂いた作品ですので、これからは皆さんに末永く見守って頂きたいと思えるような映画になりました。届くべき人に届いて欲しい、ご覧になった皆さんの心の中で豊かな時間となれば光栄に思います。今日は本当にありがとうございました。
 

(河田 真喜子)

 

「おおさかシネマフェスティバル2014」開催~ 映画ファンのための映画まつり ~
◆主演女優賞に赤木春恵さん(出席)
◆ 『ペコロスの母に会いに行く』(主演女優賞)受賞記念上映
◆『旅立ちの島唄~十五の春~』(脚本賞)受賞記念上映

春恒例の「おおさかシネマフェスティバル2014」を今年も3月2日(日曜日)に大阪歴史博物館にて開催される。前身の「おおさか映画祭」以来の恒例行事であり、当フェスティバル最大のイベント「2013年度ベストテンおよび個人賞」が下記の通り発表された。

赤木春恵.jpg主演女優賞に、芸歴75年に及ぶ日本映画界の大ベテランにして『ペコロスの母に会いに行く』で映画初主演を果たした赤木春恵のほか、主演男優賞に『横道世之介』『武士の献立』『千年の愉楽』など6本(アニメ含む)に出演し大車輪の活躍を見せた高良健吾、助演女優賞にベストテン1位の『凶悪』で印象的な演技を見せたほか、5作品に出演した演技派・池脇千鶴、『ペコロスの母に会いに行く』の原田貴和子、助演男優賞には『旅立ちの島唄~十五の春~』『舟を編む』などに出演のベテラン小林薫、新人賞には『少年H』でタイトルロールを務めた吉岡竜輝、大阪映画『ソウル・フラワー・トレイン』で鮮烈な印象を残した咲世子らの豪華な顔ぶれが勢ぞろい。

監督賞には東映京都撮影所で格調高い時代劇『利休にたずねよ』を撮った田中光敏監督、脚本賞に『旅立ちの島唄~十五の春~』の吉田康弘監督、撮影賞に『許されざる者』『人類資金』の笠松則通、音楽賞に異色の音楽映画『フラッシュバックメモリーズ 3D』のGOMA、新人監督賞には『ソウル・フラワー・トレイン』の西尾孔志ら、活躍著しい大阪および関西ゆかりの映画人、アーティストがそろった。
また、受賞記念上映として午前中に脚本賞に輝いた『旅立ちの島唄~十五の春~』を、表彰式後には主演女優賞を受賞したベストテン2位作品『ペコロスの母に会いに行く』を上映予定だ。浜村淳さんによるベストテン表彰式の受賞者とのトークも人気の、大阪・関西の映画ファンが集う春の映画祭り。授賞式も特別上映も楽しめる貴重な機会だ。チケットは2月8日(土)10:00より、チケットぴあにて販売される。詳細は以下のとおり。

●おおさかシネマフェスティバル2014開催概要
ベストテン発表&表彰式および受賞記念作品上映、多彩なゲストを迎えて開催する映画のお祭り!
■日時:2014年3月2日(日)10時スタート(9時30分開場)
■会場:大阪歴史博物館4階講堂(大阪市中央区大手前4-1-32 TEL 06-6946-5728) 
   地下鉄谷町線・中央線「谷町四丁目駅」2号・9号出口(NHK大阪放送会館隣)
■料金:1日通し券 前売2800円/当日3000円(※全指定席)
■チケット発売:2月8日(土)10時~/Pコード552-506
(電話予約:0570-02-9999 HP:
http://pia.jp/t/oaff/
■映画祭公式ホームページ:
http://www.oaff.jp
■スケジュール
09:30~ 開場
10:00~ 開演(委員長あいさつ)
10:05~ 脚本賞受賞記念『旅立ちの島唄~十五の春~』(監督・脚本:吉田康弘)上映(114分)
     (休憩60分)
13:00~ ベストテン発表&表彰式(~14:20予定)
     (休憩20分)
14:40~ 主演女優賞受賞記念『ペコロスの母に会いに行く』(監督:森﨑東)上映(113分)

     (終了16:35予定)


【ベストテンおよび受賞結果】

■日本映画部門
1位 凶悪
2位 ペコロスの母に会いに行く
3位 舟を編む
4位 かぐや姫の物語
5位 横道世之介
6位 永遠の0
6位 さよなら渓谷
8位 風立ちぬ
8位 そして父になる
10位 藁の楯

■外国映画部門
1位 ゼロ・グラビティ
2位 愛、アムール
3位 ジャンゴ 繋がれざる者
4位 ザ・マスター
5位 ゼロ・ダーク・サーティ
6位 セデック・バレ
7位 嘆きのピエタ
8位 シュガーマン 奇跡に愛された男
9位 終戦のエンペラー
10位 キャプテン・フィリップス
10位 パシフィック・リム
※日本映画は6位と8位が同得票、外国映画は10位が同得票

■個人賞(外国映画部門)
監督賞 アルフォンソ・キュアロン(『ゼロ・グラビティ』)
主演女優賞 サンドラ・ブロック(『ゼロ・グラビティ』)
主演男優賞 ホアキン・フェニックス(『ザ・マスター』)
助演女優賞 ニコール・キッドマン(『ペーパーボーイ 真夏の引力』)
助演男優賞 クリストフ・ヴァルツ(『ジャンゴ 繋がれざる者』)

■個人賞(日本映画部門)


 主演女優賞 赤木春恵 (『ペコロスの母に会いに行く』)
【受賞の言葉】おおさかシネマフェスティバルにおいて主演女優賞を頂けましたこと心から嬉しく思っております。70数年前京都で映画女優としてスタートし、ラジオ、試験放送の時代のテレビと、大阪の地には思い出がたくさん溢れるほどです。
『ペコロスの母に会いに行く』は私の原点である映画に再びめぐり逢うことのできた作品でした。映画の現場を愛する気持ちが、映画の神様に届いたのかしら!と思います。

【略歴】1924年、旧満州生まれ。40年、松竹にニューフェースとして入社、43年に大映、48年東映移籍、59年森繁劇団に参加するとともにフリーとして活動。舞台、テレビ、映画と幅広く活躍。87年、第13回菊田一夫演劇賞受賞。93年、紫綬褒章、98年、勲四等寶冠章受章。99年橋田文化財団特別賞。テレビの代表作は「3年B組金八先生」「渡る世間は鬼ばかり」など。映画は61年『宮本武蔵』、73年『野良犬』、80年『二百三高地』。昨年の『ペコロスの母~』は初主演映画。11年に舞台からの引退を公表。


 高良健吾.jpg主演男優賞 高良健吾 (『横道世之介』『武士の献立』『千年の愉楽』ほか)
【受賞の言葉】今回おおさかシネマフェスティバルで主演男優賞をいただけると聞き、嬉しいです。横道世之介で演れた事、武士の献立で演れた事、もちろんその逆も。一つ一つの現場でしか感じられない事を大切にしていきたいなと思います。やっぱ。僕は本当に役に気づかされる事が多く、役に感謝っす。横道世之介、武士の献立に関わったみんなのおかげです。代表してもらいまーす。の気持ちです。日々、精進します。ありがとうございます。

【略歴】1987年11月12日、熊本県熊本市出身。06年公開の『ハリヨの夏』で映画デビュー。07年の『M』で第19回東京国際映画祭〝日本映画・ある視点〟部門特別賞受賞。以降、映画を中心に数々の作品に出演。10年に『ソラニン』『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』『おにいちゃんのハナビ』で第23回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎新人賞受賞。11年『軽蔑』で第35回日本アカデミー賞新人俳優賞、12年『苦役列車』では同賞助演男優賞受賞。昨年は『きいろいゾウ』(声)『横道世之介』『県庁おもてなし課』『千年の愉楽』『潔く柔く』『ルームメイト』『ジ・エクストリーム、スキヤキ』『かぐや姫の物語』(声)『武士の献立』とさまざまなジャンルに出演。今後の公開作品に『私の男』『まほろ駅前協奏曲』がある。
 

池脇千鶴.jpgのサムネイル画像助演女優賞 池脇千鶴 (『舟を編む』『爆心 長崎の空』『凶悪』『くじけないで』『潔く柔く きよくやわく』)
【受賞の言葉】今回、このような賞をいただき、うれしく、そしてとても驚いています。助演賞という名に値する程の印象を残せたのだろうか? いえ、きっと違います。素晴らしい作品たちに恵まれたこと。そしてそれによって、地味だけれど大切な仕事を忘れないでいて下さったのだと思います。新人賞の時のことはさっぱり覚えていませんが(笑)、また、おおさか映画祭に行けることを楽しみにしています。本当にありがとうございます。
【略歴】1981年11月21日、大阪府出身。97年三井のリハウスガールオーディションで、市川準監督に見出され芸能界デビュー。99年、市川監督の映画『大阪物語』で沢田研二、田中裕子が演じる夫婦漫才師の娘役でキネマ旬報新人女優賞など数多くの賞を受賞。04年犬童一心監督『ジョゼと虎と魚たち』で演技派女優として高く評価され、日本映画になくてはならない存在になっている。昨年はジャンルの異なる5本の映画に出演した。2014年は『神様のカルテ2』と『そこのみにて光輝く』の公開が控えている。

 

原田貴和子.jpgのサムネイル画像助演女優賞 原田貴和子 (『ペコロスの母に会いに行く』)
【受賞の言葉】私の故郷長崎で生まれた映画『ペコロスの母に会いに行く』。たくさんの方々に共感して頂いたことをとても嬉しく思います。私自身原作を読んで、たくさんの愛と勇気をもらいました。どんなことがあっても生きていくことの大切さや命の尊さを、あらためて感じました。頂いた賞を励みにこれからも心を磨いていきたいと思います。

【略歴】長崎県長崎市出身。1986年、大林宣彦監督の角川映画『彼のオートバイ、彼女の島』で映画主演デビュー。本映画祭前身の第12回おおさか映画祭主演女優賞を受賞したほか、第8回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞などを受賞する。妹の原田知世とも87年馬場康夫監督『私をスキーに連れてって』、93年鈴木清順監督『結婚』で共演、本映画でも20年ぶりに姉妹での共演をしている。近年の出演作品に89年長崎俊一監督『誘惑者』、06年、奥田瑛ニ監督『長い散歩』、08年、岩松了監督『たみおのしあわせ』などがある。

 

小林薫.jpg助演男優賞 小林薫 (『旅立ちの島唄~十五の春』『舟を編む』『夏の終り』)
【受賞の言葉】南大東島っていう耳慣れない島での撮影でした。絶海の孤島で船は港に接岸できません。日本三大貧乏プロデューサーの一人は「昨年度NO1の映画やで」と誉めてくれました。どちらにしても、吉田監督の人柄と執念で完成した作品です。ぜひご高覧下さい。

【略歴】1951年9月4日、京都市生まれ。71~80年まで唐十郎主宰の状況劇場に在籍。退団後、映画、ドラマ、舞台、CMなどで幅広く活躍。85年森田芳光監督『それから』で日本アカデミー賞最優秀助演男優賞、99年、滝田洋二郎監督『秘密』で同賞主演男優賞、07年松岡錠司監督『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』でも同賞助演男優賞を受賞。昨年は石井裕也監督『舟を編む』、熊切和嘉監督『夏の終り』に『旅立ちの島唄』と立て続けに出演した。

 

咲世子.jpg新人女優賞 咲世子 (『ソウル・フラワー・トレイン』)
【受賞の言葉】とてもとても驚いてます。こんな素敵な賞を頂けたこと、本当に光栄に思います。気付けば女優を夢見て大阪から上京し5年が経ちました。お芝居に対して悩んで立ち止まることも沢山ありました。悩みながら進んだ一つがこの作品でもあり、監督や共演者の方々と話をして悩みを埋めていき、作品を作るという楽しさを知った機会でもありました。この作品に出会えたことに心から感謝します。

【略歴】1990年7月4日生まれ。大阪府出身。10代の頃にティーンファッション誌のモデルとして活躍。上京後は女優業を軸として活動。主な出演作品は、映画『クローズZEROⅡ』(09年)、『ランウェイ☆ビート』(11年)、『ツナグ』(12年)。ドラマ「サムライハイスクール」(NTV系)、「私が恋愛できない理由」(CX系)、「ネオ・ウルトラQ」(WOWOW)ほか。清潔感あるキャラクターでのCMも活躍も目立つ。今作はオーディションでヒロイン役を射止め、自身の代表作となる。
 

吉岡竜輝.jpg新人男優賞 吉岡竜輝 (『少年H』)
【受賞の言葉】この様な栄誉ある賞をいただけてとてもうれしいです。この賞をいただけたのは、僕の力だけではなくいろいろな方々に助けていただいたおかげです。これからも、これでよしとせずに前へ一歩一歩踏み出して行きたいと思います。僕は、この映画で多くの事を学び、そして多くの初めてを体験しました。初映画、初海外、初めてクランクアップで泣いた事。これからもいろいろな初めてを体験して、成長して行きたいです。そのチャンスを僕に下さい!!(笑)

【略歴】2000年10月15日、兵庫県出身。松竹芸能所属。子役としてデビュー。舞台では07年京都・南座の「義経千本桜 すし屋」をはじめ、大阪・松竹座で09年「実盛物語」、12年「さよなら御園座 五木ひろし公演(御園座)」、13年「吉本百年物語3月公演(なんばグランド花月)」に出演。NHK朝ドラ「カーネーション」に、主人公の幼なじみ安岡勘助の少年時代を演じて注目され、翌年「浪花少年探偵団」にも出演。映画『少年H』では主役の水谷豊、伊藤蘭夫婦の息子というタイトルロールで主演。第38回報知映画賞新人賞を獲得。第87回キネマ旬報ベスト・テン。新人男優賞。第37回日本アカデミー賞新人俳優賞受賞も決まっている。

 

監督賞 田中光敏(『利休にたずねよ』)
【受賞の言葉】市川海老蔵さん、中谷美紀さんをはじめとする素晴らしい役者の方々、そして歴史を持つ京都東映撮影所のスタッフの皆さんたちと一緒に仕事をすることができ、幸せでした。素晴らしい原作と出会い、素晴らしい役者の方々、スタッフ、そしてこの映画を観て下さった多くの方々に見守られていただいた賞だと思っています。本当に嬉しい賞を有難うございました。

 【略歴】1958年、北海道出身。大阪芸術大学卒業後、電通映画社(現在電通テック)、テレビマンユニオンCMを経て、’84年(株)クリエイターズユニオンを設立。CMディレクターとして数多くの作品を手がけ、ACC賞、日本放送連盟賞など多数受賞。01年「 化粧師 」で映画監督デビュー。03年さだまさし原作「 精霊流し」で日本映画復興賞・奨励賞を受賞。09年「 火天の城」第33回日本アカデミー賞美術賞優秀賞受賞。第4作目の第140回直木賞受賞作(山本兼一著)「利休にたずねよ」を監督し、第37回モントリオール世界映画祭最優秀芸術貢献賞、第30回山路ふみ子文化賞、第37回日本アカデミー賞優秀作品賞受賞。

脚本賞 吉田康弘(『旅立ちの島唄~十五の春~』)
【受賞の言葉】映画を図るスケールが大小だけではなく、強弱もあると信じて、強い気持ちで挑みました。シナリオ創りの過程で、取材に応えて下さった南大東島の皆さまに改めて感謝します。これからもオリジナル作品に挑戦していきたいです。6年前に新人監督賞を頂き、今回は脚本賞を頂けたので、次は作品賞を目指して頑張ります。

【略歴】1979年大阪府出身。同志社大学卒業後、なんばクリエイターファクトリー映像コースで井筒和幸監督に学ぶ。同監督作品『ゲロッパ!』(03)の現場に半ば押しかけるように見習いとして参加し、映画の世界へ。助監督しての経験を積んで、07年、石田卓也、大竹しのぶ主演の『キトキト!』で監督デビューし、型破りな母子の物語として話題になった。昨年は、三吉彩花主演、大竹しのぶ、小林薫出演の『旅立ちの島唄~十五の春~』と、福士蒼汰主演の『江ノ島プリズム』を続けて公開。今年は野村周平主演『クジラのいた夏』を春に控えている。脚本家としても活躍しており、井筒和幸監督作品『ヒーローショー』(10)、『黄金を抱いて翔べ』(12)では脚本を担当している。

撮影賞 笠松則通(『許されざる者』『人類資金』)
【受賞の言葉】この度は名誉ある賞に選んで頂いてありがとう御座います。『許されざる者』は北海道の晩秋から初冬にかけての厳しい自然と戦いながら、スタッフキャストが一丸となって撮り切った感があります。決して勝ち戦ではなかったかもしれませんが、自分としてはキャメラマンとして本分を全う出来たと思っています。『人類資金』は私にとって初となるデジタルカメラでの撮影と、ニューヨーク、ロシア、タイそして国内と4カ国をほぼひと月で撮りきるという強行軍でしたが、内外の優秀なスタッフのお陰で撮影完遂出来た事を改めてこの場をお借りして感謝致します。

【略歴】1957年愛知県生まれ。80年『狂い咲きサンダーロード』(石井聰互監督、現在は岳龍)でキャメラマンデビュー。その後82年『爆裂都市』(石井岳龍監督)89年『どついたるねん』(阪本順治監督)90年『バタアシ金魚』(松岡錠司監督)では第16回おおさか映画祭撮影賞受賞。その他の作品に『夜がまた来る』(石井隆監督)『顔』『KT』『闇の子供たち』『大鹿村騒動記』(以上阪本順治監督)『青い春』(豊田利晃監督)『赤目四十八瀧心中未遂』(荒戸源次郎監督)『いつか読書する日』(緒方明監督)『東京タワー、オカンとボクと、時々オトン』(松岡錠司監督)『悪人』(李相日監督)など

音楽賞 GOMA(『フラッシュバックメモリーズ 3D』)
【受賞の言葉】映画が完成するまでの僕は人生を諦めかけていました。しかし最近はあの日があったからこそ今があるんだと人生2回目のスタート台に立つ自分がいます。大阪人としてこの賞を頂けた事本当に誇りに思います。これを励みに諦める事なくチャレンジを続けたいと思います。ありがとうございました!

【略歴】1973年大阪府生まれ。オーストラリアアボリジニの管楽器ディジュリドゥの奏者・画家。98年アボリジニの聖地アーネムランドにて開催された「バルンガディジュリドゥコ ンペティション」にて準優勝。ノンアボリジニープレイヤーとして初受賞という快挙を遂げる。09年交通事故に遭い高次脳機能障害の症状が後遺し外傷性脳損傷と診断され活動を休止。事故後まもなく突然描き始めた緻密な点描画が評価され2010年夏に初の個展を開催。2011年フジロックフェスティバ ルにて再起不能と言われた事故から苦難を乗り越え音楽活動を再開。2012年GOMAを主人公とする映画『フラッシュバックメモリーズ 3D』が東京国際映画祭にて観客賞を受賞。2013年全州国際映画祭でNETPAC賞(最優秀アジア映画賞)を受賞 www.gomaweb.net

新人監督賞 西尾孔志(『ソウル・フラワー・トレイン』)
【受賞の言葉】大阪生まれの大阪育ちに見えないと言われるほど、大阪への反抗期が長く続きましたが、30代も終りに来てコテコテ笑いと浪花節を素直に受け入れられるようになりました。この賞を頂けた事で、やっと大人の大阪人の仲間入りができた気がします。ほんまに誇りに思います!めっちゃ嬉しい!

【略歴】1974年大阪生まれ、映画監督。10代の頃に京都の撮影所で録音見習いとして働き、深作欣二ら黄金期の監督たちの現場を体験。20代からビジュアルアーツ大阪で学び、自主制作映画『ナショナルアンセム』が映画監督・黒沢清や作家の中原昌也らから高い評価を得て、シネアスト・オーガニゼーション・大阪エキシビション(略称CO2)で第一回シネアスト大阪市長賞(グランプリ)受賞。その後、数本の短編映画を撮るかたわら、CO2の運営ディレクターを4年間務め、全国的映画祭へと成長させる。現在も監督をしながら、大学や専門学校で講師を務め、関西映画シーンの育成にも情熱を傾ける。

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