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『旅するダンボール』

 
       

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作品データ
原題 From All Corners  
制作年・国 2018年 日本
上映時間 1時間31分
監督 岡島龍介
出演 島津冬樹 他
公開日、上映劇場 2018年12月7日(金)~YEBISU GARDEN CINEMA、MOVIX京都、神戸国際松竹、12月28日(金)~イオンシネマ四條畷、2019年1月11日(金)~イオンシネマ高の原ほか全国順次ロードショー

 

~突きつめた“段ボール愛”で、世界にメッセージを送るアーティスト~

 

このドキュメンタリー映画の主人公は、島津冬樹さん。黒縁メガネに濃いヒゲと、陽だまりのような笑顔が印象的な彼は1978年神奈川県出身で、“段ボールアーティスト”と呼ばれている。日本各地、そして世界の約30カ国から段ボールを拾ってきて、それを素朴で使いやすそうな財布に仕上げるのだ。


tabidan-500-1.jpg映画は、シンプルなアニメーションと英語のナレーションで始まり、さまざまな人々への「あなたが大切にしているものとは?」というインタビュー映像へと続く。みんなが大切にしているものとは、誰かからもらった思い出の品とか、小さい頃から手放せないものとか、超レアなものだったりするのだが、島津さんにとって宝物に等しい大切なものとは、まさしく段ボールなのである。不要品として捨てられたゴミの中から、“カワイイ段ボール”を見つけ出した時の、きらきらと輝く彼の目はまるで子どものよう。


tabidan-500-2.jpgカメラは、島津さんの幼少期や、某有名広告代理店に勤めていた頃の上司や先輩たちが語るエピソードを追いかけ、彼の人となりを鮮やかにあぶり出していく。そして、彼がすごく気に入った、キュートなゆるキャラっぽいイラストが印象的な徳之島産じゃがいもの段ボールへと照準を合わせ、そのルーツを知るための長崎から熊本への旅まで、見る者を引っぱっていく。現代では後継者もなかなかいない“段ボール印刷の手彫り職人”という職種にも私たちの目を向けさせる。そのじゃがいもの段ボールで作った財布を“あこがれの人”に手渡すシーンでは、ついもらい泣きしてしまった。ええ話やなあ、と。


tabidan-500-3.jpg使い捨てが当たり前だった時代への反省から、単なる再利用のリサイクルにとどまらず、新たな価値と有用性を生み出す「アップサイクル」がいま注目されている。段ボールで違う価値を作り出そうという島津さんの活動は、ワークショップとなって世界にじわじわと浸透しているようだ。彼は「段ボールって、温かい」と語り、段ボールの傷ついた底面を愛おしそうに見て、「どんな旅をしてきたのだろう」と、段ボール自身の物語を想像するという。なんとも凄い愛ではないだろうか。と同時に、何気ないものに潜んでいる知られざるストーリーに目を向け、それを掘り出す…これこそアーティストたるべき姿勢なのだ。


映画が終わる頃、冒頭の「あなたにとって大切なものとは?」というインタビューが非常に功を奏していることに気づく。なぜなら、島津さんのコンセプトは「不要なものから大切なものへ」なのだから。


(宮田 彩未)

公式サイト⇒ http://carton-movie.com/

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