制作年・国 | 2018年 日本 |
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上映時間 | 1時間55分 |
原作 | 小森陽一著「オズの世界」(集英社文庫刊) |
監督 | 波多野貴文 |
出演 | 波瑠、西島秀俊、岡山天音、中村倫也、濱田マリ、橋本愛、柄本明他 |
公開日、上映劇場 | 10月26日(金)より、TOHOシネマズ梅田/TOHOシネマズなんばほか全国ロードショー |
~遊園地の魅力がたっぷり!
文句だらけの新入社員がお客様を笑顔にするまで~
遊園地が登場する映画は数多くあるが、遊園地が主役の映画はそう多くはない。今回舞台となるのは、熊本にある九州最大の遊園地、グリーンランドだ。広大な敷地には、豊富な遊具があるだけでなく、動物たちと触れ合う場所や、花火を見ることができるような大きな広場もある。もちろん熊本のシンボル、巨大くまモンもいるのだ。その昔は関西でも宝塚ファミリーランドや阪神パーク、エキスポランド、神戸ポートピアランドと数多くの遊園地があったが、ユニバーサルスタジオジャパンができてからは、時代の流れと共に閉園。今や小さい子供づれでも気軽に楽しめる遊園地は少なくなってしまった。グリーンランドやそこで働く人たちを見ていると、私がかつて神戸ポートピアランドで学生アルバイトをしていた時に、来園されるお客様が皆、笑顔で、また楽しそうに帰っていかれた姿を思い出した。遊園地とは、お客様が楽しむためにやってくる場所、そして働く者は常に笑顔で、お客様が気持ちよく楽しんでいただけるよう心を尽くす。意に反してグリーンランドに配属されてしまった新入社員の成長物語は、そんな遊園地の裏側をたっぷり見せてくれる。
生粋の江戸っ子、波平久瑠美(波瑠)は彼氏のトシ君(中村倫也)と同じ、超一流のホテルチェーンに就職したが、喜んだのも束の間、グループ傘下の遊園地、グリーンランドに配属となる。彼氏と離れるは、ゴミ拾いからスタートさせられ、何のために大学を出たのかと不満ばかり。おまけに苗字の波平(なみひら)を、「なみへい」と読まれ、テンションの高い同僚たちに距離感を感じてしまう。優秀な社員に与えられるMVPになれば、異動を申し出ることができるとトシ君に諭された久瑠美は、数々の企画を成功させ「魔法使い」と呼ばれる先輩社員の小塚慶彦(西島秀俊)の指導を受けながら、グリーンランドの仕事に取り組むのだったが・・・。
思いもよらぬ社会人生活がスタートした久瑠美を、遊園地ならではのサプライズで歓迎するグリーンランドの社員たち。特に地元熊本出身の橋本愛のテンションの高さは、心の底からこの役を楽しんでいることが伝わってくる。お客様のために、また社員たちの結束を高め、やる気を出させるために小塚が提案し、定着してきたグリーンランドのルールを見ていると、仕事をする方も楽しくという小塚の人となりが見える。魔法使いのように、遊園地や社員に活気を与えてきた小塚を、西島秀俊が茶目っ気たっぷりに演じているのも見どころだ。
そして、悩める若手社員を演じさせれば右に出るものはいない波瑠が、最初は文句ばかりながら、次第にお客様の笑顔のために働くことにやりがいを感じ、次の「小塚」になるまでに成長する久瑠美を好演している。マニュアル通りにいかないことも多く、ハプニングがつきものの遊園地で、いかにそれをチームワークで、お客様に不安を抱かせないように処理するか。その瞬時の判断や連携の様子もしっかり描かれ、実にリアルだ。遊園地はハード面の充実はもちろん必要だが、そこで働く人たちとの触れ合いも、お客様の思い出となって心に残る。久しぶりに遊園地に行って、笑顔の魔法をかけてもらいたい気持ちになった。
(江口由美)
公式サイト→http://ozland.jp/
(C)小森陽一/集英社©2018 映画「オズランド」製作委員会