「フィリピン」と一致するもの

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 第19回大阪アジアン映画祭は、3月1日から10日間の上映を終えて閉幕し、最終日の10日に授賞式が行われた。見事グランプリに輝いたのは、モンゴル映画の『シティ・オブ・ウインド』。台湾映画『サリー』(リエン・ジエンホン監督)が来るべき才能賞とABC賞の2冠を獲得、尼崎を舞台にした日本映画『あまろっく』(中村和宏監督)が観客賞を獲得した。全ての授賞結果と授賞理由をご紹介したい。
 
★グランプリ(最優秀作品賞)
『シティ・オブ・ウインド』(City of Wind)|フランス・モンゴル・ドイツ・ポルトガル・オランダ・カタール|監督: ラグワドォラム・プレブオチル(Lkhagvadulam Purev-Ochir)
 
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<授賞理由>
青春映画というジャンルの枠組みでグランプリを受賞した本作は、私たちが見たことのない世界を照らし出し、スピリチュアリティや世代間の対立といった問題を、巧みさと自信に満ちた手腕で描き出す。この映画は、主人公の成長を繊細に描きつつ、啓示的な演技を中心に据えている。
 
★来るべき才能賞
リエン・ジエンホン(LIEN Chien Hung/練建宏)|台湾|『サリー』(Salli/莎莉)監督
<授賞理由>
リエン・ジエンホン監督は、予想だにしなかった展開とひねりを加えつつも、過去の偉大なキャラクター主導型コメディを彷彿とさせる素晴らしい創作力を発揮した。思い出の場所や人物を散りばめた卓越した脚本で、心からの感動と大爆笑コメディを両立させるテクニックを披露したリエン監督の次回作を大いに期待する。
 
★ABC テレビ賞
『サリー』(Salli/莎莉)| 台湾・フランス | 監督: リエン・ジエンホン(LIEN Chien Hung/練建宏)
<授賞理由>
とてもほっこりした気持ちにさせる映画です。パリへと渡る主人公の葛藤もうまく描けていますし、家族や友人との触れ合いも暖かく、読後感が大変良いです。なにより、ニワトリが可愛い!
 
★薬師真珠賞
チー・ユン (CHI Yun/池韵)|オーストラリア・中国|『未来の魂』(Unborn Soul/渡)主演俳優
<授賞理由>
チー・ユン(池韵)という俳優が存在したからこそ『未来の魂』は生み出された。そして彼女の繊細で深みのある演技が、観客の魂を最初から最後まで揺さぶりつづけた。
 
★JAPAN CUTS Award
『カオルの葬式』(Performing KAORU’s Funeral)| 日本・スペイン・シンガポール | 監督: 湯浅典子(YUASA Noriko)
<授賞理由>
『カオルの葬式』はある家族の葬儀の場で起きる赤裸々な感情のぶつかりを見事に捉えたホームドラマである。タガの外れた演技の完璧な掛け合いが、パーカッションのリズムが心地よいサウンドトラックと勢いのいい編集と相まって、家族の機能不全を面白くも切なく描いたダークコメディに仕上がっている。
 
★JAPAN CUTS Award スペシャル・メンション
『ブルーイマジン』(Blue Imagine) | 日本・フィリピン・シンガポール | 監督: 松林麗
(MATSUBAYASHI Urara)
<授賞理由>
松林麗の力強くて誠実な初監督作である『ブルーイマジン』は私たちが生きる現在の証であり、そのメッセージにおいて緊急性を、そのアプローチにおいて癒しを感じさせる。現代文化に蔓延るセクハラや虐待に大胆に立ち向かう一方で、団結のレジリエンス(回復力)を指し示している。
 
★芳泉短編賞
『シャングリラに逗留』(Sojourn to Shangri-la/是日訪古) | 中国 | 監督: リン・イーハン (LIN Yihan/林詣涵)
<授賞理由>
強烈なイメージの魅力で観客の心を掴んで離さない物語は、一連のマジカルな展開に続く導火線に火をつけ、特に驚くほどパワフルな後半で映画的衝撃をもたらす。『シャングリラに逗留』は見る者すべてに驚きを与え、それは監督の映画づくりの成功と言える。
 
★芳泉短編賞スペシャル・メンション
『オン・ア・ボート』(On a Boat)| 日本 |監督: ヘソ (Heso)
<授賞理由>
結婚と人間関係をテーマに真摯に向き合った本作で、ヘソ監督は力強い演出力と緻密に計算されたテクニックで完成度の高い作品に仕上げ、確固たる才能を印象付けた。
 
『スウィート・ライム』(Sweet Lime)| 香港・イギリス |監督: ファティマ・アブドゥルカリム (Fatema
ABDOOLCARIM)
<授賞理由>
子供であること、大人であること、そして女性であることについての重要な物語を、映画制作の高い能力をもって表現した。アブドゥリカリム監督自身のコミュニティに対する貴重な洞察であり、家父長制文化に抑圧される女性たちへのリアリズムに基づいた観察でもある。
 
★観客賞
『あまろっく』(Amalock)|日本|監督:中村和宏(NAKAMURA Kazuhiro)
 
登壇者(敬称略。右から)
デイヴ・ボイル(コンペティション部門審査委員)Dave BOYLE
村田敦子(コンペティション部門審査委員)MURATA Atsuko
アンガ・ドウィマス・サソンコ(コンペティション部門審査委員)
湯浅典子(『カオルの葬式』監督)
ヘソ(『オン・ア・ボート』監督)
リエン・ジエンホン(『サリー』監督)
ステファニー・アリアン(『ブルーイマジン』出演)
チー・ユン(『未来の魂』主演俳優)
ファティマ・アブドゥルカリム(『スウィート・ライム』監督)
中村和宏(『あまろっく 』監督)
板井昭浩(朝日放送テレビ株式会社コンテンツプロデュース局制作部)
薬師悠一郎(株式会社薬師真珠)
靜敬太郎(公益財団法人芳泉文化財団理事長)
上倉庸敬(大阪映像文化振興事業実行委員会委員長)
 
第19回大阪アジアン映画祭公式サイト https://oaff.jp 
 


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フィリピンパブの裏側で未だ行われている偽装結婚を背景に、多文化共生のあり方をリアルに描いた、実話を基にした異色のアジアン・ラブストーリー『フィリピンパブ嬢の社会学』の東京初日舞台挨拶が2/17(土)に東京K’s cinemaで行われ、兄弟漫才コンビ「まえだまえだ」としても活躍していた主演の前田航基、共演の一宮レイゼルステファニーアリアン白羽弥仁監督原作の中島弘象が登壇した。


本作は重版を重ねる中島弘象氏による同名のベストセラー新書「フィリピンパブ嬢の社会学」の映画化作品。主人公の大学院生がフィリピンパブで働く女性と恋に落ち、ともに困難を乗り越えてくラブストーリーだ。作品の舞台である愛知県内で先行公開され大ヒットを記録し、ついに東京での公開を迎えた。
 



登壇者は満員の劇場に、観客からの大きな拍手を受けながら登場。

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主人公の大学院生・中島役を演じた前田は、「ラブストーリーの主演をさせて頂くことは多分これからの俳優人生で数えられるぐらいしかないと思うので、貴重な経験をさせて頂けたと感謝しています」と感慨深げに語った。


白羽弥仁監督が「主人公がいろんな人に出会って、いろんなアクシデントにぶつかって弾き返されるというジェットコースターのような原作の映画化なので、そのアクションに耐えられる肉体を持っている、アクション俳優として前田くんにお願いしました」と映画に前田の存在が不可欠だったことを明かすと、「本当に動けるんだぞってところを見てほしいです」と前田が続け、会場からは笑い声が上がった。


ヒロイン・ミカを演じた一宮レイゼルは本作が映画初出演。「日本に出稼ぎに来ているフィリピン人の背景や、家族愛、友人愛など大事なメッセージがたくさん詰まった話だったので、ぜひこの作品に参加したいという強い思いで参加しました」とオーディション時を振り返る。レイゼルと共演するシーンが多かった前田は、「実際の年齢も僕より1つ上のお姉さんなんで、出店でクレープをご馳走になってしまいました」と撮影エピソードを明かした。


ミカの同僚・アキを演じたステファニー・アリアンは、「現場ではアドリブをたくさん出すくらい、レイゼルさんと本当の友達になりました。」と笑顔をみせた。


最後に前田が「フィリピンはおおらかで、ポジティブで、心の余裕や許してあげる優しさのある本当に素敵な国。日常の中で、苦しいことも辛いこともあると思いますが、この映画を観て『大丈夫。なんとかなる。』そんな気持ちになっていただけたら嬉しいです」と伝え、イベントを締め括った。



さらに、大ヒットを受け拡大公開が決定。

3/1より封切となる大阪なんばパークスや池袋シネマ・ロサをはじめ、横浜ジャック&ベティ、MOVIX京都、キノシネマ天神、など全国各地での上映が決定。先行公開分も含めると単館スタートから20館へ異例の拡大公開となった。

 

併せてコメントも到着。

女優のルビー・モレノほか、フィリピンにルーツや関わりを持つ方々の他、サレンダー橋本(漫画家)、高木瑞穂(ノンフィクションライター)、飯塚花笑(映画監督)等多彩な面々から絶賛コメントが届いた。劇場情報と併せて、下記に掲載する。

フィリピンパ嬢の社会学コメン


東京  新宿ケイズシネマ公開中
    池袋シネマロサ  3/1~
         MOVIX昭島  5/10~

神奈川 横浜ジャックアンドベティ 3/16~

埼玉   MOVIX三郷 5/10~

大阪  なんばパークス 3/1~ 
    シアターセブン 3/9~

京都  MOVIX京都 4/5~

兵庫  kinocinema神戸国際 3/29~

岐阜  岐阜CINEX  3/16~

愛知  MOVIX三好  3/29~

静岡  MOVIX清水 4/5~ 
    浜松シネマイーラ 4月下旬

長野    アイシティシネマ 4/5~

別府    ブルーバード 3/29~

福岡    キノシネマ天神4/26~

熊本    熊本ピカデリー 5/10~


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パブで出会って、騙され?恋をした!

実話に基づく21世紀のアジアン・ラブストーリー


フィリピンパブを研究対象にしている大学院生・中島翔太(前田航基)はパブで偶然出会ったフィリピン人女性のミカ(一宮レイゼル)と付き合い始めることに。

しかし、彼女は偽装結婚をしていることが判明する。月給6万円、ゴキブリ部屋に監視付、休みは月に2回だけといった過酷な生活環境を目のあたりにする翔太。

一方、ミカは現状にめげることなく働き続け、故郷・フィリピンの両親の元に翔太を連れていく。彼女を大切に想う気持ちが次第に強まる翔太は、ミカに懇願され元締めのヤクザの元に乗り込むことになるが―


 

大学院生の実体験に基づいた話題の新書を映画化!

日本で働く外国人女性労働者の実態をリアルに描く


中島弘象氏による実体験を綴った話題の新書「フィリピンパブ嬢の社会学」を映画化!

フィリピンパブの裏側で未だ行われている偽装結婚のリアルを背景に、多文化共生のあり方を描いた異色のラブストーリーが誕生した。

 

前田航基が11年ぶりの単独主演

国内外で活躍する俳優陣がアンタッチャブルな世界に集結


主人公の中島翔太役には、2011年に映画「奇跡(監督:是枝裕和)」で、弟の前田旺志郎とW主演で鮮烈なデビューを飾った前田航基。今作は11年ぶりの主演(単独としては初主演)となる。ヒロインのフィリピンパブ嬢・ミカ役には、映画初出演となる一宮レイゼルが東京、愛知で開催された全国オーディションにて大抜擢。共演には、近藤芳正、勝野洋、田中美里、仁科貴をはじめ、カンヌ国際映画祭で高く評価された映画『PLAN75』のステファニー・アリアンや『ONODA一万夜を越えて』で主演の津田寛治、『東京不穏詩』で大阪アジアン映画祭の最優秀女優賞に輝いた飯島珠奈など、国内外で活躍する俳優陣が脇を固める。


多文化共生のあり方を『能登の花ヨメ」『ママ、ごはんまだ?』の白羽弥仁監督がPOPに描き出す。


出演:前田航基 一宮レイゼル ステファニー・アリアン 田中美里(友情出演) 津田寛治 飯島珠奈 仁科 貴 浦浜アリサ 近藤芳正 勝野 洋
原作:中島弘象『フィリピンパブ嬢の社会学』(新潮新書刊)
監督:白羽弥仁  脚本:大河内 聡 音楽:奈良部匠平
制作・配給:キョウタス 
©2023「フィリピンパブ嬢の社会学」製作委員会


(オフィシャル・レポートより)

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娘を殺された元夫婦と、犯行時に未成年だった加害者の女性・夏奈。癒やしようのない苦しみに囚われた3人の葛藤を見すえ、魂の救済、赦しという深遠なテーマに真っ向から挑んだ問題作『赦し』。いよいよ 3月18日(土)より、ユーロスペース、シネスイッチ銀座、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開関西ではシネ・リーブル梅田ほかにて3月24日(金)より公開となります。


怒りと憎悪の呪縛に囚われた主人公、克を演じるのは、フィリピンの巨匠ブリランテ・メンドーサと組んだ主演作『義足のボクサー GENSAN PUNCH』が記憶に新しい尚玄。元妻の澄子に扮するのは、第62回ブルーリボン賞助演女優賞を受賞したMEGUMI。そして、映画デビュー作『渇き。』などで独特の存在感を示してきた新進女優、松浦りょうが夏奈役に大抜擢。監督は世界各国の映画祭で話題を呼んできた日本在住の気鋭のインド人監督アンシュル・チョウハンの最新作です。


【日時】 3月11日(土) 12:00回終了後(13:38~13:50)
【場所】 シネ・リーブル梅田
            (大阪市北区大淀中1丁目1−88 梅田スカイビル タワーイースト3・4階)
【登壇者】 尚玄、松浦りょう、アンシュル・チョウハン監督 ※敬称略



yurushi-bu-550-2.jpgそんな本作の公開に先立ち、3月11日(土)に大阪アジアン映画祭 コンペティション部門で上映され、主演の尚玄さん、夏奈役に抜擢された松浦りょうさん、監督のアンシュル・チョウハンが登壇し、舞台挨拶とQ&Aを行いました。
 

まずは、監督が「ご来場いただきありがとうございます。大阪アジアン映画祭で上映でき、皆さんの前で挨拶できることを嬉しく思っています。皆さんにこの映画を楽しんでいただけたのか気になっているので、Q&Aを楽しみにしています」、尚玄さんは「ジャパンプレミアで大阪アジアン映画祭に戻ってこられて嬉しいです」と挨拶し、Q&Aに。


yurushi-main-500.jpg最初に、「大変興味深く拝見させていただきました。観た人それぞれの視点がある作品だと思います。特に、ポスターにも使われている松浦さんの振り返りのショットが印象的でした。彼女の表情にどのような演出をされたのでしょうか」という質問に対して監督は、「これは12テイク目でした。こういうものにしたいというイメージが自分の中にあったので、テイクを重ねて彼女の肩の位置や傾き加減など細かく指示をしました」と明かし、「映画の中でも特に大事なシーンになるので、観客の皆さんを見ているのか見ていないのか絶妙なバランスを意識して、自分の目指すイメージを意識して撮影しました」と、重要なシーンをどう見せるかへのこだわりを語りました。


次に、「当初の脚本から撮影時の脚本に落とし込むまでに大きく変わったことはありますか?」という質問に対して監督は、「2018年に初めて脚本を読んだ時は映画化する気持ちまで持っていけなかった」そうですが、その後、「コロナになって誰もが家に閉じこもるようになった時に読み返して、これは映画化すべきだと思いました。そこから日本で撮影できるように、少年法など日本の法律に沿って変わった部分や実際に裁判へ赴いて細かいところ調査しながら脚本を改正していきました」と時流や日本に合わせた脚本の変遷について明かしました。


yurushi-500-2.jpg最後に、尚玄さんと松浦さんへの「役作りの過程で一番難しかったこと」という質問について尚玄さんは、「全てが大変でした」と前置きし、中でも「僕は当事者ではないので、当事者じゃない人間がその人が抱えているものをリアルに表現できるのかということにすごく真摯に向き合いました」と役作りへの思いを語り、「(松浦)りょうちゃんと対峙している場面は芝居ではなかったから、監督の指示もありましたし、撮影が終わるまで一言も話さなかったです」と緊張感が漂っていた対峙シーンの裏側を明かしました。さらに、続けて「監督が早い段階で衣装を用意してくれたことがすごく幸運でした」と話し、「3週間前から衣装を着て、克として生活していました」と真摯に役に向き合い続けた日々を明かしました。


yurushi-500-1.jpgそして、松浦さんは、「私も、殺人を犯したことも刑務所に入ったこともないので、役作りとして経験できることではないし、殺人を犯してしまった方のインタビューを見て、役に落とし込んで考えました。その上で、刑務所の生活にできるだけ近い生活をして孤独を知ることで役を作り上げていきました。その時間が一番しんどかったです」と役作りについて明かしました。

観客から大きな拍手で見送られ、舞台挨拶は終了しました。



■監督・編集:アンシュル・チョウハン(『コントラ KONTORA』
■撮影:ピーター・モエン・ジェンセン 音楽:香田悠真
■出演:尚玄 MEGUMI 松浦りょう 生津徹 藤森慎吾 真矢ミキ
■プロデューサー:山下貴裕 茂木美那 アンシュル・チョウハン
■エグゼクティブ・プロデューサー:サイモン・クロウ ランカスター文江
■アソシエイト・プロデューサー:前田けゑ 澤繁実 岡田真一 木川良弘
■脚本:ランド・コルター 
■助成:文化庁 
■製作プロダクション:KOWATANDA FILMS、YAMAN FILMS 
■配給:彩プロ
■2022年/日本/日本語/カラー/2:1/5.1ch/98分
■原題(英語題):DECEMBER 
■©2022 December Production Committee. All rights reserved
公式サイト:https://yurushi-movie.com/

3月18日(土)より、ユーロスペース、シネスイッチ銀座、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開

3月24日㈮より、シネ・リーブル梅田/シネマート心斎橋/アップリンク京都/シネ・リーブル神戸にて


(オフィシャル・レポートより)

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第74回カンヌ国際映画祭2021 「ある視点部門」オープニング作品

実在の人物・小野田寛郎(おのだひろお)の約30年間を描いた人間ドラマ

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小野田寛郎の故郷・和歌山県で感激の凱旋上映!!

海外の資本で日本の史実が次々と映画公開する今、

小野田寛郎さんの残像がスクリーンに蘇り感動!!

日本公開に向けて、海南市が大太鼓判!!

 

1974年3月、終戦後約30年の時を経て帰還し「最後の日本兵」と呼ばれ、社会現象になった旧陸軍少尉・小野田寛郎(おのだ ひろお)の潜伏期間の史実を元に着想、映画化された『ONODA 一万夜を越えて』が10月8日(金)より全国公開されます。


フランス映画界で今最も注目されている新鋭 アルチュール・アラリが監督を務め、フランス、ドイツ、ベルギー、イタリア、日本の国際共同製作映画でありながら、ほぼ全編が日本語のセリフで紡がれているこの異色作は、第74回カンヌ国際映画祭2021の「ある視点」部門オープニング作品に選ばれ、現地で約15分ものスタンディング・オベーションを受けるなど、大反響を頂きました。現在行われているメディア向けの試写会でも連日完全予約制で満席となり、公開までに評判の高さは徐々に熱を帯びてきました。


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・来場者と記念撮影 
(左から)古田充司(海南青年団体連絡会議会長)、遠藤雄弥、小野田典生宮司


この度、公開前に小野田寛郎さんの故郷である和歌山県・海南市で「ふるさと試写会」と称して、小野田寛郎さんのことを知らない若い世代にも作品を観てもらうべく海南青年団体連絡会議の皆さまがボランティアで市の関係者を招待し、神出 政巳(じんでまさみ)海南市長をはじめスタッフ含めて約100名ほどの来場者を迎えて特別上映会を行いました。終戦後も任務解除の命令を受けられないまま、フィリピン・ルバング島にて約30年間を過酷なジャングルの中で過ごした小野田寛郎の青年期を演じた主演の一人・遠藤雄弥も当日に海南市入りを果たし、小野田寛郎さんの本家筋にあたる宇賀部神社に報告参拝、その後は上映会後の鏡開きとトークイベントに参加。


今秋、映画『MINAMATA』をはじめとする、日本の史実を元に描かれた映画が次々と公開される中、本作においては小野田寛郎さんの関係者の皆さまが太鼓判を押して、日本をはじめ世界に観て頂きたい素晴らしい作品であるとお墨付きを頂きました。


『ONODA 一万夜を越えて』ふるさと試写会 主催:海南青年団体連絡会議

■開催日時:9月19日(日)上映:14:00- 鏡開き&トークイベント:17:00-

■開催場所:海南nobinos(和歌山県海南市)ノビノスホール

■来場ゲスト:遠藤雄弥(主演)、小野田典生(宇賀部神社・宮司)


<宇賀部神社での参拝にて>

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・<千人針>の前で遠藤雄弥と小野田典生宮司


遠藤雄弥は和歌山県・海南市に入って真っ先に、小野田寛郎さんの本家筋にあたる小野田典生宮司のいる宇賀部神社に駆けつけた。そこは、小野田寛郎さんがフィリピン・ルバング島より帰還した後、自身の実家に戻る際に参拝した神社として当時一躍有名になり、小野田さんが故郷に戻った時には神社近くの田畑がメディアの中継ヘリコプターなどの停車場になるなど、海南市の中でも最も注目された場所として知られている。現在は、小野田寛郎座右の銘でもある「不撓不屈(ふとうふくつ:強い意志を持って、どんな苦労な困難に出会っても、決して心がくじけないこと。)」が記された記念碑が建立されていたり、小野田さんがお母様から出兵時に預かり、潜伏期間にもずっと胸ポケットにしまっていた<千人針>の展示やブラジルでの遺品などが展示されており、遠藤雄弥は小野田宮司と共に小野田寛郎さんのことを回顧し、本作の応援に改めて感謝を述べた。


遠藤曰く「本当は、映画の撮影前に伺いたかった場所であり、こうやってお話を聞くと、小野田寛郎さんを実際のニュースで見たことがなかった私にとって『本当に小野田さんは存在していたんだ』と改めて実感することができました」。
 


<上映会のトークイベントにて>

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・大ヒット公開を願い鏡開き(左から)小野田典生宮司と遠藤雄弥


遠藤雄弥と小野田典生宮司が改めて登壇、作品の大ヒットを願って鏡開きが行われた。ここでは、海南青年団体連絡会議の有志がボランティアで企画上映まで全ての運営し、小野田寛郎さんが生前自分の講演会や子供達に説き続けた「生きることの意味」について再考できる機会を作るために、今回の上映会に至った。壇上で、小野田宮司が「小野田寛郎が生前に言っていたこと、それは『戦争はどんなことがあっても始めてはいけない。一度始めてしまえば、必ず犠牲者は出る。』ということ、思い返したい」と述べ、遠藤も「カンボジアのジャングルで過酷な撮影の日々だったが、小野田さんの経験に比べたらとんでもない。撮影現場でも仲間がいたらこの素晴らしい映画ができました」と報告した。
 


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【STORY】

終戦間近の1944年、陸軍中野学校二俣分校で秘密戦の特殊訓練を受けていた小野田寛郎(遠藤雄弥/津田寛治)は、劣勢のフィリピン・ルバング島にて援軍部隊が戻るまでゲリラ戦を指揮するよう、命令を受ける。「君たちには、死ぬ権利はない」出発前、谷口教官(イッセー尾形)から言い渡された最重要任務は“何が起きても必ず生き延びること”。玉砕は決して許されなかった。


しかし彼を待ち構えていたのは、ルバング島の過酷なジャングルだった。食べ物もままならず、仲間たちは飢えや病気で次々と倒れていく。それでも、小野田は生きるために、あらゆる手段で飢えと戦い、雨風を凌ぎ、仲間を鼓舞し続ける。必ず援軍が来ると信じて。


一万夜、潜伏から30年目を迎えるある日。孤独の中で夜が明けていく日々を淡々と数えながら、息を潜めていた小野田だったが、ある日、”旅行者”と名乗る若い男・鈴木紀夫(仲野太賀)と出会うのだった。この、永久的に続いていた日々は、この青年との出会いによって終わりを迎えることに…。


監督:アルチュール・アラリ
ONODA_pos.jpegキャスト:遠藤雄弥 津田寛治
     仲野太賀 松浦祐也 千葉哲也 カトウシンスケ 井之脇海
     足立智充 吉岡睦雄 伊島空 森岡龍 諏訪敦彦
     嶋田久作 イッセー尾形
制作:bathysphere productions 配給:エレファントハウス
2021映画『ONODA』フィルム・パートナーズ:CHIPANGU 朝日新聞社 ロウタス
助成:文化庁 文化芸術振興費助成金(国際共同製作映画)
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
174分/フランス、日本、ドイツ、ベルギー、イタリア/ 2021/1.85/5.1
©bathysphere ‐ To Be Continued ‐ Ascent film ‐ Chipangu ‐ Frakas Productions ‐ Pandora Film Produktion ‐ Arte France Cinéma
公式サイト: https://onoda-movie.com
公式Twitter:@OfficialOnoda

2021年10月8日(金)ついに全国公開!!!


(オフィシャル・レポートより)

 

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 3月15日に閉幕した第15回大阪アジアン映画祭で、クロージング作品『蒲田前奏曲』の世界初上映前にグランプリ以下各賞の受賞結果が発表され、グランプリ(最優秀作品賞)は、ナワポン・タムロンラタナリット監督の『ハッピー・オールド・イヤー』(タイ)に決定した。
 
 大阪アジアン映画祭ではドキュメンタリーの『あの店長』(OAFF2016)、ABCテレビ賞受賞作『フリーランス』(OAFF2016)、死生観をテーマにした『ダイ・トゥモロー』(OAFF2018)と、年を追うごとにファンを増やし、昨今はチケット完売が相次ぐ人気を誇るナワポン・タムロンラタナリット監督。今年グランプリに輝いた『ハッピー・オールド・イヤー』は、ヨーロッパでミニマリズムに目覚めた主人公が、デザイン事務所にリフォームするため、タイの実家の楽器修理店兼自宅を断捨離するところから始まる物語。現代的な身近なテーマで、映画もミニマムなのに奥深く、そしてモノとの関わりを通して自分の友達や元カレ、そして家族との関係を見つめ直していく。深い洞察力に満ち、ナワポン・タムロンラタナリット監督を新しい次元に押し上げた、まさに彼の代表作になるであろう作品だ。2018年に日本でもスマッシュヒットした『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』の主演女優、チュティモン・ジョンジャルーンスックジンが、本作では周りに自分勝手さを気づかされるヒロインを好演。今まで、アジア映画ファンの中では評判が高かったものの、劇場公開に至らなかったナワポン・タムロンラタナリット監督だけに、当映画祭のグランプリ受賞を機に、『ハッピー・オールド・イヤー』が日本での初劇場公開作になることを、切に祈りたい。
 
 
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 また注目の観客賞には、ABCテレビ賞受賞作『七月と安生』(0AFF2017)に続き、デレク・ツァン監督とジョウ・ドンユーがタッグを組み、さらに相手役に中国人気アイドルのジャクソン・ユーを迎えた『少年の君』(中国・香港)が見事に受賞。既に中国でも大ヒットし、映画祭では2回の上映が、いずれも満席の大人気作。こちらも日本での初劇場公開に期待がかかるところだ。
 
その他の受賞結果は以下のとおり。
 
★来るべき才能賞
パク・ソンジュ(PARK Sun-joo) 韓国/『家に帰る道』(Way Back Home)監督
<授賞理由>
この映画の時間と、ヒロインの過去が癒されていく時間が水の流れのように重なり、ゆっくりと浄化されていく過程が美しかった。監督として今後の作品にも期待したい。
 
★最優秀男優賞
間瀬英正(MASE Hidemasa) 日本/『コントラ』(Kontora)主演男優
<授賞理由>
映画全体の狂気を体現し、緊張感を絶やさず、強烈なインパクトを与えてくれた。
 
★ABCテレビ賞
『愛について書く』(Write about Love) フィリピン/監督:クリッサント・アキーノ(Crisanto AQUINO)
<授賞理由>
シリアスなテーマも織り込まれつつ、観れば明るく元気になれる、素晴らしいラブコメディである。
 
★薬師真珠賞
レオン・ダイ(Leon DAI/戴立忍) 台湾/『君の心に刻んだ名前』(Your Name Engraved Herein/刻在你心底的名字)助演男優
<授賞理由>
主人公青年の中年時代を、繊細さと緻密にコントロールされた情念で説得力たっぷりに演じきり、『君の心に刻んだ名前』に核心的な深みと陰影を与えた。彼の演技人生の新しい一頁がここに記されたことは、間違いない。
 
★JAPAN CUTS Award
『ある殺人、落葉のころに』 日本・香港・韓国/監督:三澤拓哉(MISAWA Takuya)
<授賞理由>
腐敗した小さな町、男特有の毒性、若者の不安をひるむことなく描き切った『ある殺人、落葉のころに』は極めてよく作り込まれた物語として、インディ・フォーラム部門の中でも際立っていた。三澤拓哉監督のストーリー構築に対する鋭い目と映画言語の卓越した手腕が存分に発揮されている。潔く大胆でありながらも完成度の高い本作は、三澤監督の今後の作品はもとより、日本インディペンデント映画のダイナミックかつ重要な表現の将来性について、大いに期待を抱かせるものである。『ある殺人、落葉のころに』にJAPAN CUTS Awardを授与できることを光栄に思う。
 
★芳泉短編賞
『Hammock』 日本/監督:岸建太朗(KISHI Kentaro)
<授賞理由>
ほぼ全編が1軒の家の中で展開する『Hammock』は大きな悲劇と、喪失や記憶、夢、希望といった思いを、ほとんど言葉を発しない1人の少女の視線から、素晴らしいバランスで描く稀有な短編作品である。さまざまな感情が重層的に描かれ、いずれ長編映画になるべき作品であろう。
 
第15回大阪アジアン映画祭はコチラ

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~時代劇の聖地・京都で開催する“京都発、歴史映画の祭典”~ 

 
映画祭で「京アニ」追悼…。《第11回京都ヒストリカ国際映画祭》の概要が1日、京都市中京区の京都文化博物館で発表された。歴史にちなんだ京都にふさわしい映画祭、今年は10月26日(土)から11月4日(月・祝)まで。様々なセクションに分かれて全26本を上映する。会場は京都文化博物館

中でも今年は、京都独自のアニメ文化をテーマに先ごろ、凄惨な事件があった京都アニメーション作品『涼宮ハルヒの消失』など4本をはじめ、アニメ草創期の『煙突屋ぺろー』(1930年)など3本。「時代劇文化がTVアニメを変えた」と題して『アンデルセン童話 人魚姫』(75年)など3本を特集上映する。

「京アニ」作品は事件後、同博物館がオファーしたが、事件直後で実現しなかった。「京都アニメーション作品の魅力」と題して『涼宮ハルヒ』のほか、『映画 けいおん!』『たまこラブストーリー』の4作品上映は追悼の意味と、未だに募金が途

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絶えることなく続く海外からの反響も呼びそうだ。

「時代劇文化」~では『白蛇伝』『少年猿飛佐助』『わんわん忠臣蔵』『太陽の王子 ホルスの大冒険』『長靴をはいた猫』などカルト的な名作ぞろい。

historika2019-katuben.jpg①【ヒストリカ・スペシャル】 オープニング上映は周防正行監督の最新作、成田凌主演の『カツベン!』。サイレント時代のメロドラマ『祇園小唄絵日傘 舞の袖』現役の現役の活動弁士を招き、トークショーもある。

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②【ヒストリカ・ワールド】 世界の最新歴史映画で米映画『ダムゼル とらわれのお嬢さん』、フィリピン映画『ミステリー・オブ・ザ・ナイト』、英映画『カーミラー 魔性の客人』、インド映画『トゥンバード』。4作品とも日本初上映。
 
 
 
 

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③【「子連れ狼」まつり】
「劇画から妄想する時代劇」 として大映映画のヒット作「子連れ狼」シリーズを4作品、特集する。

④ヴェネチア国際映画祭提携企画
『薄氷の上のゼン』、『IN THE CVE』。どちらも監督が来場する予定。

⑤京都フィルムメーカーズラボ スクリーニング
仏映画『シャトー・イン・パリ』セドリック・イド監督が来場予定。1983年今村昌平監督作品『楢山節考』デジタルリマスター版。
 
公式サイト⇒ https://historica-kyoto.com/
 
 
 
 

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『兄消える』柳澤慎一インタビュー

(2019年5月20日(月)シネ・リーブル梅田にて)


「柳澤慎一さん:60年ぶりの主演作「これが遺作です」

「土屋貴子さん:生まれ育った信州上田の観光大使に」

 

映画俳優・柳澤慎一氏が60年ぶりに映画『兄消える』(西川信廣監督)に主演。御年87才、これが170作目。主演は『酔いどれ幽霊』(58年)以来。自ら「遺作です」と笑ったが「遺作にふさわしい映画」で、“らしい生きざま”を見せた。ホンマお達者!


信州上田を舞台にした兄弟の物語。弟(高橋長英)は父親の介護で結婚もせずコツコツと父親が残した鉄工場を継いで一人暮らしてきた。その父親が百歳で亡くなり、賑やかに葬儀を終えたあと、40年間行方知れずだった兄・金之助(柳澤慎一)がふらりと舞い戻ってきた。今ごろ突然、なんで? 今年80歳になるというのに娘ほど年の離れた女・樹里(土屋貴子)を連れて。「今晩から世話になる」と居候を始める。


anikieru-500-1.jpg兄は「金を借りに来て」父親と喧嘩になり、プイと出て行った。フィリピンで暮らしていたというが詳しいことは不明。一方、樹里の方も何者かに追われている様子。下町の地味な人情ドラマなのになぜか緊迫感が漂う。兄とあの女は一体何をして生きてきたのか、これから何をするのか?


柳澤さんは『ザ・マジックアワー』(08)出演以来、自ら「出入り口を閉ざし、シャッターを下ろした生活をしてきた」。この作品のオファーが来た時も「絶対断ろう、と思った」という。何しろ映画の主演は実に半世紀を超える60年ぶり。11年間、人間嫌いが高じて世捨て人だった柳澤さんには生半可な決断ではなかった。


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【 土屋貴子さん(左)と柳澤慎一さん 】

「大体、セリフを覚えるのも並大抵じゃない」  。それほどの拒絶反応を覆したのは西川信廣監督と、何十年も「柳澤さんで撮りたい」と思い続けてきた新田博邦プロデューサー(企画)の熱意のなせるワザだった。


「どういう構想を持っているか、説明に務めた」と新田プロデューサー。柳澤さんも「私にたどり着くまでが大変だっただろう」と同情する。当然のことと言えば失礼だが、このお年で五体満足な訳はない。「だけど“ヨーイ・スタート”がかかったらもう止めることは出来ない。監督やプロデューサー、スタッフに迷惑はかけられない。無茶すぎる、と思った」。だけど、プロデューサーの説明は理路整然していて、普通の活動屋とは違った。異色な方だな、と思った」。そんな思いで自ら決断した。それはまた、長い間映画の中で過ごしてきた俳優の業でもあっただろうか。


anikieru-500-4.jpg撮影は昨年末、約20日間。柳澤さんは足の付け根を負傷し「患部から細菌が入って歯も腫れた」と歯ぐきも見せてくれた。実際、静脈血栓と診断され、足を切断するかどうか、というところまで追い込まれたという。60年ぶりのチャレンジはまさしく命がけだった。立っているだけでも負担がかかる状態。考えたら、PRのためとは言え「よお大阪まで来れた」と感心する。まったく、冗談では済まない。


anikieru-500-3.jpg映画は、大ベテランらしく、心に染み入るようなシーンがふんだん。まじめ一筋の弟との会話などは両ベテランの真骨頂。ええ加減な兄貴と樹里がお腹を空かした子供と遭遇し「メシを食わせてやる」という場面は世間から見る“はぐれトリオ”の連帯シーン。謎だった樹里の失踪の理由は最後近くに明らかになるが、喫茶店で金之助がいない間に、何者かに連れさられる空白の一瞬。事態を知った金之助が「一人になった」時のぼう然とした表情に孤独感が滲み出た。この表情が60年のキャリアを感じさせた。


「何気ない表情に見えるが、考え尽くしたシーン」と新田プロデューサーは証言する。この業界、金之助みたいな生き方を実行する人もいた。「ちゃらんぽらんでいい加減なオヤジ、こんなやつはいやだな、と思ってもらえたら成功かな」。最近増えている少子高齢化もの。「兄消える」もその1本にちがいない。だが、明確に一線を画すのが主人公・金之助の何とも言えない軽妙さ、不思議な明かるさ。新田プロデューサーが長年待ち続けたのは、柳澤さん以外には出せない、この「軽妙な明るさ」だったに違いない。筆者が調子に乗って、「いい映画になったんですから、遺作なんて言わず、もう1本どないですか?」と言ったら、「いやいやもうできませんな」というご返答でした。

 

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兄・金之助と一緒に帰って来た謎の女・樹里を演じた土屋貴子(54)も柳澤さんに同行してPR。しっとりと落ち着いた作品の出来栄えに自信の笑顔を見せた。大ベテラン柳澤氏との共演は大変な刺激になったようで「柳澤さんは努力する姿を人前で見せない。そんなところは、私も将来そうなりたいと思う」。


映画の舞台になったのは長野県上田市。土屋の出身地で現在、信州上田の観光大使を務めている。「兄消える」は現地で「映画を連日満席にする会」が結成されるなどご当地らしい盛り上がりを見せている

 

(安永 五郎)


出演:柳澤愼一 高橋長英/土屋貴子/ 金内喜久夫 たかお鷹 原康義 坂口芳貞 / 新橋耐子/雪村いづみ(特別出演) 江守徹(特別出演)
監督:西川信廣 脚本:戌井昭人 音楽:池辺晋一郎
企画・製作:新田博邦 エグゼクティブ・プロデューサー:井上元文
撮影監督・編集:小美野昌史|助監督:平波亘|照明:淡路俊之|美術:橋本千春
仕上げ:荷田一隆|整音:松本能紀|音効:藤田昌宏|衣装:深野明美|メイク:渡辺祐子
スチール:谷川真紀子|協力プロデューサー:増田徳也|AP:春山智
協力:上田市|特別協力:文学座|企画・制作:ミューズ・プランニング
製作:「兄消える」製作委員会|配給:エレファントハウス、ミューズ・プランニング
©「兄消える」製作委員会
公式サイト: https://ani-kieru.net/

2019年5月31日(金)~テアトル梅田、6月1日(土)~京都シネマ、順次元町映画館、6月14日(金)~豊岡劇場 ほか全国順次公開

 

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250年間平和な世が続いた後、開国を前に揺れる幕末期を舞台に、池松壮亮、蒼井優を迎えて描く塚本晋也監督初のオリジナル時代劇『斬、』が、11月24日(土)よりユーロスペース、12月1日(土)よりシネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸、京都シネマほか全国順次公開される。
 
農家の手伝いをしながら、日々剣の稽古を怠らない実直な浪人、杢之進(池松壮亮)が、通りすがりの剣の達人、澤村(塚本晋也)と出会い、武士の本分を果たす決意を固めるところから始まる物語は、人が超えてはいけない一線を超えてしまう瞬間を捉えた物語でもある。池松壮亮がどんどん精神的に追い詰められていき、ある決断に及ぶ杢之進を全身全霊で演じ、今年の主演男優賞と呼んでも過言ではない凄みのある演技を見せている。杢之進に想いを寄せるゆうを演じる蒼井優の存在感も見逃せない。舞台は幕末だが『野火』に通じる、とても普遍的なテーマが根底にある作品だ。
20年間温めていたアイデアを一気に映画化したという塚本晋也監督に、お話を伺った。
 

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■ベテランなのに新人のような初々しさを保ち続けている池松さんの出演決定で動き出した『斬、』。

――――20年間「一本の刀を過剰に見つめる若い浪人」というアイデアが頭にあったそうですが、いよいよ映画化すると決めた時に、主演の杢之進は最初から池松さんを想定していたのですか?
塚本:『野火』の後に何を撮ろうかと考え、この時代劇を撮ろうと決めた時から、池松さんに杢之進を演じてほしいと思っていました。ここ数年の池松さんの作品を何本か拝見し、とても自然な感じの演技をなさるので、素晴らしい新人さんが現れたのかと思っていたのです。初々しいアンテナの塊のような感じがする池松さんを見て、初々しい今の池松さんに僕の時代劇へぜひ出てほしいと思ったところ、実は子役時代から活躍しているベテランであることを後になって思い出しました。ベテランなのにこなれず、こんなに新人のような初々しさを保ち続けていらっしゃる。それは池松さんの素養であり、実力で、なおさら出演してほしいと思ったのです。
 
――――今回は忙しいスケジュールを空けて、オファーを快諾されたそうですね。
塚本:オファーをする前に、池松さんの方からマネージャーさんを通して僕の作品に興味があると連絡を下さいました。まだ内容も定まっていない時でしたが、それなら時代劇をやるしかない!と、思いました。最初お会いしたのが春で、物語は夏を想定していたので、あまりにも時間がなさすぎるし、夏は池松さんのスケジュールも詰まっていたのでいったんは諦めました。でもその後、夏のスケジュールが空いたと池松さんサイドからご連絡を頂いて、さらに時間はなくなっていましたが、このタイミングを逃したらずっと先になってしまうと思い、すごい勢いで準備、撮影を駆け抜けました。夏恒例の『野火』全国行脚がすでに決まっていたので、さらに過酷な日々になりました。
 
 

■過去を通して描くことで今や、これから起こりうることを考える。

――――時代劇の時代設定を幕末にした理由は?
塚本:以前から幕末ものは興味がありましたが、今回は時代考証の先生に今自分がやりたいことを伝えたところ、幕末がちょうどいいと。250年平和に過ごし、ペリーの黒船来航の後、開国か否かを巡り、だんだん国内が血生臭くなっていきます。時代の変わり目で、次の時代には大戦争に突入していく訳ですが、その時代と今の時代は似ています。70年以上戦争がなかったものの、だんだんと戦争ができる状態になってきていますし、そのまま次の時代に行くと恐ろしいことになってしまう。過去を通して描くことで、今に照り返して感じることができるのではないかという狙いを込めました。
 
――――農家の手伝いや用心棒、市助の稽古をする等、杢之進の本当に質素な武士の暮らしが描かれているのが新鮮でした。
塚本:いざという時には戦に臨む準備は出来ているつもりなのですが、本当に戦が起きたらどうなるのか。それこそ、今の若い人たちが戦争に行ったらどうなるだろうという気持ちで杢之進を設定しています。
 
 

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■身体能力と演技が一体となった池松さん。相当な集中力なのにさりげないのが素晴らしい。

――――杢之進を演じる池松さんの殺陣の動きが見事でしたが、本格的な殺陣は初経験だそうですね。
塚本:池松さんは、身体能力と演技は一体であると信じて演技をしていらっしゃり、僕はそういう俳優さんが大好きです。顔だけではなく、全身から出るオーラが演技だと思っているので強く共感しました。殺陣は本格的にはこの映画で初めてやったそうですが、すごく覚えが早い。殺陣のシーンも挑み方がすごくて、下に石がある場所でも勢いよく転がるのです。僕が心配になって「大丈夫ですか?」と声をかけると、「大丈夫です!」とケロッというのですが、後で腕を見ると傷の上にまた新しい傷があって、大丈夫の基準が僕と違う!と驚きました。洞窟の中の壊れた小屋に飛び込んでいくシーンも、池松さんが「目だけカバーすれば大丈夫ですから!」と言ってどんどん前に進んでくださったんです。相当な集中力で演じて下さったと思います。それでも現場をピリピリさせることはなくて、さりげない。それが本当に素晴らしかったですね。

 

■もう一つの主役、刀に人と暴力との関係や、道具との関係を収束させる。

――――映画は刀ができるところから始まり、刀の音で終わります。刀が重要な役割を果たす作品ですが、どんな思いを込めているのでしょうか? 
塚本:もう一つの主役は刀です。刀が生まれてからどのような変遷を経て、どう使われるのかという話です。人が最初に出会うシンプルな道具は、鉄の塊です。農耕など食を得るために使われますが、叩いて動物を殺したりと、暴力の道具としても使われるようになります。『野火』では鉄が恐ろしい戦車になったり、数々の武器になりましたが、戦争の時代から時を遡り、この映画では刀一本に凝縮させました。人と暴力との関係や、道具との関係をぎゅっと収束させ、シンプルにそのことを見つめられないか。そういうテーマで作っています。
 
――――塚本監督は、杢之進の運命を変える澤村を演じています。杢之進を実戦で通用する刀の達人に育てようとする師匠的役割を果たし、物語の鍵を握っていますね。
塚本:当時では有能な剣の使い手でもあるし、映画を見ている人も拍手喝采を送っているうちに、いつの間にか目の前に刀を向けられる。そういう印象の映画になればいいなと思っています。
 
――――杢之進の人生を変えてしまうぐらい、とことん追い詰める凄みがありました。
塚本:だいたい僕の役は、主人公をストーカーのように追い詰める役なので・・・。杢之進は外交的な手腕があり、村にやってきた無頼漢の浪人たちと対話を試みるのですが、僕の演じる澤村が時代の波とともに杢之進を追い立てていきます。とてもシンプルな映画ですが、自分の言いたいところがすっきり入っています。
 
 
 
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■ゆうは、一般民衆の代表的役割をも内包した役。

――――蒼井優さんが演じる杢之進に想いを寄せるゆうも、杢之進同様、運命が変わってしまう複雑な役を演じていますが、物語でどんな役割を担わせたのですか?
塚本:ゆうには、一般民衆の代表的役割も込めています。弟や好きな人が戦争に行きそうになればその身を案じるのですが、怖い人が村を圧迫していると感じると、シンプルにやっつけてほしいと思う。それを自分の見えない所で退治をしてくれると、「やった!」と喜ぶ訳です。太平洋戦争の時にフィリピンで負けていても、新聞で「勝った」と書かれていると一般の人たちが喜んだのと同じです。実際には血みどろの戦いなのに、それを目の当たりにしない限りは、そういう想像力が働かない。蒼井さんはそういう役を典型的にせず、さまざまな女性の顔で自然と実感がわくよう魅力的に演じてくださいました。蒼井さんには最初に、『野火』という戦争映画に時間を遡って繋がる映画であることをお伝えしました。 
 
――――だんだん血生臭くなっていく物語の中で、杢之進とゆうのミニマムな描写ながらエロチシズムを感じるシーンが印象的でした。
塚本:理屈で考えていたわけではないですが、暴力的なことをするかしないかというジレンマと、エロチシズムは繋がるのではないかと思っていました。実はエロチシズムのない脚本もあり、それも面白かったのですが、いざやろうとすると面白いと思えなかった。やはり本能的な情動が映画にないと面白くないと気づき、エロチシズムのある方を取ったんです。
 
 
 
 
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■様々なシーンを積み重ねた先の最後、どちらを選ぶのかは池松さんにお任せした。

――――終盤は森の中でアクションを交えての撮影でしたが、現場の様子は?
塚本:とにかく時間がなくて、猪突猛進の現場でした。池松さんとはまるでセッションをしているかのように、その瞬間、瞬間でアンテナを立てまくりました。相手がどう出るから、こちらがこう返すという具合に、瞬間的なことを刈り取って行く感じでした。池松さんが様々なシーンを積み重ねた先の最後にどちらを選ぶのかは、その時にならなければ分からない状況でした。最初に一度は通しで基本的なことをやったのですが、後は現場でのお楽しみという感じで池松さんにお任せしました。僕は自分が演じるとき脚本で“泣く”と書かれていると、「泣くかどうかは分かりませんよ」と言いたくなるんです。“感情が高まる”というのなら分かるのですが、物理的なことは自分の脚本に書きたくないと思っていますし、感情の流れの中で自然に演じてくださいと言っています。
 
――――そういう撮影は、塚本組ならではでしょうか?
塚本:いや、僕の映画は割と細かくネチネチとやる方で、いつも撮影期間がとても長いんです。昔は1年間撮っていましたし、30代は4ヶ月、それ以降はスタッフが育ったので2ヶ月ですが、それより短くなることはなかった。3週間は今までにないですが、今回は主役があの二人なので2週間でもいいと思った。照明でお待たせするよりは、テーマをはっきり決めて、照明ではなく二人の温度を撮るんだ!二人さえいれば、昼は自然光、夜はロウソクの灯りで映っていなくても息の揺らぎが入ればと。そう言いながら、実際は照明待ちをさせてしまったこともあったのですが(笑)。
 
――――『野火』も自然の中でしたが、今回も見事な農村地帯で自然に囲まれたロケーションです。
塚本:山形県の庄内で全て撮りました。『野火』以降は、こんなに綺麗な自然の中で人は何をしているのかという気持ちを込めているかもしれません。普遍性と言いますか、その時のしがらみがなければ、自然の中に人と人がいるだけです。映画でも皆が仲良く遊ぶシーンがありますが、しがらみが入ってくると同じ森の中で人と人とが戦わなければいけない。はっと我に帰れば、ただの人と人なのに。
 
 

■石川さんの未公開音源も採用し、対話しながら作り上げた音楽。

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――――今まで塚本監督の作品の音楽を手がけられ、本作にも携わる予定だった故石川忠さんのエピソードをお聞かせいただけますか?
塚本:この映画をやろうと勢い込んでいる時に石川さんと会う機会があり、音楽担当を快諾いただいたのですが、撮影が終わった頃に具合が悪くなられ、編集中に再度「やります」と言っていただいていたものの、12月に亡くなってしまわれました。いつも編集を見た後で打ち合わせをするので、今回は残念ながら編集途中だったので映像を見ていただくことはできなかったんです。ただ石川さん以外の人に頼む気にはどうしてもなれず、石川さんとの長いお付き合いを振り返るつもりで、今まで僕の映画につけていただいた音楽を全部聞いて、それを映画につけました。最初はCDの曲でと考えていたのですが、それでは足りなくて。さらに映画に使ったものでCD化されていないものも探しましたし、それでも足りなかったので、石川さんの奧さんにお願いし、石川さんの自宅にあり、まだ世に出ていない音源を聞かせてもらい、ようやく形になりました。 
 
――――今回の音楽は石川さんの集大成になりましたね。
塚本:生きている石川さんの意思は入っていませんが、石川さんがこうするとどういう返事をするかは、石川さんの声の調子まで僕の中に入っているので、ごく普通に「どうっすかね〜」「いいんじゃなすか〜」みたいな感じで貼っていきました。
ヴェネチア映画祭の公式上映の前に、1400人ぐらいが入るシアターでプレス上映があり、エンディングの前に様子を見に行ったのですが、驚くほど賑わっていて、エンドロールで石川さんの名前が出ると拍手喝采が起こっていたので、そこは感動してしまいました。
 
 

■みんなが戦争は正しいと動いてしまうと、抗うのは難しい。その前に何とかしておかなければ、もはや頑張る美談すら作れない。

――――人間が追い詰められるとどうなるか。『野火』に通じる普遍的なテーマです。
塚本:みんなが戦争は正しいと動いてしまうと、それに抗うのは難しい。その前になんとかしておかなければいけないと思います。映画の中でしたらそこで若い人ががんばって違う道を達成する姿を描きますが、みんなが同じ方向に向いてしまうとー。そういう時代に少しでも近づかないようにするのは大人の責任と思います。日本で優しいお父さんだった人が戦争に行き、上官に捕虜を銃剣で突き刺せと命令され、いやだけど断ると自分が上官に殺されるので捕虜を突き刺したところ、ドンと腹が据わり充足感を味わったそうです。そこからは上官に求められる人に変わってしまった。つまりそういう状況を作り出すというのが、大人が一番やってはいけないことです。その中で「僕は殺さなかった」という美談を作り出すことなんて、もはやできません。
 
 
 
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■塚本組に初参加の池松さんと蒼井さんは、夜、星を見ながら「幸せだ」

――――ヴェネチアにもご一緒された池松さんと蒼井さんは初めての塚本組での撮影にどんな感想を持たれていたのでしょうか?
塚本:結構喜んで下さったみたいなので安心しました。今回はプロに入ってもらいましたが、たいへんにミニマムな現場ですし、お二人は大作でも活躍されているので申し訳ないと思っていたのですが、かえって現場の純粋性を喜んで下さり、手を貸してくださいました。蒼井さんの周りの草を濡れた状態にしたかった時、蒼井さんがジョウロで水を撒いて下さったこともありました。通常、俳優さんは段取りが整うまで別の場所で待っているのですが、最初から近くにいてすぐ参加できるように様子を見てくれていました。
 
――――お二人も今までにない撮影で、充実感を覚えていらっしゃったんでしょうね。
塚本:庄内は夜、星がとてもたくさん出るのですが、二人で夜撮影が終わって星を見ながら「幸せだ」と言っていたんですと蒼井さんが教えてくれました。本当に少人数で、何かの軋轢もなく、ただシンプルに映画を作ることに邁進していたのが良かったのだと思います。
 
――――『野火』の時は、若い方に見てもらいたいとおっしゃっていましたが、この作品はどんな方に見ていただきたいですか?
塚本:時代劇なので色々な層の方に見ていただきたいですが、映画のテーマ的にはやはり若い人に見て、感じていただきたいですね。ただ面白かったというのではない、居心地の悪さを含めて、いろいろ考えてもらいたい。カタルシスの得られなさや、取り残された感じを、ぜひ味わってほしいです。
(江口由美)
 

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<作品情報>
『斬、』(2018年 日本 80分) 
監督・脚本・撮影・編集・製作:塚本晋也 
出演:池松壮亮、蒼井優、中村達也、前田隆成、塚本晋也他
2018年11月24日(土)~ユーロスペース、12月1日(土)〜シネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸、京都シネマほか全国順次公開
※第75回ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門正式出品
公式サイト⇒ http://zan-movie.com/
(C) SHINYA TSUKAMOTO/KAIJYU THEATER

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