原題 | BLANKA |
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制作年・国 | 2015年・イタリア |
上映時間 | 1時間17分 |
監督 | 監督・脚本:長谷井宏紀 |
出演 | サイデル・ガブテロ、ピーター・ミラリ、ジョマル・ビスヨ、レイモンド・カマチョ |
公開日、上映劇場 | 2017年8月19日(土)~シネ・リーブル梅田、9月2日(土)~シネ・リーブル神戸、近日~京都シネマ ほか全国順次公開 |
~スラムでがむしゃらに生きる少女のまっすぐな愛~
ブランカは11歳。フィリピンのスラムで、物乞いや盗みをしながら、一人で暮らすストリート・チルドレン。店先のテレビで、女優が孤児を養子にしたという話を観て、お金で母親を買おうと思いつく。ダンボール箱の小さな“家”を壊され、出会ったばかりのギター弾きの盲目の老人ピーターと旅に出ることにする。ピーターのギターで歌を歌ってお金を稼ぐことを知ったビアンカは、レストランの店主に才能を見出され、住み込みの歌手として雇ってもらう。ピーターと喜んだのもつかの間、店の従業員のやっかみで、身に覚えのない罪を着せられ、再び路頭に迷う…。
盗みをなんとも思わず、勝ち気でわがままなブランカが、母親を買うお金を貯めようと、がむしゃらになる姿は、なんとも痛々しい。怖いことや泣きたいこと、心細かったり寂しかったり、いろんな感情を、少しずつピーターにぶつけられるようになっていく。歌うことの楽しさや、分け合うことの喜びを教えてもらい、人生で大切なのは何かを体当たりで学んで、傷だらけになりながらも懸命に生きる姿に、目が離せなくなる。そんなビアンカを大切に思い、ずっと気にかけているピーターとは、親子のようでもあり、友達のようでもあり、思いやりという、しっかりした絆で結びついているさまに、心あたたまる。
監督は、日本人の長谷井宏紀。2009年に短編映画で海外の映画賞を受賞。監督がスラムでキャスティングをしていて見つけたセバスチャン役とラウル役の少年も、それぞれ存在感があり、スラムで生きる少年たちの過酷な状況と、それでもブランカを守ろうとする優しさに、思わず応援したくなる。ブランカを演じたサイデル・ガブテロは、歌もうまく、これからが楽しみな逸材。
この映画を観た後、外に出たら、小さい女の子が皆ブランカのように見えて、とても愛くるしく思えた。映画が終わった後も、なぜかブランカのことが気になって、放っておけない…そんな気持ち。ブランカとピーターが肩を並べて歩いていくところには、きっと星が輝き、月が優しい光を投げかけているにちがいない。舞台となったフィリピンのスラムへの監督の愛情があふれる珠玉の一篇。
(伊藤 久美子)
公式サイト⇒ http://transformer.co.jp/m/blanka/
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