「アブ」と一致するもの

omarl-t-550.jpg映画『オマールの壁』主演俳優アダム・バクリ初日舞台挨拶レポート
 

パレスチナの今を生き抜く若者たちの日々をサスペンスフルに描き、第86回アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた映画『オマールの壁』が角川シネマ新宿、渋谷アップリンクほかにて公開いたしました。本作の公開を記念して初来日を果たした主演俳優アダム・バクリの初日舞台挨拶が角川シネマ新宿で行われました。


【イベント概要】
日程: 4月16日(土)  12:10~12:35 (10:30の回上映後)
場所: 角川シネマ新宿  (東京都新宿区新宿3丁目13−3 新宿文化ビル)
登壇者: アダム・バクリ(オマール役)
聞き手:岡真理(京都大学大学院教授/現代アラブ文学)


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パレスチナの“壁”越えたイケメン俳優スパイダーマン役にも意欲!

 


omarl-t-240-1.jpg坊主頭でパレスチナのパン職人を演じた劇中のイメージから一転、長めのカールした髪をまとめたヘアスタイルで登場したアダム・バクリは、聞き手のアラブ文学者の岡真理さんから「観客のオマールのイメージを壊したくない、と帽子を被っていたんですが、今のカールした素敵なヘアーのアダムさんをみなさんにみてもらいたいと思って」と紹介されると「撮影から3年経っているから」と笑い、満員の角川シネマ新宿のステージ上に感謝の言葉を述べた。


現在27歳のバクリは初主演作となるこの映画への参加について「この作品は僕を変えた。出演できた経験はこれからも残ると思う。今は観客としてこの作品を観ることができる」と感慨深げに回想。「初めてスクリーンで作品を観たときは緊張していて、自分の演技しかみていなかったけれど、とてもエモーショナルな体験だった。2回目にカンヌ国際映画祭で観たときも客席で父(俳優のムハンマド・バクリ)と兄が見ていたので、震えていた。感想は直接聞かなかったけれど、観終わった後の彼らの感動した目を見て、合格点をもらえたと確信した」と述懐した。

 
omarl-t-240-2.jpgイスラエル出身のパレスチナ人で、現在はニューヨークを拠点に活動するバクリは、占領下にのパレスチナの市井の人々の暮らしを描く今作の役作りの難しさについて「大きな責任を感じた。主人公のオマールが経験したことを忠実に表現することが大切で、自分が経験しているように表現することが大事だと思った。この映画自体が、そしてこの壁自体がパレスチナの占領の暴力を象徴している」と撮影時の心情を吐露。パレスチナを分断する分離壁を前にしての撮影についても、「それまでも壁は遠くから見たことがあったけれど、映画を撮影したときにはじめて近くでみて、パレスチナの葛藤を象徴しているようで心を揺さぶられた。太陽が隠れてしまうほどの大きさに圧倒された」と強烈なインスピレーションを受けたことを明かした。

 
omarl-t-500-1.jpg人間ドラマ、ラブストーリー、アクションと様々な要素が融合したエンターテイメント作品となっている要因として、分離壁を乗り越えたり、追手から逃れようと街中を駆けるシーンなどバクリのアクション・シーンについて岡さんが絶賛すると、「次は『スパイダーマン』とか『スーパーマン』いいですね(笑)」とアクション俳優への意欲ものぞかせ、「いろんな役に挑戦してみたいのでオープンですよ。今回もトレーナーと一緒にトレーニングしましたが、それでも危険なシーンはプロデューサーはやらせてもらえなかった。壁を登るシーンも準備していたけれど、途中までしかのぼれず、あとはスタントに任せなければいけなかった。あれはサーカスの団員しかできないですね」と答えた。


omarl-550.jpgそして厳しい撮影をともにしたアブ・アサド監督についてバクリは「エンターテイメントとアートの双方があるのが監督の素晴らしいところ。より多くの観客に観てもらうために映画には両方の要素が必要だと思う。この『オマールの壁』は、パレスチナでは9歳や10歳の子供も知っているくらい知られている作品。そんなことは他の作品ではありえません」と賞賛を寄せた。


岡さんの「占領の暴力を象徴的に描いている。何度も繰り返し観ると、監督が込めた意味が見えてくる。占領下をしらない私たちもその痛みを知ることができた」という分析にも、「アブ・アサド監督の細やかなメッセージがあちこちにちりばめられていて、観れば観るほど微妙なニュアンスがみてとれる作品だと思う」と同意。そして「ラストシーンの意味など、観客の解釈にまかせるところが素晴らしいところだと思う」と、観た人それぞれがそれぞれの物語を膨らませられるところが今作の魅力だと強調した。


バクリはトークイベントの最後に「日本の方々とパレスチナの人々は親切で暖かくて寛容、という共通点がある」と目を輝かせた。
 


【プロフィール】 

omarl-t-240-4.jpg■ アダム・バクリ(オマール役)
1988年、イスラエル・ヤッファ生まれのパレスチナ人。父親は俳優で映画監督のモハマッド・バクリ。二人の兄とも俳優だったため、自然に俳優の道を志すようになる。テルアヴィヴ大学で英語と演劇を専攻。その後、ニューヨークのリー・ストラスバーグ劇場研究所で演技のメソッドを学ぶ。研究所の卒業式の翌日に、本作のキャスティング・ディレクターにオーディション・テープを送り、イスラエルで演技テストを幾度も経たのちに合格した。本作が長編映画デビューとなる。現在はニューヨークを拠点に活動中。第一次世界大戦のアゼルバイジャンを舞台にしたアジフ・カパディア監督の新作『Ali and Nino』(2016年)で、キリスト教徒の女性と恋に落ちるイスラム系アゼルバイジャン人役で主演を務める。


真理(おか・まり)
omarl-t-240-3.jpg1960年、東京生まれ。現代アラブ文学研究者。東京外国語大学アラビア語科でアラビア語を学ぶ。在学中に、パレスチナ人作家ガッサーン・カナファーニーの作品を読み、「パレスチナ問題」に出会い、以来、パレスチナに関わり続ける。パレスチナ難民をはじめ、種々の構造のなかでサバルタン化される者たちの生きられた経験を描いた文学作品を通して、パレスチナ問題や第三世界の女性たちの問題を現代世界に生きる人間の思想的課題として考察する。著書に『アラブ祈りとしての文学』(みすず書房、2008年)、『棗椰子の木陰で 第三世界フェミニズムと文学の力』(青土社、2006年)ほか。近年は学生・市民有志による朗読集団「国境なき朗読者」を主宰、朗読劇「The Message from Gaza ~ガザ希望のメッセージ~」の脚本、演出を担当、「文学」の力と「肉声」がはらみもつ可能性を実践的に追究。

★参考サイト⇒ https://www.kinokuniya.co.jp/c/20111003201815.html


 【作品紹介】

一生囚われの身になるか、裏切者として生きるか―1人の青年のぎりぎりの選択。
パレスチナの今を生き抜く若者たちの青春を鮮烈に描いた衝撃作。


omarl-500-4.jpg分離壁で囲まれたパレスチナの今を生き抜く若者たちの日々を、切実に、サスペンスフルに描いた本作は、カンヌ国際映画祭をはじめ、多数の映画祭で絶賛され、2度目のアカデミー賞外国語映画賞ノミネート(パレスチナ代表)となった。スタッフは全てパレスチナ人、撮影も全てパレスチナで行われ、100%パレスチナの資本によって製作されている。


◆ストーリー
omarl-500-1.jpg思慮深く真面目なパン職人のオマールは、監視塔からの銃弾を避けながら分離壁をよじのぼっては、壁の向こう側に住む恋人ナディアのもとに通っていた。長く占領状態が続くパレスチナでは、人権も自由もない。オマールはこんな毎日を変えようと仲間と共に立ち上がったが、イスラエル兵殺害容疑で捕えられてしまう。イスラエルの秘密警察より拷問を受け、一生囚われの身になるか仲間を裏切ってスパイになるかの選択を迫られるが…。


◆作品情報
映画『オマールの壁』 ※『オマール、最後の選択』より改題
(2013年/パレスチナ/97分/アラビア語・ヘブライ語/カラー/原題:OMAR)
監督・脚本・製作:ハニ・アブ・アサド(『パラダイス・ナウ』)
出演:アダム・バクリ、ワリード・ズエイター、リーム・リューバニ ほか
配給・宣伝:アップリンク

2016年4月16日(土)~角川シネマ新宿、渋谷アップリンク、5月7日(土)~テアトル梅田、順次~京都シネマ、元町映画館 ほか全国順次公開


★【シネルフレ映画レビュー】は こちら
★【公式サイト】
http://www.uplink.co.jp/omar/
★【公式Twitter】https://twitter.com/OmarMovieJP
★【公式Facebook】https://www.facebook.com/omarmovie.jp

 

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FFF-ティンブクトウ-T-550.jpg『ティンブクトゥ』アブデラマン・シサコ監督トークショー@フランス映画祭2015

ゲスト:アブデラマン・シサコ監督(53歳)
2015年6月28日(日)有楽町朝日ホールにて


 『ティンブクトゥ』
・(原題:Timbuktu 2014年 フランス、モーリタニア 1時間37分)
・監督:アブデラマン・シサコ
・出演:イブラヒム・アメド・アカ・ピノ、トゥルゥ・キキ、アベル・ジャフリ
2015年12月 公開予定
・コピーライト:© 2014 Les Films du Worso  ©Dune Vision
・【受賞歴】2015年 セザール賞最優秀作品賞・監督賞・脚本賞ほか7部門 受賞
      2015年 アカデミー賞外国語映画賞ノミネート


 ティンブク-550.jpg~美しい映像に秘められた悲劇。
過激派に支配されても、静かな抵抗を続けた人々の勇気を讃えたい!~

アフリカのマリ共和国北部にあるティンブクトゥという世界文化遺産にも登録されている街では、2012年から翌年にかけてイスラム過激派による支配が1年間続いた。この映画は、その支配下にあった時に起こった実際の事件を基に描かれている。狂信的過激派は、聖なる祈りの場所モスクに武器を持って土足で踏み込み、寛大で人情豊かな伝統を踏みにじり、音楽や娯楽を禁止し、女性には外出時の手袋まで強要、未婚の男女の集合を禁止するなど勝手な掟を強いては、違反者には異常なまでの厳罰を科していた。ある遊牧民が引き起こした事件を主軸に、支配下にあった人々の日常生活を淡々と描くことによって、もの言わずとも静かなる抵抗を示した人々の勇気を讃えた力強い作品となっている。
 

FFF-ティンブクトウ-T-4.jpgこの映画は、いま正に世界各地で起きているイスラム過激派による悲劇の縮図をティンブクトゥという街で表現しているようだ。アブデラマン・シサコ監督の「アフリカの現実を世界に伝えたい」という想いは、国境を越え、時代を超えて人々に訴えかけるものは大きい。マリ共和国出身のシサコ監督は、長年フランスに住んでいたが、5年前からモーリタニアに在住。今回、フランス映画祭での上映のため初来日し、上映後のトークショーに登壇。本作に衝撃と感動を受けた観客から沢山の質問が出て、活発な質疑応答となった。



 ――― 司会の市山尚三氏からご挨拶。
市山氏:シサコ監督は本作の前に3本の長編劇映画を撮っておられ、私は監督のデビュー作から見続けているひとりです。日常の生活を描きつつも、そこに社会問題や様々な問題が見え隠れするスタイルをずっと貫いて来られた監督です。本作は、それまでのスタイルをキープしつつ、2012年に実際に起こった事件を基に描かれたスケールの大きな感動作となっています。こうしてご紹介できるのをとても嬉しく思います。

FFF-ティンブクトウ-T-3.jpg――― シサコ監督から最初のご挨拶。
シサコ監督:ご覧頂いてお礼申し上げます。市山尚三さんにプロデュースして頂いて光栄に存じます。アフリカの作品を日本で公開されるのはあまり少ないと思いますが、それを勇気を持って配給して下さった方々に感謝いたします。お客様と直接お話するのは苦手なことですが、こうして私が日本に居るのは皆様と映画を共有するためですので、ご質問があればできるだけお答えしたいと思います。

この映画はとても緊急な状態で作られました。イスラム過激派がマリ北部を1年間占領していました。その間に一組のカップルが石打ちの刑(死ぬまで石を投げ付けられる)にされたことを新聞で知り、とてもショックを受けました。この作品は暴力に反対するための映画です。もうひとつ言いたいのは、イスラム教は決して暴力の宗教ではなく、ただ暴力をふるう人もいるということです。本来宗教は暴力ではなく、愛であり許すことであります。

――― とてもリアル過ぎて驚きましたが、出演されている方々は素人の人ですか?
ティンブク-500-2.jpgシサコ監督:プロの俳優と素人が混ざっています。主人公のキダンはギター演奏者で、キダンの妻は歌手で、映画出演は初めてです。過激派のリーダーも、踊っていた過激派幹部もチュニジア出身のフランスの俳優です。魚売りの女性はマリの女優で、歌を歌って処罰された女性はマリの歌手、他の人達は全くの素人で、現地で撮影の手伝いをしてくれた人々や私の友人たちです。我々の国では映画産業が発展していないので、現地でプロの俳優を見つけるのはとても難しいことなのです。プロではない人たちと仕事をするのには慣れていますので、お互いの信頼だけで撮影していました。

――― 川でキダンが漁師を殺してしまった直後のシーンはとても美しく印象的でしたが、何か意味が込められているのですか?
シサコ監督:そのシーンはとても重要なシーンです。映像には必ず意味が込められているものです。このシーンは人間の脆さと弱さを表現しています。死んでしまった人と、これから死ぬ人の対比でもあります。このシーンについては頻繁に話題になりますが、その度に撮影した時のことを思い出します。夕日が沈もうとしていましたので大急ぎで撮らなくてはなりませんでしたが、1回のテイクで成功しました。

FFF-ティンブクトウ-T-2.jpg――― 過激派を単に極悪非道な人間としてではなく、一人の人間として描いていたように感じましたが、その理由は?
シサコ監督:確かに過激派を単に暴力をふるう人としては描いていません。なぜなら、そうすると冷たい存在になり、まるで見世物のようになってしまうからです。それより静かな暴力として描く方が重みを増し、もっと危険な存在に映るからです。重要なのは、野蛮な行為や暴力はすべて人間の行為であり、人間がどこまで残酷になれるのか、その恐ろしさを示したかったのです。単に暴力だけを描いたバイオレンスは避けたかった。人が死ぬということを描くのに必ずしも流血を見せる必要はないのです。

 

――― 「ティンブクトゥ」というタイトルが意味するものは?
シサコ監督: 「ティンブクトゥ」は、「ティン=井戸」「ブクトゥ=女性」を意味しています。歴史的オアシスの街の名前ですが、過去にあった辛くて悲しいことを覚えておくべき象徴的な名称なのです。

――― 遊牧民が事故で漁師を死なせてしまったという過激派とは無関係の事件を主軸にした理由は?
シサコ監督:過激派が居なかったら死刑にはならなかったことです。この事件は実際にあった事件ですが、48時間後には死刑にされました。正義とは名ばかりの暴力的で悲しい物語が展開されます。それを最後に持ってきたのは、それがひとつ象徴的なシーンだからです。最後に妻が夫の所に駆け付けたのは、過激派への必死の抵抗を示したかったのです。

――― アフリカにおける宗教について教えて下さい?
シサコ監督:とても難しい質問ですね。元々アフリカには土着のアニミズムのような信仰がありましたが、イスラム教やキリスト教が後から伝来してき、その度に暴力が生まれました。強制的に改宗させるという暴力行為が繰り返されてきたのです。私にとっての宗教は、人間に対する「尊重」と「愛」です。人間はすべて平等であって、同じ価値観を持ち、ひとつの世界に住んでいます。それは宗教が変わっても同じことなのです。

――― 過激派に支配されている人々が日常を楽しむシーンが印象的でしたが、あれらは想像で描かれたのですか?
シサコ監督:シナリオはマリ北部が占領されている時に書き始めて、解放後にマリの人々に話を聞いた内容にインスピレーションを受けて書き上げました。現地で会った人々は平和的抵抗をしていたのです。ボールなしでサッカーをしたり、鞭打たれながらも歌い続けたりとか、特に女性たちの抵抗が目立ったので、彼女らの勇気を示したいと思いました。そのためにもこの映画の成功はとても重要になります。私と同じ価値観でこの映画を製作して下さったフランスの関係者や、この映画を選んで下さったユニフランスの方々にお礼を申し上げます。多くの方にこの映画を見て頂きたいと思います。

(河田 真喜子)


◆フランス映画祭2015
◆6月26日(金)~29日(月)有楽町朝日ホール、TOHOシネマズ日劇(東京会場) にて開催・・・(終了しました)
◆フランス映画祭公式サイト:http://unifrance.jp/festival/2015/


 

 

 

 
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6月26日17時20分から東京都千代田区の有楽町朝日ホールにて、今年で23回目を迎えるフランス映画祭2015オープニングセレモニーおよびオープニング作品『エール!』の上映が行われた。
 
オープニングセレモニーでは、主催のユニフランス・フィルムズ代表、イザベル・ジョルダーノさんが「本当にありがとうございます。世界中でこれほど関心を集めているフランス映画は独自性が魅力。まるでカンヌ映画祭が続いているかのよう、今晩はまさに映画の祭典です。多くのゲストも参加します。この4日間最高のフランス映画をお楽しみください」と挨拶し、1946年にユニフランスが制作したカトリーヌ・ドヌーヴの短編映像が特別上映された。
 

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次はいよいよゲストの登場。『ヴィオレット(原題)』主演女優で、フランス映画祭2015団長のエマニュエル・ドゥヴォスが客席通路から颯爽と登場し、満席の客席から大きな拍手が沸き起こった。引き続き、『ボヴァリー夫人とパン屋』のアンヌ・フォンティーヌ監督、フランソワ・オゾン監督最新作『彼は秘密の女ともだち』主演女優のアナイス・ドゥムースティエ、『EDENエデン』主演男優のフェリックス・ド・ジヴリ、同作のミア・ハンセン・ラヴ監督の実兄で脚本のスヴェン・ハンセン=ラヴ、『アクトレス』のオリヴィエ・アサイヤス監督、『ヴィオレット(原題)』のマルタン・プロヴォスト監督、『ティンブクトゥ(仮題)』のアブデラマン・シサコ監督、『セバスチャン・サルガド』のジュリアーノ・リベイロ・サルガド共同監督、『チャップリンからの贈りもの』のグザヴィエ・ボーヴォワ監督、そしてオープニング作品『エール!』の主演女優ルアンヌ・エメラとエリック・ラルティゴ監督の計12名が登壇。東京に集まったフランス映画人は檀上でも和やかな雰囲気で、この場を楽しんでいる様子だった。
 
 

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そして団長のエマニュエル・ドゥヴォスが「こんばんは。東京に来られてとてもうれしいです。仕事ばかりでちょっと残念です。東京を楽しみたいと思います」とチャーミングな日本語で挨拶。引き続きフランス語で「東京に皆で来ることができて光栄です。色々な映画祭がある中で、我こそが行きたいと名乗りを上げるのが、東京のフランス映画祭です。ありがとうございます。私たちにとってもみなさんにとってもいい映画祭になることを望みます」と挨拶し、観客からの大きな拍手に笑顔で応えた。
 
 
 
 
 

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まさに女優としての輝きに磨きがかかったエマニュエル・ドゥボス(6月28日『ヴィオレット(原題)』上映後に登壇予定)や、オゾン作品でロマン・デュリスを相手に揺れ動く女心を繊細に演じ、今後の活躍にも期待が高まるアナイス・ドゥムースティエ(6月27日『彼は秘密の女ともだち』上映後に登壇予定)、そして初出演作の『エール!』が本国で大ヒット、映画で披露した見事な歌声を生かし歌手としても活動中、本当にキラキラと輝く新星ルアンヌ・エメラと、フランス映画好きにはたまらない豪華ゲストがズラリと並び、華やかなオープニングとなった。
 
フランス映画祭2015は6月29日まで有楽町朝日ホール、TOHOシネマズ日劇(東京海上)で全12本を上映する。会期中は、全ゲストが上映後のトークに登壇予定だ。
 
フランス映画祭2015公式サイト http://unifrance.jp/festival/2015/
 
 

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terrorlive-550.jpg『テロ,ライブ』

french2014-pos.jpg『フランス映画祭2014』を見終えて(7/1現在の感想)*随時追加予定


  今年のフランス映画祭は、新作11本、フランソワ・トリュフォー監督作『暗くなるまでこの恋を』の旧作1本、計12本が上映された。記者会見でゲスト監督たちが述べたように、性描写や暴力描写が間接的な表現に止まっていることが大きな特徴といえる。それまで必ずといってもいいくらい性描写があったのが影を潜めている。それより、フランス特有のウィットに富んだ脚本で、夫婦や親子や恋人など、身近な人間関係を優しく描いた作品が多く、とても楽しく過ごせた映画祭だった。そんな中特筆すべきは、ドキュメンタリー映画『バベルの学校』。多民族国家フランスならではの社会状況を凝縮したような学校で、多くの事情を抱えて生きる外国からきた生徒を、気長に優しく受け入れ、彼らの言葉に耳を傾ける先生の寛大さに感動する。
自由・平等・友愛の国フランスならではのヒューマンドラマの数々を、是非関西でもお楽しみ下さい。
(河田 真喜子)

★シネ・リーブル梅田(7/2(水)~7/6(日))⇒ こちら

★京都シネマ(7/5(土)~11(金))&同志社大学寒梅館(7/3(木))⇒ こちら


【新作だけの感想】(勝手にオススメ順!)


 ★《観客賞受賞作》
『バツイチは恋のはじまり』Fly Me to the Moon
*(2014年9月20日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町他にて公開) 

 いや~涙が出る程笑った!ダニー・ブーンがコメディアン本領発揮!クール・ビューティも破顔、こんなダイアン・クルーガー見たことない!

batuichi-1.jpg 家系的に必ず1度目の結婚に失敗するというジンクスを抱えたイザベルが、10年も同棲している恋人との結婚を成功させるため、誰でもいいから虚偽結婚してバツイチになろうと選んだ相手がツアーガイドのジャン=イヴだった。ところが、中々離婚できずに悪戦苦闘するという物語。お話に無理があるだろうと思ってと見たら、とんでもない!パリからデンマークへ、さらにケニアやモスクワとワールドワイドのロケも成功。

 特に、ケニアでのライオンのシーンや歯科診療室でのシーン、脱毛のシーンは傑作!行く先々で繰り広げられる二人の珍道中を見ているうちに、いつしか自分にとっての本当の幸せとは何かを考えさせられる。イザベルのどんな嫌がらせにも寛大に応えるジャン=イヴの一途さがいい。何と言っても、「気持ち良く心の底から笑えるのが一番」というダニー・ブーンの品のいいコメディセンスが最大限に活かされた傑作コメディ!


 
間奏曲はパリで』La Ritournelle

*(フランスでも6月に公開されたばかりの新作。こんなに面白い作品なので、来年くらい公開されるのでは?)


 またもやクール・ビューティの登場。とても還暦を迎えているとは思えないイザベル・ユペール。現在公開中の『ヴィオレッタ』でも、スリムでゴージャスなヴィンテージファッションを着こなし猛母を怪演。今回は彼女にしては珍しく、ノルマンディーで夫と酪農を営んでいる田舎のおばさん役を演じている。主人公のブリジットは、パリから遊びに来た若者に「綺麗だ」と言われ、ついその気になり、夫に嘘をついてアヴァンチュールを求めてひとりパリへ行く。そこでイザベル主演作『ボヴァリー夫人』(‘91)を思い出したが、本作ではヒロインは破滅へとは向かわない。

kannsoukyoku-1.jpg ちょっと皮肉屋の夫グザヴィエを演じたジャン=ピエール・ダルッサンがまたいい!『キリマンジャロに降る雪』や『ル・アーブルの靴みがき』などでもそうだったが、飄々としながらも滋味深い包容力を感じさせる。妻を追ってパリへ行き、妻が男と一緒だと知って、パリの学校でトランポリンを学ぶ息子を訪ねる。酪農を継がず軽業師のようなことをする息子をバカにしていたグザヴィエだったが、初めて見る息子のパフォーマンスに心を射抜かれる。階段から落ちては起き上がるというトランポリンを使ったステージだったが、そのアーティスティックで美しいパフォーマンスに、グザヴィエ同様、見ているこちらもハッとするほどの感動を覚える。その時のグザヴィエの表情がいい!

 夫婦をはじめ息子やパリで出会う人物など、それぞれの関係性をウィットに富んだ会話で綴られていく物語に感服!そのよく練られた脚本を書いたマルク・フィトゥシ監督の才能に感謝したくなるほど、幸せな気分になれる作品だ。


 
グレートデイズ! -夢に挑んだ父と子

ジェロニモ ― 愛と灼熱のリズム 』Geronimo

友よ、さらばと言おう 』Mea Culpa 

イヴ・サンローラン 』Yves Saint Laurent

『俳優探偵ジャン』Je fais le mort

2つの秋、3つの冬 』2 automnes, 3 hivers  

バベルの学校 』La Cour de Babel

『素顔のルル』Lulu, femme nue

スザンヌ 』Suzanne
 

 


 

Fly Me to the Moon(英題) 』『邦題「バツイチは恋のはじまり」』Un plan parfait

監督:パスカル・ショメイユ
出演:ダイアン・クルーガー、ダニー・ブーン、アリス・ポル、ロベール・プラニョル
2012/フランス/104分/シネマスコープ/5.1ch
配給:ファントム・フィルム
*2014年9月20日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町他にて公開
©2012 SPLENDIDO QUAD CINEMA / TF1 FILMS PRODUCTION / SCOPE PICTURES / LES PRODUCTIONS DU CH'TIMI / CHAOCRP DISTRIBUTION / YEARDAWN

間奏曲はパリで』La Ritournelle

監督:マルク・フィトゥシ
出演:イザベル・ユペール、ジャン=ピエール・ダルッサン、ピオ・マルマイ
2013/フランス/99分/ビスタ/5.1ch
© DR

バベルの学校 』La Cour de Babel

監督:ジュリー・ベルトゥチェリ
出演:ブリジット・セルヴォー二
2013/フランス/89分/ビスタ/5.1ch
配給:ユナイテッド・ピープル
*2014年末から2015年年始公開
© Pyramide Films
ある教師の人生最後のクラスに集まったのは国籍がバラバラの学生たち...
出会い、そして別れ。国境を超えた仲間愛が凝縮した感動のドキュメンタリー。

 

グレートデイズ! -夢に挑んだ父と子

監督:ニルス・タヴェルニエ
出演:ジャック・ガンブラン、アレクサンドラ・ラミー、ファビアン・エロー
2014/フランス/90分/ビスタ/5.1ch
配給:ギャガ
提供:ギャガ、カルチュア・パブリッシャーズ
※2014年8月29日(金)より、TOHOシネマズ 日本橋、新宿武蔵野館他 全国順次ロードショー
© 2014 NORD-OUEST FILMS - PATHÉ PRODUCTION - RHÔNE-ALPES CINÉMA

『最強のふたり』の感動再び!失業中の父と、車いすの息子。
凸凹親子が挑むのは、最も過酷なトライアスロン最高峰"アイアンマンレース"!

 

イヴ・サンローラン 』Yves Saint Laurent

監督:ジャリル・レスペール
出演:ピエール・ニネ、ギョーム・ガリエンヌ、シャルロット・ルボン、ローラ・スメット
2014/フランス/106分/シネマスコープ/5.1ch
配給:KADOKAWA
*2014年9月6日(土)より、角川シネマ有楽町、新宿武蔵野館、シネマライズ他 全国ロードショー
© WY productions - SND - Cinéfrance 1888 - Herodiade - Umedia
<受賞歴>
2014年ベルリン国際映画祭 パノラマ部門オープニング作品

今年、創刊25周年を迎えるインターナショナルな女性誌「ELLE JAPON」は、"モード界の帝王"の「光と影」に迫るファッショナブルな話題作をお届けします。
時代を変えた、伝説のファッションデザイナー、イヴ・サンローラン。
華麗なるキャリアを築いた人生の喝采と孤独を描いた感動作

 

ジェロニモ ― 愛と灼熱のリズム 』Geronimo

監督:トニー・ガトリフ
出演:セリーヌ・サレット、ラシッド・ユセフ、ダヴィッド・ミュルジア
2014/フランス/104分/シネマスコープ/5.1ch
© Film du Losange
<受賞歴>
2014年 カンヌ国際映画祭 特別招待作品

トニー・ガトリフ流『ロミオとジュリエット』『ウエスト•サイド•ストーリー』!
エネルギーあふれる恋愛劇をフランス公開にさきがけて上映!

 

友よ、さらばと言おう 』Mea Culpa

監督:フレッド・カヴァイエ
出演:ヴァンサン・ランドン、ジル・ルルーシュ
2014/フランス/90分/シネマスコープ/ドルビーデジタル
配給:ブロードメディア・スタジオ
*2014年8月1日(金)より、新宿武蔵野館他 全国順次ロードショー
© Thomas Brémond © copyright Gaumont - LGM Cinéma

『すべて彼女のために』『この愛のために撃て』のフレッド・カヴァイエ最新作。
二人の刑事が過去と向き合いながら、家族を守るために激走する。

 

 『俳優探偵ジャン』Je fais le mort

監督:ジャン=ポール・サロメ
出演:フランソワ・ダミアン、ジェラルディン・ナカシュ、リュシアン・ジャン=バティスト
2013/フランス、ベルギー/105分/ビスタ/5.1ch
© Diaphana Films

フランソワ・ダミアン(『タンゴ・リブレ』)とジェラルディン・ナカシュ(『プレイヤー』)の絶妙なかけあいでおくる、ジャン=ポール・サロメ監督初のコメディ!

  

2つの秋、3つの冬 』2 automnes, 3 hivers

監督: セバスチャン・ベベデール
出演: ヴァンサン・マケーニュ、モード・ウィラー、バスティアン・ブイヨン、オドレイ・バスティアン
2013/フランス/90分/スタンダード/5.1ch

<受賞歴>
2013年 トリノ国際映画祭 審査員特別賞
2013年 Cinessonne(エソンヌ県ヨーロッパ映画祭) 観客賞

フレンチ・ニュー・ウェーヴの傑作!
注目度NO.1の若手俳優V・マケーニュ(『女っ気なし』)が期待通りの好演!

『素顔のルル』Lulu, femme nue

監督:ソルヴェイグ・アンスパック
出演:カリン・ヴィアール、ブリ・ラネール、クロード・ジャンサック
2013/フランス/87分/シネマスコープ/5.1ch
<受賞歴>
2013年サルラ映画祭(フランス) 女優賞
 © Isabelle Razavet - Arturo Mio

スザンヌ 』Suzanne

監督:カテル・キレヴェレ
出演:サラ・フォレスティエ、フランソワ・ダミアン、アデル・エネル
2013/フランス/94分/ビスタ/5.1ch
『アデル、ブルーは熱い色』のアブデラティフ・ケシシュ監督が『身をかわして』で見出した若き才能、サラ・フォレスティエの演技が見るものを魅了する

 

 

『ダイバージェント』オリジナル ①Tシャツ or ②キーチェーン(5種で1セット) プレゼント!

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■KADOKAWA提供

■ 募集人員: ①か②、どちらかお選びください。

①Tシャツ1枚(男女兼用Mサイズ) 5名様

②キーチェーン1セット(5種)   5名様
(①ABNEGATION(無欲)②AMITY(平和)③DAUNTLESS(勇敢)④ERUDITE(博学)⑤CANDOR(高潔)の5種類入り)

■ 締切:2014年7月20日(日)

★公式サイト⇒ http://divergent.jp/

2014年7月11日(金)~TOHOシネマズ有楽座、TOHOシネマズ(梅田、なんば、二条、西宮OS)、なんばパークスシネマ、OSシネマズミント神戸、MOVIX京都、ほか全国ロードショー!


 『ダイバージェント』

最終戦争から100年後の近未来―
人生の全ては、たった一度の“性格診断”で決まる。
 

全米No.1メガヒット、
2014年全米SNS期待の映画ランキングNo.1、
原作シリーズは1,900万部を突破した世界的ベストセラー、
2014年最大級の近未来SFアクションがついに上陸!!

divergent-550.jpg近未来―。人類は、たった一度の性格診断テストにより、5つの共同体(ファクション)に振り分けられた:勇気ある者が集う【勇敢】(ドーントレス)、正直者が集う【高潔】(キャンダー)、思いやりのある者が集う【無欲】(アブネゲーション)、優しい者が集う【平和】(アミティー)、知的な者が集う【博学】(エリュダイト)。
しかし、この5つに該当しない性格を持つ者が出現。それは“異端者(ダイバージェント)”と呼ばれ、その未知なる力をめぐって強大な陰謀が動き始める―。

(DIVERGENT 2014年 アメリカ 2時間19分)
原作:ベロニカ・ロス「ダイバージェント 異端者」(株式会社KADOKAWA刊)
監督:ニール・バーガー
出演:シャイリーン・ウッドリー、テオ・ジェームズ、アシュレイ・ジャッド、レイ・スティーブンソン、ゾーイ・クラヴィッツ、マイルス・テラー、トニー・ゴールドウィン、マギー・Q、ケイト・ウィンスレット脚本:エバン・ドーハティ、バネッサ・テイラー
2014年7月11日(金)~TOHOシネマズ有楽座他 全国ロードショー

公式サイト⇒ http://divergent.jp/
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DB-550.jpg『ダーク・ブラッド』

AH-550.jpg『アメリカン・ハッスル』

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