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『トレヴィの泉で二度目の恋を』

 
       

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作品データ
原題 ELSA&FRED 
制作年・国 2014年 アメリカ
上映時間 1時間37分
監督 マイケル・ラドフォード(『イル・ポスティーノ』『ヴェニスの商人』『情熱のピアニズム』)
出演 シャーリー・マクレーン、クリストファー・プラマー、マーシャ・ゲイ・ハーデン、クリス・ノース、ジョージ・シーガル、ジェームズ・ブローリン
公開日、上映劇場 2015年1月31日(土)~Bunkamuraル・シネマ、2月7日(土)~テアトル梅田、京都シネマ、2月14日(土)~シネ・リーブル神戸 他全国順次公開

 

~限りある命だからこそ人生は美しい!
    お手本にしたいような華麗なる“恋”~

 

現在80歳のシャーリー・マクレーンと85歳のクリストファー・プラマーが、永遠の都ローマを舞台に老いらくの恋を披露するというから、是非見てみたい!と思ったあなたは、かなりの映画ファン。フェデリコ・フェリーニ監督の『甘い生活』で、黒のバストカットのドレスを着たアニタ・エクバーグがトレヴィの泉で水浴びをする魅惑的なシーンがある。それと同じことをしたいと、トレヴィの泉に憧れるエルサと、人生を諦めたような偏屈じじぃフレッドとの、人生讃歌とも言える物語は、老いてなお素直な気持ちで人とつながる喜びにあふれている。


trevi-5.jpgビリー・ワイルダー監督の軽妙洒脱なラブコメの傑作『アパートの鍵貸します』(60)や『あなただけ今晩は』(63)など、元祖天然キャラのキュートさで人気を博したシャーリー・マクレーン。その後バレエダンサー役でアン・バンクラフトと競演した『愛と喝采の日々』(77)や、『愛と追憶の日々』(83)など時代に即した女性像で楽しませてくれた。老いてもそのチャーミングさは変わらず、最近ではジャック・ブラックに殺される資産家のわがままばばぁ役『バーニー/みんなが愛した殺人者』(11)の怪演が光っていた。本作では、そんな女優人生が重なるようなシャーリーにふさわしい役柄と言えるだろう。


trevi-4.jpg一方、クストファー・プラマーは、『サウンド・オブ・ミュージック』(65)のトラップ大佐役が印象的だが、様々なジャンルの個性的役柄をこなしてきた。近年では『終着駅 トルストイ最後の旅』(09)で、決して平穏ではなかった文豪の最期を、重厚感のある演技で存在感を示した。また『人生はビギナーズ』(11)では、75歳にしてゲイであるとカミングアウトする父親を演じて、あのトラップ大佐が…!? と驚かせた。毅然とした中にも人間らしさを滲ませるキャラクターを創り出せる名優。それに枯れてもダンディで魅力的だ。
 


 trevi-2.jpg【STORY】
エルサの住むアパートに7か月前に妻を亡くしたフレッドが引っ越してくる。最初の出会いは、エルサがフレッドの娘婿の車にぶつけてしまった弁償問題から。息子に用立ててもらったお金をフレッドに渡そうとするが、同情をかおうとウソを連発して弁償金を免除してもらう。意外と優しいフレッドに心を動かされたエルサは、引き籠りがちなフレッドをまず連れ出そうと、3ステップからなるエンジョイ生活を提案する。「老い先短い人生だからこそ楽しまなきゃ♪」と楽観的なエルサに刺激され、次第に前向きになるフレッド。


trevi-3.jpgだが、「若い頃ピカソのモデルになったことがある」とか饒舌なエルサの話の半分はウソだらけ。単調だが勤勉に人生を送ってきたフレッドには戸惑うことも多かった。だが、不思議とエルサの前では正直になれるフレッドがいた。そう、いつの間にかエルサに恋していたのだ。公園を一緒に散歩したり、オシャレしてレストランへお食事に行ったり、そばに寄り沿う時間を愛おしく感じ始めた頃、フレッドはエルサの重大な秘密を知ることになる。


エルサの秘密を知ってからのフレッドが男らしくてカッコイイ! 一切の迷いを捨て、彼の財産を充てにする娘婿に引導を渡し、エルサの夢を叶えるべく一路ローマへと行く決心をするのだ。「家で寝ている方がマシ」と言っていた当初の頃のフレッドとは別人のようだ。



フレッドの友人役にジョージ・シーガルや、エルサの元夫役にジェームズ・ブローリン(ジョシュ・ブローリンの父親)など懐かしい面々が出演しているのも嬉しい。シャーリーとクリストファーという大ベテランに花を添えているようだ。

つくづく、老年に到達したからこそ大っぴらに人生を語れるような気がする。今の生き様にそれまでの人生がにじみ出ているのだから。自分は長生きできるかどうか分からないが、その頃の自分はどんな顔をしているのだろうか。眉間にしわ寄せて難しい顔をしていないだろうか。今よりは穏やかな顔であってほしいと願う今日この頃です。

(河田 真喜子)

★シャーリー・マクレーン インタビュー⇒ こちら
★マイケル・ラドフォード監督インタビュー⇒ 
こちら
★公式サイト⇒ www.torevinoizumide.com

(C)2014 CUATRO PLUS FILMS, LLC

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