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『ノア 約束の舟』

 
       

noah-550.jpg『ノア 約束の舟』

       
作品データ
原題 Noah
制作年・国 2014年 アメリカ 
上映時間 2時間18分
監督 製作・監督・脚本:ダーレン・アロノフスキー(『ブラック・スワン』『レスラー』)  共同脚本:アリ・ハンデル
出演 ラッセル・クロウ、ジェニファー・コネリー、アンソニー・ホプキンス、エマ・ワトソン、レイ・ウィンストン、ローガン・ラーマン、ダグラス・ブース
公開日、上映劇場 2014年6月13日(金)~全国ロードショー

 

~ノアの内面に迫る、滅亡へと導いた人間の罪と罰~

 

noah-3.jpg 『サムソンとデリラ』(1949)や『十戒』(1956)や『ソドムとゴモラ』(1961) 、『天地創造』(1966)などの旧約聖書に由来する映画が大好きな皆様、お待たせしました。久しぶりの旧約聖書映画の登場です。ジョン・ヒューストン監督の『天地創造』は「創世記」全般のエピソードを順を追って映画化したもので、“ノアの箱舟”のパートでは監督自身がノアを演じていました。神の教えに背く人間の行為に怒った神が、ノアに啓示を与え、人間以外の動物を乗せる巨大な舟を作らせ、大洪水を起こしてこの世を一掃するという物語。

 本作では、ノアの人物像に焦点を当て、新たなアプローチでノアの使命とその意義について深く掘り下げています。この世に生きとし生けるものの存在の崇高さを、改めて感じさせてくれる壮大な物語です。それもそのはず、監督は『ブラック・スワン』で人間の持つ闇を華麗に描いたダーレン・アロノフスキー監督。「神はノアに試練をお与えになった」という旧約聖書の下りを大胆に解釈して、“神に選ばれしノア”の苦闘をスペクタクル映像と共に描いて風格の逸品に仕上げています。

noah-2.jpg 今回ノアを演じているのは『グラディエーター』でアカデミー賞主演男優賞を受賞したラッセル・クロウ。彼の力強い表情は史劇によく似合いますね。愛情深く薬草に詳しい妻をジェニファー・コネリーが、本作の希望的存在の養女イラをエマ・ワトソンが、イラと結ばれる長男セムをダグラス・ブースが爽やかに、希望のない人生に反発する次男ハムをローガン・ラーマンが、それぞれ印象深く演じています。

 ノアが神の宣託を受けて箱舟を作り上げるまでが前半で、人間を滅ぼして新世界を創造する神との約束を強行に果たそうとするノアに対して、子孫の繁栄を願う家族との対立が後半の見どころとなってきます。そんな中で、「すべては神の思し召し」と信じて家族をも犠牲にしようとするノアに対し、人間の悪の象徴でもあるカインが、「神が応えぬのなら、自らの手で奪い取るまでよ」と言い放つシーンがあります。他力本願より自力本願をモットウとする筆者にとって至極当然のことのようで、思わず「ごもっとも!」と共感してしまいました。

noah-1.jpg 前向き、すなわち欲を持って生きる者ほど生命力の強いより人間らしい人間ということなのかも。やはり、そこには掟や法、教義、信仰、道徳、倫理などの人の生きる道が存在するのも確かです。その道に背いて欲望の赴くままに生きるのは神罰の対象となる、という戒めがこの「ノアの箱舟」に込められているのでしょう。仏教や神道の家系に育った者にはイマイチ分かりづらい部分があるかもしれませんが、人間を深く見つめた描写は、信仰を超えた普遍性をもって現代人に問いかけているようです。

(河田 真喜子)

★大阪の舞台挨拶レポート⇒ こちら

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