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『ペコロスの母に会いに行く』

 
       

pecoros-550.jpg『ペコロスの母に会いに行く』   

       
作品データ
制作年・国 2013年 日本
上映時間 1時間53分
原作 岡野雄一「ペコロスの母に会いに行く」(西日本新聞社 刊)
監督 森﨑 東
出演 岩松了、赤木春恵、原田喜和子、加瀬亮、大和田健介、松本若菜、原田知世、宇崎竜童、温水洋一
公開日、上映劇場 2013年11月16日(土)~梅田ガーデンシネマ、シネマート心斎橋、京都シネマ、シネプレックス枚方、MOVIX堺 、ユナイテッド・シネマ岸和田、11月23日(土・祝)~神戸アートビレッジセンター にて公開

 


~現在と過去を行き来する中で浮かび上がる人生の重み~


 

 自分の両親がどんな人生をたどってきたかというのは、案外と知らないもの。父にも母にもそれぞれ子どもの頃、青春時代、新婚の頃があり、今へと連なる。そのことの重みと尊さが伝わり、深い余韻が残る。

 ゆういちは、離婚して、郷里の長崎で息子と母みつえと暮らす会社員。漫画を描いたり音楽活動をしたりで、営業の仕事はサボリがち。父が亡くなって10年余り、認知症でボケがひどくなってきた母をグループホームに預けることになる…。

pecoros-2.jpg 漫画家岡野雄一さんが自身の経験をもとに描いたエッセイ漫画『ペコロスの母に会いに行く』の映画化。メガホンをとったのは喜劇の巨匠森﨑東監督。ハゲた頭を小さな玉ねぎ、ペコロスにたとえ、帽子をとってハゲた頭を見せないと、息子だとわからない認知症の母みつえとのやりとりをユーモアいっぱい、人間味豊かに描く。

 みつえを演じる赤木春恵の仕草がかわいく、息子に向かって「怒らんといて」と謝る姿は、母と息子の関係が逆になっているようで、微笑ましい。ゆういちを演じる岩松了とのやりとりのテンポもよく、長崎の方言の柔らかな響きがあたたかい。

pecoros-pos.jpg 年をとると、ついさっきの事は忘れても、昔のことはよく覚えていたりする。認知症のみつえは、遠い過去の記憶の世界に戻っていき、亡くなった夫や妹、幼なじみが会いに来るとゆういちに語る。映画は、みつえの過去を、現在に交錯させて描いていく。兄弟姉妹が多く貧しかった少女時代、長崎原爆の記憶、酒乱だった夫のために苦労した思い出……、現在と過去を行ったりきたりしながら描くことで、つらい過去を乗り越えて今生きていることの尊さが、力強く浮かび上がる。と同時に、母と息子の絆のかけがえのなさが伝わり、認知症になっても今こうして元気に生きてくれている母への限りない感謝の思いが迫ってくる。「死んだとうちゃんがよう会いに来てくれる」という言葉が心にしみる。クライマックスの、長崎ランタンフェスティバルでの橋の上のみつえの姿は、過去と今とが幸せな接点を結んだようで見事だ。

 きっとこの映画を観終わって誰もが自分の両親のことを思わずにはいられないだろう。そんな懐かしさとあたたかみでいっぱいの力強い映画だ。

(伊藤 久美子)

 

★原作者:岡野雄一氏インタビューはこちら

★公式サイト⇒ http://pecoross.jp/

 (C) 2013『ペコロスの母に会いに行く』製作委員会

 

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