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『魔女と呼ばれた少女』

 
       

majo-550.jpg★戦場カメラン渡部陽一&国際NGO代表 スペシャルトークはこちら

       
作品データ
原題 REBE L L E(英題WA R W I T C H )
制作年・国 2012年 カナダ 
上映時間 1時間30分
監督 監督・脚本:キム・グエン
出演 出演:ラシェル・ムワンザ,アラン・バスティアン,セルジュ・カニンダ,ラルフ・プロスペール,ミジンガ・ムウィンガ
公開日、上映劇場 2013年3月9日(土)~シネマート新宿、4月下旬~第七藝術劇場、近日~神戸元町映画館 他全国順次公開

 

~過酷な現実と神秘な幻想のディスタンス~

 

majo-1.jpg 2011年6月にコンゴ民主共和国でオール・ロケされたという。コンゴ東部のルワンダとの国境付近が舞台のようだ。魔女と呼ばれた少女コモナが反政府軍に入った理由を生まれてくる子に話し始める。グレート・タイガー率いるゲリラに拉致されて兵士になったと語る。武器が日常生活の必需品のように存在する現実の中で死者の霊に導かれるシュールな体験だ。樹液の作用というよりコモナの生きる意思が生み出した幻想のように見える。

 大きく3つのパートに分けられ,彼女の数奇な人生が展開する。と言っても,12歳から14歳までの約3年に過ぎない。12歳でいきなりゲリラに「両親を殺せ」と命じられる。人間らしい感情を殺し,帰るべき場所を奪うためだろう。娘を救うために死を覚悟する両親の姿が悲しく痛々しい。大勢の亡霊に守られて無敵のコモナは魔女と呼ばれるようになる。そんな状況下で少年兵マジシャンと心を通わせ,青春映画のように逃避行に出る。

majo-2.jpg 政府軍に殺されるか,戦いに負けたときボスに殺されるか,という自分の運命から逃避する。13歳のコモナは,マジシャンに結婚を申し込まれ,結婚したければ白いオンドリを探してと応える。そのときから束の間の安息の時間が流れ,まばゆい青春が詩情豊かに描かれる。肉屋夫婦を始め,2人に手を差し伸べる人々の姿から希望が見えてくる。幻想ではなく現実に存在する人々の善意に救われる思いがする。だが,不幸は突然やって来る。

 2人に近付いてくる兵士たち。今度は「夫を殺せ」と言われる。「幸せに生きろ」と言うマジシャン。14歳のコモナは,部隊長の子を身ごもり,両親の亡霊に苦しめられる。村に戻って両親を埋葬するためには部隊長を殺すしかなかった。たった一人で出産するコモナに生命の力強さを見る。しかも,彼女は強く勇敢に育つように願ってマジシャンと名付ける。トラックの荷台で横になって眠るコモナ。漸く訪れた安らぎはいつまで続くのか。

(河田 充規)

公式サイト⇒ http://majo.ayapro.ne.jp/news.html
© 2012 Productions KOMONA inc.

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