原題 | MIS Human Secret Weapon |
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制作年・国 | 2012年 日本/アメリカ |
上映時間 | 1時間40分 |
監督 | 企画・脚本・監督:すずきじゅんいち |
公開日、上映劇場 | 2012年12月29日(土)~テアトル梅田、神戸映画資料館 |
~引き裂かれた祖国の狭間で懸命に生きた日系人の記録~
太平洋戦争の勃発により、祖国を二つに引き裂かれ、米国民でありながらも、日本人としての誇り-“大和魂”-を失うことなく、過酷な歴史を生き抜いた日系アメリカ人の思いに迫るドキュメンタリー。
日系陸軍情報部(MIS:ミリタリーインテリジェンスサービス)とは、日系二世で構成されたアメリカ陸軍の秘密情報機関。第二次世界大戦期に組織され、対日戦における翻訳や情報収集、文書の分析、投降の呼びかけ、捕虜の尋問を行うため、太平洋戦線に派遣され、戦闘にも従事。大戦末期には、占領下の日本の復興に尽力し、日米の架け橋として活躍した。本作は、MISの中心メンバーだった日系二世の元兵士たちの証言をもとに、日系人の置かれた状況を掘り起こしていく。
今や80歳、90歳台の元MISの兵士たち。戦後、日本に戻っても、アメリカ人として戦ったことが心にひっかかり、尊敬する日本人の大叔父に会いに行けなかったという話や、兄弟で敵味方に別れて戦うことになった悲しみを語る。戦争中、日本人に銃を向けざるをえなかったことに深く傷つきながらも、日本語で降伏するよう呼びかけ、結果的に多くの日本人の命を救い、敗戦後は、日本の再建に奔走する。彼らの果たした役割は大きい。
米国では、「キベイ(帰米)」と呼ばれ、差別と戦いながらも、米国国籍を持つ米国人として国家に忠誠を誓い、父母の祖国日本と戦う運命を受け入れた彼ら。アメリカ国民としての強い使命感と同じくらいに、日本人としての大和魂を大切に持ち続け、もう一つの祖国、日本を強く想う姿に心打たれた。
今まで、MISの存在自体が国家の最高機密として極秘扱いだったことに加え、兵士たち自身も、辛い記憶をあえて進んで語ろうとはしてこなかった。しかし、すでに終戦から70年近くが経った今、こうした貴重な証言を映像におさめることができた功績は大きい。証言とあわせて、当時の写真や資料映像も豊富に紹介され、岐路に立たされ、悩みながらも、誇りを持って生き抜いてきた兵士たちの熱い生き様が迫ってきて、みごたえがある。
すずき監督自身、アメリカに丸11年住み、『東洋宮武が覗いた時代』、『442日系部隊・アメリカ史上最強の陸軍』をつくり、高い評価を得てきた。本作で、この日系史ドキュメンタリー三部作が完結する。ぜひ生きた歴史を感じとって、本物の涙の重みをかみしめてほしい。
(伊藤 久美子)
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