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『孤独なツバメたち~デカセギの子どもに生まれて~』

 
       

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『孤独なツバメたち~デカセギの子どもに生まれて~』中村真夕監督インタビューはコチラ

 

       
作品データ
制作年・国 2011年 日本=ブラジル 
上映時間 1時間28分
監督 津村公博、中村真夕 
出演 佐竹エドアルド、鈴木ユリ、佐藤アユミ・パウラ、松村エドアルド、カルピノ・オタビオ他
公開日、上映劇場 2012年11月17日(土)~第七藝術劇場、元町映画館他順次公開

~デカセギという生き方を選んだ”ツバメたち”の青春~

 日本にデカセギに来た日系ブラジル人が多く住む浜松市で、10代の日系ブラジル人たちのアイデンティティーの揺らぎや仕事、人生の悩み、その決断を映し出したドキュメンタリー。彼らに密着し、圧倒的な信頼感を得て本音を聞きだす関係を作り出したのは、監督であり、大学教授の津村公博と、『ハリヨの夏』の中村真夕。2007年、定期的に行っている夜の若者たちの動向調査で出会った日系ブラジル人たちのその後に密着。2008年リーマンショックにより真っ先に解雇された彼らに突き付けられるのは帰国という選択肢。キャメラはその時の彼らの心境や、帰国後の彼らの人生を追い、デカセギをする意義や、日本で暮らすことの意味、そして彼らの居場所を一緒になって探し出すかのようだ。

  幼いころから日本とブラジルを行き来したエドアルドはブラジル人の中学生に英語を教えながら、工場で働く19歳。しかしリーマンズショックにより工場を失職してしまう。15歳のパウラは中卒で働いており、恋人もいるが家族がブラジルに帰る決断をし、ショックを受ける。少年院から出所した19歳のユリは、外国人のギャング団のリーダー。表社会では差別でリスペクトされないからと裏社会でリスペクトされる道を選んだが、断絶状態にある父親と若いするためにブラジル帰国を決意する。

 鬱屈した青春かと思いきや、彼らのバイタリティーと力強さには本当に驚かされる。家族のために中学校を中退して働くこともいとわず、日本での差別もバネにして同い年の10代の数倍も成熟し、人生を見据えている彼らの姿は逆にこちらが学ばされる。リストラや強制帰国など、どんな状況に置かれてもそこでベストを尽くしていく彼らの青春を若者目線で綴った青春群像劇。非行に走るのを救ったダンスチームの練習風景を挿入し、全篇を貫くヒップホップのリズムが彼らの生きる力を鮮やかに映し出しているのにも注目したい。(江口由美)

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