～ダメ恋愛映画×モト冬樹の化学反応を見よ！～

　テレビ、舞台でも人気のエンターテイナーモト冬樹生誕60周年映画を手がけるのは『たまの映画』をはじめ、ドキュメンタリータッチの手法とダメ恋愛映画に定評のある今泉力哉監督。本作でもモト冬樹演じる主人公の小説家高田を取り巻く総勢15人の男女の恋愛模様が時にはリアルに、時にはシニカルに綴られ、クライマックスの還暦パーティーまでもつれ込んでいく様は圧巻だ。

　本作の軸となる女性は、高田と親密になっていく小夜（内村遥）。妻や彼女のいる男を無意識のうちに虜にしていくが、自分自身は幸せになれないダメ恋愛映画のジョーカーのような存在だ。高田と小夜の意味深な会話や、2人が得意な楽器でセッションするシーンなど、いつになく二枚目ぶりをみせるモト冬樹の意外な一面も垣間見える。愛妻亡きあと一人身を通してきた高田だが、還暦と恋の幸せが同時にやってくるのか!?

　今泉力哉監督曰く「さんざんいい大人として全ての家族をまとめようとしてきたのに、最後に子どもに戻ってしまう」還暦パーティーでの高田の名（迷）演説はまさに必見。モト冬樹の魅力が見事に引き出された、いじらしくも可笑しい大人の群像劇に思わずニヤリとさせられた。（江口由美）

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