『そして友よ、静かに死ね』インタビューはコチラ
原題 | Les Lyonnais |
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制作年・国 | 2011年 フランス |
上映時間 | 1時間42分 |
監督 | オリヴィエ・マルシャル |
出演 | ジェラール・ランヴァン、チェッキー・カリョ、ダニエル・デュヴァル、ディミトリ・ストロージュ |
公開日、上映劇場 | 2012年9月15日(土)~銀座テアトルシネマ、9月22(土)~テアトル梅田、シネ・リーブル神戸 他全国ロードショー |
~兄弟よりも堅い契りの、友を信じた男…~
東映で60年代に全盛を誇った任侠映画は北島三郎の歌「兄弟仁義」(同名映画も)が言い尽くしている。♪親の血を引く兄弟よりも 堅い契りの義兄弟…一家、組内で結ばれる“兄弟盃”は組織を構成する重要なエレメント。親兄弟の関係は擬制の家族、国家でもあった。ドライなアメリカでは通用しない観念だろうが、フランス人気質は日本人と似ているのか、兄弟仁義風の友情物語がフィルム・ノワールに時折見られるから不思議だ。
「あるいは裏切りという名の犬」でフィルム・ノワール健在を世にアピールした新世代監督、オリヴィェ・マルシャル監督。新作は熱い友情に生きた男たちの物語。これもフランスの伝統か。60年代の傑作「さらば友よ」(ジャン・エルマン監督)ではアラン・ドロンとチャールズ・ブロンソンが強盗に入った場所で偶然一晩閉じ込められてしまう一風変わったお話だが、見どころは2人が警察に捕まった後、知り合いであることを断固認めないところ。警察の厳しい尋問にも知らぬ存ぜぬで通すブロンソンにドロンも応え、状況が逆転した最後に2人が「大声」を出して認める合図でテーマ曲(作曲フランソワーズ・ド・ルーべ)につながるエンディングにシビれた。
これとは違って「そして友よ~」は35年間もの長いつながりが仲間や家族を巻き込んでいく。伝説のギャング、モモン(ジェラール・ランヴァン)は還暦を迎え、妻や息子、孫たちと穏やかな余生を送る。だが、かつての仲間で親友のセルジュ(チェッキー・カリョ)が13年の逃亡の末、逮捕される。彼は麻薬取引で仕事相手を裏切っており、刑務所に入れば殺される状況。モモンは「自業自得」と言い捨てるが、セルジュの義理の息子らが、病院搬送中のセルジュ奪還に成功、モモンはセルジュと再会する…。 物語は一気に2人の出会いにさかのぼる。モモンは「ロマ族」としてみんなから差別されていたが、彼をただひとり助けたのがセルジュだった。差別の中での援護、2人の結びつきは強い。
映画は現在と過去の時間を繋いで、64年に遊び半分でさくらんぼを盗んで禁固刑を受けたことをきっかけに、2人はギャング仲間として悪の道を転げ落ちていく。“義兄弟”の結成過程と、ジェラールの逃亡、モモンの援助という現在の帰結が同時進行で綴られる。 この映画の中の時間は60年代に始まったフィルム・ノワールの歴史にダイレクトにつながる。ジェラールを逃がすことに全力を尽くすモモン。家族、仲間からの反対、警察の甘い誘いも振り切ったモモンを待っていた衝撃の事実とは…。オリヴィエ・マルシャルは現在進行形フィルム・ノワールで幻想を打ち破ったのか。(安永五郎)
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