『毎日がアルツハイマー』舞台挨拶、関口祐加監督インタビュートはコチラ
(C)2012 NY GALS FILMS
制作年・国 | 2012年 日本 |
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上映時間 | 1時間33分 |
監督 | 関口祐加 |
公開日、上映劇場 | 2012年7月14日(土)~ポレポレ東中野、銀座シネパトス、9月8日(土)第七藝術劇場 |
~他人事じゃない!?ネバーギブアップな毎アルの日々~
「Never give up!(ネバーギブアップ!)」
度々こぼれるこの言葉は、まさに日々介護しながら自分に言い聞かせているのだろう。オーストラリア在住39年の女性監督関口さんが、母のアルツハイマー型認知症になっている病状を知り、離婚した夫と息子のいる地を離れて同居することになってから今に至るまでの介護日記。それが人生賛歌のごとく逞しく、くすりと笑えて、どこか心温まってしまうというのだから観ているこちらも驚きだ。娘の目から見た母親は、物忘れが激しくなってもちっとも変わらず、達者なようである。
帰国してから母と生活するうちにブランクを埋めるかのように会話を重ね、カメラを回して母の様子を観察する関口さん。「年のわりに白髪がない。ぼっくり死にたいと思っている。」などを母は秘かに誇りに思っていたり、若い頃に比べて喜怒哀楽がどんどん激しくなっている。時には「何撮ってるの?」と嫌な顔をされ、アルツハイマー特有の同じことを繰り返し言う症状が垣間見えても、そこに入る絶妙な関口さんツッコミ字幕が効いている。辛いことも、ユーモアに変える能力って本当に大事だ。笑い飛ばして、母と過ごす日々が関口さんのとまどいもそのまま素直に綴られているのがいい。
病院になかなか行こうとしない母に代わって、関口さんはアルツハイマーの専門家のもとを訪ねていく。「アルツハイマー型認知症 は多幸症とも言うんです。」「脳の5%は正常に機能しなくなってしまっているけれど、残りの95%変わらず機能しているんです。」と、今まで負のイメージしかなかったこの病気をポジティブに捉える話が挿入され、日々を切り取るドキュメンタリーが肉付けされている。患者の行動が理解できず苦しむ家族にとっても、観ている我々にとっても非常に参考になる言葉だ。
孫たちと楽しそうに、時には子どもに戻ったように無邪気にどつきあいをする母、引きこもってしまい、通帳の場所も分からなくなってしまった母、震災があったことすら忘れてしまったような母、そんな自分のことに気づき情けない思いをしている母。全てを受け入れ、とことん付き合う覚悟を決めた関口さんの毎アル生活は、まだリアルに続いている。劇映画だと悲劇で終わってしまうことがほとんどのアルツハイマー病の本当のところを、包み隠さずカミングアウトしたパワフルムービーは、本当に説得力があった。何よりも母を支える監督やその家族たちが母を中心に一つになっている姿に、介護の暗くて辛いイメージを払しょくする気迫がみなぎっている。(江口 由美)
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