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『へルタースケルター』

 
       

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『へルタースケルター』舞台挨拶レポートはコチラ

(C)2012映画『ヘルタースケルター』 製作委員会

       
作品データ
制作年・国 2012年 日本 R15+
上映時間 2時間7分
原作 岡崎京子著『へルタースケルター』祥伝社
監督 蜷川実花
出演 沢尻エリカ、寺島しのぶ、大森南朗、桃井かおり、綾野剛、水原希子、窪塚洋介
公開日、上映劇場 2012年7月14日(土)~丸の内ピカデリー、大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、神戸国際松竹、MOVIX京都他全国ロードショー

~蜷川×沢尻が仕掛けるスキャンダルエンターテイメント~

 沢尻エリカ5年ぶりの銀幕復帰にこれほどふさわしい作品はないだろう。若く美しくなければ切り捨てられる芸能界や、移り気なファンに翻弄され、身も心もボロボロになっていく全身整形のトップスターりりこの姿は、今や“エリカ様”と呼ばれ、その一挙一動が大きな話題を呼ぶ沢尻エリカ本人とも重なる。岡崎京子の人気アニメが原作、芸能界を舞台にした愛と欲望の世界を描き出すのは『さくらん』の蜷川実花監督。自身が撮るのを熱望した本作を、シーンごとに赤、青、白を基調にしたこだわりの映像でセンセーショナルかつ艶やかに激写する。

hs-2.jpg テレビや雑誌で引っ張りだこ、御曹司南部(窪塚洋介)との恋愛など向かうところ敵なしのトップスター、りりこ(沢尻エリカ)には全身整形という重大な秘密があった。後遺症であざができ初め、再度手術をしたりりこは、後輩こずえ(水原希子)の猛追、南部と令嬢との結婚スクープや美が失われる恐怖から、精神的にも肉体的にも極限まで追い詰められていく。一方、りりこが通うクリニックの不正を調査していた検事、麻田(大森南朗)は、患者の自殺被害増大に焦り、最後の切り札りりこと運命の出会いを果たす。

hs-3.jpg りりこの人気を物語るエピソードでは、華麗なファッションに身を包み、自身満々のりりこショットが連発。フォトグラファー蜷川実花の世界を存分に堪能できる。寺島しのぶ演じる地味なマネージャーにドSな罵声を浴びせかけながらも、時には甘えてみたり、マネージャーの彼氏まで手玉にとったり、まさにやりたい放題。喜怒哀楽を激しく表現するりりこ=沢尻エリカをキャメラはひたすら映し出す。美と名声のために全てをなげうつ女の強さと弱さをこの迫力で演じきれるのは、やはり彼女だけと納得してしまうのだ。

 しかし一番怖い存在は、命を削ってでも大冒険を続けるりりこを商品として「好き」になり、飽きたら次に移る気ままな消費者たち。意識的に挿入された渋谷の街ウォッチングの中から、美とカワイイを追求する女子たちの能天気な会話を耳にすると、表面だけの美を追求することの虚しさが募る。一方、終盤の幻覚や麻田との出会いで覚悟を決めた衝撃的なラストショーは、狂気の中の美しさに目を奪われた。美と成功を手にするために大きな犠牲を払った“タイガーリリー”りりこの大冒険は、あまりにもリアルなスキャンダルエンターテイメントとして他の作品にはない危うい魅力を放っている。(江口 由美)

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(C)2012映画『ヘルタースケルター』 製作委員会

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