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『ほどなく、お別れです』

 
       

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作品データ
制作年・国 2026年 日本
上映時間 2時間5分
原作 長月天音「ほどなく、お別れです」シリーズ(小学館文庫刊)
監督 ●監督: 三木孝浩 ●脚本監修: 岡田惠和 ●脚本: 本田隆朗 ●音楽: 亀田誠治 ●主題歌: 手嶌葵「アメイジング・グレイス」(ビクターエンタテインメント)
出演 浜辺美波 目黒蓮/森田望智 / 古川琴音 北村匠海 志田未来 渡邊圭祐 野波麻帆 西垣匠 久保史緒里 / 原田泰造 光石研 鈴木浩介 永作博美/夏木マリ
公開日、上映劇場 2026年2月6日(金)~全国劇場にてロードショー


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~人の温もりを感じさせる葬儀プランナーの物語~

 

安楽死、尊厳死、孤立死、終活、多死社会、終末期ケア……。超高齢化社会に突入し、「死」をテーマにした映画が多くなった気がしていますが、本作もストレートに「死」を見据えた作品です。それも葬儀プランナーの目を通して。この手の映画では、大ヒットした納棺師の物語『おくりびと』(2008)以来ですね。


hodonaku-500-1.jpg「遺族の希望に沿って故人に合った葬儀を提案し、全ての進行、手配、会場設営を執り行う仕事」。プレスシートには、葬儀プランナーをこう説明されています。昭和の頃は、こんな職種はなく、単に「葬儀屋」とひと括りにしていましたが、昨今、ありきたりな葬儀では過当競争に生き残れないのか、遺族に対するきめ細やかな「奉仕(サービス)」が求められ、葬儀プランナーというスペシャリストが生まれたのでしょう。


映画の主人公は、就活で難渋している清水美空(浜辺美波)という女子大生。彼女、亡くなった人の声が聞こえ、姿も見えるという信じられない能力を持っているんです。えっ、そんなアホな。誰もがそう思いますよね。でも、そういう設定なのだから、ツッコんでもしゃあありません。だから、本作は紛れもなくファンタジー! そう頭を切り替えれば、納得、納得。


hodonaku-500-6.jpgそんな美空がたまたま告別式に参列した葬儀会社の会場で、特異な能力の持ち主であることを、漆原礼二(目黒蓮)という葬儀プランナーの知るところとなり、彼女をインターンシップとしてスカウトします。普通なら気味悪がるはずなのに、漆原さんはよっぽど心が広いんですね(笑)


ぼくはこれまで親族をはじめ数え切れないほど多くの方々の告別式に参列したし、私事ですが、4年前に妻が急逝したときは喪主も務めました。なので、亡くなってから通夜と葬儀を経て、火葬へと至る流れはそれなりに記憶していると思っていたのに、この映画を観て、細部に関してはいろいろ忘れているなぁ~と。


hodonaku-500-4.jpg漆原は、クールな毒舌家で頑固なところがあるけれど、とことん遺族に寄り添い、仕事をパーフェクトに完遂できる葬儀プランナーの鑑みたいな人物。納棺師までやってのけるのだから、ホンマもんです。そんな彼の元で、右も左もわからない美空がビシバシとスパルタ教育を受けながら、愛する人を亡くした遺族とのふれ合いとお見送りを通して成長する姿が浮き彫りにされていきます。


hodonaku-500-5.jpgその過程で4つの葬儀と遺族が描かれます。1つ目は、妊娠中の妻(古川琴音)が歩道橋から転落し、生まれてくる赤ちゃんと愛妻を一度に失った夫(北村匠海)。2つ目は、先天性心疾患の愛娘を5歳で亡くした父親(渡邊圭祐)と母親(志田未来)。3つ目は、交通事故死した母親(野波麻帆)の息子(西垣匠)と娘(久保志緒里)。そして最後が、かつて芸者をしていた美空の祖母(夏木マリ)の病死。


hodonaku-500-9.jpgどの話も非常によく出来ていました。いや、1つだけでも十分、映画になるほど出来すぎています。例えば、3つ目の話は、とある事情で母親と離婚せざるを得なくなった父親(原田泰造)と息子との確執をあぶり出していて、家族ドラマとしても観させます。なのに、他の話の純度が高く、印象が薄まってしまいそうなくらいです。


すべて美空の能力が功を奏したことで得も言われぬ感動を生み出し、試写室で観ていたぼくは何度、頬を濡らされたことか。とりわけ2つ目の話は幼い女の子が映った途端、涙腺が緩んでしまった。隣に座っていた女性ライターはもうボロボロ状態でした(笑)。安易にお涙頂戴を狙った映画と思いたくはありませんが、ハンカチは手放せません!


hodonaku-500-7.jpg美空に扮した美波ちゃん、ホンマ、可愛いですね。この役どころはかなりプレッシャーがかかるはずですが、ひたむきさを感じさせながらも伸び伸びと演じていたと思います。美空の祖母と母親をそれぞれ演じた夏木マリと永作博美、案の定、クライマックスでいかんなく存在感を発揮していました。さすがです。


hodonaku-500-10.jpgダブル主演の相方、Snow manの「めめ」、こと目黒蓮。細面のクールな顔立ちを活かし、終始、ブレることなく、「優等生」の漆原を貫いてくれました。胸の内に何か秘めている、そんな空気感もうまくかもし出していました。納棺師として故人を化粧し、死装束に着替えさせる厳粛なシーンは、『おくりびと』のモッくん(本木雅弘)をかなり意識していたような気がしてなりません。


hodonaku-500-8.jpg遺族となった人なら誰しも経験しているでしょうが、葬儀会社のスタッフのちょっとした言動が妙に胸に突き刺さります。何せ超デリケートな場ですからね。計り知れないほど傷心の想いを抱く遺族と真摯に向き合い、言葉を選んで応対する。さらに可能な限り要望を叶えるというのはなかなか難しいことです。それを粛々と当たり前のようにこなす。葬儀プランナーはつくづくプロフェッショナルやなぁと思い知らされました。


hodonaku-500-2.jpg一番、印象深いセリフがこれ。遺族の言葉を聞き、もらい泣きする美空を見て、漆原がビシッと言います。「プランナーが悲しんだらいけない。遺族の方が納得できるよう悲しみの場を作るのが私たちの仕事」。ホーッ、そういうことなんや。


人の「死」という極めて厳かで、シリアスなテーマを扱っているのに、見事なほど温かい雰囲気に包み込んだ三木孝治監督の演出に拍手を送りたいです。それもこれも小説家・長月天音の原作を、4つの連続する珠玉の物語として紡いだ脚本(本田隆朗)があってのこと。


hodonaku-500-3.jpg「ほどなく、お別れです」――。タイトルにもなったこの定型句の意味がよくわかりました。葬儀というセレモニーは、送られる人と送る人の気持ちを何よりも尊重する場で、「死」を介して「生」を見つめ直す場でもあるんやなぁ。同時に、遺族は故人の分まで日々、しっかり丁寧に生きていかなアカンと改めて思いました。


武部 好伸(作家・エッセイスト)

■公式サイト: https://hodonaku-movie.toho.co.jp/
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配給: 東宝
©2026「ほどなく、お別れです」製作委員会 ©長月天音/小学館

 

 

 
 
 
 

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