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『わたしは異邦人』

 
       

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作品データ
原題 Gunduz Apollon Gece Athena 「昼のアポロン、夜のアテネ」
制作年・国 2024年 トルコ
上映時間 1時間52分
監督 監督・脚本:エミネ・ユルドゥルム
出演 エズギ・チェリキ、バルシュ・ギョネネン、セレン・ウチェル、ギセム・ウチェル、デニズ・テュルカリ
公開日、上映劇場 2025年11月8日(土)~元町映画館、11月15日(土)~第七藝術劇場 ほか全国順次公開
受賞歴 東京国際映画祭2024「アジアの未来作品賞」受賞

 

~母探しの旅で出会った人たちは~

 

トルコにある古代アナトリアの遺跡シデを舞台に、ひとりの女性の母を探す旅が描かれる「わたしは 異邦人」(エミネ・ユルドゥルム監督・脚本)は、ひじょうにユニークな構成のドラマです。

 
ihojin-500-1.jpgバスでまどろむダフネ(エズキ・チェリキ)の後ろの席から声をかける男性フセイン(バルシュ・ギョネネン)。やがて彼は幽霊で、ダフネには見えてもほかの人には見えないことが判ります。ダフネはプログラマーの仕事をしていますが、同時に霊能力も持っているのです。

 
ihojin-500-7.jpgゲストハウスのオーナー、セルマ(デニズ・デュルカリ)は夫の亡き後一人で切り盛りしていますが、幽霊の夫があれこれ指図をするのがダフネには見えてしまいます。セルマはダフネのIDを見て父アダム、母イヴとあるのに笑いますが、ダフネは孤児の両親はその名前になると言います。謝るセルマ。ダフネは気にしません。

 
ihojin-500-3.jpgダフネの元にやって来る幽霊は夫を殺した娼婦のナジフェ(セレン・ウチェル)だったり、古代の巫女(ギセム・ウチェル)だったり、いわくある人ばかり。ナジフェの娘ハザルに母の気持ちを伝える役を頼まれたり、巫女のことを記録した石版のかけらを掘り出したりします。ナジフェは見返りとして、ダフネの母の居所を教えると言ったのですが、はたして死んだと思っていた母は生きていて遺跡ツアーの案内人をしていました。

 
ihojin-500-2.jpgダフネが母を個人ツアーに雇って、彼女に実の娘だと伝えた時、母はなぜ、産んだダフネを捨てなければならなかったか事情を話します。ナジフェの夫殺しのいきさつも、喋れなくなった巫女の運命も、それぞれ事情がありました。セルマも含め、みな、女性としての受難があったのです。だからセルマのDV夫だけはやっつけられます。

 
ihojin-500-4.jpgそしてマッチョでなく心優しいフセインの死は、トルコにおける政治情勢とかかわりがありました。1992年に行方不明になった息子を今も母が探しているというニュースがテレビに流れます。フセインはクルド系の青年でした。

 
幽霊になった人々のエピソードを通してトルコの歴史や神話を紐解く手法が新鮮です。最初はちょっとわかりづらいのですが、すぐ理解できます。

(原題は「昼のアポロン、夜のアテネ」)

 

(夏目 こしゅか)

公式サイト:http://www.pan-dora.co.jp/ihojin/

配給:パンドラ

© Rosa Film, Ursula Film

 
 
 

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