原題 | THE ROSES |
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制作年・国 | 2025年 アメリカ・イギリス |
上映時間 | 1時間45分 |
監督 | ジェイ・ローチ(『オースティン・パワーズ』『ミート・ザ・ペアレンツ』) |
出演 | オリヴィア・コールマン、ベネディクト・カンバーバッチ、アンディ・サムバーグ、アリソン・ジャネイ、ベリンダ・ブロミロウ、ケイト・マッキノンほか |
公開日、上映劇場 | 2025年10月24日(金)~大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズなんば、イオンシネマシアタス心斎橋、MOVIX京都、京都シネマ、OSシネマズミント神戸 ほか全国ロードショー |
“ケンカするほど仲がいい”というのは真実なのか、大ウソなのか。
とくとお確かめあれ!
『夫婦喧嘩は犬も喰わぬ』とはよく言われてきたことだが、それは他人が仲裁しようとそばからあれこれ言ったとしても、本人たちはすぐにけろっと忘れて仲直りしてしまえる場合。この映画の夫婦を見れば、犬も喰わぬどころか、犬のほうが喰われるようなすさまじさ! 洋画ファンならご存じ、『ローズ家の戦争』(1989年/ダニー・デヴィ―ト監督)のリメイク版である。若きマイケル・ダグラスとキャスリーン・ターナーがとんでもない夫婦を演じた旧作と比べると、本作は現代的な味付けに加え、結末も「へえ、そうなるのか!」という按配だ。結末に至るまでのジェットコースター的ブラックジョークにどこまで持ちこたえられるか、この“えげつない夫婦”のおかしさにとことんおつきあいを。
建築家のテオ(ベネディクト・カンバーバッチ)は、ロンドンのレストランでそこのシェフであるアイビー(オリヴィア・コールマン)とひょんなことから出会い、ふたりは激しく恋に落ちて結婚した。10年がたち、双子の子どもにも恵まれ、仕事も家庭も順風満帆、絵に描いたような幸せカップルだった。ところが、思わぬ惨事が起きる。テオがデザインを手掛けた海洋博物館の巨大な“帆”が嵐で崩壊し、それがSNSで拡散。建築家としての評価が地に落ちて仕事がなくなってしまう。一方、アイビーのほうはテオの後押しもあって開店したシーフードレストランが予約で埋まるほどの大盛況。夫婦の立場が逆転したことから、互いへの不満が膨れ上がっていく。
ここでも「男性優位ならばまるく収まっていたのか?」ということと、「優位にある者は“持てる者”でなければならないのか?」ということが問われているように思う。そして、社会というものは、どちらの問いにもYESと答えるのではないか。女性が自己主張し過ぎると反発する男性はいまだに多いし、この映画のテオがだんだんとアイビーに憎しみを向けていく姿を見ていると、彼もまさしくそれだ。では「アイビーが料理の技術を持たず、ひたすらテオに尽くすだけの妻だったら良かったのか?」。そんなわけないでしょ、と女性なら答える。
映画の裏に隠れている、問うてはいけないこの質問がちらちら浮かんでは消え、消えては浮かび、オリヴィア・コールマンがアイビーの姿で、その激しさでNO!を突きつけてくる。それに、お金や社会的地位など何かを“持てる”者が優位者になっていくのは社会では必然ともいえるわけで、アイビーの変貌ぶりは彼女が自信とともに優位を得たからなのだ。それがまたテオにとっては憎たらしい。これほどの悲劇はないともいえるのだけれど、それがおかしくも痛快で、鳥瞰ならば喜劇と映る。
ビジュアル的には、夫婦ふたりが固執した邸宅の美しさに惹かれた。すてきなインテリア、趣味の良いたたずまい…これがどんなふうになってしまうのか。まさか、まさかの展開と物語の意外な着地を、目を皿にして楽しんで!
(宮田 彩未)
公式サイト:https://www.searchlightpictures.jp/movies/theroses
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
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