原題 | 原題:夜校女生|英語題:The Uniform |
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制作年・国 | 2024年 台湾 |
上映時間 | 1時間49分 |
監督 | 監督:ジュアン・ジンシェン(荘景燊) 脚本:シュー・フイファン(徐慧芳)、ワン・リーウェン(王莉雯) |
出演 | チェン・イェンフェイ(陳妍霏)、シャン・ジエルー(項婕如)、チウ・イータイ(邱以太) |
公開日、上映劇場 | 2025年10月31日(金)~新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町、アップリンク吉祥寺、シネ・リーブル池袋、テアトル梅田、京都シネマ、11月14日(金)~シネ・リーブル神戸 ほか全国順次公開 |
〜時代を映し鏡にした青春の記録〜
この頃の台湾の受験競争は熾烈なもので、ベビーブーム世代が一斉に受験生となった頃の日本にも似ている。今は状況は変わったが、確かに存在していたひとつの時代の記憶が鮮やかにスクリーンに焼き付けられている。
1997年、小愛(シャオアイ:チェン・イェンフェイ)は第一女子高校を受験するが、より競争率の高い全日制への入学は叶わず夜間部生となる。それでも6%の狭き門だ。受けられる教育は同じと、母親は強引に入学手続きをする。
かつて台湾には机友(きゆう)という言葉があった。昼の学生と夜の学生は同じ机を使うことから、良い関係を築き互いに成長し合えるようにという意味が込められている。小愛の机友は敏敏(ミンミン:シャン・ジエルー)。二人は机の中で手紙をやり取りするようになり、やがて制服を交換するまでになる。学校を抜け出して遊びに行くとき、全日制と夜間部の制服のネームの色の違いを教師に見咎められないための秘策だった。そこへ一人の男子学生ルー・クー(チウ・イータイ)が加わったことで均衡が崩れ始める。
台湾最大の脚本コンペティション「優良電影劇本奨」の特別優秀賞に輝いた本作は、とにかくディテールがリアル。共同脚本のシュー・フイファンとワン・リーウェンと監督のジュアン・ジンシェン、それぞれの体験が投影されている。とくに夜間部に通っていたシュー・フイファンのエピソードは実体験によるものが多い。そこへ当時の流行や実際にあった出来事で肉付けしていったという。ルー・クーにはピンとくる人も多いだろう。スターウォーズの主人公の名前。ハリウッド女優や日本のドラマ・漫画もモチーフとして登場する。
青春映画って青春ど真ん中の人のためのものだと思っていたけど、本作はむしろ大人のための青春映画だ。と言っても大人の視点で昔を懐かしむ趣旨ではなく、あの頃の気持ちを追体験させてくれるのだ。十代の頃の気持ちなんてもう思い出せないと思っていたが、傷つけたり傷つけられたり、なぜそんなことをされるのか、してしまったのか。あの頃わからなかったことの謎が今するすると解ける。また、現役世代にとっては恋愛や友人関係の悩みはリアルタイムで起こる最大の関心事。描かれるのがちょうど親世代にあたることから興味を惹きやすいという狙いもあったようだ。
制服のシャツの袖を折って精一杯のオシャレをするのも、お揃いのグッズを持つのも、後で言おうと思って言いそびれるのも、思い当たることだらけだ。小愛もみんなに少しづつ隠し事をしている。自分が思春期の頃はそれをズルだと思っていた。でも今なら弱い自分を見せたくなかったり、がっかりさせたくないだけだとわかる。小愛を演じるチェン・イェンフェイの大きな瞳がキラキラ輝いたり不安そうに泳いだりするのが、今しか見えていない思春期の一回性を眩しく映し出す。
彼らの年頃にこれを観たなら小愛か敏敏のどちらかに肩入れしたかもしれないが、今ならそれぞれの気持ちがわかる。長い年月の間には両方の立場を経験しているから。小愛の年上の同窓生を演じたホアン・ジーリンの一本気な表情も心に残る。また、女手一つで小愛姉妹を育てる母親(ジー・チン)や小愛がアルバイトする卓球場の主人(ジェン・ジーウェイ)のキャラクターも活き活きと描かれている。メインキャストの3人だけでなく、誰もが自分の人生の主役なのだということが確かな輪郭を持って伝わってくる。
(山口 順子)
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