スタッフ・キャスト国際色豊かなドリームチームが描く、

スカッとする１本！

『ワイルド・スピード』のルーク・エヴァンスとサン・カンがリュック・ベッソン制作のカーアクションに出る。舞台は台北。オープニング、タイトルバックが出るまでのスタイリッシュなコラージュ映像を観ただけで期待が高まる。

　
まず導入部で主要キャストの背景が示される。サン・カンが演じる大物実業家とエヴァンスが演じる潜入捜査官。そして「ムーンリバー」のメロディと共にオードリー・ヘップバーンのごとくアジアンビューティが登場。今年９月に公開が始まった西島秀俊の『ディア・ストレンジャー』（真利子哲也監督）にも出演するグイ・ルンメイだ。行き先はTIFFANYかと思いきや高級外車のディーラー。真っ赤なフェラーリに目をつけると、試乗をもちかけ乗り込むやいなや急発進。エンジン音が唸るとスピードメーターは急上昇。馬がいななくように混み合う二車線道路を縫うように疾走する。一瞬にして引き込まれた。監督は『ザ・プロデューサー』のジョージ・ホワン。

本作は何といっても観やすさが魅力。100分というコンパクトさ、今どき盛んな伏線回収などの難解さはなく肩の凝らないポップコーンムービーだ。緩急を心得て、見せ場はしっかり見せて、切るところはバッサリ落とし、それでいて物語の根幹はしっかりしている。昔はこういう作品が手軽に観られたが最近は少なくなった気がする。だからこそ、かえって新鮮なのだ。フィクションの世界への導入が鮮やかで流れるようなストーリーテリングとカメラワークはまさに職人技。その裏には丹念な下準備があった。ナイフ・サーベル・銃器・炎を駆使したキレキレのアクションはスタントトレーニングとコレオグラファー（殺陣師）による緻密に計算された動きだ。また、グイ・ルンメイの役どころは熟練ドライバー。スタント・車両監督との乗車訓練ではフェラーリに乗った時が最も恐かったと回想する。

街なかの狭い路地、有名なマリオットホテル、ひなびた漁村の風景。視界が開けるとドラマはますます盛り上がりを見せる。バギーを駆使してのカーチェイスを空撮で捉えたショットや台北市の高層芸術住宅「陶朱隠園」にはため息が出そうになる。手を替え品を替え繰り出されるバトルでは、サン・カンの右腕・タトゥーの男にも注目してほしい。ターミネーターかコマンドーかという風貌に目が釘づけになる。極め付けはエヴァンスとサン・カンの一騎打ちのシーンだ。カーチェイスの次は足を使った追跡劇。期待を裏切らないスマッシュヒットが何度か用意されているので乞うご期待。

やがて追跡劇はレジャー施設へともつれ込む。このシーンにも何か懐かしさを感じて笑みがこぼれた。これが偶然の産物と知って二度びっくり。撮影時の台北の気温が観測史上最高レベルに達しキャスト・スタッフの体調を配慮して急遽変更したという。これが功を奏して名シーンが生まれた。

（ジョージ・ホアン監督  © 2024 - EuropaCorp – All rights reserved © Photo YiLin LI ）

ハリウッドの監督が台湾で現地スタッフやフランス人の撮影監督と共に映画をつくるという現場では英語、フランス語、中国語が飛び交うという、かなりカオスな状況だったもよう。それが得も言われぬ魅力を生み出した。言葉を超えた空気感がスクリーンから伝わってくるのだ。アクションだけでも十分楽しめるが、さらに「いいもの観たな」という満足感が広がる。

（山口 順子）

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配給：アット エンタテインメント

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