原題 | En Fanfare |
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制作年・国 | 2024年 フランス |
上映時間 | 1時間43分 |
監督 | エマニュエル・クールコル(『アプローズ、アプローズ! 囚人たちの大舞台』『ミモザの島に消えた母』『灯台守の恋』) |
出演 | バンジャマン・ラヴェルネ、ピエール・ロタン(アプローズ、アプローズ! 囚人たちの大舞台)、サラ・スコ他 |
公開日、上映劇場 | 2025年9月19日(金)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、kino cinema神戸国際ほか全国ロードショー |
~人生の居場所を超えて結び合えた、音楽版“最強のふたり”~
「ああ、やっぱり音楽ってイイよねえ!」と心身で共感した作品。兄弟愛というより人類愛的につながったふたりの男、その接着剤が音楽だ。名曲がぞろぞろ出てきて、不幸を小さくし、生きる糧となり、人と人の絆を育んでゆく。気持ちが高揚し、胸がいっぱいになるラストシーンも秀逸だ。
世界的な名声を得てクラシック音楽界で活躍する指揮者ティボ・デゾルモ(バンジャマン・ラヴェルネ)だったが、白血病だと診断される。骨髄移植が必要となり、妹の骨髄を検査してもらったところ、なんと血のつながりがないとわかる。母親は彼が養子であることを37年間も隠し通してきたのだが、実の弟がいることを告げる。フランス北部の田舎町で暮らすその弟ジミー(ピエール・ロタン)のもとを訪れ、自分が誰であるか、何を依頼しに来たかを伝えるティボ。しかし、兄の存在を全く知らずに大人になったジミーにとって、それは青天の霹靂だった。
兄弟なのに育った環境が全く異なり、一方は世界を股にかける高名な指揮者、一方は地元の学食で働くシェフ。ティボの家を訪れたジミーの心中に羨望が生まれ、それがひがみや苛立ちに変わっていくのに時間はかからなかった。しかし、ふたりを近づけたのが音楽だった。ジミーは地元の吹奏楽団でトロンボーンを吹いており、彼の言動を見ていたティボは、ジミーが“絶対音感”を持つ稀有な人間だと悟る。それに加えて、このふたりの男はなんとも好人物なのだ。これまで自分の人生に何の影も見せなかった兄の力になろうと決めたジミーもそうだし、超過密スケジュールの合間にジミーの吹奏楽団の危機を救おうと遠くから何度も足を運ぶティボもそうだ。これは、人の善良さを信じようとする映画なのだと思う。
フランスの名優バンジャマン・ラヴェルネと、エマニュエル・クールコル監督の『アプローズ、アプローズ! 囚人たちの大舞台』にも出演していたピエール・ロタンの掛け合いはなんとも素晴らしいデュオだ。加えてジミーが所属する吹奏楽団にも注目した。本作はフランス北部のノール県で撮影され、県下の「ラレン市営炭坑労働者楽団」のメンバーが劇中の吹奏楽団員に扮し、演奏もしているとか。ナチュラルで温かみのある雰囲気で、主人公のふたりの男に寄り添っている。
工場閉鎖の危機とストライキ、ティボの病状の変化など、幾つもの試練があるが、人と音楽が絡まり合って大団円へと移っていく。クラシックのみならずジャズやシャンソン、ポップスなど素敵な選曲が魅力的で、とりわけラヴェルの「ボレロ」が最大の聴きどころとなっている。
(宮田 彩未)
公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/enfanfare/
配給:松竹
(C)Thibault Grabherr