原題 | PARTHENOPE |
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制作年・国 | 2024年 イタリア・フランス |
上映時間 | 2時間17分 R15+ |
監督 | 監督・脚本:パオロ・ソレンティーノ(『LORO 欲望のイタリア』『グレート・ビューティー 追憶のローマ』『イル・ディーヴォ 魔王と呼ばれた男』) 撮影:ダリア・ダントニオ 衣装:カルロ・ポッジョーリ |
出演 | セレステ・ダッラ・ポルタ、ステファニア・サンドレッリ、ゲイリー・オールドマン、シルヴィオ・オルランド、ペッペ・ランツェッタ、ルイーザ・ラニエリ、イザベラ・フェラーリ、ダニエレ・リエンツォ他 |
公開日、上映劇場 | 2025年8月22日(金)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、kino cinema神戸国際、MOVIXあまがさき ほか全国ロードショー |
~愛を求め、幾つもの愛を与えられながら、自らの美貌に陥れられた女の人生~
なんとも美しくゴージャス!それなのにその背後から聞こえる哀しみと憂いの調べ。
イタリアの名匠パオロ・ソレンティーノが、自身の故郷ナポリを舞台に描いたこの新作の余韻です。それは観る者の心の深い底を打ちます。そして73年間にわたるヒロインの生きた証と、彼女がついに見つけたものに静かに共鳴するのです。
真っ青な海に面した南イタリアのナポリ。1950年、主人公のパルテノペ(セレステ・ダッラ・ポルタ)は産声を上げ、名付け親の提督から豪華な寝台付き馬車を贈られます。パルテノペとは、ホメロスの「オデュッセイア」に登場する人魚の名前で、航海中の人々を美しい歌声で誘惑していたのだけれど、一人の男に恋をして拒まれたパルテノペはショックのあまり海に身を投げたといいます。その遺体がナポリ湾に流れ着き、ナポリの街の守護神になったという伝説があるとか。もちろんこの伝説は主人公をめぐる物語とうまく連動しています。
パルテノペは姿を現しただけで周囲の(とりわけ男たちの)目を引くような美しい少女に成長します。もちろん引く手あまた。誰もが彼女の彼氏になりたがるけれど、聡明なパルテノペはそう簡単に誰かひとりの手には落ちません。彼女には心をわかちあえる優しい兄ライモンド(ダニエレ・リエンツォ)がいるのですが、パルテノペが太陽のようなオーラを放ちつつ少女からおとなの女性へと成長するにつれ、彼の方は複雑な感情を抱えたままどんどんと孤独の影をまとい始めます。そしてついに悲劇が起こります。パルテノペの生涯に刻印された“兄の喪失”。
知性にも恵まれたパルテノペは人類学に興味を持ちながら、ナポリという街の裏側にまで愛の探求を続けます。いろいろな出会いがあります。彼女に目をかけてくれる人類学のマロッタ教授(シルヴィオ・オルランド)がいます。また、まるで舞台劇のような言葉で彼女をかわすアメリカ人作家ジョン・チーヴァー(ゲイリー・オールドマン)がいますが、この人のみが実在した人物です。ゲイリー・オールドマンは哀しみとお酒に浸された作家を演じ、“ロマンティック”なほどに印象的でした。それにしてもパルテノペは貪欲です。彼女は生きたい、愛したい。その強さが伝わってきます。でも、彼女は真に誰をも愛せなかった、と私は思うのですが、どうでしょう?
この作品でスクリーンデビューしたセレステ・ダッラ・ポルタは、コケティッシュな感じと親しみやすさを兼ね備え、目が離せませんでした。古くはソフィア・ローレンやクラウディア・カルディナーレ、近年ではモニカ・ベルッチに続いて“イタリアの名宝”として飛翔するかもしれません。老境に達したパルテノペを、ステファニア・サンドレッリが演じていますが、若者たちを見る彼女のまなざしに心が動きました。美貌ゆえにずっとほめそやされてきた人でも、年を重ねていくとあのような目で今を謳歌する若者を見つめるのだろうかと。また、登場人物たちの口から飛び出すウィットのある台詞にも惹かれました。
サンローランが製作に関わっていますが、クリエイティヴ・ディレクターのアンソニー・ヴァカレロ自らが衣装のアートディレクションを担当。パルテノペの身を包む洗練の極みをご覧あれ。
(宮田 彩未)
公式サイト:https://gaga.ne.jp/parthenope/
配給:ギャガ
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