制作年・国 | 2025年 日本 |
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上映時間 | 2時間20分 |
原作 | 三好銀「海辺へ行く道」シリーズ (ビームコミックス/KADOKAWA刊) |
監督 | 監督・脚本:横浜聡子 撮影:月永雄太 |
出演 | 原田琥之佑、麻生久美子、高良健吾、剛力彩芽、諏訪敦彦、村上淳、坂井真紀、宮藤官九郎、唐田えりか他 |
公開日、上映劇場 | 2025年8月29日(金)~テアトル梅田、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、アップリンク京都、シネ・リーブル神戸、MOVIXあまがさき ほか全国ロードショー |
受賞歴 | 第75回ベルリン国際映画祭ジェネレーションKPlus部門特別表彰 |
ぎくしゃくしてるのに柔らかなオーラに包まれた、
おとなと子どもの変調ストーリー
“アーティスト移住支援”を掲げた瀬戸内海の島、子どもたちはものづくりに夢中。そのなかでも美術部に属する14歳の奏介(原田琥之佑)はアートな才能が光る中学生だ。都会と違って、この島に流れている時間はなんともゆったりしているが、その子どもたちを取り巻くおとなたち、特によそからやって来た怪しげな人たちが小さな騒動を巻き起こす。
まるで、真面目な顔で繰り出されるとぼけたギャグをずっと聞かされているかのよう。いわゆるオフ・ビートなコメディである。高良健吾演じる関西弁のイカサマ包丁売りのデモンストレーションをはじめ、唐田えりかがかぶっている妙につばの長いサンバイザーだとか、奏介の才能をほめちぎって作品を依頼する男の得体の知れなさだとか、秘密やずるさを抱えた一筋縄ではいかない人たちの風変わりな有様やエピソードが次々に登場する。超能力を持つ少年なども加わって、この島の人物模様自体がアートである。きわめつけは、鳴り物なしの盆踊り。そうして、この島の夏は過ぎていく。おとなと子どもの小さなあつれきをまるで吹きとばすかのように。
2016年に亡くなった人気漫画家・三好銀の「海辺への道」シリーズを映画化したもので、オール小豆島ロケで撮影された。思わず「ふふふ」と笑いたくなるユーモアがいっぱいだ。すっとぼけてて、つかみどころのなさに、横浜聡子監督の手腕を感じる。たぶんこんな島はないし、こんな人ばっかり集まる地域社会はないだろう、ある意味でユートピアなのかもしれない。それでも、この島のひと夏は、観る者がいつかどこかで味わった喜びや悔しさや、そういうものが混じり合ったものの記憶をたぐり寄せる。全く違うのに、なぜか似ている。そこが核心なのではないか。
主人公の奏介を演じた原田琥之佑は、『サバカンSABAKAN』(金沢知樹監督・2022年)で映画デビューし、おおさかシネマフェスティバル2023で新人男優賞に輝いた若手の注目株。約800名が参加した本作オーディションの覇者となって主役を射止めた。派手さはないが、飄々とした持ち味をうまく漂わせている。有名になった直島をはじめ、瀬戸内海はアートの拠点になっていくのだろうか、そういう興味を喚起する作品でもあるなと思った。
(宮田 彩未)
公式サイト:https://umibe-movie.jp/
製作:映画「海辺へ行く道」製作委員会
配給:東京テアトル、ヨアケ
©2025映画「海辺へ行く道」製作委員会 配給:東京テアトル、ヨアケ