原題 | The Substance |
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制作年・国 | 2024年 アメリカ |
上映時間 | 2時間22分 R15+ |
監督 | 監督・脚本:コラリー・ファルジャ『REVENGE リベンジ』 |
出演 | デミ・ムーア、マーガレット・クアリー、デニス・クエイド他 |
公開日、上映劇場 | 2025年5月16日(金)~TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんば、なんばパークスシネマ、イオンシネマシアタス心斎橋、TOHOシネマズ二条、MOVIX京都、T・ジョイ京都、イオンシネマ京都桂川、OSシネマズミント神戸、109シネマズHAT神戸ほか全国ロードショー |
受賞歴 | 第82回(2025年)ゴールデングローブ賞の主演女優賞(ミュージカル/コメディ部門)受賞、第77回(2024年)カンヌ国際映画祭コンペティション部門で脚本賞を受賞。 |
“若くなりた~い”願望が招いたのは、名声ではなく、
どんでもない“迷走”だった
いつまでも若くありたいと心から望む人は、いったいどれぐらいいるのだろう? 「もう一度二十代に戻ってみたい」と言った人は、私の周囲でも何人かいたし、口に出す出さないは別にして、若いということは美しく、そうでなくなったら美しいとはいえないというのが、一般的な考えなのだろうな、と感じさせられる機会はとっても多い。テレビショッピングやネット通販を見よ。「これを使えばあなたは若返る」をテーマに売り込む商品がなんと多いことか。いくら抗っても、若々しさや外見の魅力はすこぶる大きな吸引力を持つものだ。そういう前提でこの映画を観ると、実にアイロニックだし、コミカルだし、「人は愚かで哀しい生き物だなあ」と思う。そして、「みんな同じ、あなたもよ」と指をさされているようで、少々居心地が悪く、それでも認めざるをえなくなる、そんな鋭さを持つ作品だ。
かつてオスカーにも輝き、絶大な人気を誇っていた女優のエリザベス(デミ・ムーア)は50歳になろうとしていた。今は、エアロビクス番組に出演しているぐらいだが、もっと若い女性を起用して新番組を作りたいと考えるプロデューサーのハーヴェイ(デニス・クエイド)から降板を強いられる。失意に陥ったエリザベスだったが、注射により細胞分裂を起こし、若く美しく完璧なもう一人の自分を作り出すという再生医療“サブスタンス”と出会う。そして、分身ともいえるスー(マーガレット・クアリー)が現れるのだが、それがどんな事態を招くか、エリザベスは知る由もなかった。
これを観る前に「ホラーですけど、大丈夫?」と聞かれ、「えっ?これ、ホラーなの?」と不審に思ったが、なるほどホラーだ。途中まではSF的要素のあるドラマ、最後はスプラッター・ムービー!その展開にハラハラしたり、啞然としたり、怖くなったり。監督は女性の視点を大切にしていて、共感することも多かった。例えば、デニス・クエイド演じるプロデューサーがエリザベスに「降りてくれ」という場面、彼は食事をしながらそれを伝えるのだが、この時の口の大写しがえぐいほどに汚らしい(目の前にいる年齢を重ねた女性は女ではないと思ってるようで)。スーに対する態度とは呆れるほどの違いだ。これが男であり、世間というものだと監督は暗示しているかのようだ。
結末まで観て、あなたは何を感じるだろう。一人ひとりの思いや考え方によって、かなり印象が違ってくる作品だと思う。美とは何か。私たちはじっくりとそれに向き合っているだろうか。世間的な美でなく、自分自身が本当に美しいと思うのはどんな美なのか。
改めて、デミ・ムーアの役者根性を見た。
(宮田 彩未)
公式サイト:https://gaga.ne.jp/substance/
配給:ギャガ
©The Match Factory