制作年・国 | 2025年 日本 |
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上映時間 | 2時間5分 |
監督 | 監督・脚本:古川 豪 音楽:Benjamin Bedoussac 撮影:江﨑朋生 (JSC) |
出演 | 丸山隆平、真木よう子、三浦綺羅、川口真奈、北村匠海、村川絵梨、甲本雅裕、根岸季衣、岸谷五朗、名取裕子、寺尾聰ほか |
公開日、上映劇場 | 2025年5月16日(金)~TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんば、あべのアポロシネマ、TOHOシネマズ二条、T・ジョイ京都、MOVIX京都、イオンシネマ京都桂川、109シネマズHAT神戸、OSシネマズミント神戸ほか全国ロードショー |
~差入店という特殊な稼業を軸に、繰り広げられる多様な人生模様~
「差入店」は、拘置所や刑務所などに収監されている人たちへの差入品を販売し、場合によっては代理で届けたりもするという。拘置所や刑務所などでは厳しいチェックがあって、どんな物でも差入できないため、こういう専門職が生まれたようだ。このようなお仕事があるとは全く知らずに生きてきたので、非常に興味深かった。だが、本作ではその専門性ゆえに思わぬ偏見・いじめを受けるということも描かれていて、メンタル的にはハードなことも多いのだろうな、ストレス感じるだろうなと思うお仕事だ。
主人公の金子真司(丸山隆平)は、伯父の星田(寺尾聰)から引き継いだ差入店の店主だが、若気の至りで傷害事件を起こして受刑していたこともある。だが、今は妻の美和子(真木よう子)と10歳になった息子の和馬(三浦綺羅)、引退した星田とともに店舗兼住居で穏やかな日々を送っていた。そんなある日、和馬の幼なじみが行方不明になり、近所は騒然。殺人事件へと発展していく。
この物語の主人公には2つの殺人事件が絡まってくる。和馬の幼なじみの事件、そして真司が訪れる拘置所で、断られても断られても母親を殺した男との面会を申請する女子高校生の件。そして、深くどろどろとした母親との確執が、「さあ、越えてみろ!」と言わんばかりのハードルとなって真司に挑んでくる。さらに、「そんな商売している人に来てほしくない」と後ろ指さすような世間の仕打ちもある。そんな中、妻の美和子がすごい。毅然としている。ちょっとやそっとでは動じない。男は弱し、女は強しとはこれだなと思う。
真司の母親を演じた名取裕子は、少しくたびれた感をうまく出しているし、最後の方では伯父役の寺尾聰に目を引き付けられた。この人、やっぱり歌うひとなので声のトーンがいいし、年を重ねるごとに素敵な表情になるひとの見本のようだ。そのほか、根岸季衣や岸谷五朗も重要な役どころで顔を見せ、何という贅沢な布陣なのだろうと感心してしまった。
二つの事件は違う色合いを帯びている。一方には何かを選び間違えてしまい、人を傷つけることに痛みを覚えられなくなったひとがいて、片方には法を犯してしまったけれど、誰かを何としてでも守ろうとするひとがいる。それぞれに切ないなと感じる。「金子差入店」の店先に置かれた植木鉢が何度も割られるのがとても印象的だった。割られたものを片づけてもまた別の植木鉢が割られる。その繰り返しはまさに世間との闘い。成長し、前を向こうとする主人公の顔に重なって、心がことりと動いた。
(宮田 彩未)
公式サイト:https://kanekosashiireten.jp/
配給:ショウゲート
©2025「金子差入店」製作委員会