原題 | Mickey17 |
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制作年・国 | 2025年 アメリカ |
上映時間 | 2時間17分 |
監督 | 監督・脚本・製作:ポン・ジュノ (『殺人の追憶』『パラサイト 半地下の家族』) 撮影:ダリウス・コンジ |
出演 | ロバート・パティンソン(『トワイライト・サーガ』シリーズ『TENET テネット』『ライトハウス』)、ナオミ・アッキー(『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』)、スティーブン・ユァン(『バーニング 劇場版』『ミナリ』『NOPE/ノープ』)、トニ・コレット(『ミュリエルの結婚』『ヘレディタリー /継承』(アカデミー賞Ⓡ助演女優賞ノミネート)『ドリーム・ホース』)、マーク・ラファロ(『アベンジャーズ/エンドゲーム』『哀れなるものたち』) |
公開日、上映劇場 | 2025年3月28日(金)~全国ロードショー |
ロバート・パティンソンの諦め感のある“使い捨てワーカー”の変貌ぶりに注目!
人間味あふれる新たなSF映画を体験できる楽しさ
待望のポン・ジュノ監督の新作は、なんと宇宙の果てで酷使される“使い捨てワーカー”が主役。“ミッキー17”とは、超危険な仕事ばかりをさせられ、何度も死んではコピーされる17体目の名前である。クローンやレプリカントとは違う「人間を紙のように複製する」人体複製(プリンティング)は、容姿は勿論、記憶や経験値もコピーされるとあって、死の恐怖や痛みも繰り返されてしまう。すぐにコピーされるとはいえ、存在自体を軽視され人権も尊厳もなく堪ったもんじゃない。そんな“ミッキー17”だが、悲壮感はない。飄々としてどこか諦めたような感のある彼が、なんと恋をしてから、みるみるうちに活気ある戦士へと変貌していくのだ!
本作は、『パラサイト 半地下の家族』(2019)で第92回(2020)アカデミー賞作品賞・監督賞を含む4部門を制覇して以来の新作となる。ポン・ジュノ監督らしく、特異な環境下でも無力であっても精一杯生きようとする人間の底力を自虐的なコミカルさで浮き彫りにしている。最初に絶体絶命の状態から“ミッキー17”という名の意味と事情が示唆され、そこから一気に独特の世界観に引き込まれていくイントロは見事。負け犬に甘んじていた“ミッキー17”が、恋に目覚め、クリーチャーとの遭遇から変化していく姿に期待と興奮をもって共感し、見たことのないSFの世界を没入感たっぷりに楽しめる作品となっている。
お話は、どこかの惑星探査中、陥没した穴に落ちて身動きがとれないミッキー(ロバート・パティンソン)から始まる。上空に仲間のティモ(スティーブン・ユアン)が操縦する探査船が飛来するも、穴の奥に不気味にうごめくクリーチャーを見てミッキーを見捨てて飛び去ってしまう。「どうせすぐにコピーされるんだろ」と言い残して。―――パティシェを夢見ていたミッキーは友人ティモが抱える借金地獄に巻き込まれ地球では生きていけなくなる。そこで必死で得た仕事が惑星移住船の最下層の“使い捨て労働者(ワーカー)”。そこは絶対的権力者が支配する超格差社会で、危険な船外作業や人体実験など普通の人間にはできない「絶対に死ぬ」仕事ばかりだった。その都度コピーされ生き返るとはいえ、死の恐怖と痛みは免れない。逃げるように乗船した宇宙船で酷使される日々は、とんだ“闇バイト”だったのだ。
ミッキーを演じるロバート・パティンソンが素晴らしい! 吸血族のロマンスを描いた『トワイライト・サーガ』シリーズで一躍世界の人気俳優に躍り出たが、近年の絶海の孤島でウィレム・デフォーの虐待に耐え続ける灯台守の物語『ライトハウス』では見違えるような変貌を遂げていた。それまでのスタイリッシュな役柄とは対称的に、全身で絶望感や悲壮感を体現し、彼の秘めたる多面性に驚かされた。どちらかというとクールなイメージが付き纏っていたロバート・パティソンが、本作ではさらに飄々とした可笑しみを醸し出している。その脱力感のあるミッキーが格差社会の逆転に突き進む辺りは、一気に畳み掛けるような展開が待ち受けており、新たなロバート・パティンソンに魅了されるに違いない。
カリスマ指導者を演じたマーク・ラファロもまたそれまでの包容力のあるイメージを覆す暴君を怪演。それから、食料制限下の船内でやたらソースにこだわる指導者の妻を演じたトニ・コレットも、カメレオン俳優という異名にふさわしく、“ミッキー17”を追い詰める不気味さで迫って来る。さらに、惑星の先住民であるクリーピー(未確認生物)の性格付けが心憎い。ポン・ジュノ監督のオリジナル脚本は、深掘りされたキャラクターに俳優たちの意外性が加味され、最後にホッとする展開を用意してくれることが多い。今回も期待を裏切らない優しいサプライズで心を和ませてくれる。こんな面白い映画、観ないなんて勿体ない!
(河田 真喜子)
公式サイト:https://wwws.warnerbros.co.jp/mickey17/
ハッシュタグ:#映画ミッキー17
配給:ワーナー・ブラザース映画
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