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『エミリア・ぺレス』

 
       

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作品データ
原題 Emilia Perez
制作年・国 2024年 フランス
上映時間 2時間13分
監督 ジャック・オーディアール(『君と歩く世界』『ディーパンの闘い』『パリ13区』)
出演 カルラ・ソフィア・ガスコン、ゾーイ・サルダナ(『アバター』シリーズ、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズ)、セレーナ・ゴメス、アドリアーナ・パス、エドガー・ラミレス、マーク・イヴァニールほか
公開日、上映劇場 2025年3月28日(金)~大阪ステーションシティシネマ、テアトル梅田。なんばパークスシネマ、MOVIX京都、アップリンク京都、イオンシネマ京都桂川、kino cinema神戸国際、シネ・リーブル神戸ほか全国ロードショー
受賞歴 第77回(2024年)カンヌ国際映画祭では4人が女優賞を受賞(アドリアーナ・パス、ゾーイ・サルダナ、カルラ・ソフィア・ガスコン、セレーナ・ゴメス)。第97回アカデミー賞(2025年)助演女優賞(ゾーイ・サルダナ)、主題歌賞の2部門を受賞。

 

自分らしく生きたい…その切なる願望が人を変え、

思いも寄らぬドラマを招き寄せる

 

衝撃的な作品だ。設定が面白く、この先どんなふうに物語が展開してゆくのかとワクワクさせられたし、俳優陣もそれぞれに印象的だ。今年の第97回アカデミー賞では、助演女優賞と歌曲賞に輝いた。サスペンスとアクションで味付けした人間ドラマを、ミュージカル仕立てで見せてくれたジャック・オーディアール監督の手腕をとくとご覧あれ。


Emilia Perez-500-1.jpg罪を犯した人間が金の力を使って無罪となる裁判の現実と、無能な男の上司に手柄を持っていかれることに、優秀な弁護士リタ(ゾーイ・サルダナ)は怒りを覚えていた。そんな折、驚愕の出来事がリタを襲う。いきなり誘拐され、ある男に引き合わされたのだ。目の前にいるのは、メキシコ全土に名を轟かせている残虐な麻薬王マニタス(カルラ・ソフィア・ガスコン)。恐怖に震えるリタに、マニタスは意外な頼みごとをする。「女として生きたいから、極秘で手術できる名医と場所を探してくれ」と。そこから、いくつもの人生が交差しつつ、新しい扉が開いてゆく。


Emilia Perez-500-2.jpgタイトルのエミリア・ペレスは、女性となったマニタスの新しい名前である。トランスジェンダー俳優としてアカデミー賞主演女優賞に初ノミネートと話題になったカルラ・ソフィア・ガスコンが、マニタスとエミリアの二役を演じていて、これはなかなかの見どころだと思う。ガスコンがSNSで人種差別的発言をしたということが問題になったそうだが、それはまた別のお話。本作でのオーラは圧倒的だ。助演女優賞に輝いたゾーイ・サルダナ、マニタスの妻を演じたセレーナ・ゴメスとのアンサンブルがぴたりと決まっている。


Emilia Perez-500-6.jpgメキシコは今でも男性優位社会なのか、と感じさせるエピソードがいろいろ出てきて、登場する女性たちに共感を覚えることが多かった。リタのような職場での理不尽な上下関係があり、切実なDVがある。ミュージカル劇としてのシーンで歌われる曲は、まさに女性たちの心の叫びのように聞こえた。しかしながら、最も男社会の色が濃い麻薬カルテルの世界で生きてきたマニタスが性同一性障害を抱え、女性になりたいという希望を実現するという点が非常に面白く、この映画のミソだと思う。


Emilia Perez-500-7.jpg過去に自分が犯した罪を償いたいというエミリアだったが、どうしても手放したくない大切な存在が、彼女の理性と運命を狂わせる。そして人を巻き込み、坂道を転がっていく。ラストシーンはまるでギリシャ悲劇のようだ。


(宮田 彩未)

公式サイト:https://gaga.ne.jp/emiliaperez/

配給:ギャガ

© 2024 PAGE 114 – WHY NOT PRODUCTIONS – PATHE FILMS - FRANCE 2 CINEMA
COPYRIGHT PHOTO : (C)Shanna Besson

 

 
 
 

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