原題 | A REAL PAIN |
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制作年・国 | 2024年 アメリカ・ポーランド |
上映時間 | 1時間30分 |
監督 | 監督・脚本:ジェシー・アイゼンバーグ |
出演 | ジェシー・アイゼンバーグ、キーラン・カルキン、ウィル・シャープ、ジェニファー・グレイ、カート・エジアイアワン、ライザ・サドヴィ、ダニエル・オレスケスほか |
公開日、上映劇場 | 2025年1月31日(金)~TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんば、京都シネマ、OSシネマズミント神戸ほか全国ロードショー |
せりふの絶妙な掛け合い、知性とウィットの絡み合い。
これはまさに才ある人の仕業!
私は駅だとか空港だとかホテルだとか、多くの人が行き交う場所が大好き。見知らぬ幾つもの人生がそばを通り過ぎていくんだなあと思って、とてもワクワクしたりしみじみしたりするから。だから、この映画の始め方と終わり方にとても共感してしまった。主人公のひとりであるベンジー(キーラン・カルキン)は従兄弟のデヴィッド(ジェシー・アイゼンバーグ)と空港で待ち合わせしているのだが、ずいぶん早めに来て、現れたデヴィッドに言う。「変人たちの観察をしていると楽しいんだよ」と。
ところがどっこい。このベンジーこそがなかなかの変人なのだ。彼らふたりは久々の再会で笑顔を交わし合い、ハグをしたりするのだけれど、だんだんと妙な距離感が生まれてくる。ふたりの行き先はポーランド。ユダヤ系の祖母が最近他界したのを機に、祖母が体験したことをなぞるように第二次世界大戦の史跡ツアーに参加し、以前に祖母が住んでいた家も訪ねてみようというのが、この旅の目的だ。繊細でどっちかといえばクソ真面目なデヴィッドに比べ、感情があふれ過ぎて、ツアーの他のメンバーも驚くような破天荒の言動が目立ってくるベンジー。次第にイライラを募らせるデヴィッドだったが…。
いわゆるバディものと呼ばれるジャンルに属する作品だが、脚本と監督も務めたジェシー・アイゼンバーグって凄いんじゃない!? と強く思った。テンポよく話が進むところもあれば、ベンジーの暴走によってぎくしゃくするところもある。そのさじ加減が巧く、観る者を退屈させずにどんどん引っぱっていく。性格的には全く合わないのに、お互いが気になってしようがないという経験がある人なら、つい膝を叩いてしまいたくなるシーンも。ユダヤ人ならわかるギャグもたぶん多いのだろうな、とそのへんに詳しくない私はちょっと残念だったのだが。
ツアーで訪れるワルシャワ蜂起記念碑やマイダネク(ルブリン強制収容所)など、ナチスドイツの爪痕が残る場所が映し出されると、やはり胸の中に波風が立つ。だが、本作は大声でアンチ・ナチスを叫ぶものではない。自分たち自身は体験しなかったけれど、親族の悲しい歴史として伝えられていることについて、現代のユダヤ人であるベンジーやデヴィッドが思いを馳せるというお話になっている。
ラストシーンのベンジーの表情が忘れがたく、病める現代人の心を体現したキーラン・カルキンの熱演は出色だ。ポーランドは楽聖ショパンの故郷。ショパンの楽曲がたっぷりと耳でも楽しめるロードムービーの快作となっている。
(宮田 彩未)
公式サイト:https://www.searchlightpictures.jp/movies/realpain
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
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