原題 | 原題:La habitacion de al lado 英題 The Room Next Door |
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制作年・国 | 2024年 スペイン |
上映時間 | 1時間47分 |
監督 | ペドロ・アルモドバル |
出演 | ティルダ・スウィントン、ジュリアン・ムーア、ジョン・タトゥーロ、アレッサンドロ・ニボラほか |
公開日、上映劇場 | 2025年1月31日(金)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、OSシネマズミント神戸 ほか全国ロードショー |
受賞歴 | 第81回(2024)ベネチア国際映画祭で最高賞の金獅子賞 |
安楽死を願うひと、それを見届けるひと。
ふたりの間を流れる濃密な時間に圧倒される。
スペインの巨星、ペドロ・アルモドバル監督も75歳になったという。若い頃、彼の作品に魅せられ、『神経衰弱ぎりぎりの女たち』に始まり、『アタメ』、『オール・アバウト・マイ・マザー』…ほか新作が発表されるたびに胸がときめいたものだ。特に印象的なのは、彼の色彩に対する感性だった。インテリアや登場人物の衣装に鮮やかな色を好んで使うのだが、キッチュと見なされるリスクをはねのけて実におしゃれでカッコいい!そして、この最新作でもその美的センスは不滅だった。
小説家のイングリッド(ジュリアン・ムーア)は、かつて同じ雑誌社で働いていたマーサ(ティルダ・スウィントン)と久しぶりに会った。旧交を温めるつもりが、重大な事実を知らされる。マーサは重い病気にかかっており、残された時間はそう長くはないこと。そして、マーサはイングリッドに対して、切実な“お願い”を口にする。安楽死を選ぶから、親友として共に最期の日々過ごしてそれを見届けてほしいという、驚くべきものだった。
おそらく、誰もがイングリッドとともに考え込んでしまうだろう。同じことを親友から依頼されたとして、自分ならどうするか? 映画の中でも、ジョン・タトウーロ演じるイングリッドのパートナーが心配するように、安楽死が認められない国では殺人罪に問われることもあるのだから。マーサに未練が全くないかといえば、そうでもないのだけれど、彼女にはすでに決断したという潔さがある。
それに比べ、ずっと逡巡しているのはイングリッドのほうだ。そりゃそうだろう。これはもともと酷な“お願い”だったのだから。アルモドバル監督は、女性の描き方が巧いひとで、このふたりの感情の自然な流れと抑制を、実にきめ細かく表現している。観た後にすぐ頭に浮かんだのも、「濃密」という言葉だった。たぶん、このふたりは一緒に過ごした最期の数日間で、一生分の友情を生きたのだ。
物語の語り口も絶妙である。映画の冒頭で、登場人物たちの関係性が観る者にす早くきちんと伝えられる。当然といえば当然かもしれないが、この人とこの人はどういう関係にあるのかがなかなかわかりづらい作品があることを思うと、実に手際がよい。テーマ自身が重量級なので、導入を軽やかにわかりやすくしたのかもしれない。そして、インテリアやファッションをよ~くご覧あれ。アルモドバル的な趣向があちらこちらに。ティルダ・スウィントンの人物画らしいものまで飾ってあるし、エンディング近くに登場するマーサの娘など、ちょっとした遊び心を加えた演出が面白い。
本作は第81回ベネチア国際映画祭で最高賞の金獅子賞に輝いた。広く実力を認められたオスカー女優ふたりの、熱のこもった競演は本当に見応え十分だった。
(宮田 彩未)
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配給::ワーナー・ブラザース映画
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