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『ショウタイムセブン』

 
       

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作品データ
制作年・国 2025年 日本 
上映時間 1時間38分
原作 The film “The Terror, Live” written and directed by Kim Byung-woo, and produced and distributed by Lotte CultureWorks Co., Ltd. and Cine2000
監督 監督/脚本:渡辺一貴  オリジナル脚本:キム・ビョンウ 撮影:大和谷豪
出演 阿部寛、竜星涼、生見愛瑠、井川遥、吉田鋼太郎、他
公開日、上映劇場 2025年2月7日(金)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、シアタス心斎橋、T・ジョイ京都、MOVIX京都、109シネマズHAT神戸、kino cinéma神戸国際 ほか全国ロードショー


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~爆破テロの標的にされたスタジオからの独占生中継!~

 

メディアを題材にした映画は結構、ありますね。テレビに絞っても、『ネットワーク』(1976年)、『ブロードキャスト・ニュース』(1987年)、『恋とニュースのつくり方』(2010年)、『ニュースの真相』(2015年)……。思いつくまま挙げると、ハリウッド映画ばかりですが、日本映画でも、自社の東海テレビ報道部にメスを入れたドキュメンタリー映画『さよならテレビ』(2020)という異色作もありました。


これらの《メディア映画》の中で、『ショウタイムセブン』は独特なベクトルを放っています。それはミステリー&サスペンス色が濃厚だから。韓国で大ヒットした映画『テロ・ライブ』(2013年)を現代日本に移し替えたリメイク作ですが、テレビ業界出身の渡辺一貴監督が実に刺激的なエンタメ作に仕上げてくれました。


showtime7-550.jpg冒頭はテレビではなく、ラジオのスタジオです。中年のベテラン・アナウンサーの折本眞之輔が気だるそうにマイクに向かって喋っています。やる気がないのが丸わかり。なぜなら、長らく務めていた午後7時から始まる国民的ニュース番組『ショウタイムセブン』のキャスターを、ある事案で降板させられたからです。つまり、左遷。


オンエアの最中、発電所を爆破するという1本の電話がリスナーからかかってきます。その瞬間、ドラマがにわかに始まります。ゾクゾクゾク……。ぼくは元新聞記者なので、事件絡みの話になると、アドレナリン濃度が一気にアップ! その直後から主人公に寄り添うようにして銀幕に見入ってしまいました。


阿部寛扮する折本という男がなかなかのやり手です。ジャーナリスト魂があるのでしょう、「これはスクープだ!」と即座に判断し、ニュースの発信元を古巣番組の『ショウタイムセブン』へ移そうとします。何せ生放送の人気番組なので、グレードアップです。これは当然の動きでしょう。


showtime7-500-2.jpgところが! 爆破予告の情報を『ショウタイムセブン』のキャスター、安積征哉(竜星涼)に伝えるのだろうと思いきや、あろうことか折本が安積に代わり、自分がキャスターに返り咲こうと画策するのです。何というごり押し!! 犯人から交渉人に名指しされたことで大義名分が立つと主張しますが、常識離れも甚だしい。しかも事件なのに警察に通報させないとは……、アンビリーバブル!


そこに野心家の折本と同じ人種のプロデューサー、視聴率第一主義の東海林剛史(吉田鋼太郎)が関わり、加速度的にドラマの密度がヒートアップ。このプロデューサー、いかにもテレビ局に居そうな業界人丸出しのタイプです。ぼくの知り合いには居ませんが、実際に居そうな感じがしますわ(笑)。


showtime7-500-1.jpg折田と東海林がメディア界の裏話を連発する漫才コンビを組んだらオモロイやろな、とふと思いました。コンビの名は「テレビ・ブラザーズ」! 斬新な内容の笑いなので、受けること間違いなし。


すんません、脱線しました。話を戻します――。ラジオからテレビのスタジオへ舞台が変わるまでのプロセスが手に汗を握るような超リアルな展開です。被写体に肉迫するカメラが折本の体温と吐息を如実に伝え、スリリングさを強調させていました。この一連の演出は秀逸!


主舞台となったテレビのスタジオでテロ予告が実行に移され、いよいよドラマが熱くなってきます。そしてこのあと何とスタジオに爆発物を仕掛けたという電話が……。どこまでドラマを作るんや! 新人アナウンサーの結城千晴(生見愛瑠)やスタッフ、スタジオに来ていた視聴者が動揺する中、次々と恐怖に陥れる事態が生じてきます。わぁ、パニック映画ですがな。


showtime7-500-3.jpgいつしかスタジオ全体が演劇の舞台空間になっています。登場人物の動きを常時、5台のカメラで撮影していたそうです。そんな場合、普通はカット割りを多用するのですが、あえて長回しで撮っていました。10分以上、カットなしのシーンもあり、まるで芝居を見ているような錯覚に陥りました。


時折り、ディレクター、プロデューサー、各種装置を操作するスタッフがいるコントロール・ルームの中、さらに爆破された発電所の近くで取材する伊東さくら記者(井川遥)のリポートも盛り込み、メリハリをつけていました。場面転換のタイミングが絶妙で、全く飽きさせませんね。


showtime7-500-4.jpg本作は、阿部寛のために作られた映画と言ってもいいでしょう。ギラギラした野望をむき出しにし、功名心にはやる折本という男を全身全霊で演技していました(ちょっとオーバーかな……)。一発逆転を狙いたいという焦りを見せながらも、犯人とのやり取りの中でメディア人(ジャーナリスト?)しての見識もちゃんと発言するくだりの演技はお見事。ぎょろりとした目玉とガタイの大きさがいつも以上に際立っていました。


テレビ局という特殊な世界、極限状態に包まれるスタジオ、折本と東海林の思惑、政治問題を伏線にし、犯人の動機を浮き彫りにしていくストーリー展開……。それらを98分で収めたのはご立派! やはりこの手の映画はシャープさが肝ですからね。うーん、この作品をちょっと褒めすぎたかな(笑)


showtime7-500-5.jpg密閉状態の中であぶり出されるテレビ業界の内幕――。ぼくが宣伝マンなら、こんなサブ的なキャッチコピーでPRしたい映画でした。

 

武部 好伸(作家・エッセイスト)

配給:松竹 アスミック・エース

コピーライト:©2025「ショウタイムセブン」製作委員会

公式サイト:https://showtime7.asmik-ace.co.jp/

公式 X:@showtime7_movie( https://x.com/showtime7_movie) #ショウタイムセブン

 

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