制作年・国 | 2024年 日本 |
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上映時間 | 1時間50分 |
原作 | 原作:清水茜「はたらく細胞」(講談社「月刊少年シリウス」所載) 原田重光・初嘉屋一生・清水茜『はたらく細胞BLACK』(講談社「モーニング」所載) |
監督 | 監督:武内英樹 脚本:徳永友一 音楽:Face 2 fAKE 主題歌:Official 髭男 dism「50%」(IRORI Records/Pony CANYON Inc.) |
出演 | 永野芽郁 佐藤健 / 芦田愛菜 山本耕史 仲里依紗 松本若菜 染谷将太 板垣李光人 加藤諒 加藤清史郎 マイカピュ 深田恭子 / 片岡愛之助 / 新納慎也 小沢真珠 鶴見辰吾 光石研 Fukase (SEKAI NO OWARI) / 阿部サダヲ |
公開日、上映劇場 | 2024年12月13日(金)~大阪ステーションシティシネマ、T・ジョイ梅田、なんばパークスシネマ、TOHOシネマズ(なんば、二条、西宮OS)、MOVIX京都、OSシネマズミント神戸 他全国ロードショー |
~人体を支える細胞たちのエネルギッシュな擬人化ドラマ~
シリーズ累計1,000万部を突破した漫画『はたらく細胞』。アニメ化もされ、話題になっていましたが、どうも稚拙な印象を受け(先入観でごめんなさい!)、ぼくはあえてスルーしていました。本作はその映画化作品。試写で観るのもあまり気乗りがせず、期待もしていなかったのですが、なかなかどうして、非常に楽しめるエンタメ映画でした。全く白紙状態で観れたのがよかったです。
冒頭、テーマパークのような空間に、赤、白、水色などの帽子とユニフォーム姿のおびただしい数の人物がうごめいています。何やこれは!? 唖然としていると、説明書きが次々と映し出され、彼らが細胞だとわかってきます。実は無秩序に動いているのではなく、規則通りに移動しているのです。つまりそこは人体の中! 何とまぁ、華やかなこと。
人体を構成する細胞の数は37兆個といわれています。その中で、生命維持に不可欠な酸素を運ぶ赤血球と、外部から侵入してきた細菌やウイルスなどの病原体や異物を排除する免疫系の細胞に焦点を絞り、それらを擬人化してドラマチックな内容に仕立てたのがこの映画です。
ぼくが小学生の時、『ミクロの決死圏』(1966年)というアメリカ映画がありました。極小サイズに縮小された科学者グループが人体に入り、脳に障害のある要人を救うというSF冒険作。当時、すごく話題になり、映画館の最前列で食い入るように観入っていたのを覚えています。
その映画はかなりリアルに体内の様子を再現していましたが、本作は全く別物。垢抜けした大通り、ヨーロッパ風の城、薄暗い裏通り、噴水のある庭園、工場……などなど、現実の情景の中で物語が展開されます。漫画が原作なので、何でもありなんですね(笑)。いや、こういう発想はぼくには持ち合わせていないので、すごいと思いました。正直、最初のうちは戸惑ってしまったけれど、「こういうことなんや」と納得すると、順応できました(笑)。
現実生活の主人公は、女子高校生の日胡(芦田愛菜)と父親の茂(阿部サダヲ)。母親が病死し、2人暮らしですが、ジャンクフード・酒・タバコまみれの不摂生極まりない父親を、真面目な娘が母親代りに面倒を見ています。阿部の過剰演技がちと気になったとはいえ、対照的な親子のコンビネーションがなかなかええ塩梅。
日胡の体内にも2人の主人公がいます。1人が永野芽郁扮する赤血球。健気で天然系、どこか頼りなさそうですが、常に全力投球で頑張っています。赤血球をあしらった赤いベレー帽がよく似合う永野が、学芸会のノリで楽しそうに演じているよう。少女漫画のヒロインっぽいかな(笑)
もう1人が佐藤健扮する白血球です。ナイフ片手に武闘派を豪語するクールなイケメンで、全身白塗りで大熱演。『るろうに剣心』シリーズと同様、身体能力の高さを活かし、キレのいいアクションを披露しています。眼光が異常に鋭く、目を合わせるのが怖いですが(笑)
その他、免疫系の司令塔ともいえる冷静なヘルパーT細胞(染谷将太)、単独で動けないものの、黒ずくめのパワフルなキラーT細胞(山本耕史)、長剣を振りかざす一匹オオカミのNK(ナチュラル・キラー)細胞(仲里依紗)、白いロングドレスに身を包んだエレガントなマクロファージ(松本若菜)、可愛い少女の血小板(マイカピュ)……。いろんな免疫系細胞をかくも個性豊かなキャラクターでビジュアル化させたところが理屈抜きにオモロイ! ゲラゲラ笑ってしまった。
日胡がインフルエンザに罹患したり、スギ花粉を吸い込んだりすると、彼らがたちどころに反応し、侵入者に対してそれぞれ得意技を駆使して果敢に闘うのです。驚くべき防御システムが人間には備わっているんですね。それにしても人体の中は常に戦闘態勢にあるとは、びっくりポン。
免疫系のカラクリが実に平易に描かれており、ある意味、万人向けの医学映画ともいえます。しかもお堅い教育映画ではなく、100パーセント娯楽映画なので、とりわけ子どもにはうってつけですね。ややおちゃらけていますが……(笑)。
『テルマエ・ロマエ』『のだめカンタービレ』『翔んで埼玉』といった大ヒット・エンタメ作を手がけてきた武内英樹監督の演出は実にこなれたもので、笑いのツボをちゃんと心得てはります。おどろおどろしい格好をした肺炎球菌(片岡愛之助)や化膿レンサ球菌(新納慎也)などはどこまでやるねんといった感じ(笑)。多用されるCG映像も別段、嫌味なく観れました。
体内の動きと親子の日常を交錯させながら物語が進んでいく本作のハイライトは、日胡が生命に関わる重大な病気に襲われるところ。そこいらでゾンビ丸出しの悪者細胞と自衛する免疫細胞とのバトルが繰り広げられ、完全に戦争アクションですがな。実際に体内ではそんな悲惨な状況になっているのでしょうね。あぁ、怖っ……。
何よりも健康が一番! 『はたらく細胞』はそのことを改めて実感させてくれる映画です。本作で2024年の「武部好伸のシネマエッセイ」を締めくくれてよかった、よかった。
武部 好伸(作家・エッセイスト)
配給:ワーナー・ブラザース映画
©清水茜/講談社 ©原田重光・初嘉屋一生・清水茜/講談社 ©2024 映画「はたらく細胞」製作委員会
公式サイト: https://wwws.warnerbros.co.jp/saibou-movie/
公式 X: @saibou_movie #映画はたらく細胞