制作年・国 | 2024年 日本 |
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上映時間 | 1時間59分 |
原作 | 原作:辻村深月『傲慢と善良』(朝日文庫/朝日新聞出版刊) |
監督 | 萩原健太郎(『ブルーピリオド』『サヨナラまでの30分』『東京喰種 トーキョーグール』) |
出演 | 藤ケ谷太輔、奈緒、倉悠貴、桜庭ななみ、阿南健治、宮崎美子、菊池亜希子、西田尚美、前田美波里ほか |
公開日、上映劇場 | 2024年9月27日(金)~TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんば、あべのアポロシネマ、TOHOシネマズ二条、T・ジョイ京都、109シネマズHAT神戸、OSシネマズミント神戸 ほか全国ロードショー |
婚活で始まった恋の行方が、観る者の恋愛観や価値観を揺さぶってくる
「傲慢」と「善良」。通常、その言葉の意味は対極に在るといえるだろう。だが、傲慢だと見なされる人が100%傲慢であるかといえば、そうとは限らず、逆に、善良だと思われる人がちらりと見せる傲慢さに驚くことだってある。この映画は、一筋縄ではいかない人間の多面性を提示しながら、私たち一人ひとりに鋭い問いを発してくる。「あなたは誰?あなたは、本当はどうなのですか?」と。
映画の冒頭、白い花束を無理やり手で折ろうとする女性が映し出される。顔は見えないが、その仕草は全身全霊のエネルギーがこめられた怒りを感じさせ、怖いほどだ。そして、場面は一転、都会的な独身男性・西澤架(藤ケ谷太輔)の話になる。彼は父親から受け継いだ小さなビール会社の青年社長で、マッチングアプリを利用して婚活中だ。実は、つきあっていた彼女にフラれ、その心の傷が癒えていないことを隠している。何人もの女性と会うが、どうもピンとこない。そんなある日、待ち合わせて初めて会った坂庭真実(奈緒)の純朴そうな言動に惹かれ、交際を始める架だったが…。
原作は、2023年のベストセラーとなった辻村深月による同名小説。お話の終わり方の色合いは少し違うが、架の立場、真実の立場それぞれから描く原作の構成に縛られず、巧妙に映像化した萩原健太郎監督の手腕が光る。 “人生の真実”に迫るような言葉があちこちに散りばめられ、特に前田美波里演じる結婚相談所の所長が架に放つ言葉は聞き逃せない。“自己評価”と“自己愛”について、とても考えさせられる重要なシーンである。
婚約したとたんに姿を消す真実、ストーカーという存在、過去の真実と現在の真実を探す架の心の旅。物語はだんだんとミステリーの要素を帯びてくる。冒頭で白い花を無茶苦茶にした女性の正体がわかった時、なんともいえない哀しみに襲われる。人は他人のことに無責任に口を出し過ぎて傷つけ、時には破滅させてしまうことだってあるのだ、という恐ろしさが、その哀しみの裏に張り付いている。そして、その哀しみの中に傲慢さはないだろうか、と、思いがぐるぐると頭の中をめぐり、その問いは真実という女性に、それだけでなくこちらにも向かってくる。
人を許すということの難しさについても思う。感動的ともいえるラストシーンの、その先についても思いを馳せる。大切なひとの、裏切りともいえる行為と謝罪を丸ごと受け入れることが本当にできますか、とこれまた尋ねられているように感じる。やっぱり、切っ先の鋭い作品だ。
(宮田 彩未)
配給・宣伝:アスミック・エース
Ⓒ2024 映画「傲慢と善良」製作委員会
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