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『花嫁は、どこへ?』

 
       

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作品データ
原題 LAAPATAA LADIES
制作年・国 2024年 インド
上映時間 124分
監督 キラン・ラオ
出演 ニターンシー・ゴーエル、プラティバー・ランター、スパルシュ・シュリーワースタウ、ラヴィ・キシャン、チャヤ・カダム
公開日、上映劇場 2024年10月4日(金)より大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、kino cinema 神戸国際、MOVIX京都他全国ロードショー
 

~インドで生き抜く女性たちが掴んだ、新しい人生の扉~

 
 この11月、初のインド行きを控え、インドに関する本を読んだり、映画を観たりするにつけ、インドで女性たちの結婚が依然家族に決められるものがほとんどであり、違うカーストの相手と恋愛結婚しても、家名を汚したと親が結婚相手を名誉殺人するケースが多発していることを知った。女性が教育を受ける率もまだ高いとは言えず、10代前半の女性が嫁ぐ児童婚も多い。また花嫁側が用意する持参金も莫大というシビアな現実もある。しかも2001年が舞台の本作では、女性側が結婚詐欺をはたらいていると新聞で報じられ、本当に結婚って大変だなと思わずにはいられない。日本とは大きく違う結婚模様を描くだけでも興味津々だが、そこに「入れ違い」が加わると、悲劇も喜劇に転じ、思わぬ展開が生まれていく。インド社会や女性たちの生活をリアルに映し出しながら、最後は女性たちのパワーをしっかりと感じる災い転じて福となるエンパワメント映画。インドの大スター、アーミル・カーン(『きっと、うまくいく』)が脚本を発掘、プロデュースし、キラン・ラオ監督がキャラクターをしっかり肉付けして、巧みに描いた必見作だ。
 
 
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 自宅でしきたりによる結婚式を挙げた花嫁のプールは、夫のディーパクの村へ電車で向かうが、大安吉日の満員電車には同じように赤いベールで顔を隠した花嫁花婿たちが並んで座っていた。夜、列車内のトイレから戻ったディーパクは、慌ててプールの手を掴み下車するが、村人たちに出迎えられてついた家で、ベールをとると、そこにいたのは別の女性だった。当のプールは、その先のパティラ駅で青ざめながらディーパクを探し回るが見つからない。トイレで夜を明かし、警察を尋ねるが、夫についてきただけのプールは、夫の住所や最寄駅も、何も知らなかった。金目のものを夫に預け、無一文だったプールは、夫の元を離れ、ひとりで駅の売店で働くマンジュの声がけで、お菓子を作って売店で売ることに。一方、ディーパクの自宅にいるもう一人の花嫁、ジャヤは怪しい動きを見せて…。
 
 
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 結婚写真もベールを被り、警察で探してもらうにも本人の顔写真すらない。花嫁がベールで顔を隠すことが当然だからこその混迷ぶりだが、実はそれを逆手に取り、本来嫁ぐべき場所からうまく逃げ出したのがジャヤだった。結婚するために、家でしっかりと家事や料理を仕込まれ、他の男などの危険から身を守ることは心得ているが、肝心の主体性に欠け、新郎に気持ち面でも任せきりだったプールと、不審な行動はしているものの、その聡明さで家族の女性たちの心を解き放ち、彼女たちを良い意味で感化していくジャヤ。正反対のふたりの花嫁たちは、夫たちがさまざまな想いを抱えて妻を探し回る間に、自分の新たな居場所で周りに影響を与え、自分の内なる魅力を開花させていく。ディーパクの実家で姑と話していた母が「家では女性たちは立場ばかり考えて友達になれなかった」と語ったことに、大きな変化のきざしを感じずにはいられなかった。
 
 
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 駅でチャイを売る少年や罰金の支払いは所長の裁量次第の警察、怪しい動きをするジャヤの夫、夜警の仕事を長年勤め上げ、今は目を開けたまま寝ているディーパクの祖父とインドの日常をリアルに描くだけでも、十分驚きとサスペンスがあるなと実感。ジャヤの秘めたる野望は実現するのか?そして箱入り娘だったプールの駅での社会経験が彼女のその後の人生にどんな影響を与えるのか?この二人だけでなく、様々な女性たちのタフな生き様に、あまりメディアで語られないインド女性たちの強さを感じる。プールが作って駅で売っていたカラカンドというインドの白いお菓子は、ぜひ滞在中に食べてみたい。インドらしい一面の畑の稲穂が揺れる風景も、この映画でとても重要な役割を果たしていた。
(江口由美)
 
(C) Aamir Khan Films LLP 2024
 
 
 

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