制作年・国 | 2024年 日本 |
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上映時間 | 1時間58分 |
監督 | 監督・脚本:吉田恵輔 |
出演 | 石原さとみ、青木崇高、森優作、中村倫也、小野花梨、細川岳、有田麗未、小松和重、カトウシンスケ、山本直寛、柳憂怜、美保純ほか |
公開日、上映劇場 | 2024年5月17日(金)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、あべのアポロシネマ、MOVIX京都、T・ジョイ京都、TOHOシネマズ二条、109シネマズHAT神戸、OSシネマズ神戸ハーバーランド、OSシネマズミント神戸ほか全国ロードショー |
~子どもの失踪によって変わっていくもの、新しく見つけたもの~
日本で、9歳以下の子どもが年間1000人以上も行方不明になっていると聞いて驚いた。事件性のあるものはニュースで取り上げられたり、街頭で情報提供を求めるビラを配っていたりするが、家族が最も危惧しているのは「事件が風化していくこと」「世間から忘れられること」だ。時間と共に、有効な情報力は間違いなく衰えていくからだ。
国民的な人気を集める石原ひとみが、『ヒメアノ~ル』(2016年)の吉田恵輔監督の映画に出たい出たいと熱烈なラブコールを送って実現したという本作。愛娘が突如失踪して、半狂乱になりながらも希望にすがりつく母親役を熱演している。一昨年に出産して子育て中の石原にとってはキツイ役どころだったと思うが、テレビドラマやCMでは見られない凄みのある表情をにじませている。
映画は、愛くるしい少女・美羽(有田麗未)を追いかけるホームビデオのような映像で始まる。その後、切り替わって、街頭でビラ配りをする沙織里(石原ひとみ)の姿が映し出される。少女は失踪した、だから母親の沙織里は必死になって「誰か、娘を見かけなかったか、何か知ってはいないか」と道行く人々にビラを手渡しているのだ。地元のテレビ局に勤める記者・砂田(中村倫也)は沙織里に密着して取材してくれるが、だんだんと世間の関心が薄れていくことが気になる沙織里はイライラがつのり、夫の豊(青木崇高)と言い争うことも多くなった。さらに、事件当日の沙織里の行動が、ネット上で誹謗中傷の的になり…。
石原さとみを取り巻く男性演技陣にも注目。マ・ドンソクと共演した『犯罪都市 NO WAY OUT』(2024年2月公開/イ・サンヨン監督)をはじめ近ごろ活躍いちじるしい青木崇高が、ギクシャクしながらも世間の目から妻を守り共に闘おうとする夫を鮮やかに演じている。マスコミ内部の矛盾や軋轢を感じ、理想と現実の間で揺れる記者を演じた中村倫也、沙織里の弟役で、自分を責める気持ちと無神経な人々への怒りをじわりとにじませた森優作もイイ!
改めて、SNSの功罪について考えさせられる。実際、ネット上での言いたい放題が高じて名誉棄損の罪に問われることも多くなった。本作はハッピーエンドではないけれど、つらい事件を機に、人が心を寄せ合い、長い時間をかけてつながってゆく姿を見せてくれる。不幸は人を打ち砕くだけではない、それによって何かを学び、心のほころびを少しずつ補修し成長する種をまいてくれる。そうあってほしいという監督の願いがこめられているように思う。
(宮田 彩未)
公式サイト:https://wwws.warnerbros.co.jp/missing/
配給:ワーナー・ブラザース映画
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