原題 | PRISCILLA |
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制作年・国 | 2023年 アメリカ・イタリア |
上映時間 | 1時間53分 |
監督 | ソフィア・コッポラ(『ヴァージン・スーサイズ』『ロスト・イン・トランスレーション』『マリー・アントワネット』) |
出演 | ケイリー・スピーニー(『パシフィック・リム アップライジング』)、ジェイコブ・エロルディ(『キスから始まるものがたり』シリーズ)、ダグマーラ・ドミンスク、アリ・コーエン、ティム・ポスト、オリヴィア・バレット他 |
公開日、上映劇場 | 2024年4月12日(金)~大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズなんば、京都シネマ、シネ・リーブル神戸ほか全国ロードショー |
受賞歴 | 第80回(2023年)べネチア国際映画祭最優秀女優賞(ケイリー・スピーニー) |
エルヴィス・プレスリーの元妻が味わった、
夢のような暮らしとその陰影
ソフィア・コッポラ監督の作品がやって来ると、「ようこそ!」という気持ちになる。同じ女性として、登場させる女性たちの心情にどれだけ寄り添っているか、周囲の男性たちをどう描いているかに興味を持つからだ。そして、この新作は、まさに彼女の真骨頂とでも呼ぶべき色合いに包まれていた。エルヴィス・プレスリーという音楽界のレジェンドを重要な“脇役”として使い、幼くして彼の恋人となり妻となったプリシラの視点から、約10年にわたる出来事と心象風景をあぶり出す。
伝説の種が蒔かれたのは、1959年の西ドイツ。アメリカ軍将校の父の転属に従い、西ドイツで暮らしていた14歳のプリシラ(ケイリー・スピーニー)は、兵役で当地に赴任していた世界的スター、エルヴィス・プレスリー(ジェイコブ・エルロディ)と出会う。外国暮らしになかなかなじめないプリシラと、愛する母を亡くしたエルヴィスは、お互いの寂しさをなだめるかのように、心を寄せていく。エルヴィスはアメリカに帰り、しばらく音沙汰のない日々が続いたが、プリシラに素敵なサプライズが届く。メンフィスにあるエルヴィスの邸宅“グレースランド”に招待されたのだ。
西ドイツでの映像は暗めのトーンだったが、プリシラがグレースランドに到着したとたん、彼女の気持ちを表すかのように明るくなる。大好きなひとと一緒に暮らせる、それも、世界から憧れの目を向けられるひとと一緒にプライベートな時間を過ごせる!プリシラのワクワクが伝わってくるようだ。だが、監督は微妙な演出を施す。エルヴィスの仕事仲間など来客が集まる1階の映像は明るいのに、彼とプリシラがふたりで過ごす2階の映像は暗く、重苦しい。何を意味するかは、映画そのものが語ってくれる。
真の主人公はエルヴィスでなく、タイトル通り、プリシラなのだ。だから、エルヴィスのパフォーマンスを映して彼の偉大さを示したりはしない。“自分の女を自分好みに仕立てたい”男の身勝手さや、プレッシャーにくじけそうになるアーティストとしての弱さなどが描かれる。大人の世界に飛び込み、ショービジネスのことなど何も知らなかったプリシラが、それに対して何を感じ、どう葛藤し、何を選びとったか。コッポラ監督の確かな手腕が、観る者の共感を呼び起こす。
プリシラを演じたケイリー・スピーニーは本作により、昨年の第80回べネチア国際映画祭で最優秀女優賞に輝いた。とても小柄なひとだが、キュートさと目ヂカラの強さが印象に残った。彼女が身につける70年代から80年代のファッションや、高く盛ったヘア、強烈なメイクアップなど、昭和世代ならきっと懐かしさを覚えるだろう。
(宮田 彩未)
公式サイト:https://gaga.ne.jp/priscilla/
配給:ギャガ
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