原題 | 原題:流浪地球2/英題:THE WANDERING EARTH Ⅱ |
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制作年・国 | 2023年/中国/中国語・英語 |
上映時間 | 2時間53分 |
原作 | 製作総指揮・原作:リウ・ツーシン |
監督 | 監督:グオ・ファン(『流転の地球』『バトル・オブ・ザ・リバー 金剛川決戦』) |
出演 | ウー・ジン(『戦狼 ウルフ・オブ・ウォー』『流転の地球』『MEGザ・モンスターズ2』)、アンディ・ラウ、リー・シュエチェン、シャー・イー、ニン・リー、ワン・ジー、シュ・ヤンマンツー |
公開日、上映劇場 | 2024年3月22日(金)~TOHOシネマズ日比谷、大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズ(なんば、二条、西宮OS)ほか全国ロードショー |
これぞ宇宙船地球号!
SF小説「三体」作家の短編が65億の製作費をかけて映画化
Netflix映画『流転の地球』の前日譚にあたるのが本作。子どもたちをメインに描いた前作に対し、本作ではウー・ジン演じる宇宙飛行士リウを主役に据えたストーリー展開だ。SF界のノーベル文学賞に匹敵すると言われるヒューゴー賞を受賞した劉慈欣(リウ・ツーシン)の短編小説をグオ・ファン監督が映画化。驚くべきは設定以外ほとんどがオリジナル脚本であることだ。これには製作に加わった劉氏も中国SF映画の地平を開いたとして絶賛している。これまで中国ではあまり盛んではなかったジャンルだが、グオ監督が制作総指揮した『宇宙探索編集部』(2023年コン・ダーシャン監督)もアジア各地の映画祭で話題となり、いま中国SFにがぜん注目が集まっている。
西暦2044年、太陽は膨張を続け300年後には太陽系を飲み込むと予測されていた。そうなれば地球はひとたまりもない。連合政府が組織され、太陽系を脱出する<移山計画>が中国主導ですすめられていた。この計画のスポークスマンをシュ・ヤンマンツーが好演。一方、反対勢力の<デジタル生命計画>推進派による妨害活動が激化していた。人類の知能をバックアップするというものだ。しかし死の概念そのものがなくなるため、危険思想として禁止されるようになる。様々な思惑がぶつかり合うなか、宇宙ステーションの建設、駆動エンジンの開発・実験が急がれていた。
まず宇宙船のスケールが凄い。宇宙船と言えば乗組員数名のコンパクトなイメージだったが、ここに登場するのは小型旅客機ぐらいの規模。天空までそそり立つ宇宙エレベーターをフリーフォールのように上下し、あれよあれよという間に地上と宇宙空間を行き来するのである。この宇宙船周りでは人間らしいドラマも展開される。世界初の月面着陸でのガガーリンによる「地球は青かった」は有名だが「地球は美しくない」と言って月への任務に志願するリウ。それは荒廃した地球への失望からだけではないようだ。その陰でトゥ・ホンユー(アンディ・ラウ)は秘密裏にある研究を続けていた。このパートでは繰り返されるパターンと微細な変化によって現実との境目がわからなくなる。しかし、観ているうちに無機質な中にも情緒が感じられてくるのが不思議だ。本来ない物の中にも意味を見出してしまうのが人間なのかもしれない。時おり挟まれるカメラがカメラをただ映しているショットが意味深だ。アンディ・ラウの圧倒的な演技力と「インファナル・アフェア」の頃を彷彿させるCG表現も見もの。この二人のドラマを主軸に<計画>は様々に変転しながらも進行してゆく。
それにしても宇宙を旅して他の惑星に移住するというならともかく、地球ごと移動させようという発想も凄い。時間の単位も数十年レベルから数百年、数千年とスパンが長くなると気が遠くなるが、宇宙船地球号という言葉が現実味を帯びてもくる。人間の寿命は宇宙と比べるまでもなく短いのだ。観終わったあとはキツネにつままれたような気分だったが、実際ある動物のショットが途中に入って思わず笑ってしまった。クライマックスでは各国首脳部の態度に現実世界を照らし合わせてみたり、アメリカ制作との違いを勝手に感じてみたり。AIとの戦いあり、広大な宇宙への挑戦あり、そして、やはり人類への警鐘でもある壮大なドラマ。なんだか凄いものを観た!という満足感に包まれることうけあい。一作目未見の方は、まず本作を観てから前作を観て再度本作を観ると、より味わいが増すのではないだろうか。2027年公開予定の第三部にも期待大!
(山口 順子)
公式サイト: https://rutennochikyu.jp/
配給:ツイン
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