原題 | She Came To Me |
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制作年・国 | 2023年 アメリカ |
上映時間 | 1時間42分 |
監督 | 監督・脚本:レベッカ・ミラー(『50歳の恋愛白書』『マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ』『メアリーの総て』) |
出演 | アン・ハサウェイ、ピーター・ディンクレイジ、マリサ・トメイ、ヨアンナ・クーリク、ブライアン・ダーシー・ジェイムズ、エヴァン・エリソン、ハーロウ・ジェーン他 |
公開日、上映劇場 | 2024年4月5日(金)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、kino cinema神戸国際ほか全国ロードショー |
“人生、何が起きるかわからない”を、
コミカルに小粋に見せてくれる。
アクシデントや衝撃の出来事が次々に起ころうと、この物語の登場人物たちはきっと幸せになる…と、安心して映像と音楽を味わっていた。思いも寄らない結末というのももちろん面白くて、そういう展開に持っていくには観客を納得させる術がいる。一方で、幸せオーラの気配をじわじわと感じさせながら、行き先を間違えず、それでいてひねりの効いた着地点を指し示すってのも、これまた一つの才能だなと思う。本作は後者。ラブコメ好きには見逃せない、この春のおすすめ作だ。
ニューヨークのブルックリン。一組の夫婦の日常からお話が始まる。夫のスティーブン(ピーター・ディンクレイジ)は現代オペラの作曲家だが、ここ5年間、大スランプ状態で曲のアイデアが全く浮かんでこない。一方、妻のパトリシア(アン・ハサウェイ)は人気の精神科医で極度の潔癖症。近ごろ、彼女は自分の仕事に対して懐疑的だ。ある日、気分転換に犬を連れての散歩を妻から勧められたスティーブン、ふと立ち寄ったバーで曳船の船長だというカトリーナ(マリサ・トメイ)と出会う。風変わりな彼女の魅力にハマったスティーブンは、自分でも信じられない行動に出てしまう。
おとなたちそれぞれの悩みに加え、パトリシアの連れ子であるジュリアン(エヴァン・エリソン)の恋愛問題が絡んできて、あっちも大変こっちも大変状況になるのだが、或る思いつきが事態を変えてくれる。そして、それぞれが行きたい場所へとちゃんと連れていってもらえる。このあたりの手さばきは、さすがレベッカ・ミラー監督だ。
以前のブルックリンは治安的に問題がある場所だったそうだが、アーティストやセレブな人たちも住み着くようになり、ずいぶん様変わりした(その分、家賃も上がった)と聞く。私の好きな作家ポール・オースターも長くここに住んでいるが、この映画に出てくるブルックリンは、オースターが書きウェイン・ワンが監督した映画『スモーク』(1995年)の時代よりだいぶお洒落で落ち着いた雰囲気が漂っているなと思った。
何といっても配役が絶妙だ。悩めるピーター・ディンクレイジのアピール度は高く、大輪の花的風貌のアン・ハサウェイvs年輪の刻み方がカッコいいマリサ・トメイの競演は見ものだ。ちなみに、ジュリアンの恋人役で登場するハーロウ・ジェーンは、パトリシア・アークエットの娘である。そして、大事な脇役が音楽だ。エンドロールで流れるのは、この映画のためにブルース・スプリングスティーンが書き下ろし、妻のパティ・スキャルファとデュエットしている『Addicted to Romance』。リフレインが印象的なきれいなバラードだ。また、劇中のスティーブンのオペラ曲を作曲したのはブライス・デスナー。グラミー賞も受賞したバンド「The National」のメンバーであり、映画音楽やオペラまで活躍の場を広げている多才なひとなので、オペラの場面ではじっと耳を傾けたい。
(宮田 彩未)
公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/BrooklynOpera/
配給:松竹
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