原題 | 原題 Stranizza d’ Amuri |
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制作年・国 | 2022年 イタリア |
上映時間 | 2時間14分 |
監督 | 監督・脚本:ジュゼッペ・フィオレッロ 撮影:ラミロ・シビータ 音楽:ジョヴァンニ・カッカモ、レオナルド・ミラーニ |
出演 | ガブリエーレ・ピッツーロ、サムエーレ・セグレート、シモーナ・マラート、ファブリツィア・サッキ、アントーニオ・デ・マッテオ、他 |
公開日、上映劇場 | 2023年11月23日(木・祝)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、kino cinema神戸国際ほか全国ロードショー |
美しいシチリアの海と太陽に映える、
まぶしいばかりの青春を奪いとったのは誰?
1982年、イタリアのシチリア。父親の花火工場を手伝うニーノ(ガブリエーレ・ピッツーロ)と、母の恋人が営む自動車修理工場で働くジャンニ(サムエーレ・セグレート)は、思わぬバイク事故で出会った。にぎやかな家族に囲まれ、天性の明るさを放つニーノが太陽なら、複雑な家庭事情を抱え、近所のワルたちにいじめられているジャンニは影を抱え持った三日月のよう。いずれも人の目を引く美少年だ。ふたりは同年代ということもあってすぐに打ち解け、一緒に時間を過ごすようになったが、次第に心の距離感が微妙なものになり…。
エンドクレジットに現れる「愛のために殺された~」という一節に胸が詰まる。1980年にシチリアで実際に起きた痛ましい「ジャッレ事件」をもとに、俳優でもあるジュゼッペ・フィオレッロ監督が脚本を書き、メガホンを取った本作。イタリア本国でスマッシュヒットを記録した。LGBTIやダイバーシティという言葉などまだ一般的でない時代、マンマ(お母さん)の力が強いイタリアであっても男らしさが尊重される地域社会で、ジャンニが周囲から受けた不当な扱いがクローズアップされる。最初は同世代の友情という枠にとどまっていたふたりだったが、周囲の圧力やタブーとされることへの反抗心が、ふたりの気持ちをより近づけたのかもしれないなと思う。
ニーノの父親が病気になったため、ジャンニが花火を上げるのを手伝うシーンがある。「愛を伝えるなら、優しい色を使う」と、気持ちを表現する花火の色を語るニーノ、その言葉の裏にある想いや、美しい花火を見上げるふたりの表情に胸がいっぱいに……思わず遠い日の初恋を思い出してしまう。大家族でテーブルを囲むにぎやかな食事、聖セバスティアーノの祭り、サッカーワールドカップのイタリア優勝で沸く街…イタリア好きならつい身を乗り出したくなるエッセンスを随所に感じながら、今後の活躍が期待される新人俳優ガブリエーレ・ピッツーロとサムエーレ・セグレートに魅せられた。シチリア出身のフランコ・バッティアートの美しい音楽にも胸が震える。
ちなみに、「ジャッレ事件」がきっかけで、LGBTIの人たちに対する偏見や差別と闘う非営利団体「ARCIGAY」(アルチゲイ)がシチリアに設立されたという。人類の進歩や啓蒙は、悲劇の踏み台がなければ生まれてこないのか、と考えつつ、この美しくもはかない映画の余韻を味わっていた。
(宮田 彩未)
公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/sicilysummer/
配給:松竹
後援:イタリア大使館
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