原題 | 原題:Madeleine 英題:THE CRIME IS MINE |
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制作年・国 | 2023年 フランス |
上映時間 | 1時間43分 |
監督 | 監督・脚本:フランソワ・オゾン(『8人の女たち』『スイミング・プール』『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』) 撮影:マニュエル・ダコッセ(『シーモーヌ フランスに最も愛された政治家』) 衣装:パスカリーヌ・シャヴァンヌ |
出演 | ナディア・テレスキウィッツ、レベッカ・マルデール、イザベル・ユペール、ファブリス・ルキーニ、ダニー・ブーン、アンドレ・デュソリエ他 |
公開日、上映劇場 | 2023年11月3日(金・祝)~大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズなんば、京都シネマ、シネ・リーブル神戸ほか全国ロードショー |
フランソワ・オゾン監督が仕掛けた巧妙な手口に
思わず膝をたたきたくなる快作
映画の冒頭、プールの向こうにたたずむセレブが住んでいそうな邸宅、そこから慌てて出てきた美しいひとりの女、彼女が急ぎ足で歩いてゆく直線と曲線の融合がみごとな橋梁…。もうこれだけで監督の美的センスにはっとさせられ、今から始まる物語にワクワクしてしまう。フランソワ・オゾン監督の最新作は、ジョルジュ・ベルとルイ・ヴェルヌイユによる戯曲『真実の告白』をもとに映像化したもの。ちなみに、この戯曲は1937年にウェズリー・ラッグルス監督、キャロル・ロンバード、フレッド・マクマレイ主演で映画化されているが、オゾン監督は人物設定や展開などかなり大胆なアレンジを加えている。
主人公は2人の女。売れない新人女優マドレーヌ(ナディア・テレスキウィッツ)と、駆け出しの弁護士ポーリーヌ(レベッカ・マルデール)で、ルームシェアしているのだが貧しく、家賃を滞納し続けている。そんな彼女たちの日常を変える事件が起きた。仕事をもらえると思って、有名プロデューサーの邸を訪れたマドレーヌは性的暴行を受けそうになり、何とかして邸から逃れたが、後でそのプロデューサーは殺されたことがわかる。容疑をかけられたマドレーヌと、その弁護を務めるポーリーヌは法廷に立つのだったが…。
「犯人になること」が名声とお金を呼ぶという皮肉、女優であるマドレーヌが闘うために「演じる才能」を使うということ、さらにサイレント映画時代の大女優オデット(イザベル・ユペール)の登場によって物語が大きく動き出すことに注目した。女たちの駆け引きの妙、ウィットにあふれた軽妙なせりふに思わず笑ってしまう。エリック・ロメール監督作品でも、味のある役者として記憶されるファブリス・ルキーニ演じる判事の、想像力が豊かでいてとんまなキャラクターや、イザベル・ユペールの押し出しの強さも、コミカルな要素を含んでいる。また、男性優位の1930年代という時代設定であるにもかかわらず、女性の主張、女性の尊厳というものにスポットを当てているところは、オゾン監督らしいと感じた。
アール・デコ調の雰囲気を出しながら、どことなく作り物っぽいニュアンスを強調した美術や、小粋なクラシックとでもいえそうな衣装にも目を引かれた。美しくて、ドキドキして、ユーモアもたっぷりで、最後まで目が離せない個性派ミステリーをどうぞじっくりと。
(宮田 彩未)
公式サイト:https://gaga.ne.jp/my-crime/
配給:ギャガ
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