原題 | 인생은 아름다워 |
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制作年・国 | 2022年 韓国 |
上映時間 | 2時間3分 |
監督 | 監督:チェ・グッキ 脚本:ぺ・セヨン 撮影:ペク・ユンソク |
出演 | リュ・スンリョン(ジンボン)、ヨム・ジョンア(セヨン)、オン・ソンウ(ジョンウ)、パク・セワン(若き日のセヨン) |
公開日、上映劇場 | 2023年11月3日(金)~シネマート新宿、ヒューマントラストシネマ有楽町、シネマート心斎橋、MOVIX京都、kino cinema 神戸国際 他全国順次公開 |
~おもろうてやがて悲しき…夫婦で巡る思い出の地と蘇る青春の日々~
近ごろ人生について考える瞬間が増えた。親は老いるが子は一人前にはほど遠い。健康診断で引っ掛かる度に考える、やるべきことはまだ残っていると。しかし、終わりはいつも突然だ。年末の大掃除すら満足にしまえないのに、いずくんぞ人生をしまわんや。
主人公のオ・セヨン(ヨム・ジョンア)は平凡な主婦。平凡な恋愛をし、平凡な結婚をし、平凡な家庭を築いた。ぶっきらぼうな夫ジンボン(リュ・スンリョン)と思春期の子どもたち。自虐でも何でもなく、このまま名前を自分に置き換えることができる。しかし、平凡と非凡は対極のように見えて実は地続き。オ・セヨンはある日突然、末期がんで余命2ヶ月と宣告される。それをミュージカルで描くとは!『ラ・ラ・ランド』のようでもあり『ウェストサイドストーリー』っぽくもあり『死ぬまでにしたい10のこと』を思い出したりもしたのだが、語り口のうまさにうなってしまった。タイトルが出るまでのわずか数分で持っていかれた。そうして渋る夫を引き連れての思い出探しの旅は、なんと初恋の彼を探すというもの。珍道中必至の旅は、母校のある港町木浦を皮切りにソウルから車で南下すること数百キロ。釜山、済州とフェリーまでも駆使して辿り着いたのは・・・。
余命、初恋、と聞いて映画やドラマにもなった「恋文」を思い出した。余命宣告を受けた女性が別の家庭を持つ昔の恋人に手紙を送る話だ。若かりし頃は、一時的とはいえ幼い子を残し看取りのために家を出る男を裏切りのように感じたものだ。しかし、年齢を重ねてみるとちがった思いも生まれてきた。
”おもしろうてやがて悲しき~”とは芭蕉の句の一節だが、”おもろうてやがて悲しき~”と鶴瓶さんがラジオで言うのを聞いてからこっちの方がしっくりくるようになってしまった。人情噺や悲喜劇を見るといつもこのフレーズを思い出す。てっきり日本的な情緒と思っていたが、こういう感覚は万国共通なのだろうか。
韓国の作品はここ数年よく観るが、生活習慣の違いも面白い。例えばラブホテル。韓国では宿代を浮かすためカップルのみならずビジネスホテル代わりに利用する客も多いらしい。夫婦だから堂々としていればいいのに不倫と間違われたくないというジンボンの妙な見栄や何かと去勢を張る姿が滑稽でもあり。オ・セヨン中心に描かれる心象風景が終盤でジンボンにスイッチしてゆくところなど、まさに、おもろうてやがて悲しき~なのである。
さて、幼い頃テレビの新喜劇に泣き笑いする母を呆れて見ていたが、やってみると気持ち良いことこの上ない。心も体も浄化される感じだ。ヨム・ジョンアの1980年代ファッションも振り付けも、その泥臭さがダサ可愛い。この展開でキレキレなダンスが始まったらストーリーが入ってこなくなりそうだが、二人がちょうどいい緩さに(見える様)歌い踊るので自然に入っていけるのだ。こちらもいいように踊らされている。とくにリュ・スンリョンが意外といい声していてムード歌謡とか演歌の風情もある。『エクストリームジョブ』(2019)で演じたドジな麻薬調査官が傑作だったが今回もはまり役。2021年に閉館となったソウル劇場が、物語のシンボル的に使われているのもジンとくる。
いつの間にか自分の思い出と重ね合わせ学生時代に通って今はもうない映画館などを思い浮かべているのだった。してみると、映画というのはイメージを与えられることで脳内で思い思いに作り変えているのかもしれない。皆さんの脳内映画はどんなものになるだろう。
(山口 順子)
公式サイト: lifeisbeautiful-movie.com
配給:ツイン
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