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『ストールンプリンセス:キーウの王女とルスラン』

 
       

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作品データ
原題 THE STOLEN PRINCESS
制作年・国 2018年 ウクライナ 
上映時間 90分
原作 アレクサンドル・プーシキン「ルスランとリュミドラ」
監督 オレ・マラムシュ
出演 声の出演:高塚大夢、高橋李依、岡本信彦、多田野曜平、森久保祥太郎、石田明、井上裕介、別所哲也
公開日、上映劇場 2023年9月22日(金)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIXあまがさき他全国ロードショー
 

~どこか懐かしい正統派アドベンチャーアニメ!~

 
 ディズニー、ピクサー、そしてこの夏はジブリの最新作や国産アニメも続々登場し、今まであまり観たことのないような新機軸のアニメーションを紹介することは難しい今、ロシアに侵攻される前に作られたウクライナのアニメーションが、日本で紹介されるというのは嬉しい驚きだ。しかも映画祭ではなく、全国ロードショーされるのだから、これはぜひ観たいと思わされる。原作となっているのが、ロシアの国⺠的詩⼈、アレクサンドル・プーシキンの初⻑編詩「ルスランとリュミドラ」。プーシキンはウクライナでも親しまれており、政治的な火種はあっても、両国が文化でつながり合っていたことがよくわかる。自分の家族の職業を継ぐしかなく、親の言うことに逆らうことがタブーであった時代に、若き二人が中心となって繰り広げる物語は、新しさと同時に、懐かしさを呼び起こす。まさに親子鑑賞にオススメしたい一本だ。
 
 

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 ウクライナの⾸都キーウ。⾃由な暮らしに憧れながらも、王女という身分のため城で静かに暮らすしかないミラは、父の国王に無理やり結婚をさせられそうになり、城を抜け出してしまう。夜の街に飛び出した、危険な目に遭いそうになったミラを助けたのは、騎士に憧れる役者のルスランだった。日頃は騎士にバカにされ、人を楽しませるしかなかったルスランだったが、ミラを助けたとき思わず自分が騎士だと嘘をついてしまう。月夜の下で二人は恋に落ち、まさに新たな冒険が幕を開けようとしたとき、ミラが突然何者かに連れ去られてしまうのだった。
 
 
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 劇作家の友人レスターや愛鳥を従えたルスランの魔法の国への旅も、アニメなら鳥が人間のようにしゃべりそうなところだが、あえてリアルと同じ感じであることが逆に新鮮。ミラをさらった悪の魔法使い・チェルノモールのいる魔法の国への道のりは苦難の連続だが、どこかほっこりさせられるところもあり、どこかおとぎ話感が漂う。おまけに「娘を助けた男は、娘との結婚を許可する」という国王のお達しも相まって、ミラを助けるために打ちのめした個性的な悪党たちや、いつもルスランを小馬鹿にしていた騎士たちまで彼らの後を追って魔法の国へやってくるのだから、再び囚われの身となったミラもたまったものではないだろう。
 
 

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 内に秘めたエネルギーを持つミラも、数少ないながら囚われた城の中で大暴れし(しかも相手はスイーツ!?)、運命に抗う新しいタイプのプリンセスを体現している。身分違いの恋という気持ち良いぐらいの王道ストーリーが、実はすんなりとその世界観に入っていけ、ファンタジー要素を存分に楽しめるのだ。魔法使い、チェルノモールとの闘いはもちろん、ウクライナーロシアの文化や、近代の人々の暮らしぶりにもぜひ堪能してほしい。さらに、グローバルボーイズグループ・INIの高塚大夢がルスラン役で声優に初挑戦。主題歌となるINIの新曲「My Story」では作詞も担当しているのも注目ポイント。騎士と名乗ったことで、どんどんと勇敢さが増し、頼もしくなっていくルスランが、道中で「桃太郎」のごとく新しい仲間を作り、ミラを救い出そうとするアクションアドベンチャーを、存分に味わってほしい。
(江口由美)
 
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公式サイト⇒https://stolenprincess.jp/ 
(C) 2018, SSVG EAST FUND INVESTMENT LIMITED (C) 2018, “ANIMAGRAD” LTD (C) 2018, Ukrainian State Film Agency (C) 『ストールンプリンセス:キーウの王女とルスラン』製作委員会
 
 
 

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