原題 | 原題 Frere et soeur 英題 Brother and Sister |
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制作年・国 | 2022年 フランス |
上映時間 | 1時間50分 |
監督 | アルノー・デプレシャン(『そして僕は恋をする』『あの頃、エッフェル塔の下で』『クリスマス・ストーリー』) |
出演 | マリオン・コティヤール(『エディット・ピアフ 愛の讃歌』『サンドラの週末』『愛を綴る女』『アネット』)、メルヴィル・プポー(『わたしはロランス』『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』)、ゴルシフテ・ファラハニ、パトリック・ティムシット、バンジャマン・シクスー、ジョエル・キュドネック、コスミナ・ストラタン他 |
公開日、上映劇場 | 2023年9月15日(金)~シネ・リーブル梅田、京都シネマ、9月22日(金)~シネ・リーブル神戸ほか全国ロードショー |
~姉と弟の間にある深くて暗い心の溝を、名匠の技で切り開く~
『そして僕は恋をする』(1996年)で映画ファンの心をつかみ、その後も『クリスマス・ストーリー』(2008年)ほか着実に作品を送り出してきたアルノー・デプレシャン監督。この最新作は、マリオン・コティヤールとメルヴィル・プポーというフランスの人気俳優をメインキャストに迎えた、ある家族の切実な物語。家族なのに、あるいは家族だからこそ大変な確執って確かにあるよねえと思いながら、ぐぐっと引き込まれてしまった。
姉のアリス(マリオン・コティヤール)は名前や顔を広く知られた舞台俳優で、その弟ルイ(メルヴィル・プポー)は詩人として成功していた。だが、この二人は何が原因なのか、憎みあい、お互いを避けるようにしてそれぞれの人生を歩んでいる。ところが、両親が自動車事故に遭い、久しぶりに顔を合わすことになった…。
年を重ね、所帯が別になっても仲良しきょうだいというのもあるし、いつのまにかどんどん疎遠になっていくきょうだいもある。この映画のきょうだい、アリスとルイは何がきっかけで憎しみを抱きあうことになったか、映画は明白には語らない。幼い頃に父親がアリスをほめ、ルイをけなしたという場面が出てくる。ルイはどうやらアリスに対してコンプレックスを持っている。それも一つの理由かもしれないが、ルイの息子が6歳で亡くなった時、アリスの弔問を断るほど深く傷ついたのだろうか。その後はアリスの憎しみのほうがより強く感じられる。断固として弔問を断られたアリスは、そのことで弟を拒否するようになったのか。“心のボタンの掛け違い”は、時として予想もできない亀裂を生み出すのだなあ。
印象的なシーンがいくつもあって、重苦しい家族ドラマにどこかユーモラスなもの、剽軽な味を付け加える。例えば、スーパーマーケットの店内でふたりがぶつかり、ルイが「失礼ですが、姉さんですか?」と言うところ、親が入院している病院の廊下にルイがいるのに気づいたアリスが驚いて大げさにひっくり返るところなど思わず笑いそうになる。アリスが満面の笑顔でルイに「大っ嫌い」と言うシーンや、ルイが街の上を飛ぶシーンもシュールで衝撃的だ。表裏一体となった憎しみと愛情は、どっちがオモテでどっちがウラなのかわからない、ということなのだろうと理解した。
さて、この心の取っ組み合いがどこに着地するのか。それは意外にも「素直さ」という境地。それは観てのお楽しみ。とにかく役者がいい!主演のふたりはもちろんのこと、ルイの妻を演じたゴルシフテ・ファラハニの存在感が目立った。『彼女が消えた浜辺』(2009 年/アスガー・ファルハディ監督)や『パターソン』(2016年/ジム・ジャームッシュ監督)にも出ていたけど、実に華のある俳優さんだ。
(宮田 彩未)
公式サイト:https://moviola.jp/brother_sister/
配給:ムヴィオラ
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