原題 | Corsage |
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制作年・国 | 2022年/オーストリア、ルクセンブルク、ドイツ、フランス/ドイツ語、フランス語、英語、ハンガリー語 |
上映時間 | 1時間54分 |
監督 | 監督・脚本:マリー・クロイツァー 撮影:ジュディス・カウフマン 音楽:カミーユ 製作総指揮:ヴィッキー・クリープス |
出演 | ヴィッキー・クリープス(『ファントム・スレッド』『彼女のいない部屋』)、フロリアン・タイヒトマイスター、カタリーナ・ローレンツ、ジャンヌ・ヴェルナー、アルマ・ハスン、マヌエル・ルバイ、フィネガン・オールドフィールド、アーロン・フリース、ローザ・ハッジャジ、リリー・マリー・チェルトナー、コリン・モーガン |
公開日、上映劇場 | 2023年8月25(金)~TOHOシネマズ シャンテ、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、大阪ステーションシティシネマ、 TOHO シネマズなんば、京都シネマ、TOHO シネマズ西宮 OS、シネ・リーブル神戸 ほか全国順次公開 |
“中年エリザベートの迷い”を現代的視点から捉えた画期的な作品!
こんなロックなエリザベート見たことない!
ハプスブルク帝国最後の皇帝フランツ・ヨーゼフの皇妃エリザベート。その若き日の肖像画は、豊かな髪に真珠のような輝きを放つ白い肌、豪華な衣装をまとい魅惑的な微笑で何人をも魅了する、まさに絶世の美女!映画やドラマにミュージカル『エリザベート』などでは、美貌に恵まれながらも、窮屈な皇室内の生活や皇帝との不毛な夫婦生活に4人の子供のうち二人を亡くし、最期は旅先で暗殺されるという波乱万丈の人生を送った悲運の皇妃として語られてきた。その都度、彼女の神々しいまでの美しさに圧倒され、彼女の人生に想いを馳せてきたものだ。
そんなエリザベートの実像に迫ろうと、美貌も衰え始めた40歳を迎えた年(1878年)、その前後のエピソードを1年間に集約して描いたのが映画『エリザベート1878』である。エリザベートを演じたヴィッキー・クリープス(39歳)は、15歳で観たロミー・シュナイダー主演の『プリンセス・シシー』以来エリザベートに興味を持ち始め、「なぜエリザベートはフィットネス器具を作らせたのか?」「なぜ40歳を過ぎてから肖像画に描かれるのを拒んだのか?」との疑問をマリー・クロイツァー監督に提議。すると、1年後に監督から脚本が送られてきたという。
エリザベートはこの窮屈な時代を生き抜くためには何より美貌と知性が武器になることを自覚していた。原題の『Corsage』(コルセット)からも分かるように、美貌を保つためのストイックなまでの日常生活を送り、自分自身は勿論、周りにも締め付けるような厳格さを求めていた。ヴィッキー・クリープスはそんなエリザベートに自由を与えようと、息子ルドルフからもたしなめられるような行動をとらせた。タバコを吸う、退屈な晩餐会での非礼の数々、皇帝を悩ます無軌道な行為などなど。皇后として揺るぎない立場に在りながらも、思うように生きられない息苦しさや焦燥感を、透明感のある映像でクールに描いている。“中年エリザベートの迷い”を現代的視点から捉えた画期的な作品といえよう。
下位貴族の娘ながら若き皇帝フランツ・ヨーゼフに見染められ皇妃となったものの、自由闊達な性格が仇となり、堅苦しい皇室内のしきたりや厳しい姑・皇太后ゾフィーの束縛から逃れようと、常に旅の空の下にあったという伝説の多い皇妃。(下位貴族出身であることや、最初は姉がお妃候補だったこと、また、堅苦しい王室に馴染めず後継者を産んだ後は夫婦仲も悪かったということから、英国王室のダイアナ妃と類似点が多い。)
1789年のフランス革命後、ヨーロッパの各王国では共和制を叫ぶ市民革命が頻発し、さらに19世紀になると産業革命や帝国主義を強化した周辺国との戦争に敗れるなど、ハプスブルク家も斜陽の時期を迎えていた。そんな中、1867年のオーストリア=ハンガリー二重帝国発足に29歳のエリザベートの美貌と機転が役立ったというエピソードも有名。本作で登場する第四子・ヴァレリーは、この翌年に誕生。ルドルフ誕生から10年経って誕生したヴァレリーをことのほか可愛がったという。
17歳で7歳年上の皇帝と結婚。翌年・翌々年と続けて娘を産み、姑の制止を振り切って乳幼児二人を連れて第一回ハンガリー訪問を敢行。その途中、長女を病気で亡くす。その翌年に皇位を継ぐ男子・ルドルフが生まれるが、エリザベート52歳の時、30歳になったルドルフは心中事件を起こして死亡(『うたかたの恋』で有名)。病気がちの次女は療養生活を送り、ヴァレリーだけがイタリアのトスカーナ大公へ嫁ぎ、現在まで子孫を繋いでいる。
(河田 真喜子)
公式サイト:https://transformer.co.jp/m/corsage/
配給:トランスフォーマー、ミモザフィルムズ
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